ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

131 / 151
大変長らくお待たせいたしました。
その割にはクオリティが今ひとつかもしれませんが
現時点での出来得る限りは出来たと思っています。

なお、引き続き次回更新予定は未定とさせていただきます。


Special8. 再会

前回までのあらすじ

 

冥界への里帰りを終えたリアスらオカルト研究部を待っていたのは

禍の団(カオス・ブリゲート)による攻撃を受け荒廃した駒王町だった。

時を同じくして同様に駒王町に戻ったセージ、白音、黒歌もまた

荒廃した駒王町を目の当たりにする。

 

禍の団の英雄派に所属するフューラー・アドルフの手によって

天使や悪魔、堕天使と言った三大勢力の存在や

神の不在までも暴露され、悪魔の支配下に置かれていたと言ってもいい駒王町には

疑心暗鬼の空気が漂い、それが復興の妨げとなっていたのだ。

 

悪魔契約の恩恵が一切失われた駒王町を舞台に、イッセーをはじめとするオカ研の面々が苦悩する中

新たに超特捜課(ちょうとくそうか)の一員となったセージ達はクロスゲートを介して異世界から来たシスター――

アーリィ・カデンツァと合流。フリード・セルゼンとの戦いを交えながらも

木場やヴァーリとも合流し、着々と戦力を充実させていくのだった。

 

そして、荒廃した駒王町を舞台にした戦いは心の支えを失い力に溺れるかのように

龍殺しの聖魔剣(アスカロン)を振り回す紫藤イリナの参戦や

人間社会に巣食う人間と言う名の悪魔――指定暴力団組織・曲津組(まがつぐみ)と契約している

ディオドラ・アスタロトの本性が暴かれるのを皮切りに

重大な局面を迎えようとしていた――

 

――――

 

「い、イッセー……」

 

「そ、そんな……!!」

 

「う、嘘だろ……!?」

 

ディオドラの合図で呼び出されたのは、アインストグリートの触手で縛られた

行方不明になっていたはずの兵藤夫妻――

 

すなわち、イッセーの両親であった。

 

「どうだ赤龍帝! 嬉しいか? 嬉しいだろう?

 ほら、もっと僕に感謝するんだ!」

 

「っざけんなぁ!! 今すぐ父さんと母さんを離せ!!」

 

二人の命運は自分が握っていると言いたげなディオドラに対し、イッセーが吼える。

一時は死亡したとも思われていた兵藤夫妻だったが、今こうしてここにいる。

ところが、二人はディオドラの手に落ち、こんな形での再会を強要されていたのだ。

 

「ど……どうしてイッセーがこんなところにいるんだ……

 それにイリナちゃんまで……こ、これは一体……?」

 

「知りたいか? 知りたいよねぇ? けれどそれを知っても

 君たちはそいつの両親でいられるか?

 ククク……それでもいいなら、言っちゃうけどさぁ……?」

 

ディオドラの言っていることは、イッセーの身の上をばらす事である。

今までリアスの手によって隠蔽されていたが

イリナと言う情報源を得たことで隠蔽はもはや意味をなさなくなっていた。

 

「や、やめろぉ!!」

 

イッセーにとって、両親に自分が悪魔だと知られるのは避けたいところだった。

この二人こそ、彼が人間であった証左となる数少ない存在なのだ。

既に松田と元浜、桐生の三人はイッセーと袂をわかってしまった。

特に桐生は、女性としての尊厳を穢される形で悪魔の餌食となってしまい

直接イッセーと関わってはいないものの、イッセーが悪魔だとバレた現時点では

とても友好的な交友は望めないだろう。

 

そんな環境で、その上さらに両親にまで悪魔であることがバレようものなら

イッセーの人間としてのつながりは完全に断たれてしまう。

オカ研の面々は、全て悪魔としての繋がりなのだ。

 

ただ唯一の人間としてのつながりを持つセージでさえ

彼自身の目的のために、最悪イッセーを亡き者にしようとしているのだから。

 

「へぇ。今更何人間に拘っているんだか。

 悪魔としての力、赤龍帝としての力。その恩恵に存分にあやかって来たじゃないか。

 もう人間なんて捨てればいいじゃないか」

 

「出来るかよ! そこにいるのは俺の父さんに母さんなんだぞ!!」

 

イッセーが両親を助けようと、ディオドラに飛び掛かろうとするが

その寸前で兵藤夫妻を締め上げる触手の力が増す。

それに普通の人間である兵藤夫妻が耐えられるはずもなく、悲鳴を上げる。

その悲鳴を聞き、イッセーは飛び掛かろうとした足を止めざるを得なくなった。

 

「ディオドラ! あなたそれでも貴族なの!? 一般市民に危害を加えるなんて……!!」

 

「貴族だからさ! 一般市民など、貴族に尽くすだけの存在だろうが!

 リアス、君も知らないとは言わせないぞ!

 君が得ている寝食が誰のおかげで成り立っているのかを!

 一般市民など、所詮その程度の存在! 僕らに尽くすためだけの存在だ!」

 

「だからこそよ! ディオドラ、あなたのしていることはそれを蔑ろにしていることよ!」

 

リアスもまた、貴族としてディオドラの在り方を糾弾する。

実情はどうあれ、情愛を掲げるリアスないしグレモリー家として

ディオドラの行いは到底許せるものでは無かったのだ。

 

「ふーん……そんなにこの人間が大事なのか。

 じゃあ解放してやらないことも無いけど……

 態度ってものがあるよねぇ? さあ、今からやる通りにするんだ。何簡単な事だよ。

 

 ……両膝と両手、額を地面につけるんだ。どうしたんだ、早くしろよ」

 

「…………っ!」

 

ディオドラが指し示しているのは、即ち土下座である。

彼は人質解放のために、リアスに土下座を要求しているのだ。

貴族でもあるリアスにとって、同格の相手に土下座をするというのは

矜持に関わる事でもある。

 

「それとも、僕がいつも眷属に対してやっているようにして欲しいか?

 そっちの方がもっと酷いと思うけどなぁ?

 僕は優しいから、そっちは提示しないでおいてあげたんだよ。

 いいんだよ別に? やりたくないんならやらないでも。ただこいつらは返さないけどね。

 

 ……それとも、僕がいつも眷属に対してやっているようなことを、君はしたいのかい?」

 

ディオドラが眷属――篭絡したシスターに対して行う事。

それはつまり、女性としての権限を踏みにじるような形での行為の要求である。

その意図を少なからず察したリアスは、顔を紅くしながら奥歯を噛みしめる。

そんなリアスへの挑発が絶えず続く中、おもむろにイッセーがディオドラの前に立つ。

すると、ディオドラの目の前で土下座を始めたのだ。

 

「その二人は俺の両親なんだ! 頼む、助けてくれ!」

 

「い、イッセー……」

 

土下座をしてまですがるイッセーだったが

そんなイッセーをディオドラは興味なさげに一瞥するだけだ。

 

「……はぁ? 虫けらの土下座なんか見てもしょうがないんだけど。

 お前が赤龍帝だってことを置いておくにしたって

 お前みたいな奴は地べた這い蹲ってるのがお似合いなんだよ。

 魔力も碌に持たない下級の転生悪魔君」

 

吐き捨てるようにイッセーに罵詈雑言を浴びせたかと思うと

ディオドラはおもむろにイッセーの頭を足蹴にする。

完全に図に乗っているディオドラに対し、兵藤夫妻と言う人質の存在から

イッセーはおろか、リアスも強気には出られない。

 

「……わかるかいリアス? 本当の貴族ってのは戦う前から勝負を決めるものなんだ。

 さあアーシア。この二人を助けたかったら……わかるね?」

 

「…………」

 

アーシアが沈黙したまま、首を縦に振ろうとしたとき

扉を蹴破って、人影がなだれ込んでくる――アーリィだ。

 

「アーシアっ!!」

 

「!?」

 

当然、扉を蹴破ったものだから注目は一気に集まる。

しかし、そんなことはお構いなしにアーリィはナイトファウルを片手に

ディオドラを睨みつけている。

しかし、ディオドラは物怖じせずに逆にアーリィを一喝する。

 

「動くな! 動けばこいつらの命は無いぞ!」

 

「――っ!」

 

ディオドラの一喝で、兵藤夫妻を締め上げるアインストグリートの触手の力が強まる。

この状況を打破しない限りディオドラの優位は変わらない。

 

「お前……そうか、そうだったのか……はっはっは!

 これは愉快だ! 僕が目を付けていたシスターが、自分からやってくるなんて!

 ああ、今日はなんて清々しい日なんだ! 念願のアーシアが手に入るばかりでなく

 さらに熨斗までついてくるなんて! しかもいけ好かないリアスも手玉に取れた!

 いいぞ、すこぶる気分がいい! くくくっ、はははははははははっ!!」

 

狂ったように笑うディオドラだったが、その笑いに水を差すかのように

蹴破った扉の向こうから音声が鳴り響いた。

 

HALF DIMENSION

 

「なっ……こ、これは!?」

 

ヴァーリが外で禁手(バランスブレイカー)を発動させ、アインストの触手を半分にしたのだ。

その結果、兵藤夫妻はアインストの呪縛から解き放たれることになったのだ。

その隙を突いて、新たな人影が室内に駆け込んでくる。

 

「無事ですか!?」

 

「う……君は……」

 

崩れ落ちそうになった兵藤夫妻を抱えるように、木場と実体化したセージが入り込む。

そのまま部屋の隅へと誘導させ、晴れて人質は解放されたのだ。

 

「チッ! まぁいいや、人質が無くったって

 僕が君らに負ける道理なんかあるわけが無いんだ!

 僕にはオーフィスに貰ったこの力があるんだからねぇぇぇぇぇ!!」

 

ディオドラの激昂とともに、室内にいた曲津組の組員がアインストへと変貌する。

部屋を覆っていたアインストの触手は、そのままアインストグリートへと変貌を果たす。

狭い室内で、オカ研+セージが連れてきたメンバーと

ディオドラ率いるアインスト軍団や、イリナの入り乱れた戦いが始まろうとしていた。

 

――――

 

「いい加減目を覚ませ、イリナ!」

 

「私は正気よイッセー君、イッセー君の方が壊れてるんじゃない。

 私の知ってるイッセー君は、悪魔なんかじゃ無かったわ」

 

龍殺しの聖魔剣を躱しながら、イッセーは必死にイリナを説得しようと試みている。

しかし、既に悪魔となってしまったイッセーの声は、イリナに届きはしない。

イリナにとって、悪魔は祓うべきもの。想いを寄せていた相手がそんな存在になった事や

信じていたものが紛い物であった事を思い知らされた事で心の拠り所を失い

自暴自棄になったところを禍の団に拾われ、現在に至っている。

 

アインストの力こそ得ていないものの、龍殺しの聖魔剣は赤龍帝でもある

イッセーにとって、脅威足らしめるものだ。

 

「それは……そうでもしないとイッセーは死んでしまっていたのよ!」

 

「悪魔は黙ってなさい! みんなみんなそう!

 私が信じたものは、みんな壊れてしまう!

 ミカエルだって主が健在だって嘘をついていた!

 みんなみんな私に嘘をつく! なら私は何を信じればいいの!?」

 

イリナの叫びに、イッセーもリアスも返す言葉が無い。

特にイッセーは、信じているものに裏切られたのに近い経験をしているものだから

イリナの叫びを否定することが出来ないのだ。

 

天野夕麻――レイナーレの遺した置き土産は、イッセーの心に深い傷を負わせていたのだ。

 

「何も信じられないなら、この世界はおかしいって事じゃない!

 だったら、禍の団の方がよほどまともなことを言っているわ!

 そうよ、だから直すの! この世界を壊して直すの!」

 

感情の昂ぶりに身を任せ、龍殺しの聖魔剣を振り回すイリナ。

赤龍帝であるイッセーのみならず白龍皇であるヴァーリもまた

イリナのこの行動には脅威を感じていた。

最早、彼女の目に映るものは全て敵だと言わんばかりの勢いである。

 

「この場にゼノヴィアさんがいなくてよかったと言うべきか、なんと言うべきかだね。

 いずれにしても、このままじゃイリナ一人に全滅させられかねないよ」

 

現出させた聖魔剣でイリナの龍殺しの聖魔剣を防ぎつつ、木場が一人ごちる。

単純なパワーではイリナよりも優れているものは少なくない。

禁手に至ったヴァーリなど、その最たる例なのだが得物の相性が悪すぎる。

心の内を聞いてしまったイッセーはイリナに対しての戦意を喪失しており

さっきからアインストを相手に戦っているが、身が入っていない。

 

『どうした相棒! そんな事ではやられるぞ!』

 

「そうは言うけどよ! イリナの言ってる事だってわかるんだ! 俺だって……」

 

迷いながら戦っているイッセーに、突如として檄が飛ぶ。

その声の主は――リアスであった。

 

「イッセー! 迷ってはダメ! あなたには信じることが出来るものがあるじゃない!

 それとも、私は信じられないとでもいうの!?」

 

「そ、そんなことは……俺はもう、部長についていくって決めて――」

 

イリナとイッセーの決定的な違い。

それはどんな形であれ、信じることが出来るものの存在であった。

そう、どんな形であれ、だ。

 

「……そっか。やはりイッセー君はもう悪魔なんだ。

 ちょっとでも元に戻るって思った私が甘かったんだ。

 だったらもう遠慮なんかいらない……死んじゃえ」

 

リアスとのやり取りの隙を突いて、イッセーの背後からイリナが龍殺しの聖魔剣を突き立てる。

血飛沫とともに、周囲が赤く染まる。

 

イッセーにとって信じることの出来たものは、イリナにとっては忌むべきものだったのだ。

その決定的な違いが、この結果を生み出してしまった。

それほどまでに、イッセーとイリナの間に生じた溝は深く、大きいものだったのだ。

 

「……えっ」

 

それは、あまりにも一瞬の出来事であった。

混戦状態であったことも相まって、咄嗟の事態に対応できなかった部分があるにしても。

イリナの凶刃が、イッセーを貫いたのだ。

 

影響は、イッセーだけにとどまらなかった。

悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を共有しているセージにも、身体の異変が現れていたのだ。

 

「……っ!?」

 

「セージ君!? クッ、これは思った以上にまずい展開だ……!」

 

セージも実体を維持できなくなり、その場にへたり込んでしまったのだ。

咄嗟に木場がフォローに入るが、セージは身体に力が入らないのか、倒れ込んでしまう。

その状況をほくそ笑んでいるものもいる。ディオドラだ。

 

「これは面白い事になって来たねぇ。やるじゃないかイリナ。

 たかが人間の分際で、ミカエルを騙し討ちしたのは伊達じゃないって事かい?」

 

「騙していたのはミカエルの方よ。それにあんたみたいな悪魔には関係ない。

 馴れ馴れしく私の名前を呼ばないで」

 

「嫌われたもんだねぇ。ま、僕としてもシスターでもない君なんかどうでもいいんだけど。

 ただ……アーシアに手を出したらタダじゃ済まないかもね」

 

肩を竦めながら、ディオドラが吐き捨てる。

彼にとって目下の目的であるアーシアとアーリィは手に入れたも同然の状態。

イリナと言う対龍のリーサルウェポンが仕事をしており

その他もアインストの軍勢に囲まれて思うように動けない現状。

 

そんな中、イッセーに止めを刺さんと容赦なく振り下ろされようとしていた

イリナの龍殺しの聖魔剣を弾く刃が、どこからともなく飛んできた。

 

「やめるんだイリナ! これ以上、罪を重ねるな!」

 

「ディオドラ・アスタロト! その命、神に返しなさい!」

 

ゼノヴィアと、伊草慧介(いくさけいすけ)

オカ研と、新たな超特捜課の戦士達の窮地に

二人の元教会の戦士が救援に駆け付けたのだ。




ディオドラとの決戦のはずがイリナの横槍でとんでもないことになってます。
原作だと同じ話でシャルバがボッコボコにされるはずなんですが
影も形も出ておりません。彼もアインストの影響受けてる筈なんですが。

>ヴァーリ
やっぱり禁手はインチキだと思いました。
今回は人質救出に使ってますが、原作ではフリ(?)とは言え殺す発言をした相手を
助けるとは、まったく書いてる自分でもよくわからないものです。

>イリナ
ゼノヴィアとは宗派が違うとはいえ、やってる事は悪魔祓いで
アーシアに対しても否定的なニュアンスを取っていた(当時)だから
悪魔絶対殺すウーマンでもおかしくないわけで。
それが幼馴染が悪魔になってた&信じてた相手(ミカエル)が嘘をついていた

これが拙作イリナが壊れた原因です。今更ですが。
ゼノヴィアみたく更生しようにも、やらかしたことが大きすぎて……
彼女の明日はどっちだ、割とマジで。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。