ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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さて。
アンケートはこの投稿をもって締め切らせていただきます。
結果発表はまた活動報告にて。

今回はセージ達が聖槍騎士団と戦ってる最中のイッセーらの場面。
最初に謝っておきます。
桐生が酷い目に遭ってます。描写は避けてますが。

……次回からあの人が本格的に登場しますが、場面描写の都合上今回出番はありません。


Life78. 聖槍騎士、戦います!

俺達を待っていたのは、荒れ果てた駒王町だった。

その情景はとても信じられないものだったけど、あちこちから上がっている煙も

何かが燃えるような焦げ臭い臭いも

何もかもが、それを現実だと言ってくるのだ。

 

その直後にやって来たディオドラっていけ好かねぇ悪魔に

俺達は案内され、仮の拠点として建物を提供された。

そこは、外の町の様子が嘘みたいに豪華な設備が整っていた。

部長は「部室程度には整っているわね」と言っていたけど

これだけでも俺にとっては十分だった。

 

そんな場所を拠点にして、俺達は町の様子を調べに出て来たのだ。

父さんや母さん、松田に元浜、桐生の奴らも行方が知れていない。

もしかして……って思えてしまうが、そんなわけがない。あってたまるか。

 

「イッセーさん……」

 

「大丈夫だって。きっと父さんや母さんも無事だって」

 

根拠はないけど、俺はアーシアにそう言わざるを得なかった。

それにしても、禍の団(カオス・ブリゲート)の奴らは許せねぇ。

俺達が住む町を、こんなにしやがって。

絶対にこの手でぶっ飛ばしてやる!

 

『……意気込むのは良いがな、相手の戦力だけは読み違えてくれるなよ?

 俺としちゃお前が死んだら、次にいつ白いのと戦えるのかがわからんからな』

 

ドライグ。そこにしか興味が無いのかよ。お前らしいっちゃらしいけどよ。

そんな風に話しながら町を歩いていると、山の中へと入って来た。

この辺りは破壊活動も行われていないみたいで、あちこちにテントが見える。

 

けれどなんだ? 何だか俺達を睨んできてるような……?

ま、まさかアーシアを狙ってるんじゃないだろうな!?

 

「ん……? イッセー、イッセーじゃないか!」

 

「お、お前は……松田! それに元浜も!

 無事だったのか! 良かった……!」

 

「ああ、なんとかな。しかしこんな時にアーシアちゃんとデートだと!?

 て、てめぇって奴は……!」

 

いきなり変な言いがかりをしてくる松田に、何とアーシアが否定の言葉を投げかけてきた。

 

「違います。イッセーさんとは一緒に歩いていただけで、そういうのじゃないです」

 

ぐさり。な、何故だかわからないが酷いダメージを受けた気がする。

アーシア、いつの間にか強くなった気がする……いろんな意味で。

 

「え? それじゃ俺達にもワンチャン……」

 

「ねぇよ。てめぇらみたいなエロガキ――」

 

「イッセーさんも人のこと言えないと思いますよ。

 部長さんや朱乃さんに鼻の下伸ばしてますから」

 

ぐさりぐさり。アーシア、そこまで言わなくてもいいじゃないか……

小猫ちゃんみたいになってきてるぞ……

 

小猫ちゃんっていえばセージの奴は何処に行ったんだ。

アイツも一度ぶん殴らないと気が済まない。

誰のせいで部長が辛い思いをしていると思ってるんだ!

 

「ほら、また部長さんの事を考えてた」

 

「えっ!? 違っ、これは――」

 

「……なぁ。痴話げんかは他所でやってくれないか?

 俺達も、避難生活で結構カツカツなんだ。

 いや、物資寄越せって言ってるわけじゃないんだ。ただ、な……」

 

「あっ……ご、ごめんなさい! 私、そういうつもりじゃ……」

 

おいてめぇら! 何でアーシアを責めてるんだよ!

アーシアが一体何をしたっていうんだ!

やっぱりこいつらをアーシアに近づけるのは良くない、そんな気がする。

 

「いや、アーシアちゃんは悪くないよ、悪いのはこいつ」

 

「そうそう。人の気も知らないでよ。ところで二人とも、どこに避難してるんだ?」

 

って俺かよ!?

思わず突っ込み返してしまったが、質問が飛んできたので答えることにする。

 

「ああ、この先の――」

 

方角を指示した途端、二人の血相がまた変わった。

相変わらず忙しい奴らだな。

 

「何っ!? て、てめぇアーシアちゃんをあんな所に連れ込んでやがるのか!?

 あんなヤクザの支配してる地域に!」

 

「お前の親父さんやお袋さんに関しては悪い事件があったと思うけどよ。

 だからってヤクザの地域に匿ってもらう事は無いじゃないか!

 知ってるのか!? あそこで何が起きているのかを!」

 

……は? 話が見えない。

確かにヤクザが絡んでいるってのは知ってるけど、そこまで言うほどのモノか?

実際今まで部長も朱乃さんも変な目に遭ってないみたいだってのに。

 

「……何言ってるんだよ。俺達はな……」

 

「……そ、そうですね。ごめんなさい、私たちが思い至りませんでした。

 皆さん苦しい生活をなさっているのに……」

 

「いや、だからアーシアちゃんが謝ることは無いんだって。

 それよりアーシアちゃん、何かひどい事されてないか? 特にこいつに」

 

二人を問い詰めようとした矢先、アーシアがまた頭を下げる。

何でこいつらに頭を下げる必要があるんだよ?

アーシアは何も悪いことしてないだろうが。

 

「そういうのは大丈夫ですけど……私達、部長さんの実家への帰省に付き合っていたので

 こっちに帰って来たのもつい最近なんです。それで、事情がよくわからないで……」

 

「……えっ? アーシアちゃん、どうやって帰って来たんだ?

 リアス部長って、海外の出身だろ? 空路も海路も封鎖されている現状で

 どうやって帰って来たんだよ? 知ってると思うけど、ここ島国だぜ?」

 

……げっ。そんな状況になってたのかよ!?

こ、こりゃマズい。部長が悪魔だってバレちまう。

そうなると色々面倒だ、部長がいないところで部長が悪魔だって言えるわけないし。

 

ふと、上空を何かが飛ぶ音が聞こえる。

飛行機……にしてはやけにでかい……って、あの翼に書いてあるのって……

 

……なんだあれ?

ふと同じく上を見たアーシアを見ると、何故だか震えていた。

 

「……は、ハーケンクロイツ……な、なんでそんなものが今の時代に……!?」

 

「「ハーケンクロイツ?」」

 

「ちったぁ勉強しろよお前ら……薮田に怒られるぞ。

 第二次大戦の時、ナチスドイツが使っていた徽章だ。

 当然、今は使われることの無い代物のはずなんだけど……

 

 ってアーシアちゃん、目いいな。あんな高高度の飛行機の模様が見えるなんて」

 

俺と松田の疑問に、元浜がインテリぶって答えている。

それでもアーシアとの関連性はよくわからないけどな。

それより、元浜はアーシアの目の良さに驚いている。

それも悪魔になったおかげなんだけど……これも言うとややこしくなりそうだしな。

 

そして、今度はその飛行機からパラシュートが開く。

支援物資……じゃない! 人だ! 人が下りてくる!

 

「パラシュート? 支援物資かな?」

 

「ハーケンクロイツつけた飛行機がか?」

 

「そうじゃねぇよお前ら! あれから降りてくるのは人だ!」

 

だからなんで見えるんだって二人のツッコミをよそに、パラシュートで降りてきた人は

何と俺達の目の前にやって来たのだ。

 

見た目は……うひょぉ! 仮面で顔は見えないけれど、かなりの美人だし

おっぱいも良好! 元浜、今こそあれを使う時だ!

 

「お前らよく見えるな……っと俺にも見えてきたぞ……

 上から……あ、あれ? おかしいな……よく見えないぞ……?

 と、とにかくボン! きゅっ! ボン! ……なのは間違いない」

 

「その詳しいデータを知りたいんだけど……ってまぁいいや。

 けれど何で仮面なんてしてるんだ?

 それに、何だかコスプレっぽい雰囲気してるし。つーかコスプレだよなあれ」

 

……え? 元浜のアレでも見えないって……そんなのは初めてだ。

空から降り立った美人に俺達が沸き立つ中、アーシアはまだ震えていた。

 

「……あ、あなたは……一体……?」

 

「…………」

 

沈黙を破るように、目の前の美人から巨大な砲台やら何やらが現れる。

まるで天照の装備みたいなそれは、突然どこからともなく出て来たのだ。

天照の眷属か何かか? いや、けれど元浜の言ったことが本当なら

何でドイツに天照の眷属がいるんだって事になる、一体誰なんだ?

 

「その眼鏡は……神器(セイクリッド・ギア)ではないわね。神器持ちは……

 そこの小娘と、子ザルその1。まぁいいわ。相手をしてあげる。

 けれどその前に……一つ聞くわ。聖槍……って聞いたことが無いかしら?

 そしてそれは、どこにあるのかしら?」

 

聖槍、と言う単語にまたアーシアだけが反応する。

聖剣の仲間みたいなものだろうか、松田も元浜も付いていけていない様子だ。

しかし、聖剣の仲間だというだけにしてはアーシアの震えっぷりは尋常じゃない。

 

「し、知りません……」

 

「ふぅん。その様子だと知ってそうだけど……まぁいいわ。

 じゃあ、そっちの子ザル。あなたは知っているのかしら?」

 

「さっきから子ザル子ザルうるせぇな! 俺には兵藤一誠って立派な名前があるんだよ!」

 

俺が名乗った途端、目の前の美人の右手には突如として槍が現れた。

そしてその槍は、俺を貫いた……のだが。

 

「……なんだよ。全然痛くないじゃねぇか。つーかいきなり何するんだよ!」

 

「これは聖槍のコピー。あらゆる異能を封じる聖槍の模造品よ。

 それにしても……一言いいかしら。

 

 ……愚か者! ここは戦場よ!

 さっきから鼻の下を伸ばしておいて、私の動きに全然ついてこれてない!

 こんな奴が赤龍帝だなんて、冗談も大概にしてほしいわよ!」

 

「……!! 松田さん、元浜さん、逃げてください!!」

 

事態を飲み込んだアーシアが、慌てて松田と元浜を逃がす。

二人とも困惑しながらも血相を変えたアーシアにただ事ではない様子を感じたのか

言われるがままに距離を取っていた。

 

「大層な度胸ね、Fraulein.(お嬢さん)

 そこの子ザルとは大違いだわ。先にあなたを封じておくべきだったかしら?」

 

「ラッセー君、部長さんたちに連絡をお願い!」

 

アーシアに呼び出されたラッセーが、空に向けて飛んでいく。

向かっていく方角は俺達の拠点。応援を呼んだんだ。

じゃあ、応援が来る前に片づけてやるぜ! 行くぜドライグ!!

 

――…………

 

しかし、ドライグは何も言わない。

 

「おい、どうしたんだよドライグ! いつもみたいに『Boost!!』って

 言うべき状態だろ、これは!」

 

「言わなかったかしら? これはあらゆる異能を封じる聖槍。

 その模造品、コピーだって。コピーにないのは殺傷力だけ。

 異能封じの力は、本家に勝るとも劣らないのよ?

 そして……封じる異能は、なにも神器だけじゃないのよ」

 

その言葉の意味を、俺はすぐに思い知る事となった。

何せ、体に力が入らなくなっている。

どんどん力が抜けていく。

立っていられない。思わず、横たわってしまう。

 

「何を……っ!?」

 

「やはり。死して転生悪魔になった者は、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を封じられれば

 死体に逆戻り、と言う事かしら。本当につまらないガラクタを作ったものね」

 

「い、イッセーさん!」

 

アーシアが俺に駆け寄り、「聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)」で治療を試みるのだが

おかしい。全然何も感じない。それどころか、アーシアの顔が良く見えない。

まさか俺、本当に死んじまうのか?

 

「無駄よ。聖母の微笑と言えども、死人をよみがえらせることは出来ないでしょう?

 一つ残念なのは、この効果は時間制限付き。

 だから、精々あなたは仮死状態止まりにしかなれない事。

 だから私は聖槍を探していたのよ。総統閣下がお求めの物でもあるけれど

 それ以上に、人間としての生を捻じ曲げられた哀れな人間を

 こうして救済するためにも、聖槍の力を求めたのよ」

 

言い返そうとしたが、何も喋れない。

そのまま、俺は目を閉じ――――

 

 

――――

 

 

気が付くと、さっきの女と木場が戦っていた。

アーシアは……後ろでラッセーと一緒に木場の援護をしている。

 

『油断するからだ。あの槍も、装備も一筋縄ではいかないぞ』

 

「わーってるよ……けれど、相手は女。だったら……!」

 

俺には切り札があった。洋服崩壊(ドレスブレイク)

相手が異能を封じるのなら、こっちはその異能を封じる槍をひん剥いてやろうって寸法だ。

幸い、木場に気を取られているらしくこっちには気づいていない。

 

俺はそっと、相手の背後に回り込み、その形のいい尻を撫でまわした。

うーん、役得役得。

 

……あれ? 何で反応しないんだ?

普通ここで悲鳴を上げたりするのが定石なんだが、一切何も言われないのはなんでだ?

 

そればかりか、俺の行動を見ていた木場やアーシアの目線が痛い気がする。

 

『……まぁ、あの二人の目線が普通の感性だろうよ』

 

「ぜ、前提条件は満たせたんだからいいじゃねぇか!

 やい、さっきは良くもやってくれたな! 今度はこっちの番だ、喰らえ!

 『洋服崩壊』!!」

 

右手を天高く掲げ、指を鳴らす。

それと同時に、相手の衣服は吹っ飛ぶ……

 

 

……筈だった。

 

「……何がしたいのかしら? まぁいいわ。今度はあなたが聖槍を受けなさい!」

 

「ぐ……っ!? か、身体が重い……」

 

まるで俺を無視するかのように、木場に聖槍が突き立てられる。

血は出てないが、いつものスピードが見る影もない。

悪魔の駒を封じるってのは、本当みたいだ。

 

……じゃ、じゃあ俺が動けなくなったのもそのせいって事か!

悪魔の駒を封じる武器があるなんて、どんだけインチキなんだよ!

洋服崩壊も効かない謎の敵を相手に、俺は木場のフォローをするべく躍り出る。

 

Welsh Dragon Balance Breaker!!

 

相手が何なのかわからねぇが、禁手の力なら押せるはずだ!

俺は「赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)」を身にまとい、目の前の女に殴りかかる。

……と言うか、女だよな? 洋服崩壊が効かなかったことといい、何か引っかかるけど。

 

「ふん、パワーだけは一人前ね。けれどパワーだけで勝てるほど

 戦場と言うのは甘くないのよ!」

 

俺はこの女と組みあう形になった。槍で狙われないのは良かったけれど

装備している砲台がこっちを狙っている、マズい!

 

Feuer(斉射)!!」

 

至近距離で撃たれたため、自分にもダメージが行ってるはずなのだが

それ以上にこっちのダメージが酷い……くそっ。

鎧が無かったらきっとバラバラになっていただろう。

 

『ぐ……病み上がりには堪える一撃だな……!』

 

そうだった。この間のはぐれ悪魔騒動の時も普通に使っていたから忘れかけていたが

ドライグの奴は一度セージにコテンパンにされたことがあったのだ。

それさえなければ競り勝っていたかもしれないと思うと、何だか悔しい。

 

『無理だな。パワーだけで勝てる相手じゃない。

 そうでなくとも、お前は俺の力を持て余し気味だ。

 これなら霊魂のの方が俺の力をうまく扱えたかもしれんな』

 

「無茶いうな、俺はアイツじゃねぇんだ! パワーを倍にして

 ぶん殴る、それが俺のやり方だ!!」

 

『……やれやれ』

 

Boost!! Boost!! Boost!! Boost!! Boost!!

 

思いっきり倍加をかけて、目の前の女を突き飛ばそうとする。

加速力にも倍加をかけているんだ、これは避けられねぇだろ!

実際、鉄のぶつかるような音と共に相手がよろめくのを確認した。

洋服崩壊が通用しないなら、強引にひん剥いてやる!

そう思い、まずはボディスーツ……の前に鬱陶しい仮面から引っぺがすことにした。

洋服崩壊が使えないのがもどかしいぜ。

 

だが、その仮面の下には顔が無かった。のっぺらぼう、ではなく無いのだ。

 

「な……な……なんなんだよ!?」

 

『! 距離を取れ、でかいのが来るぞ!』

 

「見たわね……ガイスティブブリッツ!!」

 

突如、雷に打たれ全身が痺れて動けなくなる。

朱乃さんの雷もこれくらい痛いのだろうか。本気のを喰らったことが無いのでわからないが。

しかしそれにしても、これじゃ体が動かせない、どうすりゃいいんだよ!?

 

「イッセー、みんな、無事!?」

 

などと思っていると、遠くから部長の声が聞こえる。

やった、これで形勢逆転だ!

 

「……くっ。少しばかり長居しすぎたようね。

 まぁいいわ。悪魔もだけれど、お前のような半端ものはこれから苦しみ続けるがいいわ。

 フフッ、後悔……残したわよ」

 

そう言い残し、装備を変形させてものすごいスピードで地表すれすれを走るように滑っていき

俺達の前から姿を消した。後悔? どういうことだ? 何で俺が後悔なんかするんだよ?

俺の頭に疑念が残る形になったが、部長が来たお陰ですべて吹っ飛んだ。

同時に、身体のしびれも取れていた。

 

「イッセー大丈夫? 祐斗もよく頑張ってくれたわね。

 それにしても相手は見たこともない奴だったわね……」

 

「部長、相手の持つ槍は聖槍……コピー品ですが。

 異能を封じる力を持っています。対策を練っておかなければ

 悪魔の駒さえも封じられては……」

 

「……それについては、戻ってゆっくり考えましょう。

 とにかく、ここは一旦戻るわよ」

 

そう言って、部長の魔法陣で転移しようとした……矢先の事だった。

 

「い、イッセー……お前ら……」

 

「ゆ、夢じゃ……ない……んだよな……?」

 

そこには、あいつが引き上げたことで出て来た松田と元浜がいたのだ。

部長は慌てて展開しかけた魔法陣を元に戻すが、時すでに遅かった。

 

「あ、あなた達……いつからそこに……」

 

「さっきからっすよ、リアス先輩……

 まさか、あんた達が……信じたくねぇけど……」

 

「……イッセー。黙ってたけどな……桐生は……桐生はな!!

 

 ……悪魔に、悪魔に暴行されたんだぞ!!」

 

元浜の言葉に、その場にいる全員が硬直した。

桐生が暴行されたって!? そ、そんなバカな!?

 

「そりゃ俺達も最初は悪魔に頼ってでもモテようとか考えてたさ!

 けれど、けれど町がこんなになったのも悪魔のせいだろ!

 それを聞いて慌てて俺達は貰ったチラシを破り捨てたさ!

 

 ……けれど、けれど桐生は、桐生はそれと同じタイミングで

 俺達みたいなことを考えた奴の、悪魔の毒牙にかかってな……!!」

 

「いくら俺達が変態トリオだなんだって言われても

 最後の一線だけは越えなかったさ!

 けれどてめぇはなんだイッセー! 悪魔の仲間入りして

 自分達さえ良ければどうでもいいって言わんばかりに

 ヤクザの膝元でぬくぬくしやがって!!」

 

「ち、違っ……」

 

物凄い剣幕でまくし立てる松田と元浜に、俺達は返す言葉が出てこない。

力では俺達の方が圧倒的なはずなのに、なぜか何も言えないのだ。

その悪魔だって、俺達じゃない、別の悪魔だってのに。

 

「違うものかよ! セージだってこのテロの中入院中なんだ!

 しかももう生命維持装置も限界に来ている!

 てめぇら……そろいもそろって何なんだよ……ふざけんなよ……!!」

 

「あなた達聞いてちょうだい。私達は関係ないの、それは別の……」

 

「同じっすよ! 悪魔って何なんすか!? 俺達の町を土足で荒らしまわるヤクザっすか!?

 ……イッセー、悪いけどお前らとはこれ以上一緒にいられない。

 カラオケやボウリングは楽しかったけどよ、今のお前らと一緒にいたら

 町のみんなに迷惑がかかっちまう。今は町のみんなで協力しなきゃいけない時なんだ。

 そんなところに悪魔が来てみろ。一気にパニックだ!

 ……行くぞ元浜。今日の収穫は……言いたくねぇな」

 

有無を言わせぬ勢いで、松田と元浜は俺達の前から去ってしまった。

その後、何事もなかったかのように魔法陣で転移した俺達だったが

俺とアーシア、木場、それからギャスパーは

松田と元浜の言葉に少なからずショックを受けていた様子だった。

 

「……なんだよ……なんだよあいつら……!

 クソッ、敵を追い払えたのに全然勝てた気がしねぇ!!」

 

「……その敵も、何だか見逃されたみたいな感じだったしね。

 あれは多分様子を見ながら戦っていたよ。

 本気を出していたら、まずアーシアさんが聖槍でやられて

 僕らが一人ずつ撃たれていた。部長達が来たお陰で、引き上げたみたいだけど」

 

「……ご、ごめんなさい。僕が、僕がもっと早く来ていれば……」

 

さっきからギャスパーは謝ってばかりだ。

それがいつものギャスパーっちゃそうなんだが、何だか今は無性に腹が立つ。

 

「うるせぇ! ギャー助、てめぇが来たらアイツには勝てたかもしれねぇけど

 松田と元浜はどうすんだよ!?」

 

「……ひっ!? そ、それは……」

 

ギャスパーを怒鳴りつけた次の瞬間、俺は木場にぶん殴られていた。

……だよな。クソッ、本当に腹が立つ!

何に対してかわからないけど、異様に腹が立つぜ!

 

「……イッセー君。ギャスパー君に当たっても仕方ないだろう。

 彼らには、どのみちどこかでバレていたと僕は思うよ。

 ただ……最悪のタイミングだってのは、僕も否定しないけどね。

 きっとそれこそが、相手の狙いだったのかもしれない。

 

 ……僕たちの心を揺さぶるっていう、ね」

 

「なんだよそれ……結局俺達は負けたって事かよ!?

 ……そんな、そんな事って……!!」

 

俺にとって、あいつらはまだ友達のつもりだった。

けれど、あいつらは悪魔と言うだけで俺達を拒絶した。

 

……どっちが正しいのか、俺にはさっぱりわからない。

ただ一つだけ言えるのは、俺はその日初めて

悪魔になったことを後悔した、って事だ。




拙作でエロ描写をしようとするとR-15タグじゃ済まなくなりそうなので。

>松田と元浜
この状況下で改心したというか、桐生の惨状を聞かされた上に
彼らもテロの被害に遭って生活が崩壊したために
考えを変えざるを得ない状況に追い込まれてます。

一般人には変わりありませんが、だからこそ原作で生じなかった「壁」を
可視化したらこうなるだろうなぁ、という面を意識してます。
超特捜課の人達は「戦える人間」、彼らは「戦えない人間」として
描写してるつもりです。

>桐生
犠牲になったのだ……エログロの本当の恐ろしさ、その犠牲にな。

……いや、彼女もイッセーにとって都合の良い女の一人だと思いましたので。
直接関係してなくてもアーシアを焚きつけたり「こいつ共犯だろ」と
思える部分は幾らかありましたので、ちょっとキツイお灸をば。

因みに、実行犯は触れられてませんが禍の団の一派の悪魔です。
現在霧島をはじめとした婦警組が時折カウンセリング兼警備を行っている状態。
今回の事がショックであの能力は失われました。どうでもいいですが。

松田と元浜は現場に居合わせたけれど、悪魔にかなうはずがなく……
こいつら(含イッセー)が最後の一線を越えてないのは、一応事実ですからね。
ところが一線を越えた現場を目の当たりにしたことで……

>聖槍騎士
今回は一人だけ。そのためリアスらが来た段階で多勢に無勢と撤退したけれど
松田と元浜にイッセーらの正体をばらさせたのは作戦の一つ。
やはり某邪神様の眷属だった!


……さて皆様お待たせしました。
次回より特別篇へと移行いたします。

※1/30修正
いきなり矛盾とかどういうことなの……

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