ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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お待たせしました。
二周年記念が一か月延期と言う形になりましたが
今回より特別篇に突入します。


特別篇 ハイスクールS×S 留学生の地獄門(クロスゲート)
Special1. 迷い込んだシスター


「……隣人を食す隣人なんて、こちらからご免被ります。

 あなた方の言う、和平ってなんですか?」

 

 

そのシスターは、かつて悪魔に全てを奪われた。

 

 

「……それでも悪魔でいろってんなら、俺は俺の信じるもののためだけにその力を使う!

 お前のためになど戦ってやるものか、俺は俺のために戦う!」

 

 

その少年は、悪魔によって在り方を歪められている。

 

 

――地獄の門は、そんな出会うはずのない二人を引き合わせる。

 

 

ハイスクールD×D 同級生のゴースト 特別篇

 

ハイスクールS×S 留学生の地獄門(クロスゲート)

 

 

時は201X年、8月。

日本国の某所にある駒王町は、禍の団を名乗る組織による大規模なテロと

謎の怪物軍団による襲撃で、その都市機能の一切を喪失していた。

 

そして時を同じくして、禍の団(カオス・ブリゲート)・英雄派を率いるフューラー・アドルフによって

それまで架空の存在とされてきた天使・悪魔・堕天使の存在は公のものとされた。

 

それにより世界は混乱、国連は日本に対する支援と

ヴァチカンやドイツに対する非難を沈静化させることに追われていた。

ヴァチカンには司教枢機卿に対する説明要求を。

ドイツにはヒトラーの再来としか思えないフューラー・アドルフなる人物に関する説明要求を。

今まで信仰してきたものを、かつての自分たちの過ちが生み出したある種の英雄が

否定しにかかっているのだ。混乱が生じない方がおかしい。

 

そんな世界情勢が困惑する中、実際にテロの被害に遭った駒王町は

さらに深刻な事態を迎えていたのだった……

 

――――

 

「……わ、わしは何も知らん! 悪魔の存在など、あのナチスかぶれが言ったでたらめだ!」

 

駒王町役場、町長室。

町長らしき小太りの初老の男が、派手な色のスーツを着込んだガラの悪い男に囲まれている。

――曲津組(まがつぐみ)。それが彼らの所属する組織の名前である。

指定暴力団として日本全国にその名を馳せており、今はこの駒王町を中心に活動している。

 

「いやね? 別に悪魔がいようがいまいがどっちでもいいんですよ。

 ただ……あんたさん、それを言う資格ないと思うんですよ。

 

 ……調べついてんですよ。あんたさんが悪魔と蜜月な関係だって。

 って言いますか、そうでもしないと説明がつかないんですよねぇ……金の動きとか」

 

曲津組のリーダー格らしき男の一言に、町長は顔を蒼白にする。

事実なのだ。彼は悪魔であるリアス・グレモリー……いや、クレーリア・ベリアルと契約し

駒王町の実権を握っていた。そしてそれはクレーリアが死亡し、契約がリアスに引き継がれた

現在もなお、続いているのだった。

 

「ど、どこでそれを!?」

 

「ありゃ。適当言っただけなのに本当なんですかそれ……ではこれをマスコミに垂れ流しなさい。

 『駒王町町長、悪魔と契約し実権を握っていた』って。今なら高く売れますよ」

 

「へい」

 

「ま、待ってくれ! 金か!? 金ならやる! だからその事は……」

 

マスコミに連絡しようとする下っ端のヤクザを止めようとする町長の

その狼狽ぶりは、見るに堪えないものだった。

何せ彼は自身の欲望――町長となり、権力を得る――ために悪魔と契約していたのだ。

最も、実際に支配していたのは悪魔であるクレーリアやリアスだというのは皮肉なものだが。

その事実をヤクザに突きつけられては、狼狽するのも無理はない。自業自得だが。

 

「……いらねぇんですよ、金なんざ。あっしらが欲しいのは……

 

 ……この町の支配権。ああ全部とは言いませんよ。ただ、今日を限りにこの町のインフラは

 あっしらが支配させてもらいますんでね。勿論警察なんて廃止。

 超特捜課(ちょうとくそうか)なんてわけのわからない……とも言えなくなっちまいましたがね。

 そんな組織に動かれちゃ、あっしらも迷惑なんですわ。

 

 けれどこれ、あんたさんにとっても有益な話なんですよ?

 悪魔とか専門に動いてる超特捜課を封じるってのは、あんたさんの悪魔絡みの不正を

 暴かれずに闇に葬れる、って事なんですから。

 まだ全部の警察が悪魔対策で動いてるわけないじゃないですか」

 

主導権は、完全に曲津組に握られていた。

この日、駒王町のインフラはその一切を機能停止したのだ。

表向きにはテロによる被害となっているが、テロ以外にも人間同士のこうした争いが

被害の拡大に拍車をかけていることは、事実でこそあったがそれは闇に葬られていったのだ。

 

 

――時は進み、201X年9月。

 

 

「……あっはははははは! 結局誰が支配しても変わらないじゃないか!」

 

「ま、そうは言いますがねディオドラの旦那。俺らはこの町を復興させようとしてるんですよ?

 今まで甘い汁吸ってただけの豚町長とは違って、俺らは実際に行動する。

 人間の世界じゃ、これだけでだいぶ違うんでさぁ」

 

若い男の笑い声がこだまするのは、駒王町にある曲津組の事務所。

そこには町役場から連絡を受けたガラの悪いヤクザと……悪魔がいた。

ディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主にして、彼もまた曲津組と契約し

利益供与を行っている関係なのだ。

先ほどの情報は、全て彼から伝わったものだ。

 

「……ま、僕は黙って見ているよ。人間の世界を誰が支配するかなんて、興味ないし」

 

「へへっ、そいつぁどうも。旦那にもじきに献上品を差し出しますんで……」

 

結局、ディオドラの言う通り誰が支配しても変わらない。

駒王町は、悪魔の住む町なのだ。

そして、そうして甘い汁を吸うものがいると言う事は、吸われるものもいると言う事。

 

そんな時、水晶玉を転がしているディオドラに

水晶玉が映し出す人影が彼の目に飛び込んだ。

ヴェールで顔を覆った、シスターらしき人影。

 

「……うん? へぇ……この町にもシスターって人種がまだいたんだ。

 アーシアの前菜にはちょうどいいかな……おい」

 

「へい、何でしょう?」

 

ディオドラは近くにいた組員を呼び寄せると、魔力で作り出したモンタージュ写真を投げ寄越す。

それを受け取った組員は、きょとんとした顔を浮かべるばかりだ。

 

「そいつを僕の所に連れてこい。それで当分の代価はチャラにしてやるよ」

 

「……って、顔がヴェールで覆われてるじゃないっすか。いくら何でも……」

 

「……ごちゃごちゃ言わずにやるんだ。僕は口答えとかうるさいのは嫌いなんだ」

 

組員にすごむディオドラの左手首の腕輪が怪しく光っている。

その剣幕に、組員も渋々了解するしかなかったのだ。

そうでなくとも、悪魔と人間とでは地力が違いすぎる。

 

(……まただ。オーフィスからこの腕輪をもらってから、僕が僕でなくなる感覚がする……

 そんなバカな話があるか。カテレアがああなったのはアイツが老害だからだ。

 次世代を担う存在である僕が、あんなバケモノになるはずがない。

 けれど僕の眷属も、僕の知らない間に……クッ、そんなはずがあるものか)

 

ディオドラは腕輪をいじりながら、物思いにふけっていた。

 

――――

 

テロと謎の怪物の攻撃により廃墟と化した町、駒王町。

そこに、そんな廃墟に似つかわしくない恰好をした女性がいる。

修道服に身を包み、顔を黒いヴェールで覆った長身の女性。

 

口ぶりから海外の出身に思えるが、それにしても日本は平和な国として有名である。

それが来てみたらどうだ。廃墟に加え、死体も転がっている有様である。

修道服と言う身なりの通りに、彼女は物言わぬ骸と化した人々を弔っている。

 

「……こんなにボロボロになった町が日本にあったなんて。それに死体まで……

 日本と言う国は多神教、その中でも仏教と神道が主らしいですけど

 私の流儀で弔っちゃっても大丈夫だったんでしょうか?」

 

顔をヴェールで覆ったシスターが、町の崩壊に巻き込まれたであろう人々を弔っている。

救助活動が間に合わず、残念な結果になってしまった人々だ。

しかし、彼女は犠牲者を弔いに来たのではない。

 

「……それにしても……

 

 

 ……ここは一体どこなんですかぁ~!?」

 

シスターの悲痛な叫びが木霊する。

その叫び声におびき寄せられてか、灰色の甲虫のような怪物が現れる。

ドラゴンアップルの害虫――インベスである。

彼らには二通りの種類があり、小動物の妖怪が悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の力に耐えきれずに変異し

そのまま主に捨てられ、結果としてはぐれ悪魔となったもの。

あるいは、悪魔の駒に関係なく、初めからドラゴンアップルと呼ばれる果実を主食とし

異なる次元から独自の方法で侵入してきたもの。

いずれも、ドラゴンアップルを食し、人間に害を成す存在であることに変わりはない。

 

「……あらら。何だか見たこともない……悪魔? でしょうか?」

 

シスターが様子を見ていると、インベスはドラゴンアップルをシスターに植え付けるべく

毒を持った爪で切り裂こうとして来る。彼らは毒を持ち、その毒によって

ドラゴンアップルをあらゆる生物に寄生させることが出来るのだ。

そうして、彼らは栄養を蓄え増殖を繰り返している。

 

あわやと言うところで、シスターは身を躱し爪は空を切る事となった。

 

「な、何するんですかー!?

 ……あら? この気配……悪魔ですか、悪魔ですね。

 

 ……じゃあ話は別です。さっきの様子だと、このままだとあなた達

 他の人も襲いかねませんからね。ここで死んじゃってください。

 そこの斃れていた人たちがあなた達のせいなのかどうかまでは知りませんが

 いずれにしても、危害を加える隣人なんて要りませんから」

 

幸か不幸か、このインベスは元妖怪のはぐれ悪魔だった。

そうなれば、シスターの持つ道具で対応は十二分に可能である。

と言うよりむしろ、狙ってくれと言っているようなものなのだ。

 

「死んでくれ」と言うシスターにあるまじき言葉に

インベスは逆上したのか、再びシスターめがけて爪を振りかざす。

しかしすでに避けられた攻撃が、簡単にあたるはずもなくまたしても躱される。

それどころか、縫い付けられるように銀の針を体中に刺され

銀のナイフで爪を切り落とされてしまう。

 

「ちゃんと爪の手入れはしないとダメですよ? 私が切ってあげますね。

 それからこの聖水できれいにしておきませんと」

 

爪を指ごと切り落とし、さらにそこに聖水をかけられたことによる痛みでショック死したのか

銀が効果を発揮したのかは定かではないが、インベスはそのままピクリとも動かない。

 

「あらあら、他にもいっぱいいるんですね。

 大丈夫です、時間には余裕を持たせているつもりですので」

 

それから、シスターによる銀のナイフと聖水による爪切りが幾度となく行われた。

一しきり終わる前に、一部のインベスは動物的な本能で逃げ出してしまっている。

それを追いかけるほど、シスターも暇ではなかったようだ。

 

「……ふぅ、これで全部でしょうか。でもあんな悪魔は初めて見ましたねぇ。

 場所、ここで合っているのか心配になってきちゃいました」

 

辺りをきょろきょろと見まわしながら、シスターは再び瓦礫の山となった町の中へと消えていった。

 

――――

 

瓦礫の山と化した駒王町。かつての住宅街も、今は見る影もない。

その瓦礫の山の中でも、救助活動は行われていた。

……敵性体との戦いも兼ねて、ではあるが。

 

「A班よりB班へ! アンノウン発見! これより神経断裂弾を使用して迎撃にかかる!」

 

「B班了解! 至急援護に向かう!」

 

救助活動を行う自衛隊の前に現れたのは、感染力の強い毒を持つドラゴンアップルの害虫――

彼らはまだ知らない事だが、通称「インベス」と呼ばれる怪物である。

その外見は白い甲虫のような姿をしており、三種類のタイプがおり

それぞれ顔や前面の表皮の色が違う。ドラゴンアップルと呼ばれるドラゴンフルーツに

錠前の意匠を加えた様な不思議な形状の果実を主食としている。

本来ドラゴンアップルはその名の通りドラゴンの主食だが、彼らもそれを食すため

ドラゴンアップルを栽培している魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)タンニーンに曰く

「ドラゴンアップルの害虫」と呼ばれているのだ。

 

だが、インベスの持つ毒はそのドラゴンアップルを育成させる効果もあるため

本来ドラゴンアップルが生育しないはずである人間界にもドラゴンアップルが生育を始めている。

事実、駒王町の一角にはドラゴンアップルが成っているのだ。

ただしその方法は、人間をはじめとする生物を媒介とする生育であるため

タンニーンはこれをよしとせず、駆除に乗り出しているが

冥界に発生したインベスのみで手いっぱいなのが現状である。

そしてインベスは、独自の方法で次元移動が可能であり

そこから冥界や人間界に飛来してきた、まさに外来の侵略者と言える存在であった。

これが、妖怪のはぐれ悪魔を由来としないインベス元来の性質である。

偶然にも、妖怪のはぐれ悪魔としての性質を持つインベスもこの次元移動能力を備えてしまい

それが人間界への侵攻を早める結果となってしまっている。

 

しかし、生物は生物。人間が開発した神経断裂弾は体内で銃弾が炸裂することにより

相手の体組織を破壊し、致命傷を与える装備である。

それは人間であろうと、悪魔であろうと、ドラゴンであろうと変わらない。

自衛隊は、この銃弾を込めたアサルトライフルでインベスを迎撃に入ったのだ。

 

――ほどなくして、インベスの群れは一掃された。

飛び道具の有無が勝敗を決した形である。もしインベスの爪で引き裂かれていたら

自衛隊の側が負けていたであろう。インベスの持つ毒は、それほど感染力が強いのだ。

 

「A班よりB班へ、アンノウン駆除完了。引き続き行方不明者の捜索に入る」

 

「B班了解。こちらも捜索活動を続行する」

 

無線連絡を取った直後、自衛隊員の前を人影が横切った。

女性にしては長身で、顔はヴェールで覆われていた。

そして何より、今この駒王町を一人で歩いていること自体がおかしい。

戒厳令が出ているのもそうなのだが、先ほどのインベスをはじめとした怪物や

テロ活動のお陰で、生き残った住人は避難生活を余儀なくされているのだ。

 

そんな中、修道服姿でこの瓦礫だらけの町を歩いている人物がいるのだ。

それだけで十分不審人物である。

なんにせよ、自衛隊員が声をかけるには十分すぎる理由であった。

 

「あっ! 君、待ちなさい!

 ……A班よりB班へ、生き残りと思われる修道服姿の女性を発見。

 これより接触する」

 

「B班了解。修道服姿? ……まぁいい、こちらは本部に連絡する。

 A班はその女性を保護してくれ」

 

「A班了解……君、待ちなさい! 我々は救護活動を行っているものだ!

 ケガはないか? これより君を安全な場所まで誘導する」

 

幸いにも、女性は自衛隊員の呼びかけに応じた。

だが、開口一番語られた言葉に、自衛隊員は呆気にとられることとなった……

 

「や、やっとまともな人に会えました……ケガはないです……

 それよりもすみません、ここは一体どこなんですかぁ~!?」

 

その質問の答えは、彼ら自衛隊が拠点として活用している警察署で聞かされることとなった……

 

――――

 

駒王警察署。既に元来の機能は喪失しているが

その建物の構造上、住民の避難場所として再利用されている。

そして、警視庁に移設した超常事件特命捜査課(ちょうじょうじけんとくめいそうさか)――超特捜課の本部が設置されている。

そのため、最低限ながらも警察としての機能は維持できている。

また、自衛隊との協力で行方不明者の捜索なども行われており

情報交換の掲示板の前には毎日多数の人が詰めかけている。

 

自衛隊員に連れられて、先ほどのシスターはここにやって来たのだ。

超特捜課の一員であり、拠点防衛のために残っていた氷上涼(ひかみりょう)

この日は別件から外れ、氷上と共に拠点防衛についている霧島詩子(きりしまうたこ)

シスター――アーリィ・カデンツァから事情聴取を行っていた。

 

「……アーリィ・カデンツァさん。職業はシスター。

 同行していたメンバーとはぐれたら、ここに来ていた……と」

 

「はい……しかし、この有様は一体、そしてここは一体どこなんですか?」

 

「ここは駒王町。過日大規模なテロが発生して、実質無期限の戒厳令が敷かれています。

 そんな中、外を歩いていたあなたを自衛隊員が発見した形でして。

 一体、あなたは何処からここに来たんですか?」

 

だが、その事情聴取は難航を極めていた。

何せ、彼女自身は駒王町にいたというのだ。

だが、その駒王町はテロにより壊滅状態である。とても辻褄が合わない。

そのため、氷上も霧島も虚偽申告の可能性があると疑ってかからざるを得ない状態だった。

 

「我々としましてもあなたが嘘をついているとは考えたくない。

 しかし、どう考えても辻褄が合わないのです。

 駒王町にいたのならば、テロの事を知らないはずがありませんし」

 

そう。

テロの騒動を知らないというのは、それまで別の世界にいたとしか考えられないのだ。

一応、それに該当するものが若干名いるが、それらはほぼすべて悪魔である。

冥界に行っており、偶々テロに遭遇しなかっただけの事である。

 

「わ、私も混乱しちゃってます」

 

「困りましたね……そうですね、教会の所属と言うのであれば

 ゼノヴィアか慧介さんに聞いてみるのはどうでしょう?」

 

「ゼノヴィア……ゼノヴィアさんがここにいるの!?」

 

ゼノヴィアと言う名前に、アーリィが反応する。

彼女にとって、ゼノヴィアは戦友ともいえる間柄なのだ。

そのゼノヴィアと一緒に行動していたはずが、この荒廃した駒王町にいつの間にかいたわけである。

 

「い、いるにはいますが……今慧介さんと一緒に見回りに出ている最中なんです。

 タイミングが悪かったかな……」

 

「ケイ……スケ……?」

 

どこかで「俺を知らないのか!? 俺は伊草慧介(いくさけいすけ)だぞ!!」という声が聞こえてきそうだが

アーリィにとって、その名前は全く聞いたことの無い名前であった。

慧介も、アーリィも教会に所属しているはずなのに。慧介は「元」だが。

 

「そのケイスケさんって人と、ゼノヴィアさんは一緒にいるんですね!?

 わかりました、会って確かめてきます!」

 

「あ、待ってください! 外には怪物が……悪魔とも違う、怪物がいるんですよ!?」

 

「それに、戒厳令が出ているんです! 許可のない外出は、認められません!」

 

氷上と霧島の必死の説得に、アーリィも渋々従わざるを得なかった。

いくら何でも、この国の警察と問題を起こすつもりはアーリィも無いのである。

しかし今度は、アーリィの側に疑問が生じたのだ。

 

「……え? どういう事なんですか?

 なんでお二人は、悪魔の事を知っているんです?」

 

「……本当にあなたどこから来たんですか。それについても禍の団の

 フューラー・アドルフが公表したじゃないですか。悪魔や天使、堕天使は

 現実に存在する生物だって。

 そのお陰で全国的に大変な騒動になってるんですよ?

 日本はこの駒王町以外はまだ平和な方ですけど」

 

それはアーリィについては寝耳に水の出来事だった。

三大勢力は、その存在を秘匿されているようなものであったはずなのに。

何故、警察と言う組織にまで悪魔の存在が知れ渡っているのか。

禍の団の存在は、アーリィも知っていたがフューラー・アドルフと言う存在は聞いたこともない。

最も、彼女の出身を考えれば蛇蝎の如く嫌われる存在であることは容易に想像できるが。

 

「こんなボロボロになったのが駒王町で、三大勢力はその存在が公になって……

 わ、私、夢でも見てるんでしょうか……?」

 

その矢先であった。ゼノヴィアと慧介が戻ってきたのは。

おろおろしているアーリィだったが、ゼノヴィアの姿を見るなり

落ち着きをある程度取戻し、思わず駆け寄る。

 

しかし、ゼノヴィアからしたら知らない長身のシスターがいきなり駆けつけてきたのだ。

今度はゼノヴィアが戸惑ってしまっている。

 

「ゼノヴィアさん! 無事だったんですね!

 って事はあなたがケイスケさんですね? 私、アーリィ・カデンツァと申します。

 ゼノヴィアさんとは……」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。私は君の事を知らないし、会ったこともない。

 誰かと間違えていないか?」

 

「……慧介さん、これは一体どういう事なんですか?」

 

「俺に質問するのはやめなさい」

 

誰も彼も話の内容が噛み合っていない。

収拾がつかなくなりそうなとき、壁際から声がかけられた。

 

「クロスゲートの影響だ」

 

壁際にいたのは、ギリシャの太陽神、アポロン。

彼は独自にゲート――クロスゲートについて調べ、その情報を共有すべく

はるばるギリシャから来日し、日本神話勢と日本に在籍する仏教勢力からなる神仏同盟(しんぶつどうめい)と合流。

そのまま行動を共にしていたのだ。

 

そして、アーリィにとっては全く聞いたことの無い単語。

クロスゲート。彼女の知る世界の中には、そんなものは存在しない。

 

「クロス……ゲート……?」

 

謎の怪物に、公表された三大勢力に……クロスゲート。

アーリィの頭の中は、これまでにない位に混乱していた。




インベス相手でも容赦なく振るわれたアーリィ流祓魔術。
はぐれ悪魔由来のインベスだから通じました。
因みに本家インベスとの外見的違いは……ありません。
効くか効かないかは実際に一戦交えないとわからない不親切設計。

>町長
クレーリア時代から悪魔とつるんでました。
そうでもしないと色々辻褄が合わないと思い。
そして今回そこをヤクザに突かれて権力の座を追われることに。
ここで駒王町の警察機能がマヒさせられたことで、超特捜課が警視庁管轄に移ってます。
逆に言えば、警視庁が介入するほどの世紀末っぷり。自衛隊が活動している時点で相当ですが。

>ディオドラ
着実に変なフラグを立ててます。
性癖でアーリィを狙ってますが……色々な意味で一筋縄ではいかなさそう。

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