ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

111 / 151
前回。

……うーん、ちょっとやり過ぎたかと思いつつも。
このまま通させていただきます。
(危惧したことに言及されていないことに安堵したのも私だ)


さておき。
お気に入り登録が600を超えました。
毎度のことながらありがとうございます。
クオリティが不安定な時もありますが
完結の目途はボチボチ立てているのでよろしくお願いします。

(何処をもって完結とするのか、って問題はありますが)


Soul72. 黒き楔を解き放て!

俺は宮本成二。

クラスメート、兵藤一誠のデートに不審なものを感じた俺は

後をつけるが、その先で堕天使レイナーレに瀕死の重傷を負わされる。

目覚めた俺は、リアス・グレモリーに歩藤誠二と言う名を与えられ

霊体になっていることを知ることになる。

 

ついに、黒歌さんと塔城さん――白音さんが再会を果たすことが出来た。

しかし、白音さんにはグレモリー部長の眷属であるという事実が。

黒歌さんにははぐれ悪魔と言う事実が重くのしかかっている。

 

そんな中、俺の恐れていた事態――はぐれ悪魔の暴走――が

ついに、黒歌さんにも適用されてしまうのだった。

 

――残された時間は、あと29日――

 

――――

 

「こっちだ! 来いっ!」

 

騎士(ナイト)」に昇格して召喚したバイク・マシンキャバリアーの砲撃を浴びせながら

俺達は変貌してしまった黒歌さんをグレモリー領の郊外へとおびき出そうとしている。

俺にだって、人口密度の高い屋敷でドンパチを繰り広げるわけにはいかないという

配慮位できる。

 

そんな俺の思惑通り、黒歌さんは砲撃を浴びせた俺を付け狙うように

さっきから迫ってきている。これで相手がバイクならば

ちょっとしたマシンチェイスなのだが、生憎と相手は巨大なネコ科の動物らしき怪物だ。

相手と乗っているマシンこそ違うが、このシチュエーションは

俺達が堕天使に殺されたときによく似ている。

あの時と違い、対処法の種類はかなり豊富だし、何より戦える自信がある。

 

……今度は逆に、殺すわけにもいかないというジレンマが発生しているが。

 

 

――確かにはぐれ悪魔である以上、処理するのは悪魔社会における常識だ。

だが、相手は塔城さん――白音さんのお姉さんだ。

それを、簡単に殺してしまっていいものか。

だから俺は、ある一つの賭けに出ようと思っている。

 

悪魔の駒(イーヴィル・ピース)さえ除去できれば、もしかしたら止まるかもしれないが……!)

 

俺はサイラオーグさんに、悪魔の駒の物理的な除去方法を聞いている。

だが、それは生死にかかわる問題でもあるし、そこまでの専門知識はない。

専門知識がないのはサイラオーグさんも同様で、手っ取り早く言えば

「無免許でがん細胞の摘出手術をする」ようなものである。

 

……どこのブラックジャックだ。けれど、少しでも可能性があるならば

それに賭けたいという思いもあるが……

とにかく、今は大人しくさせない事には始まらない。

 

勢いをつけて飛び掛かって来る黒歌さんを躱しながら

隣にグレモリー領の入り口を示す看板を確認する。

猫状態の黒歌さんを抱えて、入ってきた場所だ。

あの時は、まさかこんなことになるとは思いもしなかったが。

 

『こんなもんだな。そろそろ本格的に迎え撃つぞ、セージ!』

 

「ああ!」

 

マシンキャバリア―から飛び上がると、マシンキャバリア―は

元のフリッケンの姿に戻り、太極を模した碧と翠の宝玉へと消えていく。

それと同時に、纏っているアーマーのマゼンタカラーの濃度が増していく。

なるほど、フリッケンの力はこうやって移していたのか。

 

黒歌さんの方に向き直ると同時に、黒歌さんの前足がものすごい勢いで突っ込んでくる。

「騎士」の速さならば躱すのは簡単だが、逆に言えば喰らえばダメージは大きいだろう。

体格差にスピード。単純に威力は大きいとみて間違いない。

かといって「戦車(ルーク)」に昇格し直せば今度はスピードで負ける。

ここは「騎士」のまま戦った方がいいかもしれない。

 

SOLID-FEELER!!

 

「くっ……ぐぬぬぬっ!!」

 

触手で両前足を縛り上げるが、やはりダメだ。パワー負けしている。

転倒させるのが狙いだったが、これではとてもじゃないが狙えそうにない。

……だが、これならどうだ!

 

DIVIDE!!

BOOST!!

 

黒歌さんの力を吸収半減させ、さらにこっちのものにした上で倍加させる。

これならば、どれだけパワー負けしていてもこっちの有利に働く筈だ。

全く、呆れるほど負け知らずな能力だな、これは。

 

現に、黒歌さんの前足がへたり込みこのままなぎ倒すことで転倒を狙えるまでになった。

この機会を逃すわけにはいかない。

 

「でぇぇぇぇぇぇいっ!!」

 

「騎士」らしからぬ力業ではあるが、黒歌さんを転倒させることに成功した。

四本足の獣は、一度転倒させれば復帰が難しい。

馬とかは、それだけで生命の喪失に至れるほどだが、今回の相手は怪物だ。

同じに思わない方がいいだろう。

 

DIVIDE!!

BOOST!!

DOUBLE-DRAW!!

 

LIBRARY-ANALYZE!!

 

COMMON-SCANNING!!

 

「後は『悪魔の駒』を引っこ抜けば……ん?」

 

黒歌さんの身体をサーチしている最中、遠くから何かがやって来た。

――祐斗だ。む、このタイミングは些かまずいかもしれん。

 

「セージ君。君の事だから考えなしにやっているとは思えないが……

 部長の命令でね。そこのはぐれ悪魔の身柄を引き渡しては貰えないかい?」

 

「……悪いが断る。こっちも依頼を受けているんだ。

 そしてそれは、まだ完遂されていない」

 

暫し、祐斗との間に緊張した空気が流れる。

クッ、今はこんなことに時間を取られている場合じゃないんだがな。

この場で祐斗の相手をしながら黒歌さんの足止めをするとか無理だぞ。

分身したって無理だ。断言できる。

 

ところが、祐斗は腰の剣に伸ばしていた手を引っ込めるなり

こちらに歩み寄って来た。一体どういうことだ?

 

「……そういうと思ったよ。聞いたよ、こいつ……いや、彼女は

 塔城さんのお姉さんなんだよね? それは、あの時話していた話とも合致する。

 セージ君。まさかとは思うが、助ける方法があるっていうのかい?」

 

「確証はない。やってみない事には何とも。

 できればグレモリー部長を説得してもらいたいが……

 いや、それよりも方法を取るにあたって白音さん――塔城さんの許可が欲しい。

 下手をすれば殺してしまう事になる。そんな方法を親族に無許可では出来ない。

 ……悠長なことを言っている場合でもないが、俺だって自信がないんだ」

 

つい弱音を吐いてしまうが、本音だ。

そもそもサイラオーグさんに教わった方法だって確実じゃない。

だが、それでもその方法を取る理由。それは――

 

――はぐれ悪魔として狙われているのならば、はぐれ悪魔で無くせばいい――

 

と言う、単純な発想だ。そして、極めて原始的な方法でそれを成そうとしている。

政府に直談判なりなんなりして、黒歌さんのはぐれ悪魔認定を

取り消す方法だってあるかもしれない。

だが、今までの俺の見てきた範囲でそれは期待できそうもない。

ならば、手っ取り早く原始的な方法を取る事を選んだのだ。

それが「悪魔の駒の物理的な除去」である。

勿論、リスクたるや半端ではない。サイラオーグさん曰く「生命にかかわる」のだ。

そんな方法を、親族である白音さんに黙って取るわけにはいかない。

 

「祐斗、メッセンジャーに使って悪いが塔城さんに伝えてくれ。

 『黒歌さんが助かるかもしれない方法はある。だがそれは、命にも関わる方法だ。

  そして、今黒歌さんを助けるにはこの方法しか俺は知らない。

  だからその方法を取る』と」

 

「分かった……と言いたいとこだけど、その必要はなさそうだよ?」

 

祐斗が親指で指示した方向を見ると、白音さんが息を切らしてそこにいた。

「騎士」の祐斗に若干遅れる程度のスピードでここまで来たのか。

その根性に感服すると同時に、俺は声を張り上げて白音さんに問い質そうとするが――

 

「はぁっ、はぁっ……か、構いません……!

 ね、姉様を……助けられるなら……はぁっ、はぁっ……

 けれど……セージ先輩……一つお願いが……はぁっ……あります……!

 

 ……姉様をもし殺すにしても、『はぐれ悪魔』としてではなく……

 『猫魈(ねこしょう)』として……黒歌姉様を眠らせて……ください……!!」

 

息を切らせながら、白音さんは俺に頼み込んでくる。

最も、その願いは俺ももとよりそのつもりだった。

力に溺れた犯罪者としての彼女ではなく、妹を護るためその身をやつした

猫魈・黒歌としての彼女を救うつもりだったのだ。

そもそも、前者は初めから存在していない。存在しないものを救うのは

俺でも、きっとフリッケンでもできないだろう。

俺は黙って頷き返し、改めて黒歌さんのサーチを始める。

悪魔の駒の場所さえわかれば……

 

ところが。塔城さんが来たと言う事は。

他の誰かがやってくる可能性もあったというわけで。

 

『セージ! 滅びの魔力が飛んでくる!』

 

「――っ!?」

 

SPOIL

 

SOLID-DEFENDER!!

 

止む無くサーチを打ち切り、ディフェンダーで滅びの魔力を弾き返す。

ディフェンダーの力が増していることに驚きながらも、こんなことをするのは

数人しか俺は知らない。そう――

 

「……どういうつもりかしら、セージ」

 

「グレモリー部長! あんた、妹の目の前で姉を殺す気ですか!?

 とても正気の沙汰とは思えませんな!」

 

「正気の沙汰じゃないのはお前の方だろセージ!

 そいつははぐれ悪魔なんだろ、はぐれ悪魔が小猫ちゃんを攫いに来た!

 俺にはさっきの話、そう聞こえたぜ!」

 

……ま、まあ見様によってはそう見える……のか?

とにかく、俺はグレモリー部長の滅びの魔力を弾きながら抗議する。

こんな形で妨害が入るとは思わなかった。

 

「小猫は下がりなさい。黒歌はセージが足止めしてくれたわ。

 けれどセージ、あなたには聞きたいことが山ほどあるわ。

 ……イッセー、祐斗」

 

敵対者を見るような目で、グレモリー部長は俺を睨んでくる。

祐斗よりよほど厄介なのが、ここにいたか……

これこそ、本当に分身しても無理な話だ。

どうやって、この状況を切り抜けようか。

 

……ところが。思わぬ出来事が起きた。

何と黒歌さんとの間に、白音さんが割って入ったのだ。

まるで、黒歌さんを庇うように。

 

「……やめてください。姉様はセージ先輩が助けてくれると言いました。

 それに、姉様ははぐれ悪魔じゃありません。

 もしはぐれ悪魔になった理由が私にあるなら……

 

 ……私も、はぐれ悪魔になります」

 

「小猫!? あなた自分が何言ってるかわかっているの!?

 自分から犯罪者になるって言っているようなものなのよ!?

 ……いえそれどころか、あんな怪物に自分からなりたいというの!?」

 

「……っ!!

 姉様は、姉様は怪物なんかじゃありません!!」

 

次の瞬間、白音さんの平手打ちがグレモリー部長に炸裂した。

これには、その場にいた全員が呆気にとられていた。

仲間の事となると盲目的に口やかましいイッセーでさえ、言葉を失っている。

無論、俺と祐斗もだ。

 

「小猫、あなた……」

 

「……わからずやはどっちですか、部長。

 私は路頭に迷っていた私を助けてくれた部長の事も、信じようとしてました。

 でも今の部長は信じられません。

 部長は、自分と、イッセー先輩の事しか見てないように見えます。

 だからセージ先輩にあんな真似をされたんだと、私は思ってます。

 自分の事はともかく、あんな変態のどこがいいんですか。

 赤龍帝だからですか? それなら、イッセー先輩に対しても失礼だと思います。

 同情はしませんけど。

 

 ……セージ先輩、今の内です。姉様を……黒歌姉様を助けてください。

 もしダメなら……セージ先輩に、介錯をお願いします。部長ではなく、セージ先輩に」

 

まくし立てる白音さんに、グレモリー部長は言葉を失っていた。

後ろでイッセーが巻き添えを喰らっているが、白音さんの言う通り同情はしない、出来ない。

足止め役を買って出てくれた白音さんに応えるべく、俺は黒歌さんの悪魔の駒を探し直す。

場所さえわかれば……

 

「……部長。悪いですけど今回ばかりは僕も塔城さんに同意見です。

 それに、言ってしまえばセージ君は『はぐれ悪魔への対処』を引き受けている立場です。

 はぐれ悪魔への対処は誰がやろうか、どうやろうかに差異はないと思ってます。

 ちょっと、ずるい考えですけどね。

 何より、親族である塔城さんが直々にセージ君を指名したんです。

 僕には家族ってのがいませんけど、それだからこそ家族を思う塔城さんの気持ちは

 尊重すべきなんじゃないかって思ってます」

 

「木場! 俺達が家族みたいなもんじゃ……」

 

「……イッセー君。君はこの件に関しては部長以上に無関係じゃないかい?

 塔城さんの主である部長ならいざ知らず、指名もされていない君が

 塔城さんのプライベートに関わるのは感心しないよ?

 現に副部長は会場で部長の代理を務めている途中だしね」

 

「くそっ! やっぱてめぇみたいなイケメンは……」

 

「……前々から言いたかったんだ、イッセー君。

 君は以前僕の事を仲間だと言ったよね?

 けれどその割には扱いがぞんざいじゃないかい?

 それに君は僕の事をイケメンだイケメンだって言うけど

 僕だって好きでこの顔で生まれたわけじゃないんだからね……?」

 

今度はイッセーと祐斗で言い合いが始まっている。

どうやら祐斗もイッセーに言いたいことがあったらしく。

まあ、あまり他人の身体的特徴をとやかく言うのはよろしくないんじゃないかと思う。

それがプラスの方向でも、イッセーのそれは悪意を持っての部分が含まれているのは

言っちゃなんだが容易に察せる。

やっかみを受け続ければ、そりゃあ何か一言言いたくもなるか。

 

さて。そんなわけで黒歌さんのサーチを再開するが

そうこうしているうちに黒歌さんの力が回復してしまったらしい。

転倒した体を起こし、触手を引きちぎって再び暴れ出してしまう。

 

「オアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

頭がひび割れそうな咆哮と共に、我武者羅に辺りにあるものを薙ぎ払う。

これには流石に回避が間に合わず、ディフェンダーで辛うじて防御するが

他のメンバー共々吹っ飛ばされてしまう。

何とかして足を止めないと、悪魔の駒の除去どころの話じゃない!

しかし相手の動きは素早く、もう一度転倒を狙うにしてもうまく行くかどうか。

 

「やってくれたな! こうなったら……『禁手化(バランスブレイク)』ッ!!」

 

WERSH DRAGON BALANCE BREAKER!!

 

イッセーの奴、禁手(バランスブレイカー)を使いやがったか!

確かにあのパワーならば、黒歌さんの動きを封じるにはもってこいだが。

実際、赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)に身を包んだイッセーは

黒歌さんの尻尾の片割れを掴んで振り回そうとしているが――

 

「がはっ!?」

 

猫又系の妖怪には、尻尾が二本以上あるのは常識だろうに。

そう。もう片方の尻尾に弾かれてしまったのだ。

それもあって、俺は背後に回っていなかったのだ。

 

「イッセー君! くっ、少し痛いけど我慢してくれ! 『聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』!!」

 

祐斗が黒歌さんの背に飛び移り、聖魔剣を突き立てようとするが

黒歌さんは激しく体をゆすって抵抗している。

そのためか、祐斗も力を入れられず聖魔剣が突き刺さらない。

 

「イッセー! 祐斗! こうなったら……」

 

今度はグレモリー部長がチャージを始めるが、そんなものがスピードの速い黒歌さん相手に

まともに通るはずがなく。あっという間に攻撃に晒されてしまう。

盾になり得るイッセーも祐斗も動けないとあっては、俺が動くしかないのか!?

 

……と考えた矢先に、白音さんが動いていた。

 

「こ、小猫……」

 

「……さっさとどいてください、部長。

 姉様、大人しくしててください。今から、私たちが助けますから……!」

 

白音さんの身体から白いオーラが溢れ出す。

それと同時に、身体が全体的に大人びた雰囲気へと変わり

服装も黒歌さんほど扇情的ではないにせよ艶のある雰囲気の和装へと変わり

猫耳も二股の尻尾もその存在を主張している。

その姿を見るや、黒歌さんの動きが一瞬鈍る。

白音さんも、心なしか苦しそうではある。

 

「……っ。け、けれど姉様の苦しみに比べたらこんなもの……!

 セージ先輩、今の内です、姉様を……姉様を解放してください……!!」

 

「あ、ああ! 少し手荒な方法で行く!」

 

DEMOTION

 

DIVIDE!!

BOOST!!

 

DIVIDE!!

BOOST!!

 

DIVIDE!!

BOOST!!

 

DIVIDE!!

BOOST!!

 

DIVIDE!!

BOOST!!

 

昇格(プロモーション)」を解き、可能な限りの分身を生み出し黒歌さんを取り押さえようと食らいつく。

白音さんの変化は気になるが、今はそっちよりも重要なことがある。

黒歌さんを、黒歌さんを止めるんだ。

白音さんとの約束。今こそ果たすためにも!

 

数に物を言わせ、強引に黒歌さんを抑え込む。

傍から見ればまるでガリバー旅行記だが、そんな生易しいものじゃない。

何せガリバーは暴れている。放っておけばガリバーは死ぬ。

その治療を行うのだが、とんでもない荒療治である。

 

(悪魔の駒……悪魔の駒の場所さえわかれば!!)

 

だが、その肝心要の患部――悪魔の駒の場所がわからない。

それを抜き取れさえすれば、この事態は収束するのではないかと踏んでいるのだが。

そんな時、白音さんのオーラがある一点に集中しているのが見えた。

その部分だけ、黒いオーラを発している。その黒いオーラを包み込むように

白いオーラが流れ込んでいるのだ。ま、まさか……

 

『……なるほどな、大体わかった。

 セージ、あのオーラが集まっているところだ! あそこを狙え!』

 

「今回は大体じゃ困るぞフリッケン! だが、如何にもって感じではあるよな……

 白音さん! あのオーラの場所を突く!」

 

「……わかりました。きっと、そこが姉様を助けるカギになるかもしれません」

 

黒歌さんを転倒させ、抑え込む最低限の分身だけを残し俺は分身を消去させる。

攻撃の精度を上げるためだ。

 

SOLID-LIGHT SWORD!!

 

光剣を手に、白と黒のオーラが交わる場所に狙いを定める。

ところが、さっきの祐斗と同じように俺も振り落とされそうになってしまう。

何せそこは、猫の腹部分。最も触られるのを嫌がる場所だ。

そしてそこに刃を立てるというのだ。そりゃあ嫌がるだろう。

 

「……祐斗先輩、イッセー先輩。手を貸してください」

 

「分かった! 動きを止めればいいんだね?」

 

「……小猫ちゃん! 後でちゃんと説明してもらうからな!」

 

祐斗とイッセーも加勢し、黒歌さんの動きを封じる。

祐斗は「魔剣創造(ソード・バース)」で周囲に猫避けの如く剣を出し。

イッセーは鎧の籠手部分から触手を出して縛り付けている。

 

……その能力を欲望のままに使わないのは褒めてやるよ。いや本当に。

今使おうものなら先に始末してるところだったが。

 

BOOST!!

 

さて。こうして協力もあるんだ。俺もやれることはやる!

倒れ込んだ黒歌さんの腹部分に光剣を突き立てる。

そして、そのまま今度は……

 

「うおおおおおおおっ!!」

 

光剣を抜き去った直後、右手を傷口にぶち込む。

これについては、過去にレイナーレやヴァーリにぶちかましたアレの要領だ。

抜き出すものが神器(セイクリッド・ギア)から悪魔の駒に変わったが、多分理屈は同じだろう。

 

「フギャアアアアアアッ!!」

 

またしても頭の割れそうな黒歌さんの咆哮が響き渡る。そりゃそうだろう。

やってるこっちも想像するだけで痛い。だが、やらねばどうにもならない。

黒歌さんへのダメージ、抑えつけている人員の力、両方を考えても時間はかけられない。

手探りで黒歌さんの体内を抉る。そんな中、肉の感触の他に固い感触があった。

 

――これかっ!!

 

「ギニャアアアアアアアアアッ!!」

 

躊躇わず、俺はその固いものを握りしめ取り出した。

血しぶきを上げ、黒歌さんの体内から俺の腕が出てくる。

赤く染まったその手の内にあったのは――悪魔の駒、「僧侶(ビショップ)」の駒だった。

 

「や、やった……」

 

『まだだセージ! そいつをそのまま破壊してしまえ!!』

 

「そ、そうだった……これでどうだ!」

 

EFFECT-RUIN MAGIC!!

 

俺は悪魔の駒を空中に放り上げ、グレモリー部長の滅びの魔力をぶつける。

制御が難しいこのカードだが、跡形もなく消し去る分には問題ない。

いつの間にか、コストも賄えるようになっているし。

滅びの魔力を受けた悪魔の駒が消滅するとともに

黒歌さんの身体も見る見るうちに元に戻っていく。

 

――悪魔の駒の影響から、逃れられたと言う事なのだろうか。

だが、その胸からは血がとめどなく溢れている。一難去ってまた一難。

今度は、この怪我の治療をせねばならない。となれば答えは一つだ。

 

RELOAD!!

 

PROMOTION-KNIGHT!!

 

すかさず「騎士」に昇格し直し、マシンキャバリアーのサイドカー部分に黒歌さんを乗せる。

武装を取り払った後部には元の姿に戻った白音さんが飛び乗っている。

白音さんもあの力を使った影響か、調子が優れなさそうだが……

 

「セージ先輩、アーシア先輩なら……けほっ」

 

「ああ、もとよりそのつもりだった! けれど乗るならなるべくしっかり捕まってくれ。

 それか、ここに残って……」

 

「……嫌です。連れて行ってください。私なら大丈夫ですから……」

 

俺がマシンキャバリアーを発進させようとすると、グレモリー部長から待ったがかかる。

何の用だ、急いでくれ。こっちは怪我人抱えてるんだ。

 

「ま、待ちなさいセージ! はぐれ悪魔の治療なんて――」

 

「……何のことですかな? 彼女にはもう悪魔の駒はない。

 そうなれば、はぐれ悪魔どころか転生悪魔ですらない。

 今ここにいるのは、ただの怪我人です。怪我人は救う。それは当たり前の事でしょうが。

 さて、用がないならこれにて失礼、怪我人の搬送は一刻を争うんで」

 

「……一本取られましたね部長。なるほど、セージ君はこれが狙いだったのか。

 これなら、彼女ははぐれ悪魔黒歌ではなく……塔城さんの姉、猫魈黒歌。

 僕達悪魔に、彼女を裁く法はないと思いますよ」

 

祐斗の言葉を背に、俺はマシンキャバリアーのアクセルを全開でふかし

グレモリー邸へと全速力で向かうのだった。




やっと1個フラグを回収しました。
当初悪魔の駒は戦車の力で砕く予定でしたが
思うところがあって滅びの魔力で跡形もなく消去させました。
これで対外的にはリアスが黒歌を討伐したことになるし(多分)
黒歌は悪魔の駒が無くなったことで転生悪魔ですらなくなったわけで。

今回の件は今までの戦闘データと情報がどれか一つでも無ければ
成功しなかったと思います。特にサイラオーグさんはGJ。

>セージ
「どんだけ術式レベルの高い~」と言った地の文を入れようかと思いましたが
そんなタドルクエストやってる余裕なんかあるわけがないというわけで却下。
でもやっていることは無免許かつ麻酔無しの除去手術と言うね。
やる方が痛いんじゃないかってレベルの荒業でした。
そして早速マシンキャバリアーのもう一つの形態、キャリアーモードを活用していたり。

>小猫
白音モード解禁。実際にはもっと前に一度使ってますが。
ここで気の流れで悪魔の駒の場所を探り当てるのは某尻彦さんの最期の活躍こと
バードメモリブレイクの流れを参考にしてます。
あちらはドライバーを利用したシンクロでしたが、こちらは姉妹による気の性質を利用したものと
考えていただければ。
ヒロイン度が上がってる気がしますが気のせいです、気のせい。

>木場
よくイッセーにイケメンガーイケメンガーと揶揄される彼ですが
ふと思ったんです。「これって身体的特徴を詰られている」のとどう違うんだ? って。
そりゃ見た目的にはハゲとかよりはいいかもしれませんが……
方向性が違うだけで、あまり他人の身体的特徴を詰るのは良くないと思うんですよ。
そんなわけで、リアスにはまだ忠義がありますがイッセーには不信感が芽生えているという
これもまた何かの種になりそうなものが……

>イッセー
今回はセージが乗り物使ったおかげで追いつくのに時間がかかり、影は薄め。
何気に珍しく「真面目に能力を行使している」場面もあったり。
……ええ、それくらい原作の彼は「真面目に能力を行使している」イメージが薄いんですよ、私の中では。
あと、原作ではこの時期で胸突いて禁手、でしたが
拙作ではこの前に既に自由に禁手に至れるようになってます。
……それだけですけど。

>リアス
小猫に叩かれました。イッセーにも言えることですが(寧ろイッセーにこそ言えることですが)
なんで原作には「叩いてでも諫める」ポジのキャラがいないんでしょうね。
まぁ、ハーレムにそんな奴は要らないんでしょうけど
テロ組織相手にしてたり外交やっててそれは絶対にやっちゃいけないパターンなんですがね。

>黒歌
暴走時のモチーフはバイサーとペルソナ2罰の黒猫(?)。あれを猫と言っていいものかどうかはわかりませんが。
ドット絵の都合とかあるんでしょうけどそれにしたって……
悪魔の駒が無くなったことで転生悪魔ではなくなりました。
よって、はぐれ悪魔以前に転生悪魔でないのだからはぐれ認定ってどうなるの?
そんな状態です。その答えは次回。セージは「無効だろ」との見解を示してますが。
これも原作で「転生悪魔になったらそれっきり」ばっかりだったので
セージの今後も合わせ、転生悪魔の悪魔の駒を何らかの方法で除去したらどうなるか。
の拙作での解釈となります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。