ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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特別編なのにアーリィさんの出番が少ない! 詐欺だ!

……とセルフツッコミをしつつ今回は恒例の事後処理編。
筆が乗った+今までサボってた分の埋め合わせをすべく突発投稿です。


Special15. 思惑

――駒王警察署、会議室。

 

「……それでは、あの日からイッセーは……」

 

「……ええ。俺も助けようとはしたんですが、力及ばず……」

 

兵藤夫妻に、セージが今までの顛末を話していた。

何故イッセーが悪魔になったのか。

いつイッセーが悪魔になったのか。

そして、アーシアが兵藤家にやって来るようになった本当の理由。

 

「アーシアちゃんも悪魔だなんて、俄かには信じられないわね」

 

「今まで黙っていて、ごめんなさい。

 私が悪魔だと知られたら、受け入れてもらえないと思ったもので……」

 

「そんなわけないじゃない。アーシアちゃんはアーシアちゃんよ。

 イッセーもそのつもりなんだけど、あれはそれ以前の問題ね……」

 

「全くだ。もう少し厳しく接するべきだったと、今更ながらに後悔しているよ……」

 

アーシアが悪魔だと言う事も、既に知られている。

というより、アーシア自身が話したのだ。

そして、最近になって付き合いの増えたイッセーの周囲の人物の

その大半が悪魔だと言う事も。

イッセーについても、アーシアと同じスタンスで接するつもりだったのだろうが

それ以上にやらかしたことが大きすぎて

両親でさえどうすればいいのか悩み込むほどであった。

 

それから、イッセーを攫ったのが冥界――悪魔の住む場所の魔王であると言う事も。

 

「それより一体、あれはイッセーを攫って何をしようとしているんだ……」

 

「そこまでは。ただ、さっき話した通り兵藤君の神器(セイクリッド・ギア)に原因があるというのが

 俺の見立てです。あくまでも主観ですが」

 

「そんなに凄いものを持っているんですか?」

 

イッセーの母の問いかけに、セージは首を横に振る。

確かに、三大勢力にとって赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)は喉から手が出るほど欲しいものかもしれない。

しかし、日々を平和に過ごす人々にとっては全く無用の、それどころか

邪魔にしかならない代物なのだ。こうして騒動を引き起こしている時点で。

 

「少なくとも、人類にとっては害悪以外の何物でも無いと俺は考えてます。

 それに、あの怪物になり果てたのもその神器が……神器に宿るドラゴンが原因です」

 

「そうか……」

 

俯き、考え込んでしまうイッセーの父。

一頻り考え込んだ後、答えを出したように言葉を紡ぎ出す。

 

「母さん。悪いが私はやはりテレビの言う事が正しいと思えるよ」

 

「あなた!?」

 

「いや、勿論宮本君やアーシアちゃんが悪い奴だなんていうつもりはこれっぽっちもない。

 しかし、話を総合すると堕天使の都合でイッセーは殺され

 イッセーを助けたのだってその神器とやらがあったから、と取れなくもない。

 そういう所が悪魔らしいと言えばらしいのかもしれないが

 普通に暮らしている私達にしてみたら、たまったものでは無いよ」

 

「それは……そうですけど……」

 

「それに、神器とやらにしたってそうだ。

 生まれた時からすべてが決まっているかのような存在は気に入らない。

 まるでイッセーが怪物になる事を宿命づけられたようなものじゃないか。

 私には、到底受け入れられるものでは無いよ」

 

「アーシアちゃんは人を癒す力だというのに、どうしてイッセーは人を傷つける力を……

 そう考えれば、確かにあなたの言うとおりね……」

 

ふと、扉をノックする音が響く。

声とともに入って来たのは作務衣姿で味噌汁を携えてきた大日如来に

和服姿の天照だった。

突然入って来たテレビの俳優に、兵藤夫妻は目を丸くする。

 

「あ、あの……」

 

「大日如来様、天照様!?」

 

セージが思わず立ち上がるが、天照が席に着くように促す。

 

「まずは一息入れてはどうだ? それとお二人は初めて目にかかるな。

 既に知っているような雰囲気でもあるが、改めて名乗らせてもらえば――

 

 俺は天の道から寛く世界を見渡す者……天道寛(てんどうひろ)だ」

 

「私は天照大神。この日本において、主神を勤めさせていただいているものです。

 そしてこちらの天道寛。またの名を大日如来。仏教でも最高位に位置する仏です」

 

その挨拶には、兵藤夫妻も慌てふためいていた。

何せ、自分達の国で一番偉いともいえる神様が目の前にいるのだから。

 

「まず、あなた方に謝らなければなりません。確かにあなた方の願いは聞き届け

 子供は授けましたが、その後の事については……」

 

兵藤夫妻は神頼みもしてイッセーを授かったのだ。

しかしそのイッセーは、二人の願いとは真逆の方向へと成長してしまった。

その件について、天照は頭を下げていた。

 

「そ、そんな! どうか頭を上げてください、神様!」

 

「そ、そうです! それはむしろ私達親の責任です!」

 

人間である兵藤夫妻には、神を敬ったところでペナルティが課せられるわけでも無い。

その事もあり、さっきから平伏していたのだが

天照が頭を下げたことに狼狽してしまっていたのだ。

 

「皆落ち着け。まずはこの味噌汁でも飲んで落ち着くんだ。

 冷めないうちに飲んでくれ」

 

事態を収拾しようと、大日如来から手製の味噌汁の差し入れが入る。

尤も、それはそれで「天道寛から味噌汁を頂いた」として

兵藤夫妻の驚きを招くことになったのだが、それは別の話。

 

味噌汁を飲み終えた後、彼らが何故やって来たのかという本題が切り出された。

それは「赤龍帝の関係者でもある兵藤夫妻の保護」を神仏同盟が申し出てきたのだ。

赤龍帝の関係者と言う事で、禍の団や三大勢力に狙われる可能性は非常に高い。

それ故に、身辺保護が必要になっているのだ。

 

「勿論、この町、ひいては日本に住むすべての人は保護の対象です。

 その中の一組として、あなた方の身柄を我々で保護させていただきたいのです」

 

「勿論、決めるのはそちらだ。先程の味噌汁は深く考えなくていいぞ。

 あれは話を円滑に進めるために俺が振る舞ったものだ」

 

「どうします? あなた?」

 

「イッセーには悪いが、この方々の申し出を受けよう。私には悪魔は信用できない。

 天道さん、いえ大日如来様、天照様。お申し出を受けさせていただきます」

 

その言葉を聞き、天照の顔が明るくなる。

こうして、兵藤夫妻の身柄の安全は約束された。だが――

 

「……それと並行して、今我々は未知の怪物への対策を行っている」

 

「アインストの事ですか」

 

「ええ、それで申し訳ないのですが、お二人には検査を受けていただきたいのです。

 アインストに変貌してしまった事がある以上

 その影響がどれほどあるかどうかも確認したいですし……」

 

神妙な面持ちで語る天照に、兵藤夫妻は一も二もなく首肯する。

 

「それ位でしたら。私達もいつまたああなるか、実のところ不安でしたし……」

 

「これ以上、アーシアちゃんや宮本君に迷惑はかけられません。

 こちらこそよろしくお願いします」

 

兵藤夫妻もまた、被害者であったのだ。

アインストの脅威は一先ず去ったものの、まだウンエントリヒ・レジセイアは残っている。

彼が消えない限り、アインストの脅威は完全に払拭されたとは言えない。この世界では。

天照に促され、退室する兵藤夫妻を見送るセージとアーシア。

 

「さて……それで少年。お前も自分と向き合う時が来たようだな」

 

「…………」

 

大日如来が指し示す事。

それは、アーリィが伝えた「アモンがセージの家族、並びに憧れの人である牧村明日香と

遭遇してしまっている」事態に対する、セージからの説明の必要性であった。

 

――――

 

――冥界・堕天使領。

 

「……サーゼクスのバカが。あれじゃ神仏同盟に喧嘩売ってるようなもんだぞ」

 

「ひいては日本に住む人間達に、ですけどね。

 しかし困りましたね、とばっちりが来なければいいんですが」

 

アザゼルの入院している病院。

アザゼルにも、今回の顛末は伝えられていたのだ。

いいニュースとしてはアインストは女王蜂とも言うべき頭を叩けば

無力化できることが判明したこと、人間が対アインスト用の武器を開発したことが挙げられるが

それを帳消しにするくらいの悪いニュースが入って来ていたのだ。

 

まず駒王町の6~7割が被害を被った事。

魔王によって赤龍帝・兵藤一誠が連れ去られた事。

そして今回の事件のそもそもの原因は悪魔勢力に集約される事、が挙げられる。

ここに来て、アザゼルは悪魔との和平や同盟を結ばなかったことを安堵していた。

今回の悪魔の失態のとばっちりが来かねないからだ。

 

「相互不干渉で話がついてるからそこは突っぱねればいいだろ。

 こっちだけでも大変だってのに……ああ、それとヴァイスリッターだったか?

 あれも完全にアインストの戦力にされたそうじゃないか。

 報告じゃ、悪魔側のアルトアイゼンとつるんでヴァーリにも痛手を負わせたとか」

 

「ええ。この件についても頭が痛い所ですね」

 

「……ったく、何でこんな事になっちまったんだろうな……」

 

「少なくとも、現悪魔政権みたく『面白おかしく』で世の中は回りません。

 あなたとてそれは理解しているでしょう? そもそも我々堕天使は……」

 

「あーはいはい。まだ義手が馴染んでない病人なんだから説教は勘弁してくれよシェムハザ」

 

気怠そうに文句を言うアザゼルを無視して、シェムハザの小言は続く。

末端の堕天使はこういうだろう。「悪魔と関わったのが運の尽き」だと。

しかし三大勢力はそれぞれの均衡があって初めて成り立っているほど不安定なものである。

先の会談で相互不干渉が提言されたというのに

悪魔勢力はそれを不平と言わんばかりに不穏な動きを見せている。

 

「……そもそも、あなたの義手だって当初の予定では『何その兵器』な代物だったでしょう。

 三大勢力の情勢が不安定な中で何やってるんですか。

 神器の件みたく、戦争を企てていると思われても文句は言えませんよ」

 

「趣味にまで文句言われるとか……ホント最悪だ」

 

シェムハザの小言は、小一時間ほど続いた。

少なくとも、現堕天使上層部は駒王町の件に関しては一切関与しない構えだ。

今行っていることといえば、クロスゲートの監視とアインストに対する自衛行動のみ。

それ以外は、バルディエル――元バラキエルの捜索や

禍の団(カオス・ブリゲート)に内通している堕天使がいないかどうかの調査ばかりだ。

 

「とまあ、小言はこの位にしておきましょう。それはそうと。

 

 ……レイナーレと言う堕天使をご存知ですか?」

 

「あー……どっかで聞いたな……えーっと……」

 

「先日拘束した禍の団の内通者を尋問したところ、その名前が出たもので。

 彼女、赤龍帝を目覚めさせるきっかけを与えた存在だそうですが……」

 

レイナーレ。その名前がシェムハザの口から出た時

アザゼルは露ほどにも気に留めなかったが

赤龍帝を目覚めさせるきっかけを与えた存在と言えば話は別だ。

寝ぼけた様な表情をしていたアザゼルが、打って変わって真剣な面持ちになる。

 

「……あん? そりゃマジかよ。赤龍帝が目覚めた時期っていやあ

 人間の時間で言えば今年の4月……そういや、サーゼクスの報告書にもあったな……」

 

「報告書にはきちんと目を通してください」

 

「そう言うの嫌いなんだよ。えーっと確か……」

 

左手で頭を掻きむしりながら、アザゼルが何かを思い出そうとしていた。

見かねたシェムハザが懐からタブレットを取り出し、資料を出力する。

 

「『赤龍帝に接近し、神器『赤龍帝の籠手』の排除を試みようとするも

  神器『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』をめぐる事件において駒王町内で独断専行が見られた。

  下級堕天使3名とはぐれ悪魔祓い数名を私兵として投入するも

  リアス・グレモリーの眷属らによって全滅させられ

  本人も赤龍帝によって重傷を負わされ、以後消息不明となる』――

 

 あん? そんな奴の名前がどうして禍の団の奴の口から出るんだよ?」

 

「そこまでは調査中ですが……おそらく、計画の失敗で自棄を起こし

 禍の団に転がり込んだと考えるのが妥当かと」

 

「……うちにも問題は山積みって訳かよ。捕まえ次第落とし前つけさせないとな、そいつには」

 

左手で頭を抱えながら、アザゼルは不貞寝の姿勢に入ってしまう。

 

「言ってるそばから不貞寝ですか」

 

「そうでもしなきゃやってられねーんだよ」

 

そのまま不貞腐れてしまったアザゼルを前に、シェムハザは肩を竦めるしかなかった。

 

――――

 

――冥界、悪魔領。

 

「……サーゼクス。これは一体どういうことだい?」

 

いつもの事ながらも、非常に面倒臭そうな顔をしながらファルビウムがサーゼクスに詰め寄る。

先日連れ帰った、氷漬けになったイッセーの件に関してだ。

 

「ディオドラがやらかしてくれた件で神仏同盟から事情説明の要求が

 『な・ぜ・か』僕のところに来たんだけど。めんどくさいから帰ってもらったけど」

 

「……赤龍帝を失うわけにはいかない。それだけだ」

 

「俺が言えたことじゃないが、今はあまり私情を挟まない方がいいぞ。

 尤も、こうして連れ帰って来てくれたことに関しては『よくやった』と褒めてやるが」

 

セラフォルーに依頼し、イッセーを連れ帰ってきたことに関して

ファルビウムとアジュカに詰め寄られている。

サーゼクスが何を思ってイッセーを連れ帰ったかははぐらかされたものの

アジュカは「赤龍帝」という研究材料を見つけたことで内心嬉々としていた。

 

「それでサーゼクスちゃん、どうやってその子を生き返らせるの?」

 

「それについては、リアスが帰って来てからやってもらうよ。

 なんだかんだ言っても、彼はリアスの眷属だ。

 どこぞの裏切り者とは違う、正真正銘のな」

 

「その事なんだけどさ……そのいけ好かない方の彼?

 

 ……憑いてるみたいだよ? 『アイツ』が」

 

「……マジで? ねぇサーゼクス、僕魔王から降りていいかい?

 正直ここまでめんどくさい事になるとか想定外なんだけど。

 インベスやアインスト、クロスゲートだって想定外なのに

 その上アモンに脱走されたらこれ以上ない面倒になりそうなんだけど」

 

アモン脱走の報せを聞き、ファルビウムはさらに面倒臭そうに

サーゼクスに対して魔王からの辞退を提言するのだが

サーゼクスは聞く耳を持っていなかった。

 

「アモン……フフッ、ハハハハハハハッ!

 ちょうどいい、リアスの眷属でありながらリアスに牙を剥いた愚か者には

 相応しい罰が与えられそうだよ。アモンが憑いているとなれば好都合。

 禍の団にベオウルフと問題は山積みだけど

 アモンには借りを返さなければならないからね」

 

「ファルビーちゃん。ここまで来たら一蓮托生、だよっ☆」

 

「……やっぱそうなるよね。あーめんどくさ……」

 

セラフォルーの言葉に諦観したかのように、ファルビウムは欠伸を噛み殺しながら

自分の仕事場へと戻っていく。そこではイェッツト・トイフェル司令のギレーズマが

小言を言いに待ち構えていることを知っている。

ただ友人と面白おかしくやれればそれでよかったはずなのに

魔王になってから真逆の事ばかりが起きる。

ファルビウムは、この状況に嫌気がさしていた。

 

彼らは気づいていなかった。

リーダー格である男が、かつて自分達が武力をもって打ち破り

魔王の座を奪い取った存在と同質の存在になろうとしていることに。

 

彼らは確かに主義主張は旧魔王派と異にしている。

しかし、感情のままに動くその様は旧魔王派と然程変わらない。

その方向性が、ただ違うだけなのだ。

 

――――

 

その一方、そのファルビウムに小言を言いに待ち構えていたイェッツト・トイフェル司令

ギレーズマ・サタナキアも人間界で起きた出来事に驚きを隠せないでいた。

 

「……これは流石に予想外だな。アインストの対処法が練られそうなのは吉報だが」

 

「人間がアインスト対策の武器を開発するとは思いませんでしたが。

 しかし、その人間界でディオドラが大きくやらかしてくれた以上

 我々にその武器を譲渡してもらえることは万が一にも無いでしょうな」

 

ディオドラの行いに嘆息しながら側近のハマリア・アガリアレプトが言葉を紡ぐ。

どういう経緯で彼らが人間界の情報を得ていたのか。

それはセージの実体化させた身体に取り付けていた発信機によるものである。

今となっては本物の身体を手に入れた際に外れてしまっているが

そこに至るまでの経緯――アインストとの戦いやディオドラの大まかな顛末――までは

イェッツト・トイフェルも情報を掴んでいたのだ。

 

「……そして、アモンか。また面倒なものが出て来てくれたものだな」

 

「……はっ。現魔王政権の敵に違いはありませんが、我々にも牙を剥く事も考えられます」

 

そもそも、アモンは何を思ってサーゼクスらを裏切ったのか。

それとも、サーゼクスがアモンを裏切ったのか。その真意は当事者のみぞ知るところであり

アモンの情報までは掴んでいなかったイェッツト・トイフェルはその辺りは出遅れた形となった。

 

「だな。ではハマリア。貴公はアモンについての情報を集めたまえ」

 

「承知いたしました。

 それと、ウォルベンからの『セラフォルーが赤龍帝を連れ去った』との情報ですが……」

 

ハマリアに届いた人間界で密偵を行っているウォルベンからの情報。

それは、イッセーを連れ去ったセラフォルーに関する事であった。

 

「最後の通信記録では、暴走は契約解除と言う形で収まったそうだな。

 それを連れ去ったと言う事は……

 

 ……サーゼクスめ。赤龍帝を抑止力にでもするつもりか?

 自身の存在の方がよほど抑止力だと言うに」

 

「或いは、外交のカードにするつもりかもしれませんな。

 セラフォルーにそこまでの知恵があるかどうかはわかりかねますが。

 

 ……では司令。手筈通りに私はアモンの情報を収集してまいります」

 

「うむ。頼むぞ」

 

ハマリアと入れ替わりに、げんなりした顔でファルビウムが入って来る。

これから起こるであろうことを、全て見越しているかのように。

 

――――

 

――駒王警察署、会議室。

 

「……そうだアモン。何でそれを早くに言わなかった?」

 

『聞かれなかったってのもあるが、それをいちいち言えた状況だったか?』

 

「ぐっ……!」

 

セージは、思わずアモンに詰め寄っていた。

何故なら、アモンはセージの身体に憑依した直後に

セージの母親や、セージの憧れの人である牧村明日香に出会っていたのだ。

 

「アーリィさん。それじゃ、母さんや姉さんは俺にアモンが憑いているって……」

 

「そこまではわかりませんけど、アモンさんがあなたのお母さんやその『姉さん』に

 お会いしたのは間違いのない事実です」

 

その事を聞いたセージは、事情を打ち明けようと思わず警察署を飛び出そうとしていた。

フューラーの演説の事は知っている。それでも、真実を打ち明けなければならないと思ったのだ。

そうしなければ、後悔することになる。そうセージは考えたのだ。

 

「セージさん! 一人では……」

 

「気持ちはありがたいですが、これは俺の家族の問題。アーリィさんは……」

 

「いえ、私もあなたのお母さんとお話をさせていただいたことがあります。

 多少なりとも、お手伝いができるかもしれません。

 それに、私はこれでもシスター……」

 

「あ、うち仏教なんで」

 

「あうう……」

 

シスターと言う己の身分でセージの母親の説得に参加しようとしたアーリィだったが

セージの一言に思わず肩透かしを食らってしまっていた。

 

「……なら、仏教の出身である俺からアドバイスだ。

 アーリィと一緒に、家族のところに帰るんだ」

 

そこに口をはさんだのは、天道寛。

大日如来である彼にそう言われては、セージも従わざるを得ない。

意地を張っていてもどうにかなる問題ではない。

その事を見越してか、大日如来はアーリィの同行をセージに勧めたのだ。

 

「……わかりました」

 

「ありがとうございます、ヒロさん」

 

あの戦いの後、アインストもインベスもその姿を見せなくなった事もあり

セージとアーリィは揃ってセージの実家へと向かう事になった――

 

――のだが。

 

「ちょっと待つにゃん。お兄さんに実家に行くなら私も行くにゃん」

 

「……姉様だけだと話がややこしくなる気がします。私も行きます」

 

警察署を出発しようとしていた二人のもとに、黒歌と白音が来たのだ。

その雰囲気は、やや押しかけ女房のそれに近いものがあった。特に黒歌。

 

「黒歌さんはともかく、白音さん。グレモリー部長はいいのか?」

 

「……今は待機と言う名の自由行動中です。

 少なからずイッセー先輩の件が影響しているのは間違いないですが

 私には、言っちゃなんですが関係ないですので」

 

連れて行かないとまた面倒になるとセージが判断したことと

家にいる猫の相手をさせようというセージの目論見の元

二人もセージについていくこととなった。

 

「それじゃ、アーシアさんちょっと行ってくる」

 

「はい、どうかイッセーさんのご両親みたいなことにならないようにお祈りし……いたっ!」

 

祈りをささげるなり、頭痛に苛まれるアーシア。

苦笑いを浮かべながら、セージは三人と共に実家へと向かうのだった。




天界はこの件に関しては静観です。
来たとしてもそれはそれで騒動の種になりそうですが。

>冥界
赤龍帝のネームバリューを当てにしてます。
ギレーズマが言う通り、サーゼクスの方がよほど抑止力ですが
赤龍帝に抑止力としての要素を求めています。

正直、魔王達が原作で隔離結界行きしたのって
「スペック的に扱いきれないから体よく退場させた」
風に感じられる気もするんですよね。
狂言回しとしても機能するアジュカだけ残して。
……そう思うのは私だけ?
因みに拙作でのベオウルフのアインスト化はこの「スペック的に~」の部分も含めてます。
いやだって普通に危険因子ですやん。
強すぎる力は己をも滅ぼす、って事で。

>堕天使
コントやってますが言ってる事は割と真面目。
アザゼルの義手は当然普通の義手。原作仕様になどさせませんよ。
そして懐かしい名前が。アニメではトラウマ()刺激に復活(?)してましたが
拙作でも意外な形で再登場する……かも?
あ、アインスト化はしないです。そんななんとかの一つ覚えみたいな。

アインスト化は他のところで使いたいですし(ぇ

>兵藤夫妻
神仏同盟の保護下に入りました。
あとアインスト化の後遺症が無いかの検査も兼ねて。
本当にイッセーは親不孝だと思うんです。
もの(豪邸やら何やら)で釣るって愛情としては割とアレな部類に入ると思うんですけどね……
少なくとも、情愛()を謳う悪魔の眷属がやる事か? って気はしないでも。

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