ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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書いてたときは微妙にスランプ。
筆のノリがいまいちよくありませんでした。
あくまでも主観ではありますが。


Soul68. 邂逅する流れ者

俺は宮本成二。

クラスメート、兵藤一誠のデートに不審なものを感じた俺は

後をつけるが、その先で堕天使レイナーレに瀕死の重傷を負わされる。

目覚めた俺は、リアス・グレモリーに歩藤誠二と言う名を与えられ

霊体になっていることを知ることになる。

 

冥界に向かった俺は、フェニックス家の領地に迷い込んでしまう。

レイヴェル・フェニックスの追撃を辛くもかわした俺は

追撃回避に協力してくれた、盗聴バスターバオクゥのヤサに

一緒に向かう事にした。

 

――残された時間は、あと52日――

 

――――

 

バオクゥのヤサ――アジトは、何やらあちこちに機械が設置されていて

とても少女の部屋とは思えない雰囲気である。まぁ、見た目少女ってだけだから

悪魔を外見で判断するのは良くないのだろう。

 

「あ、適当に寛いでてください。何にも出せないのでお茶とかは適当に飲んでいいですよ。

 でも機械にはあんまり触らないでくださいね」

 

「調べりゃ使い方位はわかるかもしれないけど、邪魔はしないよ。

 助けてもらった恩もあるからね」

 

言われるままに、適当に座り込みバオクゥの様子を眺めている。

何かのログを読んでいるらしく、何かスキャンダルを追っていることは間違いないだろう。

 

「……セージさん。とりあえず、あれから情報の更新がされてないんで

 まず情報交換といきませんか?

 セージさんが何故あそこにいたのかも、それで分かると思いますし」

 

「賛成だ。最後に話したのはインタビューの時だったな。あれからな……」

 

それから、俺はつい話し込んでしまった。内ゲバとしか言いようがない

あの戦いのことを触れるのは、何やら気恥ずかしいものもあったが言わないわけにもいかない。

それと、異次元にいたアモンと言う悪魔の事も。

 

「あ、アモンですって!?

 こ、これには流石の私もビックリですよ! 私も名前でしか聞いたことがありませんが

 政府の握っている裏情報の代表格として、私ら噂屋の間では

 有名な存在なんですよ、アモンって!」

 

「らしいな……俺も魔王陛下の驚きようを見て何事かと思ったよ」

 

本当に何者なのだろう、アモン。

勇者とも、裏切者とも言われるその悪魔の事は、流石にバオクゥでも詳しく知らないみたいだ。

あの陛下の驚きようから察するに、緘口令を敷いていると見て間違いなさそうだが。

 

……それにしても、インタビューの時となるとそれほど前でもないにもかかわらず。

こうも話すことが多いと言うのは一体何なのだ。

それだけ、俺にとって実質訣別にも等しいリアス・グレモリーとの戦いは

大きな出来事だったのだろう。あれだけの事をしておいて、はぐれ悪魔認定されていないのは

やはり俺とイッセーの悪魔の駒が共有状態にあることの証拠だろう。

俺がはぐれになれば、イッセーもはぐれにせざるを得なくなるだろうからな。

イッセーを中心に考えれば、いくら俺が目の上のたん瘤でも迂闊なことは出来ない、って事か。

……結局イッセーイッセーで、俺は何なのだと考えてしまうのは、悪い癖なのかもしれないが。

 

「……それにしてもどんだけ無茶してるんですかセージさん。

 私は純血悪魔ですが、そんなもの貰ってないんでその辺の事情は残念ながら疎いんですけど

 よく悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の支配を跳ね除けて平気でいられますね」

 

「そういうモノなのか? とりあえず俺はまずこの悪魔の駒ってものについて

 もっと詳しく知りたいんだ。こいつをどうにかしない事には、俺の目的は果たせない」

 

俺の言葉に答えるように、バオクゥはさっきからキーボードをたたいている。

暫くして、モニターにでかでかと何かのサイトが表示される。

何々……「リリス冥界大図書館」?

 

「首都リリスに存在する、冥界で一番おっきい図書館です。

 ここなら、多分セージさんの探してる情報も集まるんじゃないんですかね?

 ただ……」

 

「……察しはついた。悪魔の駒の情報ともなれば、国家機密もいいところだ。

 それがそう簡単に筒抜けになるようなところにあるわけがない、だろう?」

 

「そうなんですよ。師匠譲りのハッキングで図書館のサーバーにアクセスしてみたんですが

 やっぱりそういうモノの本はあっても、持出禁止だったりそもそも閲覧禁止だったりで……

 ってセージさん、どこ行くんですか? ま、まさか……!」

 

次の目的地が決まった。リリス冥界大図書館。

ここに、俺の探す手がかりがあるのだろう。そう願いたい。

挨拶もそこそこに、俺はバオクゥのアジトを後にしようとするが――

 

「だったら私も行きますよ。そもそも、セージさんリリスの場所わかります?

 餅は餅屋。こういう時こそ、私みたいな情報屋の出番だと思いますけど?

 案内位はただで引き受けますよ、セージさんに付いていれば十分元とれそうですし。

 それに……アモンの情報も手に入りそうですし!」

 

「いいのか? 言っちゃなんだが俺はかなりデリケートな存在だぞ?

 下手に俺とつるんでると、要らぬ風評被害を受けることになりかねない」

 

「ま、そこは色々な意味でリーさんを見習うって事で。

 師匠も荒事には色々首突っ込んでたみたいですし?

 その師匠――パオフゥに肖ってこの名前名乗ってるんですから、荒事の心得位はありますよ。

 最も、指弾が得意だった師匠と違って、私は――」

 

そう言って、バオクゥの背中から取り出したのは――砲台。まごう事無き、砲台。

天照様のよりははるかに小さいが、それでもそれなりの大きさはある。

両手でないと支えられなさそうな、少々大きめの砲台。武器、持ってるんだ。

 

「この20.3cm砲が文字通り火を噴いちゃいますよ!

 ……あ。明らかに20.3cmも口径ないだろってツッコミは一切聞きませんので悪しからず」

 

「何も言ってない」

 

「ありゃ。結局突っ込まれちゃいましたか。あはは、一本取られちゃいましたねぇ。

 とにかくそんなわけですから、私もご一緒させていただきますよ!」

 

正直、バオクゥが同行してくれるのは非常にうれしい。

今の自分が置かれている立場を考えると、二つ返事をしづらい事情はあるのだが

それにもかかわらずこうして同行してくれると言うのだ。

そこにたとえ下心があろうとも、今はそれを甘んじて受けるのが最善だろう。

それならそれでwin-win――互いに気兼ねなく本懐を遂げられる。

 

その後、日を改める形でバオクゥのアジトに一晩泊まり

翌朝、改めて出発することとなった。

目指すは、首都リリス。

 

――――

 

翌朝。

準備も万端に済ませ、出発した俺達の最終目的地は冥界の首都、リリス。

そこにあると言うリリス冥界大図書館。

そこの蔵書の中に、俺が目指すべきもの――悪魔の駒の除去方法があるのではないか。

その情報をバオクゥから得た俺は、フェニックス領近くにあったバオクゥのアジトから

リリスに向けて移動を開始した。

 

バオクゥも付いている。と言うか、彼女の案内が無ければ俺はまた道に迷っていた事だろう。

それくらい、俺には冥界の土地勘が無いのだ。

辛うじて――

 

DIVIDE!!

BOOST!!

DOUBLE-DRAW!!

 

RADAR-ANALYZE!!

 

COMMON-SEARCHING!!

 

――こうして、周囲に何があるかの探索を行うことが出来るくらいだ。

 

「セージさん、それって確か濫用すると疲れるやつじゃなかったでしたっけ。

 私の方が土地勘ありますから、それはいざって時まで取っておいた方がいいですよ」

 

「……いや、なるべくなら早くたどり着きたい。情報量もわからないんだ。

 処理しきれずに時間切れ、なんてオチは避けたいのがある。

 だから、少しでも早く目的地に……っ」

 

バオクゥの指摘通りだ。これは範囲を広げれば広げるだけ、俺にかかる負担が増す。

だが、こうでもして一刻も早く首都リリスへの道を探さなければならない。

そう思って、さっきからレーダーを広範囲に展開しているのだが……

 

「ほら言わんこっちゃない! 顔色悪いですよ!」

 

「……参った。どうやら悪魔の駒の共有の影響か、俺は転生悪魔の癖に

 この冥界の環境が肌に合わないみたいだ。その癖悪魔祓いの影響は普通に受けるんだから

 困ったもんだ……」

 

「さ、それ仕舞ってください。そこの木陰で休みますよ。

 全く、色々無茶しすぎなんですよセージさんは……」

 

返す言葉もない。これでは逆に遅くなってしまうだろう。

事実、アジトを出てからもう一泊しているのだ。

俺は町中では記録再生大図鑑と紫紅帝の龍魂を隠して顔を布で覆っている。

ジャーナリストとそのアシスタント、という触れ込みらしいが

これでよくバレないものだ。顔は火傷のせいとしてあるが。

余談だが「メイクをしてそれっぽくしようか?」と提案はしたものの

即刻却下された。何故だ。まぁ手間は手間だから別にいいのだが。

 

「そうだ。一応リーさんにも連絡入れておきましたから。

 リリスに向かう途中に、中立区域になっている街がありますので

 そこで落ち合う事になってます。一休みしたら、そこが目的地ですよ。

 現在地さえわかれば、あとは私が案内しますから……無茶しちゃダメですからね」

 

「うっ……わ、わかった」

 

と言うわけで、リリスに向かう途中にあると言う中立区域。

そこをまず目指している。しかも最近冥界にはテロ組織がうろついていたり

挙句の果てにはアインストが動いていると言うではないか。

そういう意味での足止めも喰らっている。と言うか、そっちで力を使ったりしなければ

レーダー展開でここまで消耗するはずがない……と思っているのだが。

 

まさかとは思うが、俺が想定している以上に早く身体が消耗してないよな……?

そうなると残り時間は俺の想定よりも短い計算になる。

軽く見積もっても1か月半ってところだが、それより短いとなると……

いや、深く考えるのはよそう。焦りは禁物だ。

 

「――ええ、そういうわけですので、ええ、ええ。

 大丈夫です、セージさんの身柄は私が責任をもって保護しますから。

 今のところ大丈夫ですって――」

 

俺が一息ついていると、バオクゥはリーと連絡を取っているみたいだ。

……なーんか、俺はこのままドナドナよろしく売られるのではないか、って感じの

話の内容にも聞こえたが……それこそ悪い方向に考えすぎだ。と、思う。思いたい。

……やれやれ。ちょっと疑心暗鬼が過ぎる。いくら相手が悪魔だからって。

常に最悪のケースは想定しろと言うが、こういう意味でもないだろう、とは思うが。

 

「――ふぅ。リーさんもなんてのを抱え込んだんですか……っととと。

 その様子ですと少しは休めたみたいですね、セージさん」

 

「ああ、おかげさまで。それじゃ出発しよう。まだリリスやその合流地点は遠いのか?」

 

「リリスはともかく、合流地点はもうすぐですよ。

 ただセージさん。リーさんと合流しても驚かないでくださいよ?

 下手な騒ぎになると、ちょっとどころでない問題が起きちゃいますから」

 

バオクゥの言わんとしていることがいまいちわからないが

合流はもうすぐ果たせそうなのだろう。それならば問題はない。

早いところ合流して、リリスに向かう。

俺の目的ははっきり言ってしまえば今はそれだけだ。

立ち上がり、俺達はリーがいると言う中立区域の町を目指して移動することとなった。

 

――そこで、そのとんでもないものとやらに出会う事になるのだが……

 

――――

 

「よう。その後ろの顔面ミイラがあいつか」

 

「あ。セージさんセージさん、それ取っていいですから。

 ここはフェニックス領とかグレモリーに対して悪感情を抱いている

 悪魔の管轄区域じゃないですから。素顔晒しても大丈夫ですよ」

 

「いや、二人には割れていても、冥界では表向き俺の顔は割れていない。

 あまり冥界で俺の顔を割りたくないんだ。だからこのままで」

 

有名無実になっている感はあるが、俺にだって色々考えはある。

仮面付きで売れているのなら、それで別に構わない。

元々悪魔社会と素顔で付き合うつもりは無かったのだ。

……最も、お偉いさんには顔割れちまってるが。

そんな俺の考えなどお構いなしに、リーはまくし立てるように話を進めていく。

 

「まぁ、仮面付きの方が有名ってケースも無い事は無いからな。

 俺はどっちでも構わないさ、売れりゃあな。

 ……さて、そんなことよりも、だ。バオクゥ、俺だってとんでもない特ダネ捕まえたんだぜ?

 見て驚くなよ?」

 

そういって、リーが連れてきたのは矢鱈と肉感的で……その、目のやり場に困る花魁衣装のような

着物を……着崩した? と言うべきなのか? な女性。

猫の尻尾と猫耳が見える辺り、そういう種族なのだろう。しかし……

 

(……フェニックスのところのとは比べ物にならないし、塔城さんとも……うん?

 そういや、猫耳と尻尾が黒いな。それに尻尾……二本無いか? ま、まさか……)

 

「そっちのミイラのお兄さんの視線、なんだかいやらしいにゃん」

 

「……っ!」

 

思わず目を背けてしまった。うん、そういう風に言われたら目をそらしてしまう。

反射的な行動であって、俺は別に悪くないしそういう風に見ていたつもりも無い。

言ったところで言い訳になりそうだが。

 

「おっと。いくらここが中立区域だっつったって、通報とかされたら

 俺らだってタダじゃすまないんだ。何せ連れているのが連れているのだからな」

 

「んもー。そんなに褒めたら恥ずかしいにゃん」

 

……俺にはその格好の方が恥ずかしいと思うんだが。

いやまあ、どこぞの魔王陛下よりは余程マシだと思うし、正直に言えば似合っている。

けれど、一体全体……

 

気になったので、記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)を出してみることにした。

 

BOOT!!

COMMON-LIBRARY!!

 

「……えっ」

 

記録再生大図鑑で呼び出された彼女のデータ。

そこには、俺が感嘆の声を漏らし、反応せざるを得ない回答が導き出されたのだ。

薮田先生みたく、文字化けしたわけじゃない。寧ろデータはきちんと出た。

出たんだが……

 

――黒歌。猫魈(ねこしょう)と呼ばれる妖怪であったが、ある悪魔と契約を交わし転生悪魔となる。

しかし、妹の白音を護るために主の悪魔を殺害。SSランクのはぐれ悪魔として

冥界全土に指名手配中。仙術や妖力を用いた戦い方を得意とする。

 

「黒歌……ってことは、塔城さんのお姉さん!?」

 

「んにゃ? 塔城って知り合いはいないにゃん。私の妹は白音って名前よ?」

 

――なお、語尾に「にゃ」「にゃん」とつけているのは完璧なるキャラ付けである。

 

記録再生大図鑑よ。そんな情報は要らない。

って事は……とうとう見つけたわけか。まさかこんな形で遭遇するなんて。

 

「……っとと。俺は歩藤――いや、宮本成二。

 塔城……いや、白音さんに頼まれて、あなたを探していたんだ。

 最も、今こうして出会えたのは完璧に偶然なんですがね」

 

「んにゃ? 白音が? ……ふーん……どうやらそっちのミイラのお兄さんとは

 ゆっくりお話ししないといけないみたいにゃん」

 

そう言う黒歌さんからは、ただならぬオーラを感じる。

……む? これはまさかマズい方向に解釈してないか?

もしそうだとしたら、非常に面倒なことになる。

と言うか、この事を塔城さんに連絡したいんだが……

 

「チッ、勘弁してくれ二人とも。ここは中立区域だっつっただろうが。

 諍いや面倒ごとはご免被るぜ。ここならこいつ連れてもある程度は

 ごまかしが効くからってんで連れてきてるんだ。

 厄介事起こすってんなら、速攻政府に突き出すぞ、てめぇら」

 

「いやん、リーちんそれはやめてほしいにゃん」

 

「そうですよ! ここでセージさんが政府に連れていかれたら面倒なことになりますって!」

 

俺もそう思う。ここはリーの言う事に従おう。

しかしまさか、俺の身体を取り戻す手がかりを掴むための旅路で

塔城さんの依頼の手掛かり本人にぶち当たるとは思わなかった。

 

……って!

 

今思い出した! 黒歌さんははぐれ悪魔……!

って事は、あのバイサーやドラゴンアップルの害虫らと同じように

今に破壊衝動のままに暴れまわる怪物になる危険性があるんじゃないか!?

その事を思い出し、俺は慌ててリーに耳打ちをする。

 

(リーさん。彼女を同行させるのは構いませんが、はぐれ悪魔と言う事は……)

 

(あん? いつ俺がこいつを連れていくって言ったよ。

 そもそもお前らリリスに行くんだろうが。首都にお尋ね者を入れるなんて

 逮捕してくれって言ってるようなものだぜ。こいつはとっておきのネタを掴んだって言う

 俺の自慢みたいなもんだ、自慢)

 

……あー、はいはいそうですか自慢ですか。

全く、このリーって奴も信用ならない部分がある。

けれど逆に考えれば、身柄を確保していると言う事は

塔城さんにはリーを捕まえさせれば必然的に黒歌さんにぶち当たるわけになる。

とにかく、なるべく早く塔城さんに伝えたいところだが。

 

「……男同士でなに内緒話してるにゃん。気色悪い」

 

「仕事の話だ、仕事の。黒歌。てめぇもそうだがこの兄ちゃんも

 俺にとっちゃ特ダネなんだ。仮面の赤龍帝……知ってるだろ?」

 

「話程度には聞いてるにゃん。確かどこぞのどーでもいいお家騒動に巻き込まれた

 可哀想な当代の赤龍帝、その片割れだって」

 

「……その認識で合ってるが」

 

「ふっふっふ。リーさん、今はその情報古いですよ?

 どうやら、この件に関しては私の勝ちみたいですね!」

 

そう。バオクゥには話したが、リーにはまだ伝わっていなかったみたいだ。

もう、俺に赤龍帝はいないと言う事を。

赤龍帝の力は一部だけ残っているが、赤龍帝そのものは既にいない。

今いるのは――

 

「てめっ、バオクゥ! 俺に黙ってやがったな!」

 

「ふふん、長話になりそうなんで、まず宿に行きましょうよ。ささっ」

 

「私もちょっと喉が渇いたにゃん」

 

――言うタイミングを逃した。まぁいいか。

こうして、俺は思いもよらない形で塔城さんの依頼の手掛かりどころか

本人との面識を得たのだった。

 

――――

 

「……けっ。しけた宿だにゃん」

 

「文句言うんなら飯抜きで放り出すぞ駄猫」

 

「まぁまぁ。とりあえずお茶でも飲みながら情報交換といきましょうよ」

 

罵り合いにしか見えないやり取りを交わしながら、俺達はこの中立都市にある

安宿に来ている。口には出さなかったが、しけた宿と言うのは

黒歌さんに同意している。まぁ、ないよりましってところだろう。

そして、ここで俺達は情報の交換を行っているのだ。

で、情報の交換を行うと言う事は――

 

「……おいおい。この駄猫が霞むスクープじゃねぇか、それ!

 アモンっていやあ、政府でさえ口に出すのも憚られるほどの大物だぞ!」

 

「私も初めて聞いた時耳を疑いましたよ……

 まさかセージさん、名前しか語り継がれない伝説の悪魔を

 肉眼で確認してるなんて……やっぱりセージさんについて良かったです!」

 

「リーちん、さっきから駄猫駄猫うるさいにゃん。

 けれどミイラのお兄さん、アモンって……そんなに有名な悪魔なのかにゃん?」

 

「……俺も詳しくは知らない。けれど、前の大戦で勇者とも言われる活躍をしたとも

 裏切り者として異次元に閉じ込められているとも言われている。

 そんな曰くつきの悪魔……らしいんだ」

 

そう。俺がこの間偶然見つけたアモンについても触れることとなる。

別に俺は政府関係者じゃないので、情報を伏せる理由が無い。

そもそも、何故アモンの情報を伏せる必要があるのかがわからない。

裏切り者、と言われているものの背景がわからないのではさっぱりだ。

まして俺は政府に対して不信感を抱いている。そんな奴が素直に言う事を聞くわけがない。

 

そんなわけで、俺はおまけとしてサーゼクス陛下やアジュカ陛下の顛末も語ることにしたが――

 

「……やっぱり、悪魔の力なんてロクなものじゃないわね。

 誘惑に乗った昔の私をぶん殴ってやりたいぐらいだわ。おかげでこんな……

 

 ……にゃん、今聞こえたのは空耳にゃん」

 

「何も言ってないし、俺の目的は悪魔の駒の除去なんだ。

 そういう意味では、あなたとは目的を同じくしている」

 

「うん? それはナンパかにゃん? 目の付け所は良いけど、私はそこまで軽い女じゃないにゃん」

 

……だったらその吉原にいそうな恰好をやめてくれと言いたい。

説得力がまるでないじゃないか。

話が一段落着いたところで、俺はもう一度リーにさっきの話を振ることにした。

 

――はぐれ悪魔の危険性、についての憶測だ。

 

「……なるほどな。憶測にしちゃ、よく出来てる。

 まぁ、ぶっちゃけるとこいつとはここでおさらばなんだよ。だから俺の身は安全ってわけだ。

 こいつが暴れたら、それはそれでネタになるしな」

 

……っ!

やはりこの男、信用ならない部分がある!

少しでもこの男の安否を気遣った俺がバカみたいじゃないか!

 

「……冗談だ。包帯面で睨まれると流石にちょっとしたホラーだぞ?

 

 気を悪くしたんなら詫びの代わりに俺の持ってる情報をくれてやるよ。

 さっきバオクゥにも言ったんだが、リリスの大図書館には確かに悪魔の駒に関する情報はある。

 だが仮に手に入ったとして、それを実行するのは難しいかもしれないぜ?」

 

……やっぱりな。しかし詫びと言いつつバオクゥからも手に入る情報を寄越すって

本気で詫びるつもりあるんだろうか、このジャーナリストは。

しかしここでおさらばって事は……どうやって塔城さんと合流させようか。

俺もそこまで気が回せるかと言うと、できる……ワケが無い。

やれやれ、問題ばかりが迷い込んでくるな。

 

こっちの問題も、出来ればどうにかしたいものだが……

 

「で、ミイラのお兄さん。白音なんだけど、グレモリー領にいるって事で間違いないのかにゃん?

 実は私も途中までついて行ったんだけど、途中で百邪――

 ああ、地方じゃアインストの事をそう呼んでいるのにゃん。奴らに出くわして

 騒ぎに乗じて逃げたはいいのだけど、私ってば指名手配中にゃん。

 だからそのままグレモリー領にいるわけにもいかなくって……」

 

「……難儀なもんですな。妹さんがグレモリー領にいるのは間違いありませんが。

 確か二十日後、若手悪魔の会合パーティーが

 どういうわけだかグレモリー領で行われるそうです。

 木を隠すには森の中……ってわけで、その時に潜り込んでみるのはどうでしょう。

 俺もその時にはグレモリー領に戻らないといけませんので」

 

提案。バオクゥに聞いた話だともっと早期にやるはずだったのだが

アインストやら禍の団(カオス・ブリゲート)やらで対応に追われ

時間が確保できたのが夏休みも終わりに差し掛かろうと言う時期である。

ともあれ、その時に若手悪魔の会合パーティーを、何故か僻地であるはずのグレモリー領で行う。

これも恐らくはテロ対策なのだろうか。主要都市はテロの標的になりやすいし。

そこに紛れ込む形で、俺と黒歌さんが入り込む作戦だ。

俺は一応正規の参加者だが、黒歌さんはそうではない。さてどうしたもんか。

 

「じゃあ、それまでリーちんの所に厄介になるにゃん」

 

「はぁ!? ふざけんな、なんで俺が指名手配犯を匿わなきゃいけないんだ!

 これ以上政府と揉め事起こすのは御免なんだよ! バオクゥ、お前が面倒みろ!

 女同士ちょうどいいだろうが!」

 

「いやぁー……私もセージさんの用事に付き合うって約束しちゃいまして。

 ほら、私も一応悪魔じゃないですか。みなさんと違って正真正銘の。

 だから、『約束』ってのには敏感なんですよねぇ……いやぁ困っちゃいましたねぇ」

 

「当然俺はやることがありますので。

 と言うか、これをやらないと何のためにここまで来たのかわかりませんので」

 

結局、黒歌さんは向こう二十日間はリーと行動を共にすることになったみたいだ。

仕方がない。俺達だって遊びに来ているわけじゃないんだ。

それにしても……指名手配犯と内通とか、ますますやっていることがはぐれじみてきているな。

今更だと思いつつ、この日は安宿で休息をとり

改めて俺とバオクゥはリリスに向かう事にした。




名前が出ちゃいましたCV.ジョージな盗聴バスター。寧ろ元ネタ。
某日本の主神と装備が被ってしまっているのはもう片方の元ネタのせいであり
幻獣アバオアクーと天照大神に関連性は一切ありません。
アバオアクーを悪魔と言い切るのはかなり無茶がありますが。

そういえば青葉の艤装、劇場版PVで確認した限りだと衣笠ともまた違いましたね。
改二ポーズのせいでサイコ○ンな衣笠と違って
なんだかバズーカみたいな取り回し方に見えました>青葉

現時点では「火力がちょこっと足りない」なんて言わせる予定はありません。

>会合
テロやらなんやらで相当遅れています。
原作では着いた直後にありましたが、テロだのアインストだの
やってる最中に若手軽視の連中が多い政府高官が
会合を優先するとは思えなかったもので。
サーゼクス? アインスト退治に体よく使われてますが何か。
政府高官にしてみれば四大魔王も「豚もおだてりゃ木に登る」んでしょう。
そんな傀儡政権に見えなくもないんですよ、原作。

……とまぁそれっぽい理由を並べましたが
原作の時系列を失念していたと言うメタな理由がががが

>黒歌
いたと思ったらマスゴミと行動を共にしているパターン。
このタイプは利害が一致すれば普通に付き合えるから
その辺ドライな印象がある黒歌にはちょうどいいのかも>リー

とりあえずセージが危惧している「爆弾」については今のところは気配なし。
セージもこれに関しては憶測で物を語っているので
確証を持っているわけではありません。

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