ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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おお きりやよ!
しんでしまうとは なさけない!
そなたにもういちど きかいを(ry

いやマジでくださいお願いします何でもしまうた

……でも公式が煽るなよ……ファンが言うならまだしもさぁ。
とりあえずクリスマスにレーザー関係のおもちゃをもらった子供たちに合掌。
サソードとかでも通った道なんですけどね。

うち? 甥っ子にガルマザクのプラモをプレゼントしましたよ。
喜んでくれるといいなぁ。


Soul76. 超特捜課の辞令

俺は宮本成二。

クラスメート、兵藤一誠のデートに不審なものを感じた俺は

後をつけるが、その先で堕天使レイナーレに瀕死の重傷を負わされる。

目覚めた俺は、リアス・グレモリーに歩藤誠二と言う名を与えられ

霊体になっていることを知ることになる。

 

荒れ果てた駒王町で、俺達は虹川(にじかわ)姉妹や海道(かいどう)さんらと再会し

こうなった経緯を聞いた。そしてその後警察署に向かい

数多くの死者、行方不明者がいることを知ることとなる。

 

そして、警察署には大日如来様もお見えになった。

俺達は、冥界で知りえたことを話す決心を固めた――

 

――残された時間は、あと23日――

 

――――

 

駒王警察署の一室。

敷地内で大日如来様を見かけた俺は、伝えなければならないことを伝えようとしたら

ここに来るように言われ、今こうしてやって来たのだ。

 

この部屋にいるのは大日如来様の他に同じく神仏同盟(しんぶつどうめい)の天照様。

そして超常事件特命捜査課(ちょうじょうじけんとくめいそうさか)――超特捜課(ちょうとくそうか)のテリー(やなぎ)課長。

さらにはなんと、ギリシャはオリュンポスのアポロン様まで来られていたのだ。

 

こうして見ると、やはり三大勢力――悪魔に対して思うところがあるのは

決して少なくないのだろうか。あるいは、ただ単にゲートやアインスト対策で

集まっているだけかもしれないけれど。

 

俺はアポロン様と握手を交わした後、用意された席に着席する。

その隣には白音さんと黒歌さんもいる。

彼女たちの身請けに関して、天照様に相談したいのだ。

 

「会談の時以来ですね、ご健勝のようで何よりです」

 

「いえ……しかし、その前に一つ確認したいことがあります。

 三大勢力が……天使、悪魔、堕天使の存在が公になったというのは本当ですか?」

 

俺の質問に対し、柳さんが答えてくれる。

てっきり「俺に質問するな」とか言われるかと思ったがそんなことは無かった。

 

……はて。なんでそんなことを思ったんだろう。

 

「事実だ。幸いにして超特捜課と言う部署が存在していたおかげで

 駒王町に関して言えばそれによる混乱はそれほど大きくはなかった。

 だが、他の都道府県ともなれば話は別だ。政府は今その対応に追われている。

 

 ……冗談のような話かもしれないが、対三大勢力法案と言う物まで立案されているらしい」

 

「もう少し冥界に残っていれば、悪魔側の状況を掴むことは出来たかもしれませんが……

 生憎と、こちらも急いでこっちに向かっていたもので」

 

「タイミングの悪い話だにゃん」

 

対三大勢力法案……まぁ、この国がやりそうなことだ。

俺にはまだ選挙権は無いが、それなりに政治の情報は得ているつもりだ。

と言うか時事問題は普通にテストに出るし。最近は最近で捨てられた新聞を漁るという

変な趣味が出来てしまったおかげで色々そういう情報を仕入れるようになってしまったが。

 

「あの時アザゼル総督は『人間の政治には関与しない』と言っていましたが……

 彼らが関与しなくとも、こうして暴露されてしまっては同じことですね……

 アポロン様、そちらでも今回の事件で混乱が起きているかと思いますが……」

 

「あのフューラーと言う男、どこかで……いや、何でもない。

 確かに我々ギリシャも、人々に混乱が生じているようだ。

 特に日本と違って近隣では彼らを崇めている人々は少なくない。

 与える影響も無視できるものでは無い……と言うわけで、今は主要神三柱――

 ゼウス、ポセイドン、ハーデスが総出で混乱を解消しようとしているが……

 

 恥ずかしい話だが、兄弟仲がすこぶる悪くてな。あまり効果を発揮していない。

 アフロディーテやペルセポネーらの尽力で、メンタル面からのケアで

 どうにか成果を上げてはいるが……我々の所でもこうなのだ。

 アメリカ辺りはとんでもないことになっている恐れがあるな」

 

「実際、アメリカでとんでもない混乱が起きて世界恐慌の恐れが生じている。

 先ほど俺は駒王町に関しては混乱は大きくないとは言ったが

 恐慌の影響による混乱は大なり小なり起きている……それに」

 

「実際に起きたテロ、ですか」

 

うわあ……こうなるであろう事を考えれば、秘密裏に行動していた

グレモリー部長らの行動はある意味正しかったのかもしれない。

だがそれは、絶対にバレないことが前提だ。現にこうしてバレている。

バレてしまえば、後は大混乱間違いなしだ。そしてそのタイミングでテロ……

いや、テロが起きた後にバラしたのか?

いずれにせよ、今や大混乱の渦中に全世界がいることになったわけだ。

それを引き起こしたのは三大勢力の存在を明るみにした奴だが

そうなるに至ったのは三大勢力の日頃の行いが悪いせいだろうと思う。

 

「彼らの標的は三大勢力と言ってはいるが、テロと言う行為に移した時点で

 こうして標的以外にも被害が及んでいる。このお陰で今駒王町には自衛隊が駐屯している。

 まさか自衛隊も、神仏と共同作戦を行うことになるとは思ってもみなかっただろうな」

 

「……結局、彼ら――三大勢力の思惑通りにはいかなかったと言う事だ」

 

大日如来様が肩を竦めて呆れたようにつぶやく。

和平だなんだと言っても、結局こういう自分たちの敵から身を護るための方便に過ぎなかった。

そうおっしゃりたいのだろうか。いずれにせよ、巻き込まれる側はたまったものじゃない。

 

「それで少年。俺達に話があるんだったな?」

 

「そうです。テロ対策に追われているときに言う事でもないかもしれませんが……

 

 ……悪魔の駒(イーヴィルピース)の摘出方法、及び破壊方法が分かったんです」

 

その言葉に、神仏同盟のお二方が驚きの表情を示す。

アポロン様も仮面で表情は見えないが、感嘆の声を漏らしていた。

唯一、悪魔と言う存在にそこまで明るくない柳警視だけが

話についていけていないようだったので、解説もかねて俺は一連の事を話すことにした。

 

 

悪魔の駒が人間や妖怪、その他種族に及ぼす影響。

 

それによって齎される悪魔転生システムと言う、あらゆる事柄の元凶ともいえるシステム。

 

それによって運命を狂わされた俺と、黒歌さん、白音さんの姉妹。

 

そんな悪魔以外にとっては負の遺産ともいえる悪魔の駒を破壊する方法を見つけ出した事。

 

 

それらの事を、俺達はこの場で打ち明けたのだ。

転生悪魔を数多く輩出しているこの日本に籍を置く神仏同盟のトップがいるこの場で。

 

 

「……驚いたな。まさかそんな方法があったとは」

 

「これで妖怪勢力の皆様にも吉報をお届けできます!

 不本意で転生させられた方々につきましては、我々が身柄を保護できるよう

 全力でサポートさせていただきます。摘出についても

 大国主命や少彦名命を当たらせましょう。流石にそちらの黒猫の方の方法を

 何度もやるわけにはまいりませんからね」

 

「宜しくお願いします。そのお二方にお力添えを頂けるのであれば心強いです」

 

大国主様だって!? それって大黒様じゃないか!

俺はただ、重い腰を上げた神仏同盟の凄さに腰を抜かしそうだった。

それと同時に、ここにいる皆がとても頼もしく思えた。

同じ人間、神器(セイクリッド・ギア)持ちであり悪魔や堕天使をことごとく返り討ちにし

超特捜課を率いて三大勢力の悪事と戦うテリー柳警視。

三大勢力と同じ超常の存在ながらもこの日本とそこに住む人々を護るために

信仰を失いつつも尽力されている神仏同盟の方々。

俺は……感激で心が震えていた。

 

「では、こちらからは薬師如来を」

 

「我々ギリシャではアスクレピオスを。悪魔の駒による転生は、他人事ではないのでな」

 

そして、海を越えてギリシャからも協力者が来てくれた。

まるで反三大勢力同盟みたいなことになっているが

三大勢力が横暴を繰り返すからこんなことになっているのだろうと思う。

神仏同盟のお二方とアポロン様はがっちりと握手を交わしている。

太陽に由来する者同士、波長が合っているのだろうか。

 

……これだけの力が揃えば、俺の事もどうにかできるんじゃないかって

錯覚できてしまいそうだ。物理的に不可能なのはわかっているのに。

まず兵藤をどうにかしない事にはどうにもならんと言うのに。

 

「盛り上がっているところすまないが、俺からいいか?

 明日にも支援物資がこちらに来るのだが、曲津組(まがつぐみ)の連中がそれを狙っているらしくてな。

 情けない話で申し訳ないのだが……」

 

「お釈迦様は言っていた……善を成すのを急げ、とな。

 衣食住足りて礼節を知るという言葉もある。その支援物資が正しく行き渡るように

 俺達で援護すればいいのだな」

 

「そう言う事なら、俺にも手伝わせてください。

 こういう時こそ、誰かの役に立ちたい……いや、立つべきだと思うんです。

 助け合ってこその人間だと思うんです」

 

少々アレンジを加えているが、これは面ドライバーシリーズの受け売りだ。

「面ドライバーは助け合いでしょ」と言う名言があった。

それが言いたいがためにカッコつけているわけでもないつもりだが

俺は嘘はついていない……つもりだ。

 

「……少し前なら、首を縦には振らなかったが今は蒼穹会(そうきゅうかい)にも

 お前と同じくらいの年の奴がいるからな……年齢を理由に断れはしないし

 人手不足に神器持ちともなれば迎え入れない理由が無い。

 

 ……宮本成二。今日付けで駒王警察署超常事件特命捜査課改め

 警視庁超常事件特命捜査課課長権限で、お前を超特捜課特別協力者として歓迎する。

 この辞令、受けてもらえるか?」

 

「えっ……ほ、本当ですか!?」

 

「氷上からの口添えもあってな。駒王番長がまさかこうして半分幽霊になっているとは

 氷上も思わなかったらしいがな。それと、特別協力者と言う事で

 警察の指示系統には完全には属さない形となる、つまり自由に動けるが

 それだけ与えられる情報にも制限が加わる事だけは理解してくれ」

 

驚いた。まさか超特捜課に迎えられることになるとは思わなかった。

しかし半分幽霊とはまた言いえて妙な表現を。

グレモリー部長の下は去るつもりでいたのだから、このオファーを受けない道理はない。

 

「……セージ先輩」

 

「白音さん。俺はやはり人間だ。悪魔にはなれそうもない。

 今更かもしれないが、俺はグレモリー部長の下にいるよりも

 人間社会にいる方が性に合っているのだと思う。

 俺は兵藤と違ってそれほどハーレムに興味はないからな。

 悪魔になった事の魅力など、俺にはこれっぽっちも感じられないのだから」

 

「それほどって事は……少しはあるのかにゃん?」

 

「ノーコメントだ、黒歌さん。

 ……柳課長。宮本成二、謹んでその辞令をお受けいたします」

 

……その日、俺はオカルト研究部の歩藤誠二から

警視庁超特捜課の特別協力者宮本成二になったのだった。

 

――――

 

その後も夜が更けるまで色々な情報の交換を行った。

中でもアインストの情報やドラゴンアップルの害虫についての情報は

神仏同盟や超特捜課にとってとても有益なものであった。

 

……なぜか、アポロン様はアインストを知っていたが。

 

「冥界ではそんな危険なものを栽培していたのか。

 ドラゴンの餌ともなればそう言うものかもしれないが

 それでこちらに危害を加えているとなれば、一体何を考えているんだという話になるな」

 

「……その怪物の事は俺にも見えなかった。いや、アインストとクロスゲートの方に

 目が行ってしまっていたというべきか。彼らもまた、アインスト同様に

 別の世界からの侵略者……インベス、とでも呼ぶべきか」

 

『インベス……か。どこかで聞いた気がするが……多分思い違いだろう』

 

インベスと言う単語にフリッケンが反応するが

それにしてもアポロン様は底が知れない。やはり神と言うべきか。

そんな神様に喧嘩売ってるんだから、ある意味三大勢力ってすごいと思う。

全然感心できないけど。

 

「ドラゴンアップルの害虫、ってのも言いにくいですからね。

 ただ俺の調べによりますと、小動物の妖怪のはぐれ悪魔から変異した存在もいるんですが

 彼らもインベスのカテゴリに入ってしまうんですか?」

 

「難しい所だな。乱暴に一つのカテゴリにはめてしまっていいのかどうかはわからないが

 行動パターンが同一のものになっている以上、同じカテゴリに入ってしまうだろう。

 ドラゴンアップルを食し、人や他生物に危害を加える存在になっていると言う

 行動パターンが完全に似通っている。偶然かどうかまでは俺もわからないが」

 

「一ついいか? そのドラゴンアップルなんだが、本当に冥界でしか生えないものなのか?

 2~3か月前から、この駒王町で謎の植物が繁殖しているという情報がある。

 これがその植物なんだが……」

 

「……これ、ドラゴンアップルにゃん!」

 

柳課長が出した資料――何かの植物に寄生された人間――を見た黒歌さんが驚いている。

情報には聞いていたが、確かに何やら奇妙な果実のような代物だ。

そして、それ以上にこれって人間に寄生したりするのか!?

 

……よ、よくこんなものを生育しようって気になれたな!

 

「これは基本的にはドラゴンの餌にゃんだけど、他の生物が食べることもできるにゃん。

 ……クソ不味いらしいけど。でも、食べたらとても恐ろしい事が起こると聞いたにゃん」

 

黒歌さんは神妙な表情で、ドラゴンアップルについて語り始める。

その表情は、普段のどこかおちゃらけた部分のある彼女とは違い

真剣な時の黒歌さんの表情だ。

 

……いくら普段が作ってるとは言え、まるで多重人格だ。

 

「……姉様、食べたのですか?」

 

「まさか。食べにゃいわよ、あんなの。それに食べたら……

 

 ……ドラゴンアップルの害虫――インベス、だっけ。それになるわよ。

 白音。あんたが大食いだってのは知ってるけど、これだけは絶対に食べちゃダメだからね?」

 

『ドラゴンはそのインベスになる成分を消化できるから食糧として機能させられる――

 そう見たほうがよさそうだな。俺も食べたいとは思わないが』

 

さりげなく、黒歌さんがとんでもない事を言ってのけた。

ドラゴンアップルを食べたドラゴン以外の生物は、インベスに変異する。

じゃあ、もしかして小動物の妖怪のはぐれ悪魔って……ドラゴンアップルを食ったのか?

そこまではわからないが……

 

それもあってか、健啖家の白音さんに黒歌さんが念を押している。

まぁ、傍から見たらまずそうなんだけど、それでも誤飲の事例があるって事は

興味本位で喰った奴がいるのか、それとも受粉みたいに自分を食わせるような何かが

ドラゴンアップルの実から発せられているのか?

 

「アインストに加えて、ドラゴンアップルの害虫――インベス、ですか。

 本当にこの日本はどうなってしまうのでしょう……」

 

「アインストはクロスゲートを伝ってやって来ているのは俺の調べで分かっているんだが

 インベスがどうやって冥界からドラゴンアップルを持ち込んだのかは俺にも分からない」

 

天照様の言う通りだ。

禍の団(カオス・ブリゲート)、アインスト、インベス。そして三大勢力。

これだけの脅威にさらされている現状を顧みると、確かに超特捜課が立ち上げられたり

神仏同盟が立ち上がったりするのもうなずける。

ここに存在する脅威に対し、改めて立ち向かう事を決意するのだった。

 

……そしてここで新たな問題が発生する。と言うより俺にとってはこれこそが大事だ。

俺の身体だ。やはり兵藤から悪魔の駒を抜き取るより他仕方ないのか。

それをやれば恐らく奴は死ぬが……チッ。松田や元浜、桐生さんに何と言えばいいのか。

 

人間・兵藤一誠は既に死んでいるからある意味ではあるべき姿に戻すだけなんだがな。

それに……兵藤の親御さんはもう……

そういう意味では、兵藤は生かすべきなのか、それとも……

いや、今その事はやめよう。

なるようにしかならないんだ。俺の身体に関しては。

 

そう思っていると、署員の人が慌てて駆け込んできた。

 

「どうした?」

 

「警視! 避難所で騒動が……!」

 

――――

 

夜だというのが幸いした。俺と白音さん、柳課長は署員の人に連れられて

騒動が起きているという避難所の一角にたどり着いた。

話によると、騒動の中心には駒王学園の生徒らしき人物がいると言う事なので

万が一を考え、黒歌さんは天照様らと共に会議場に待機してもらっている。

こっちにまではぐれ悪魔だなんだと言う騒動は持ち込みたくない。

 

「どういうことだよ!? みんな……みんな死んじまってるなんて!?

 おい、誰か説明しろよ、おいっ!!」

 

「何の騒ぎだ! 時間を考えろ!」

 

声の主は……やはり兵藤だった。

もしかしてと思ったが、本当にもしかしやがったか。

しかしこのタイミングか……まずいな。

 

「うるせぇ! それよりどういう事なんだよ、父さんに母さんが死んだって……

 ちゃんと調べたのかよ!?」

 

「俺に質問するなぁ! それ以前に自分の名前を名乗れ!

 いきなり父だ母だと言われても誰の事かわからんぞ!」

 

柳課長の尤もな指摘が入る。ヒートアップしているのを見かねてか

署員の一人が柳課長に耳打ちをしている。

 

「警視。彼は駒王学園でも有名な札付きのワル……兵藤一誠です。

 まぁ、ワルって言っても喧嘩とかではなく覗きやセクハラと言った

 そういった方面でのワルなんですがね……」

 

「そうか……おい兵藤。こっちも情勢が落ち着いた頃合いを見計らって

 町の調査に乗り出しているが……その時にお前の家が完全に崩壊しているのが見つかった。

 そして、そこから死体は発見されていない」

 

「だったら! まだ生きてるかもしれねぇだろ!!」

 

「大黒柱の一本も残っていない状態の瓦礫の山だぞ!?

 とにかく今自衛隊が町全体で捜索活動を行っている。だが変な期待は持つな」

 

食って掛かる兵藤を、柳課長はそつなくあしらっている。

まあ、兵藤家だけでなく色々な場所でこうなっていることを考えれば

兵藤の錯乱する気持ちもそれなりに理解はできる。

俺だって、自分の家族や姉さんが同じ状況だったらって考えると……

 

……決して、兵藤の事は言えない。

 

「小猫! あなた今までどこに行っていたの!?

 それにセージも! 私は冥界への帰省に同行しないことは許可したけれど

 帰省後に別行動を取る事まで許可した覚えはないわ!」

 

「そこは成り行きでしてな。それにこっちだって、あと3週間とちょっとなんだ。

 それに、町がこんな状態ではなお更早く戻りたい。

 まあ、町がこんな状態だって知ったのはこっちに戻ってすぐですがね」

 

案の定、グレモリー部長に詰め寄られる。

実際、グレモリー部長の言う事には一応の理はある。

向こうでの出来事は確かに約束したが、こっちに戻ってからの事は

一切触れていなかったからだ。しまったな。

 

「……揉め事がしたいなら他所へ行け。ここは避難所でもあるんだ。

 ここに逃げ込んだ人々は不安な日々を過ごしている。

 その不安をあおるようなら、お前たちには出ていって貰おうか」

 

「ふざけんな! だったら行こうぜ小猫ちゃん!

 俺達だけでもこの町を……」

 

「嫌です」

 

兵藤の勧誘に、白音さんが即答で返した。

そのあまりの即答っぷりに俺も何も言えなかった。

 

「……え?」

 

「嫌です、って言ったんです。変態。

 祐斗先輩やアーシア先輩はともかく、今の部長達よりはセージ先輩の方が

 よっぽど信用できます」

 

「……セージ。あなた小猫に何か吹き込んだわね?」

 

「何も。と言うより、へんてこなものを使って

 洗脳紛いの事をしているのはそっちでしょうが」

 

白音さんの発言に対し、苛立ちをぶつけるように

グレモリー部長が俺に話を振って来る。だがその煽り方たるや稚拙で

呆れてものも言えない。なんで俺が白音さんに何かを吹き込まなきゃいけないんだ。

洗脳しているのはそっちだろうが。

 

「な……わ、私は……」

 

「おっと自由意思での契約だなどとは言わせませんよ?

 俺や兵藤、アーシアさんはもとより心身喪失状態だったと推測される

 祐斗や白音さんだって、心が弱ったところに付け込めばこういう結果にもなる。

 ギャスパーや姫島先輩は知りませんがね」

 

「ゆ、祐斗や小猫には新しい生命を謳歌してもらおうと思って……」

 

「その結果、祐斗はともかく白音さんは唯一の肉親と引き離されたわけですが何か?」

 

「く、黒歌ははぐれ悪魔よ! 主を殺した危険な存在を……」

 

「嘘つき。やはり部長は、私に嘘をついていたんですね」

 

俺達の証言に、グレモリー部長は徐々に追い詰められるように冷や汗をかき始めている。

だが今は、そんなことをしている場合でもない気がする。

 

「……帰るわよ、みんな。セージ、小猫を頼むわね……」

 

「部長! けれど……!」

 

「……人間もだけど、セージや小猫と事を構えるのは得策じゃないわ。

 ましてこんなところで戦うなんて、禍の団の思うつぼだわ」

 

「くっ……セージ、てめぇ……!」

 

「さっき柳課長が言ったろ。ここは避難所だ、喧嘩をする場所じゃない、と。

 それとグレモリー部長。俺は今日から超特捜課の所属になりましたので。

 よって今後、俺はあなたの命令ではなく警察の指示に従って善良な一市民として

 社会模範に恥じない振る舞いをしていきたい所存ですので、そこのところをよろしく」

 

「……そう。わかったわ。けれどあなたはイッセーと……」

 

その言葉を聞いた次の瞬間、俺は記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)……ではなく

紫紅帝の龍魂(ディバイディング・ブースター)の方をグレモリー部長に向けていた。

 

「その態度が続くようだから、俺はあなたを見限ったと言う事をお忘れなく。

 赤龍帝神話など、もう飾りでしかないと言う事がまだわかりませんか。

 ……兵藤。場合によってはお前も人間に戻すからな」

 

『……お前を殺して、悪魔の駒を抜き取る算段なのだろうな。相棒』

 

『そう言う事だ。そして俺にはお前を屠るだけの力がある。それを忘れるな』

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)越しに、ドライグとフリッケンも睨みあっている。

赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)紫紅帝龍(ジェノシス・ドラゴン)。以前は俺の勝ちだが、今度も俺が勝たせてもらうつもりだ。

 

すごすごと引き下がるグレモリー部長らの背中を見送る最中

祐斗とアーシアさんが俺に話しかけてきた。

祐斗はともかく、アーシアさんは意外だったが。

 

「セージ君。実は困ったことになっている。

 僕たちはディオドラ・アスタロトに嵌められたかもしれない。

 彼の狙いはアーシアさんだ。何とか彼女を守りたいが……」

 

「……チッ。世話の焼ける話だ。わかった、スパイの真似事をさせるようで悪いが

 何かあったら俺に教えてくれ」

 

「それとセージさん、ゼノヴィアさんや慧介(けいすけ)さん達は……」

 

「その質問には俺が答える。蒼穹会の伊草(いくさ)家の人たちは無事だ。

 寧ろ、彼らにも助けられている。心配する必要は無い」

 

「そうですか! ああ、よかった……」

 

一通りの情報交換を終える頃に、遠くから兵藤の声が聞こえる。

特にアーシアさんはこっちで保護したいところだが、それは却ってマズいと

祐斗にも言われたため、この場は二人を見送ることにした。




セージ、超特捜課入りを果たすの巻でした。

>インベス
まさかのアポロン様命名。
知らない(本人談)だけど絶対知ってるだろ!? とか言われても
知らない存じないと返されそうなのだ。全く迷惑な男なのだ。
ドラゴンアップル=ヘルヘイムの果実、ですからね。この世界では。

>ドラゴンアップル
番外編でもちらりとその存在が人間界にも来ていることが示唆されてましたが
ここに来てそのものだと判明。そして何故か味を知っている黒歌。
勿論食べてないので噂レベルの話ですが>まずい

>リアス
やってる事は立派なんだろうよ、けれど……ねぇ。
この世界では残念なことになってます、今更ですが。
特に黒歌の件を疑いもせずに真実を小猫に伝えてない時点でもうダメダメ。
小猫に限らず真面目に真実を明かそうとも積極的にトラウマ解消しようとしない時点で
所謂「話を聞かない教師」と同じレッテルを張られると思うんです。
つまり役立たず。

>イッセー
感想でも触れられましたが、もう何も言えねぇ。
負の面を見ればこうもなりましょうというか
警察にも知れ渡っている(寧ろ知れ渡らない方がおかしい)
札付きのワル認定されちゃってます。もう逮捕しろよ。
のこのこ警察にやって来たことだし。

……でも両親の件だけは同情……やっぱできんわ。
恐らく改築が原作通りに行われていたとしても襲撃は起きたでしょう。

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