ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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タイトルは初代ポケモンの格闘道場より。
しかしこれを今回のタイトルにしてしまっていいものかどうか。
そんなお話。

……ところで、どっちがサワムラーでどっちがエビワラーでしたっけ。
そしてかくとうタイプのこいつらをエスパージムのあるヤマブキシティに置いておく
ゲーフリの意地の悪さよ。
最初のヒトカゲと言い罠を仕掛けるのがお上手で。

……私? ヒトカゲでしたとも。


Soul67. 因果応報の四面楚歌

俺は宮本成二。

クラスメート、兵藤一誠のデートに不審なものを感じた俺は

後をつけるが、その先で堕天使レイナーレに瀕死の重傷を負わされる。

目覚めた俺は、リアス・グレモリーに歩藤誠二と言う名を与えられ

霊体になっていることを知ることになる。

 

いよいよ、俺は冥界へと向かう。

全ては、俺の身体を取り戻すために。

 

この忌まわしい楔を、抜き取り砕くために。

 

――残された時間は、あと53日――

 

――――

 

「……はぁ」

 

唐突だが、前途多難にもほどがあると思う。

確かにほぼ無断使用とは言え、まさか全然違う場所に飛ばされるとは。

イッセーとは違う意味で俺は魔法陣との相性が悪いみたいだ。

辛うじていつぞやゲートを見つけた要領でこの近辺を偵察することは出来たが……

 

……ここが使い魔の森ではないと言うことくらいしかわからん!

 

考えてみれば、俺は冥界の土地勘などまるっきり持っていなかった。

これは少々勇み足が過ぎたやも知れぬ。

とりあえず、市街地らしき場所は探知できたので、その方角に向かってみることにする。

市街地で連絡端末を借りて、バオクゥに来てもらおう。

 

ここで頼れるのは、バオクゥ位しかいない。

祐斗や塔城さんも、今頃はグレモリー部長と一緒だろう。

呼ぶのは憚られる。っつーか、グレモリー部長に啖呵切って出て来たも同然なのに

グレモリー部長の人材を呼べるわけがない。

 

「……はぁ」

 

ついため息が出てしまった。別に独りでいることに慣れていないわけではない。はずだ。

しかし心細いのもまた事実。やれやれ、やはりそれが人間の限度……

と言うか、そういう感情が俺の心はまだ人間であると再認識させてくれる。

まあ、悪魔も孤独を恐れる生き物であるのならばこの認識は全く意味を成さないが。

 

それにしても、悪魔と人間。何が違うのだろうな。

書籍全般にあるような悪魔とは全然違う。市街地に出ればまた何かわかるかもしれないが

知っている範囲ではまるで人間と変わらない。それなのに何故だ?

 

何故、悪魔と人間とに分かれてしまっているんだ?

天使にしても詳しくは知らないが、多分同じかもしれない。

猿と人間位の違いなのか? 疑問は尽きないが、今はそんなことを考えている場合でも無かろう。

 

「……はぁ」

 

こんな調子で本当に俺は元に戻れるのだろうか。

残り53日。これを長いと見るか短いと見るかは人それぞれだが

俺の場合は抱えている問題が多すぎる。まず「悪魔の駒(イーヴィル・ピース)」の共有現象に関する調査。

それを行った後、悪魔の駒の共有の解除の方法。

そして……これはイッセーを殺すことにもなりかねないので最後の手段だが……

 

……悪魔の駒の破壊ないし機能停止方法。

 

そう。共有があるため、事態はとてもややこしい事になっているのだ。

イッセーを生かし、その上で俺の目的も達成する。それが最善策だ。

まあ、えてしてとても難しいものが最善策ではあるのだが……輪をかけて難しいだろう、これは。

 

色々考えながら歩いているうちに、建物が見えてくる。

造りはやはり違うみたいだが、遠目で見た設備は人間のそれを模しているみたいだ。

模造か? さっき人間との違いを猿と人間の違いに喩えたが

まさか猿真似なんてものを見るとは思わなかった。

文明がこうも似通るって事、あり得るのか?

 

……おっと。一応仮面を用意しておくか。

 

「モーフィング。葉っぱを仮面にする」

 

落ちていたひときわ大きな葉を一枚拝借し、仮面へと変える。

顔全体を覆う大きさは確保できなかったが、顔をカモフラージュするにはちょうどいい大きさだ。

ここは通過点、色々絡まれるのは好きじゃない。

こうして変人を装えば向こうから離れてくれるし顔が割れていないから面倒もない。

いつぞやは用意が間に合わなかったためにサングラスだったが。

 

……だが、それがこの地では思わぬ弊害を生むことになるとはその時の俺は思いもしなかった。

 

――――

 

「か、仮面の赤龍帝だぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「え、うそ、どこにいるんだよ!?」

 

……おかしい。

俺の情報はここまで筒抜けだったか? しかも、声色からして好奇の感情よりも

恐怖の感情が勝っているようにも思える。一体全体……あ、あの件か。

まさかまだ尾を引いていたなんて……抜かった。

 

「下等な転生悪魔ごときが! よくもライザー様をあんな目に!」

 

「そうよそうよ! ここから出ていけ!」

 

……っ!?

事は俺が思った以上に大きかった。抜かった、まさかここはフェニックス領だったなんて!

せっかく見つけた市街地がフェニックスのお膝元では、情報収集どころじゃないぞ!

しかも野次に紛れて石や生卵が飛んでくる。

く、くそっ! まさか本当に石をぶつけられる日が来るなんて!

俺の小さい頃でもここまでの事はやられなかったぞ!

こりゃどう考えてもこれ以上ここにいるのは良くない。

早々に退散しないとマズい!

 

「あっ! 逃げるぞ!」

 

「逃がすな! ライザー様の敵だ!」

 

「追え! 殺せ! どうせ下級の転生悪魔だ! やっちまえ!」

 

チッ、どいつもこいつも好き放題言ってくれる。

反撃も考えたが、ここで事をこれ以上荒立てるのも良くない。

それにうっかり入り込んでしまったのは俺の方だ。

早々に黙って退散する以外の道はあるまい。

 

……それにしても。

やはり冥界は腐っているな。さっきから俺の事を下級の転生悪魔と呼ぶ野次の多い事多い事。

それはつまり、歪んだ形での貴族主義が罷り通っているって事だ。

残念ながら現在の人間社会でも成立してしまっている、立場による差別意識。

それが一皮むけた状態で露呈しているか、水面下で渦を巻いているかの違いだけだ。

全く。悪魔も人間の事を偉そうに言えないだろ。これは。

 

あまりにも追撃が面倒なので、霊体化してまくことにした。

霊体化で見失う辺り、やはり能力は大したことはないって事か。つまり一般市民。

それなのに無責任に殺せだの言ってくるあたりは……まぁ、人間とあまり変わらないな。

 

そのまま俺は霊体の状態で市街地を後にする。

……恐れていた事その2。フェニックス領に飛び出してしまう。こう早く実現するとは。

やれやれ、俺には何か憑いているのかねぇ。俺が憑く側なのに。

とにかくだ。どっちに出ればフェニックス領から出られるんだ?

何をするにしても、このフェニックス領から出ない事には話にならない。

またあんな風に野次だけならまだしも、石や生卵をぶつけられるのは御免だ。

 

霊体のまま浮上すると、ひときわ大きな建物が見える。

恐らくあれがフェニックス邸だろう。

で、あれから遠ざかるように移動すればそのうちフェニックス領からは出られるのではないかって判断だ。

市街地もこうなった以上避けた方がいいかもしれない。

見つかってしまっては元も子もないし、またフェニックス領の町だったりしたら目も当てられない。

 

後は体力の消費を抑えるために地上を移動する。

霊体でいると、万が一見つかった時は終わりを意味する。

何故ならば、霊体の俺が見つかると言う事は見つけた相手は魔王眷属クラスだ。

そんな奴の相手なんかしていられない。そうなる位ならば遮蔽物の多い地上を進んだ方がいい。

そのため、俺は地上に戻り実体化する。実体化した方がカムフラージュになるってのも変な話だが。

幸いにして、俺を追いかけていた悪魔連中は既に散り散りになっていた。

 

……が。

目の前の金髪のツーサイドロールの少女を見た途端、俺の嫌な予感はまた当たってしまった。

なんなのだ、今日は。厄日か。厄日なのか。それとも呪いか何かか。

 

「……はぁ」

 

「……出合頭にため息とはさすがグレモリー眷属。礼儀のれの字もありませんわね」

 

「おっと失礼。先ほどから頭を抱える事態が立て続けに起きていたもので。レイヴェル様」

 

ここにいるのは彼女一人ではなさそうだ。フェニックス眷属の何人か、か?

ぐるりと周囲を見渡すと、確かに見知った顔が何人かいる。

 

「領地で騒ぎが起きたと言うので、見回りに来たのですが……まさかあなたとは。

 せっかく示談の決まった、グレモリー家とフェニックス家の関係。

 知らないわけではないでしょう? それをむやみに刺激するのは……」

 

「ええ。それについては申し開きがあるのでお聞きいただきたいのですが……」

 

一難去ってまた一難。以前出会った時よりも――ある意味当たり前だが――

敵対心を持った目を向けてくるレイヴェルに対し、俺はこれまでの顛末を説明することにした。

幸いにして、問答無用と言う事は無くこちらにも申し開きの機会が与えられたことは

素直にありがたいと思えることだが。

 

「その巡り会わせの悪さには少々の同情も覚えますが

 私にとってあなたは我が兄をあんな風にした不倶戴天の敵。

 このまま黙って見逃しては、私の沽券にも関わります。

 よって、レーティングゲームとまでは言いませんが……それに、今の私は正直に言いますと

 『あなた等に構っている暇はない』のです。ですが、こうして巡り会ってしまった。

 そこで、形式だけでもいいので一戦交えていただきたいのです。

 どうです? 互いにとって悪い話ではないでしょう?」

 

「……断れば?」

 

「その場合は残念ながら、我がフェニックスの領地に無断で立ち入った賊……

 それも政敵グレモリーの長女の眷属と言う事で、処罰させていただきますわ」

 

……恐れていた事その3。レイヴェル・フェニックスが敵討ちにやって来る。

いや、冥界に来ればその可能性は極めて高くなるとは思ってたよ。

しかしまさかこうも早く起きるとは……最悪だ。出だしからして最悪すぎる。

 

「……はぁ。結局選択肢は無しって事ですか。まぁ、自業自得と諦めちゃいますが。

 じゃ、さっさと始めましょう。場所はここでよろしいので?」

 

「ええ。新顔には森の戦いは少々辛いものがあるとは思いますが……

 これも修行と思っていただきますわ。

 

 ……ああ、そうそう。今は私、お兄様より悪魔の駒をお預かりし、暫定的に

 『ライザー・フェニックスの代理』として眷属を抱えておりますの。

 それに伴って、私は『僧侶(ビショップ)』から『(キング)』に昇格しておりますわ。

 まだ、お兄様と違って正規のプレイヤーではありませんが

 お兄様があのような状態ですので、一度眷属の再編成をさせていただきましたの。

 

 ……皆、挨拶を」

 

そう言われるや、数人の悪魔が奥からぞろぞろと出てくる。

 

何人かは覚えがある。

 

――「騎士(ナイト)」カーラマイン。

 

  「戦車(ルーク)」雪蘭、イザベラ。

 

  「兵士(ポーン)」ニィ、リィ、ミラ。

 

「この辺りのメンバーは以前顔合わせをしたからご存知ですわね。

 ここにいないメンバーはユーベルーナは事実上の引退、お兄様の世話をしているわ。

 シーリスに美南風と他の『兵士』は己の力不足を理由に私の呼び掛けには応じませんでした。

 

 ……そして、私が新たに迎えた新顔が……」

 

奥瀬秀一(おくせしゅういち)だ。お前さん、見た感じ高校生か大学生っぽいから知らねぇかもしれないが

 こう見えて『スーパー弁護士』って呼ばれてるんだ。

 今はフェニックス家のお抱え弁護士だけどな」

 

「そして、今や私の新たな『僧侶』ですわ。

 優秀な人材だからこそ、彼にこうして眷属になっていただきました。

 ここにいないお兄様の眷属だった者達も

 今は別の形で我がフェニックス家に身を置いておりますので、どうぞご心配なく」

 

「……また、甘言で人を惑わして人生を狂わせて……」

 

「おいおい、何勘違いしてるんだ坊主。俺は自分の意思で契約してるんだ。

 言ったろ、俺はスーパー弁護士だって。

 そのスーパー弁護士が詐欺位見破れなくてどうするんだって話。

 それに俺は……っと、これ以上のおしゃべりは無し。以上、俺の話終わり」

 

そう言うや否や、奥瀬って男はこちらに緑色の銃を向けてくる。

思わず記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)を盾にする形でガードの態勢を取ってしまう。

まさかいきなり仕掛けてくるなんて! しかもまだ読み取っていないから情報が無い!

ここに来て新顔の相手とは……本当に今日はなんて日だ!

 

「先生、ここは一応私達の領地でもありますので

 あまり広範囲の攻撃はご遠慮くださいませね」

 

「こういうごちゃごちゃした場所での戦いは好きじゃないんだけどな……」

 

そんなこちらの思惑など知った事かとばかりに、相手は攻撃を仕掛けてくる。

ああもう! こうなったらもう一度霊体化して……

 

「先ほど美南風は前線を退いたと言いましたが、彼女の力だけはここにありますのよ?」

 

「む……? ぐぅっ!?」

 

霊体化しようとした途端、レイヴェルの手にある護符が光り出す。

霊体であるはずの俺の身体に激痛が走り、思わず実体化すると痛みが引く。

……そう言う事か! あの護符で俺の霊体化を防いでいるっていうのか!

厄介な手を封じる、そりゃ普通に考えてそう出るよな!

 

「簡単に逃げられるとは思わないほうがよろしいですわよ」

 

「……そのようで。やれやれ、本当に今日はついてない」

 

こうなったら、逃げるとなると強引に逃げるしかなさそうだ。

兵士のいる場所が強いて言うなれば手薄か。

そこから強引に突っ切るしかなさそうだ。

 

EFFECT-HIGHSPEED!!

 

「それでも当然俺は逃げさせてもらいますがね!」

 

「それもお見通しですわ――ミラ!」

 

ミラ。確か棒術の使い手だったはず。

小柄な体格で長物を振り回すため、見た目以上にリーチがある。

だが、威力に関してまではそれほどでもない。

少なくとも、今の俺ならば押し切れる!

 

SOLID-DEFENDER!!

 

「盾!? けれど、私も!」

 

俺の計算では、ディフェンダーで棒を打ち払ってなぎ倒す作戦だった。

ところが、ミラが持っているのは――槍。

長物には違いないが、先端に刃がついているだけで作戦は変わってくる。

無理に突進すれば、ディフェンダーを破られる恐れもある。

……光力を帯びているとはいえ、油断はできないのだ。

一点集中などされたら、相手の方に分がある。

 

攻撃スタイルは前に戦った時と大差はない。

だが、得物が変わったことで攻撃が打突から刺突に変わっている。

押し出す力こそ弱まっているが、攻撃力は大幅に上がっている。

それがディフェンダーを破られる懸念でもあった。

 

「ミラはかつてお兄様に『一番弱い』と言われましたけれど

 あれから私と共に猛特訓いたしましたの。

 以前と同じとは思わないほうがよろしいですわよ!」

 

「「それは私達も同じだニャ!」」

 

しまった! ミラの攻撃に気を取られている隙に

もう片方の兵士――ニィとリィがやってきてしまう。

イッセーがいないからあの時のような連携は出来ない。

 

……けれどもな。パワーアップしてるのはそっちだけじゃないんだ!

 

「――フリッケン!」

 

『ああ。ちょっとくすぐったいぞ』

 

DIVIDE!!

BOOST!!

 

ディフェンダーを展開したまま、分裂する。

これで数の上ではそう大差はなくなったはずだ。

 

「増えるとか気色悪すぎるニャ!」

 

「同じ顔が並んでて気色悪いニャ! 髪の毛の色位変えろニャ!」

 

おい双子。お前らの所にもいるだろうが、似た様なのが。

尤もこっちは双子でも何でもない、同一存在だから言いたいことがわからんでもないが。

で、お前らは種族:猫なら……猫とは長い付き合いなんだ、相手が悪かったな!

おもむろに、俺は落ちている枝を拾い上げモーフィングを試みる。勿論――

 

「モーフィング! 枝をマタタビに変える!」

 

「「ニャっ!?」」

 

ふふん、どうだ! 対猫のリーサルウェポン、マタタビ!

効能に個体差があるとはいえ、これが全然効かない猫を俺は知らない!

大なり小なり影響が出るってものだ!

実際、塔城さんを救出する際にもこれで気を反らしている。

ただ唯一気がかりなのは、これがきちんと作用するかどうか、だ。

あの時の塔城さんは、限りなく猫の妖怪としての性質が強い状態だった。

今のこいつらは、そういうわけでもなさそうだ。

悪魔の駒の方が強く出ていれば、種族:悪魔となり猫の特性が薄れてしまう。

そうなれば、マタタビは効きが悪くなるかもしれない。

 

……結局、博打かもしれないが!

 

「ニィ! リィ! そんな安っぽいマタタビなんかに構わないでくださいまし!」

 

「「……はっ! しまったニャ!」」

 

どうやら、博打には勝てたようだ。

ここぞと言う時の運には見放されていない、運任せもどうかと思うが

こうして一瞬でも気を反らすことが出来ただけでも、こっちとしては成功だ。

 

今の内に、少しでも逃げ出そうと距離を取ろうとするが

再び俺の目の前に相手の眷属が現れる。

 

「君とは初手合わせだな! 改めて、私はカーラマイン!

 かつてはライザー様の、今はレイヴェル様の『騎士』だ!

 君の同僚の騎士とはいい試合が出来た! 是非君とも……」

 

「悪いが俺は祐斗と違ってそういう精神は持ち合わせていない!

 だからこういう卑怯な真似も平気でやるから……

 

 ……試合がしたけりゃ他所を当たれ!」

 

DIVIDE!!

BOOST!!

 

DOUBLE-DRAW!!

 

FEELER-GUN!!

 

SOLID-REMOTE GUN!!

 

「それが君のやり方か! 面白い、ならば私はこれを潜り抜けて見せる!」

 

「精々遊んでろ! 俺は忙しいんだ!」

 

斬りかかってきたカーラマインに向けて、触手砲を差し向ける。

触手砲にカーラマインの相手をさせているうちに、槍で俺の進路を妨害しているミラをどかすべく

2人がかりでの攻撃を試みる。

 

まぁ、単純に攻撃を防ぐ俺と、その俺の物陰から隙をついて攻撃する俺の

2段構えの攻撃なんだが。

しかしそれさえも読まれて……いや、単純に物量が足りていなかったか。

ミラをどかすはずだった俺は、イザベラと雪蘭の2人がかりに押さえつけられている。

「戦車」2人がかりはちょっときつい。

カードを引こうにも、押さえつけられて身動きが取れない状態にされている。これはマズい。

 

……だが、俺だって何もせずにやられるつもりは無い!

タイミングを見計らい、2人が押さえつけている分身を消滅させる。

まさか標的がいきなり消えるとは思っていなかったのか、つんのめりになって

そのまま突っ伏してしまう。俺は霊体化しなくても姿は消せるんだよ。

 

「そんな!? 霊体化は封じているはずですのに!?」

 

「こっちのパワーアップは計算外でしたかな? 男子三日会わざればとも言いますよ。

 そしてさらに……」

 

SOLID-SWORD MOUNTAIN!!

 

「うあっ!?」

 

「こ、これでは身動きが……」

 

剣山を召喚し、イザベラと雪蘭を動けないようにする。

剣山が、ちょうど二人にとっての檻になる形となったのだ。

下手に出ようとすれば、スパッと斬れてしまう。

囮に全力で引っかかった、お前たちの負けだ!

 

そう……なまじ俺の霊体化を封じているせいか、奇を衒う効果は覿面だったようだ。

勿論、種を明かすほど俺もお人よしじゃない。態々対策を立てさせたりするものかよ。

これで改めて、ミラをどかしにかかれる。

……よく考えたら、こいつは……

 

DIVIDE!!

BOOST!!

 

DOUBLE-DRAW!!

 

STRENGTH-HIGHSPEED!!

 

EFFECT-CHARGEUP!!

 

「……そらぁっ!!」

 

「きゃっ!? しまっ……」

 

力も早さも強化した状態ならば、昇格もしていない兵士が俺を止められるものか。

地の力がどこまで上がっているのかが読めないならば、こっちも地の力を上げる。

脳筋戦法だが、強行突破にはもってこい、か。

 

「ミラ! 『昇格(プロモーション)』をなさいな!」

 

「はい! 逃がしません……『昇格』、『騎士』!」

 

MEMORIZE!!

 

おっと? 基が素早いからか、能力を強化している俺にも追い付いてきている。

今記録したカードはおそらく「騎士」に変化するカードだが……

今試すには博打が過ぎるな。やめておこう。

「戦車」でさえあんなに劇的に変化してるんだ。「騎士」もどうなることか。

 

……しかし困った。振り切ろうにも振り切れない。

おまけに、奥瀬って男は今度は長射程の銃でも構えているのか、さっきからまた撃ってきている。

この辺りの犠牲戦法は、兄譲りなのか? ミラを巻き込むだろうに。

こうなったら、これを利用させてもらおうか!

 

俺は足を止め、わざとミラが捕まえられるようにする。

奥瀬が撃ってきている銃弾は、辛うじてディフェンダーで防ぎ切れている。

着弾と同時に土煙が上がり、視界が悪くなる。

その隙に、俺はミラを俺がいた場所にはたき落とし、急いでその場を離れる。

 

EFFECT-MELT!!

 

勿論、足場を悪くすることも忘れずに、だ。

そうなれば当然、ミラは俺を追ってこれないし、奥瀬の射撃も俺ではなくミラに誤爆してしまう。

 

……よし、これで全員振り切ったはずだ!

そう思った俺の眼に、見知った少女が手招きをしている。

 

「セージさん、こっち! こっちです!」

 

なんと。バオクゥだ。バオクゥがどういうわけだか来てくれていたのだ。

こいつはありがたい。元々彼女に会うつもりだったので

ここで会えたのは今までの不運を帳消しにするには十分だ。

 

「聞きたいことはあるでしょうけど、今はそこに隠れてください!」

 

「わ、わかった!」

 

藪の中に身を潜めると、遠くで話声が聞こえる。

話し声はしばらく続いたが、何を話しているのかまでは聞き取れなかった。

話がしばらく続いたのち、俺の頭の上からバオクゥがのぞき込んでくる。

 

「いやぁ、色々フェニックス家も大変みたいですねぇ。

 長女のレイヴェルさんがおしゃべりなのは相変わらずみたいですけど。

 で、セージさん……来るなら来るって言ってくださいよぉ。

 私がここにいなかったら、どうしたつもりなんですか」

 

「すまん。けれど助かったよ。俺もまさかフェニックス領に飛ばされるとは思わなかったんだ。

 しかし散々な目に遭った……とにかく助かった、ありがとう」

 

「あ。話が長くなりそうなら、一先ず私のヤサに行きませんか?

 近くに構えているんです。この辺りで情報収集するのに必要なものは揃ってますから

 セージさんの目的も果たせると思いますよ」

 

ヤサ……ああ、確か家とかアジトとかそういう意味だったっけか。

 

……ってちょっと待て! 俺はそういうつもりは無いが

見た目ほぼ同年代の女の子の家に転がり込むのって、それってどうなんだ!?

 

……なんて、言える状況でもないことを思い出し俺はバオクゥの提案に乗ることにした。




イッセーが一応原作に倣う形で冥界のすばらしさ()を学んでる最中
セージは……案の定だよ!

よくよく考えると四面楚歌はともかく
因果応報は受けるべき奴がこの場にいない罠。

>奥瀬秀一
元ネタは仮面ライダー龍騎より仮面ライダーゾルダこと北岡秀一先生。
奥瀬はドイツ語(だからさぁ……)で雄牛の意、そこに漢字を当てて。
かなり前にフェニックス家がスーパー弁護士を雇った旨の事を触れてましたが
彼の事でした。
やっぱりゾルダじゃねーか! いい加減にしろ!
……と言われても反論できません。すみません。

因みに某イライラするフリードさんとの因縁は全くありません。全く。
(逮捕されたフリードの担当弁護士になるにしても、時系列的に矛盾が起きるため)

現在はレイヴェルの「僧侶」。
何気にセージと相対した中では貴重な(?)完全に自分の意思で悪魔になった人間。
イッセーとアーシアは死人に口なしだし、木場は意見が揺らいでいるし
小猫はまた別のカテゴリに入っちゃうし
朱乃やライザー眷属は事情を知るほど親しくないし。
彼が悪魔になった理由は龍騎本編の北岡先生を見ていただければ。
これがフェニックス家じゃなかったら彼も悪魔になっていないかもしれません。
あと、ゴローちゃんに相当するキャラがいないと言うのも大きいかも。
ゴローちゃんを捨てるような真似をするとも考えにくいですし。

>レイヴェル・元ライザー眷属達
ライザーから眷属を譲り受ける形での大出世。一応届出は済んでます。
(ライザーも犠牲戦法とかのごり押しプレイはするけど
眷属を不当に扱う真似はしていないらしいので、レイヴェルへの移籍もすんなりと)
つまり、不死鳥は燃え尽きた。されど新たな不死鳥がここに爆誕、と。
特に最弱認定されて不憫に思えたミラを重点的に強化。
棒→槍の武器変化は仮面ライダークウガのドラゴンフォームを意識。
あれもライジングで槍になってますし。
ニィとリィは相手が悪かった。セージにとって猫は幼年期からの付き合いなので。
カーラマインも相手が木場じゃなくてセージなので
撃ち合い(誤字にあらず)になるのが関の山ですし。
今回一番活躍したかもしれないのは護符を渡して引退した美南風ではなかろうか。
彼女もセージ対策の修行をあれから行っていましたが
現在は総合力不足でレイヴェルの誘いを保留にしています。今回はその成果。

その他兵士は事実上の引退。
け、決してキャラ被りとかを懸念したわけでは……
レーティングゲームから引退こそしましたが違う形でフェニックス家に仕えてます。
捨てられていないのはライザーのノブレスオブリージュ故に、と言う事で。

シーリスとユーベルーナも引退。特にユーベルーナはライザーにつきっきりで介護。
シーリスは修行のやり直し中。引退と言うより美南風に近い状態かも。

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