ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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この作品はハイスクールD×Dの二次創作作品です。
仮面ライダー鎧武も関係ありません。

……きっと。



今更ですが「元ネタが分からない」と言う方は
活動報告か感想掲示板までお願いします。


Extra Soul1. 歩藤誠二の多忙な夜

――その男、悪魔で、生霊で、赤龍帝(コピー)。

 

さて、俺こと歩藤誠二はようやく自主謹慎が解け、今日から通常営業である。

聞けば、俺が謹慎している間に色々なことがあったらしい。

 

その中でも、イッセーに新しい顧客が出来たそうだ。

何か全身具足の留学生で、現在全身甲冑の彼氏と交際中だとか。

おいイッセー。お前奇人変人集めてどうしようってんだ。

 

それはさておき。顧客といえば、俺の方の虹川さんもようやくライブの段取りが決定した。

今日がそのライブの開催日だ。場所はこの町にある駒王大学内キャンパス。

キャンパスならそういう学生ライブが行われたりすることも

少なくないから、思い切って夜使ってしまえ、と持ちかけたのだ。

 

義務教育の学校、特に小学校とかと比べると夜遅くまで開いていたりすることも多いが

これでも上々な場所を確保できたのではないかと思う。

 

……小学校は小学校で、結構雰囲気出てそうな気もしたんだが。

まあ、次の開催地として考えておけばいいか。

 

――――

 

「と、いう訳で駒王大学のキャンパスにて本日22時より虹川楽団のライブを決行します。

 曲目は『ファントムコーラス』と『プリズムメモリーズ』。

 初めてだからとりあえずその二曲で行きましょう。会場の使用時間は1時間半。

 これは会場の設営と撤収を含めての時間。アンコールなら1曲くらいはなんとかなるかと。

 21時半に現場入りして、23時までに現場撤収。以上、何か質問は?」

 

「えーっ、セージぃ。ちょっと少ないよー」

 

ああ、俺もそう思う。だが、こっちも無理言って人間よけの結界を手配しているのだ。

その結界の持続時間が1時間半。それ以上は心霊現象としてゴシップ記事に載る。

そうでなくても、最近夜な夜な歩き回る武者の亡霊とか

心霊関係のニュースには過敏になってるんだ。

おかげで俺も動きにくいったらありゃしない。

 

「ダメです。伸ばしてもいいですがその為にはまずソロパートを完璧にしてください。

 申し訳ありませんが、今のままではソロパートは失敗の元かと。

 その為、合奏である先の二曲を選曲したんですよ」

 

「むーっ。私ちゃんと演奏できるよぉー」

 

「……ダメ。セージさんは、多分私達の音の性質のことも考えて言ってる。

 ソロパートは、また今度にしよ?」

 

虹川家長女の瑠奈がふくれる次女の芽留を宥めている。

そう。彼女ら――と言っても長女と次女だけだが――の奏でる音には

どうも特殊な性質があるらしく、それが俺がソロパートを許可できない事情でもあったりする。

 

瑠奈は気分を落ち着かせてくれるがやりすぎて葬式ムードになってしまい。

芽留は気分を高めてくれるがハイになりすぎてえらいことになったり。

里莉は単独ではちょっと個性がなさすぎる。聞いたことのある曲になってたりする。

玲は――アカペラになってしまう。出来ないことはないが、ちょっと物足りなさがある。

 

三女四女はライブとして考えると盛り上がりに欠けてしまう。却下。

長女は盛り上げるべきライブでお通夜ムードとか笑い話にもなりやしない。却下。

次女。実は彼女が一番曲者だ。盛り上がるのはいいんだが、盛り上がりすぎて

観客の幽霊に悪影響が出た時が怖い。その辺の対策が練られれば出来るだけに惜しいけど却下。

 

しっかし、俺音楽プロデューサーとかじゃないんだけどなぁ。

とにかく、俺は機材とかを準備……しようと思ったんだが、ここである重大なことに気づく。

どうやって機材持っていくんだ? でかいものを大量に運ぶとか車みたいなのが必要だけど……

 

「あれ? 機材とかって……」

「いらないわよ? だって私達、実際には手とか使わないで演奏してるもの。

 もう、マネージャーさんなんだからその辺も把握してよ。そもそも、私ら幽霊だよ?」

 

……あ、そうだったのね。楽器持ってたりするのはあくまでもポーズってわけか。

あれ? そういえば、そんなバンドが幽霊じゃなくてマジであったような。

マジで? マジか? マジだ。

さて、これからいよいよ俺のお客様、虹川楽団のショータイムだ。

俺が演奏するわけじゃないんだが、緊張する。

 

――――

 

仕事関係ということで、転移魔法陣は手配してもらえた。

ロケバスみたいなものがあれば雰囲気は出るんだろうが、ちょっと用意できない。

楽屋だけは簡単なテント――体育祭なんかで使うあれ――を借りることができたので

それを使っている。

 

さて、会場のセッティングにリハーサルの立会い、それから会場近辺の警護。

うっわあ、やること多いな。さすがライブ。

 

さて。まずは会場のセッティングだ。しかしよく大学キャンパスなんて用意できたな。

……ん? そういや、例のイッセーの新しい顧客、ここの大学に通ってるって言ってたけど……

 

……ははは。まさか、ね。

 

まあありもしないことを考えていても仕方がない。俺は少し広めに結界を展開する。

姫島先輩に頼んで特殊な結界用の御札を用意してもらったのだ。

本来なら俺の顧客である以上、俺がどうにかするべきなのだが……。

こういう一回限りの使い捨て道具の効果は、記録再生大図鑑では記録できなかったりする。

 

ま、ぼやいても仕方ない。少し広めにとったのは、すし詰めにすると観客が幽霊である以上

変な影響が出ることを危惧してのことだ。昔見た映画でそんなのがあった気がする。

それに、ちょっと広めにスペースを取りたいのは、動員数を考えて、ってのもある。

 

校舎の正門前広場。ここがライブ会場だ。正門前入口に虹川さん達が陣取り、観客は

広場から観るスタイルになる。本当は椅子とか飲み物とか用意したいのだが

まだそこまで予算に入っていない。本当にミニライブって形だ。

 

それでもなんとか開催にこぎつけ、チケットも捌けた。機材は持ち込まなくてもいいなら……

よし、セッティングはこんなもんかな。結界もきちんと張れているみたいだし。

 

「よーし。それじゃセッティング終わりましたんで、リハーサル入りまーす!」

「……わかりました」

「待ってました!」

「よーし、行くわよ!」

「うん!」

 

ステージ前で待機していると、奥から準備を終えたみんながやって来る。

普段とは少し違う、ライブ用の衣装みたいだ。普段より少しフリルが多い気がする。

あれはあれで結構可愛い。そういうのが目当てのお客さんも来るかも。

 

つい見惚れてしまいそうになったが俺は黙って、激励の意味を込めてサムズアップを返す。

次女の芽留がそれに気づいて笑顔で手を振っている。まあ、あの子普段からああだけど。

 

――少女予行演習中...

 

よし。ちょっと四女の玲が緊張してるのが気になるけど、基本的には大丈夫そうだ。

そろそろ開場時間だな、と考えていると思わぬ客がやってきた。

 

――オカ研のメンツだ。

 

「あれ? みんな揃ってどうしたんすか? 今日ここは騒霊ライブの予定ですけど。

 ……まあ、協力してもらった手前、特別席取るくらいはしますけど……演奏者、幽霊ですよ?」

 

「知ってるわよ。セージのお客様がどんな演奏するのか、気になって聞きに来たのよ」

「幽霊の演奏なんて、中々聞けませんもの」

「楽しみにしてるよ、セージくん」

「……飲み物、無いんですね……残念」

「い、イッセーさん……な、何か出そうで怖いです」

「大丈夫だってアーシア。セージのお客さんは害を加えるような奴じゃないって!」

 

ぞろぞろと雁首揃えて悪魔がやってきた。別に帰れと言うつもりもないし言えないが

お客さんがビビって逃げたりしないかな、大丈夫かな、とそれだけ危惧している。

 

一応、適当に挨拶を済ませたあと虹川さんに確認を取りに行く。

そもそも席が無いため、チケットは全て自由席だ。だが、スタッフ関係者ということで

ちょっと特別な席に来てもらっても大丈夫かどうか。念のためだ。

 

「……セージさんの職場の上司の方? 私は、いいけど……」

「私もオッケーだよ! 少しでも多くのお客さんいた方が、ハッピーなライブにできそうだし!」

「私もいいよー。出来たらその人……ってか悪魔か。

 その悪魔さんにも私達のこと、宣伝してもらおうよ」

「き、緊張するけど……私、頑張る」

 

一応、オッケーは貰えた。その旨を伝えるために会場入口へと戻る。

俺の返事を聞いた皆は、先にステージ前に入っていく。

そして俺はその周囲に、おもむろにトラロープを設置する。

 

「お、おい! 何すんだよセージ! これじゃ俺らが……」

「悪い。こっちもお客さんの安全考えて動いてんだ。

 それじゃ聞くけど、皆は幽霊見えるか? あ、俺は実体化してるし幽霊じゃないからな」

 

途端に黙り込んでしまうオカ研部員。一人姫島先輩だけが手を挙げているが。

 

「あらあら。今までセージくんには黙ってましたけど、私も幽霊は見えますのよ?」

「なんと。それじゃ今まで見て見ぬふりしてたんですか」

「うーん、それはちょっと違いますわ。私が見えるのは、既に死んでしまった方の霊。

 セージくんは、生霊でしょう? ちょっと、見え方が違うみたいですの」

 

そういうものなのか? と思いながらも今はそんなことを確認とっている場合じゃない。

俺がこうやってオカ研用座席を用意したのは実に簡単な理由。

 

幽霊との接触事故を防ぐため、である。

幽霊である以上すり抜けたりとかは簡単だが、騒霊ライブとは何が起こるか俺もわからない。

あらゆる可能性に対する配慮は、しておくに越したことはない。

 

「まあ、ライブってのはそういう事故多いらしいからな。仕方ないか」

「理解してもらえて助かる。それじゃ、そろそろ開場時間だから俺はもぎりの仕事に入るよ」

 

俺はオカ研の皆に見送られ、会場入口で待機することになった。

時間になると、結構な数の幽霊がやってきた。その中には、俺が今まで見た幽霊も混じっている。

中には、あのクソ神父に殺されて地縛霊になった幽霊もいた。ここまで来られるのかよ!?

 

そう考える間もなく、幽霊の行列はとどまる所を知らない。

はいはい幽霊だからって押さないでちゃんと並んで並んで。

ふと、周りを見ると怪しげな行動をしている幽霊が。何もないとは思いつつも

記録再生大図鑑を起動、状況を把握する。

 

BOOT!! COMMON-LADER!!

 

……結構便利だなとか思ったのも束の間、その怪しげな幽霊はなんとダフ屋。

おいおい、最近はネット通販の転売ヤーに押されて絶滅危惧種かと思っていたが

ちゃんといたんだな。俺も転売ヤーには泣かされた……のは宮本の方か。

どうもそういう記憶があるみたいだ。

 

とにかく、ダフ屋行為は禁止している。

あまり武力行為には訴えたくないが、こっちは一人で切り盛りしなければならない。

イッセーあたりに場所を変わってもらっても、あいつは幽霊が見えない。

そんな奴にもぎりは任せられない。姫島先輩をこき使うのも気が引ける。

そうした事情からやむなく俺は――

 

SOLID-GUN!!

 

銃を上空に向け発砲、威嚇射撃をした。突然の音に、幽霊もオカ研の皆も振り返る。

 

「はいそこ、ダフ屋は禁止してますよー」

「うわっ、セージの奴結構荒っぽいなぁ」

「セージくん忙しそうだしね……手が離せないんじゃないかな。

 僕やイッセーくんに代わってもらうのもできなさそうだし」

「あらあら。手が離せないなら私に言ってくださればいいのに。

 せっかくのライブなんですもの、あんまり手荒なことをしちゃいけませんわよ?」

 

――すんません。今度から気をつけます。とにかく、ダフ屋の幽霊は慌てて逃げていった。

しばらくすると、何事もなかったかのように入場待ちの行列は前に進んでいった。

 

幽霊の流れが一区切りつき、時計を見ると22時5分前。入場した幽霊の数は……

うん、こんなもんかな。さて、それじゃ今度は虹川さん達のコンディション見に行くか。

俺はもぎりの仕事から、マネージャーの仕事に移行した。

 

――――

 

さっきの空砲の件は、虹川さんにも聞こえていた。

その事については一応頭を下げたとともに、これは今後の課題点として記録しておく。

 

「もぅ、私たちのライブで盛り上げるのに、セージが盛り上げちゃしょうがないじゃない。

 前座なら、ちゃんとステージでやってくれないとー」

 

「……でもセージさん一人に任せるのもちょっと無理があるかもね。

 今度から私たちにもできる事があったらやっていく方向で行きましょう」

 

「じゃあ、誰かやってくれそうな人……ってか幽霊に声かけてみようか。

 特典はファンクラブ会員証ってことで。あ、だからセージはこの間第一号って言ったけど

 会員ナンバーは0だから。そこんとこよろしくね」

 

幻の0番ナンバーですか。まあスポンサー特権ってことにしときますか。

しかし、現実問題誰か一人でも運営スタッフがほしいと思っているのは事実だ。

使い魔的なものがいればそれを活用するって手もあるのだろうが

生憎そんな便利なもの、俺にはない。

ならば、使える手段で回していくより他なかろう。

 

さて、そうこう話しているうちにライブの時間が来た。

俺は彼女らをステージへと送り、ステージ脇からその様子を見る。

 

――騒霊ライブ中...

 

ふむ。結構盛り上がっている。経過は順調だ。

リハで気になった玲だが……特に問題はなさそうだ。

さて、ここで俺はライブ会場の警備に移らないと。

 

レーダーをもう一度確認する。そこには、あまり歓迎したくないものが映し出されていた。

人間の反応が二人に……悪魔の反応? グレモリー眷属は皆会場内にいる。

こんなところに悪魔が? 最悪の事態を考慮し、俺はそっとライブ会場を後にする。

 

EFFECT-HIGHSPEED!!

 

問題はさくっと片付けるに限る。レーダーが示した場所は会場からそれほど離れていない。

つまり、迷い込んだか元々ここに用があったか、どちらかだ。

その先には怪物の大群と……鎧武者と甲冑がいた。

 

もしかしなくても、例のイッセーの顧客さんかよ。

一目見ただけでわかるのはありがたいんだか何なんだか。囲んでいる相手は……

何だか丸っこい、甲虫をそのまま人型にしたような怪物。

外皮は灰色で、アクセントとして青や赤、緑のカラーがそれぞれ入っている。

 

マズい。イッセーの顧客は見た目は強そうでも中身はただの人間。

ここで騒ぎが起きてライブに影響が出るのもマズい。

囲んでいる怪物ははぐれ悪魔か? 全く、俺が出くわすのは見たことのないタイプが多いな!

 

COMMON-LIBRARY!!

 

――ふむ。やはり連中ははぐれ悪魔。元は繁殖力の強い小動物の妖怪だったものが

悪魔の駒の拒絶反応で怪物と化したもの。

理性は失われ、ただ同属を増やすことのみを念頭において活動する。

爪には毒があり、その毒に感染したものは同属と化してしまう、か。

 

……悪魔の駒の犠牲者か。グレモリー部長以下すばらしいアイテムとして扱ってるけど

拒絶反応が出るって、意外と問題点多いんじゃないか?

とにかく、今はそんなことよりも二人を助けないと。

一度実体化させたものは消さない限り、何度でも取り回しできる。

まあ、モノがモノだから危なっかしいといえば危なっかしいが。

 

俺はさっきダフ屋を驚かすのに使った銃を、今度は怪物めがけて発射する。

 

「そこの二人! 俺がこいつらをひきつけるから早く逃げるんだ!

 あ、くれぐれも校舎に向かって逃げないでくれ! 今ちょっと立て込んでいるから!」

 

今の俺の格好が、駒王学園の制服だった事が幸いした。事情を説明する暇が省けたのだ。

甲冑が鎧武者の手を引き、ガシャガシャと音を立ててのろのろとこの場を逃げ去ろうとする。

 

……それ、脱いでいたほうがよかったんじゃないか?

 

あまりにもシュールな光景に俺も怪物のほうも呆気に取られていたが

すぐに体勢を立て直し、互いに向き合う姿勢となる。向こうは数が多い。

せめて、この間の子バイサー程度の力であってほしいが。

おまけに、向こうの爪には毒がある。それを食らえばアウトだ。

 

――ここは、遠距離戦でいくか!

 

俺はまだ加速のカードの効果が残っているうちに、相手を撹乱し射撃によって倒す作戦に出る。

そのためにも、次はこれだ!

 

COMMON-ANALYZE!!

 

射撃の腕に自信はないが、弱点さえわかればそこを撃ち抜けばいい。

相手の近接攻撃に毒がある以上、接近戦は避けたい。うまく行けばいいが。

 

――出た。あの色によって表情も違う顔らしき部分が弱点か。

逆に、背中の部分はダメだ。見た目どおりに硬い部分らしく

射撃でダメージを与えるのは無理そうだ。となると正面から撃ち合うのか。

向こうに飛び道具がないのが幸いしたが、数で補われると辛いな。

どっちにせよ、早く片付けないと!

 

俺は一呼吸おき、怪物の顔めがけて銃を発射する。

奴らもはぐれ悪魔になったことで、祓魔弾が効いている。

本当にあのクソ神父の武器は使いやすいな、武器は。

一体一体、確実に仕留めていくがそれをやるには数が多い。おまけに向こうは思いの他素早い。

今は加速のカードで補えているが、効果が切れた途端不利になる。さて、どうしたもんか。

 

そんな中、一匹が二人の元に向かってしまう。

しまった! 捌き切れなかったか!

こっちが無防備になるが仕方ない、あっちを先に始末しないと!

 

「ダメだ、二人とも伏せろ!」

 

俺がそう叫んだ直後、はぐれ悪魔はぐったりと地に伏していた。

よく見ると、甲冑の方が槍ではぐれ悪魔の頭をぶち抜いていたのだ。

鎧武者の方も、弓矢で怪物を蹴散らしている。

 

……あのーもしもし? あなた方、人間ですよね?

しかしその意外な戦いぶりたるや、まるで本物の戦国武将や西洋騎士の如く。

この光景を見て、俺の中の何かの血が滾ってきた。

 

そこの二人が戦国武将に西洋騎士ならば、こっちは三国武将で行くべきか、と。

なぜそう思ったのかはわからないが、なんとなくそんな気がした。

と言うか、三国志の時代に銃なんてあったっけか!?

諸葛孔明がはわわと叫んだりやわらかくない人間がいるトンデモ三国志ならともかく!

 

何故か、俺の頭の中には銅鑼の音と、季節ではないのだが

「ブドウ食べたい」と言う思いが去来していた……。

 

――――

 

意外な協力者のおかげで、はぐれ悪魔の討伐には成功した。

俺は二人の協力者を称えるべく、彼らの元に歩み寄るが……

 

「「こ、怖かったぁ~」」

 

おい。その格好でそんな台詞言われても説得力に欠けるっつーの。

とにかく、犠牲者は出てないしライブも……と、思った矢先に

俺は片隅にある札を見て愕然とした。

 

あーっ!! ここ、思いっきりライブ会場じゃないか!!

戦闘でこの二人を庇いながら戦ってたからいつの間にかこっちに来ていたのか!!

やばい……今回の俺の仕事内容はライブの成功。

それなのに、はぐれ悪魔討伐のほうを優先させてしまっていたとは。

 

……な、なんてことだ。すまない、すまないみんな……!!

せっかくの初ライブを、こんなにしてしまって……!!

がっくりと膝を付く俺を尻目に、全身鎧のカップルは二人の世界に入っている。

ああもう、あんたたちが無事ならそれでよかったよ。

だからいちゃつくのは俺の目の届かないところでやってくれ……

 

「素敵な音楽だね、スーザン……」

「素敵な音楽ね、堀井くん……」

 

あーもう。脳内BGMまで流しやがって。人の気も知らないで。

 

「まさか、悪魔さんにまた助けられたと思ったら

 こんな素敵なライブ会場があるなんて思わなかったわ」

「僕も驚いたよ、まさか通っている学校で、夜にこんなライブが行われていたなんて」

 

おまけに鼓笛隊まで完備かよ。こっちはそのライブを大失敗させたって言うのに……ん?

何かがおかしいと思った俺が頭を上げ、恐る恐るステージのほうを見てみると――。

 

――大歓声を上げる幽霊たちと、楽器を手に激しく盛り上がっている虹川楽団がいた。

 

え? え? どゆこと? え?

だが二人に聞くのも憚られた俺は、慌ててステージ袖に戻っていき

こっそり事情を聞くことにした。

 

そして俺の耳に入ったのは、とんでもない言葉だった。

 

「もぅ、セージってばあんなサプライズあるなんて聞いてないよ!

 私たちにまで黙ってたなんて、セージはドッキリ仕掛ける才能があるわね!」

 

「いやぁ、初めて見たときはイケメンじゃないからって侮ってたけど

 まさかあんなPVにそのまま使えそうなアクションできるなんて、すごいじゃない!

 これで私らのPVも演出の幅が広がるわね!」

 

「……あの二人にも、聞こえてたみたいです。きっと、霊感が強いのかと」

 

「何かのヒーローみたいだったよ、セージさん!」

 

……あー、なるほど。大体理解できた。

俺がうっかりはぐれ悪魔との戦闘をライブ客席付近で行ったせいで

演出だと思われたわけだ。まあ、ショーとかで客席から出てくるって演出もあるし。

その方向性だと観客も思ったらしい。

 

結論。ライブは大成功。しかもなんかPV作る話まで出てきてしまってる。

虹川楽団。君らは一体どこへ行こうとしてるんだ。

 

――――

 

とにもかくにも、契約は成立。

報酬として、差し入れとしてもらったオレンジ、バナナ、ブドウ、メロン。

これらフルーツの盛り合わせをもらう事になった。

曰く「私ら幽霊だから現世の食べ物は食べたくても食べられないし。

気持ちだけでおなかいっぱい」だそうだ。

 

これらフルーツはオレンジ以外はほぼ塔城さんが食べていた。俺もブドウを食べている。

どうも彼女、柑橘系はダメらしい。逆にキウイは好きとの事なのだが……猫?

メロンだけは高級品ということでイッセーが目を輝かせていたが。

 

おまけに今回のライブでファンが急増、有志による運営スタッフが結成されることになった。

そのリーダーとしてまたしても俺が任命されたが

サブリーダーにはなんとあのクソ神父に殺された地縛霊が就くことになった。

聞けば、ライブの曲を聴いているうちに恨みとかが無くなり

折角だから彼女らの役に立ちたいとの事。

もう地縛霊じゃなくなったとはいえ、成仏の道からは遠くなってるんだが。いいのかこれ?

 

そんなこんなで案外丸く収まったが、それ以上にグレモリー部長からの追求が酷かった。

 

「セージ。随分と依頼以外の仕事にご執心ね。前にも言わなかったかしら?

 悪魔の仕事は人助けじゃない、と」

「……お言葉を返すようですがグレモリー部長。今回は襲われたのも我々の顧客。

 人助け云々ではなく、今回は以前の事件の再発防止としては上場の成果かと」

 

悪いが、今回は引き下がるつもりはない。こういう商売は顧客第一だ。

それはグレモリー部長も把握している、そう思いたい。

ならば、顧客を守るのは我々の役目ではないのか。顧客に自衛能力があるならいざ知らず。

否、あったとしてもアフターフォローは必要ではなかろうか。

 

「ふむ、まあそれもそうね。

 けれどセージ、必要以上にサービスを提供するのは喜ばしいことではないわ。

 悪魔が何かを齎すには、相応の代価がないといけないの。

 代価もなしに齎すのは、重大な契約違反よ。それもまた、覚えておいてちょうだい」

 

「……一応、頭の片隅に入れておきましょう」

 

気のせいか、グレモリー部長がピリピリしているようにも思えた。

とりあえず、俺はやるべきことをやったんだ。後悔はしていない。

 

そして、俺が、俺たちがそのグレモリー部長がピリピリしている原因を知ることになるのは

この少し後の話である――。




今度こそ、第一章「旧校舎のディアボロス」編終了となります。
お付き合いくださいまして、ありがとうございました。

今回のネタに関してですが……

鎧武者に甲冑(原作8巻より)と来たら、やるしかないでしょう!


  鎧  武  ネ  タ  !  !


と言うわけで今回鎧武ネタをふんだんに使ってます。
セージがミッチポジになってしまったのはご愛嬌。
貴虎ニーサンは「銃は主義じゃない」っておっしゃってましたので……

そして、今回戦ったはぐれ悪魔。
どう見てもインベスです、ありがとうございました。
そして、今回結構今後に絡みそうなネタも含んでいたりします。

お陰で虹川姉妹の影が薄くなってしまいましたが……
彼女らは彼女らでまた再登場の予定があります。たぶん。

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