ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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この内ゲバ……もとい戦いも佳境に入りつつあります。
ただ木場がせっかく禁手に至ったのにそれっぽい見せ場が現時点でないのだけ
作者的には歯がゆい思いをしてますが……

この環境ではちょっと……としか。

あと、今更ですが今回特にイッセー酷い目に遭います。


恒例の余談

E4丙突破完了。
お疲れ様でした。
英国生まれで英国艦を迎えに行くと言う快挙。

伊26に朝雲と雲龍も来たので作戦は成功、かな。
アクィラ? ルイーナでモチーフが一人だけ浮いてる奴なんか知りませんよ(違

余談終了

余談パート2

原作5巻44ページ10行目。
……そんなにあるのに、なんで人間の世界にちょっかいかけるんだよ!?
そんなに他人の物が欲しいのかよ!? あんたたちは!

余談パート2終了


Soul64. 禁じられた「王」

俺は宮本成二。

クラスメート、兵藤一誠のデートに不審なものを感じた俺は

後をつけるが、その先で堕天使レイナーレに瀕死の重傷を負わされる。

目覚めた俺は、リアス・グレモリーに歩藤誠二と言う名を与えられ

霊体になっていることを知ることになる。

 

イッセーの猛攻撃を掻い潜り、接戦を続ける最中

ついにグレモリー部長が動き出した。

 

祐斗も交え、バトルロイヤルと言う混戦状態の中で

戦いは次のステージへと進む……

 

――ゲーム終了まで、あと15分――

 

DIVIDE!!

BOOST!!

 

DOUBLE-DRAW!!

 

EXPLOSION-GUN!!

 

SOLID-SHOTGUN!!

 

「――っ!!」

 

「こ、この……!!」

 

「……やるじゃないかセージ君。僕達3人を相手にして一歩も退かないなんて」

 

祐斗よ。買いかぶってくれるな。退かないんじゃない、退けないんだ。

1対1に持ち込めない状況なので、いっそ触手砲とショットガンで

纏めてダメージを与える戦法に転換している。

触手砲はある程度自律しているので巻き添えを食う心配は少ないし

ショットガンも万が一巻き込んでも最悪回復は自力で出来る。

 

「予め言っておくが、他にも俺はいるんだぞ」

 

俺のその発言が合図となり、物陰からレーザーサイトの光がイッセーを照らす。

だが、その狙いはイッセー本体ではなく、「赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)」の宝玉部分。

鎧部分はレーザーサイトがわかりにくいと言うのもあるのだが。

 

「あがっ!?」

 

「イッセー!?」

 

そう。「俺」は囮であり、スナイプを当てるための大立ち回りを演じていたに過ぎない。

そして、今イッセーを狙った弾は普通の弾じゃない。

超常事件特命捜査課(ちょうじょうじけんとくめいそうさか)」――通称、「超特捜課(ちょうとくそうか)」で運用されており

超特捜課結成よりも前の昔、長野で大量殺人事件が起きた際に導入されたという

神経断裂弾(しんけいだんれつだん)」。

記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)」の中に、記述が見つかったのだ。

弾は使い捨ての道具と認識されているらしく、モーフィング生成は出来ても

記録は出来なかったが。

赤龍帝の鎧相手にも一歩も退かないどころか、とんでもない威力を発揮してくれている。

確か記録では弾頭を爆発させ相手の内部に侵入、然る後神経を破壊する銃弾、とあった。

これは恐らくイッセーよりも、鎧を展開しているドライグのダメージの方がでかいだろう。

うまくすれば、禁手(バランスブレイカー)を解ける。暴走される恐れもあるが。

 

……そんなものを戦場とは言え友人に向けたという自分の行いに、背筋をゾッとするものが走る。

いくらなんでも慣れ過ぎだろう。

まあ、今のイッセーを友人と言っていいものかどうかと言うのはここ最近の悩みだが。

俺が離れたのか、奴が離れたのかは見方の違いだから何とも言えないが。

 

「があっ……うっ、ぐああっ……!?」

 

「イッセー!? セージ、あなた何を撃ちこんだの!?」

 

「俺も製作者じゃないんで詳しい事は言えませんが……

 人間の作った、悪魔も、魔獣も、そしてドラゴンをも

 打ち破る可能性を秘めた銃弾。らしいです。

 これではどちらが悪魔かなんてわからない、なんて陳腐な台詞は言わせませんよ。

 先に人間の世界にちょっかいかけてきたのはあんた達……俺はそう思っている。

 まあ、アーシアさんなら治療は可能でしょうけど……させると思いますか?」

 

うん……ちょっと今自分でも後悔してる。

量産の効く銃弾じゃなくて、モーフィングである分しか作れない神経断裂弾。

それを中途半端にしか撃ち込めないものだから、止めを刺したくても刺せない。

そうなればイッセー(とドライグ)の痛みたるや想像……出来ない。

そもそも俺は神経断裂弾を喰らったことが無いし、喰らいたいとも思わない。

そんなものを使うなと言われれば、返す言葉もないが。

 

「セー……ジっ、てめ……ぇ……っ!!」

 

思った通り、禁手が解けかかっている。

ドライグの方にダメージが多く入っているみたいだ。

それはそれで好都合。イッセーはともかく

ドライグには1発じゃ足りない位殴りたいと思っていたんだ。

そんなドライグの宿る宝玉部分に神経断裂弾を撃ち込んだ。

内部から神経組織を破壊するその銃弾を受けては

鎧の維持はできまいよ!

 

直後、目論み(?)通り砕け散るような音と共に禁手が解かれる。

ダメージで強制的に解除させたため、イッセーは神器(セイクリッド・ギア)を使えない。

つまり、ただの転生悪魔……ちょっと前の俺とほぼ同じだ。

 

「イッセー、退け。今のお前じゃ戦力外だ。力を失うと言う事、経験者だからわかる。

 ドライグも今のダメージでは当分動けまい。そうなった以上今のお前に何が出来る。

 もう一度言うぞ、退け。黙って退けば悪いようにはしない」

 

「……っざけん……な……っ!

 ここまでいいようにされて、黙って……うぐぐうぅっ……!」

 

まあ、無理矢理禁手を解いた上に神経で繋がっていたであろう「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)」由来の鎧を

神経断裂と言う手段で攻撃したんだ。立っているだけでもきついはずだ。

それなのにここまで言ってのけるって事は、恐らくはグレモリー部長のために

気合だけで立っている状態だろう。女のために命を張る男は確かに凄いと思うよ。

俺も出来ればそうありたいと思っている。

それに値する女性を、俺は親以外では1人しか知らないが。

しかし、しかしだ。そんな素晴らしい心構えだが

お前の場合どうしても邪な心が見え隠れしてならない。

友に銃を向けた奴が言うなと言う話だが、これ以上悪魔に魂を売り渡した友の姿は見るに堪えん。

ハーレム作るのは、この国じゃ妄想の中か

いかがわしい店でのごっこだけにしておけばよかったんだ!

 

「セージ! あなたこれ以上何を!?」

 

BOOST!!

 

「決まってるでしょう。おっと動かないでくださいよ。祐斗も。

 動けば今度はこの神経断裂弾、そちらに撃ち込みますので。

 特に祐斗。この位置なら先手を打てるとか思わないほうがいい。

 『騎士(ナイト)』ならば足も大事にすべきだ」

 

「……狙うのは別に頭だけじゃないって事か。それにこの位置じゃいくら僕が素早くても……

 ってところだね。なかなかやってくれるよ」

 

その証拠に、レーザーサイトがグレモリー部長と祐斗を狙っている。

特に祐斗は、頭でなくとも足を撃てば、それだけで騎士の長所を殺せる。

スピードの無い騎士なんて、昇格できない兵士程度の価値しかない、と思っている。

 

……ん? じゃあ俺は? まぁ深く考えるのはよそう。

 

もう片方の俺も、ちゃっかり用意している。弾は都度モーフィングで込めなければならないが

威力は折り紙付きと言う事が証明されている。抑止力には十分すぎるだろう。

 

「ぐ……セー……」

 

「――ふんっ!!」

 

紫紅帝の龍魂(ディバイディング・ブースター)」で倍加した力で、思いっきりイッセーの頭に回し蹴りを叩き込む。

これくらいやらないと脱落に追い込めないと判断したのだ。

あいつの辞書にもやりすぎって言葉はない、特に性的な意味に関しては。

これは言うまでもなくそれ以外の事例だが、中途半端に痛めつけるよりは

もうこうして止めを刺した方がマシだと思ったのだ。

 

……医療設備でドライグの断裂した神経を元に戻せるかどうか、までは知らないが。

 

――リアス・グレモリー様の「兵士(ポーン)」、脱落。

 

「イッセー!? そ、そんな……」

 

……恐るべし、神経断裂弾。

カード記録できなくて正解かもしれない。こいつは下手したら

劣化ウラン弾並に危険な装備かもしれない。と言うか、こんな内ゲバで使っていい装備じゃない。

出来れば遠慮願いたいが、またこんなことがあった時には出来得る限り自重するか。

……あるいは、それを使わせるほど皆が成長したら話は変わってくるかもしれないが。

それにしても、これを使わざるを得なかった長野の事件って、どれだけ悲惨だったんだよ……。

 

さて、これで残るは……

祐斗に向き直った俺には、グレモリー部長の様子が変わったことを感じ取ることは出来なかった。

一応、他の俺には何かを感じ取れたようだが。

 

「……お見事、と言っておくよ。だけど僕相手に同じ手が通じると思わないほうがいい。

 たとえ足でも、そうそう狙いをつけさせるわけにはいかないよ」

 

「ああ。祐斗みたいなタイプに狙撃は相性が悪いなんてもんじゃない。

 だから――」

 

EFFECT-THUNDER MAGIC!!

 

距離を詰めようとしてきた祐斗に対し、雷撃でカウンターを試みる。

奴の得物は剣、上段に振りかぶればそれだけで雷を呼びやすくなる。

まあ、今の雷撃は左腕から出したもので、足元を狙ったものだが。

 

「くっ、あの時よりコントロールが増しているね!

 そして避けた隙をついて狙撃しようとしても無駄だよ!」

 

「――チッ! やはり速さには定評があるな、この作戦はダメか!」

 

雷撃で足を止めたところに、慌てて通常弾に詰め直したライフルで狙撃を試みるが

それさえも祐斗は避けてのけたのだ。なんてフットワークだ。

狙撃はこいつ相手には使えそうにない、狙撃担当の俺は煙幕を焚いて一時撤退する。

スナイパーが接近されてはシャレにならない。

 

「流石、用意周到だね。ライザー・フェニックスの時に僕をこき使っただけの事はある!」

 

おいおい。確かにそのお陰で勝てた様なものだが、今それを持ち出されるのは悪意を感じるぞ。

まあ、事実なので言い返せないんだがな!

そう言いつつ距離を詰めてくる祐斗に対し、俺はカードをリロードしディフェンダーを展開。

祐斗も、聖魔剣でディフェンダーを破ろうと試みている。

 

RELOAD!!

SOLID-DEFENDER!!

 

「『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』!!」

 

単純な力比べ。光と闇の両方を併せ持った聖魔剣に対し、光力特化の防御しかないディフェンダーは

若干相性が悪い。だが、使い手の力ならば負けていないはずだ!

そうでなくとも、まだ強化は有効なはずだ!

 

「ぐっ……くっ、パワーじゃ僕が不利か……ッ!!」

 

「得物は変わっても、本質が変わらないならば攻略のしようはある!」

 

強化が無くとも、俺と祐斗では若干だが俺の方が力が強い。

そもそも祐斗はスタミナに難のあるタイプだ。それはイッセーとの戦いで証明されている。

贔屓目で見て、聖魔剣を振るうスタミナは確保できているが

結局、そっちに体力を消費しているようなので、実際のところは変わっていないみたいだ。

となれば……

 

BOOST!!

 

「くっ!!」

 

「ぬぬっ……はあああっ!!」

 

俺の一吠えが、鍔迫り合いを制する形となった。

祐斗は思わずのけぞり、尻餅をついてしまっている。

だが、ここで追撃しようとしても油断は出来ない。何故なら……

 

「……そう、気を取られている相手の背後を取る……王道だが、読み易い!」

 

祐斗に追撃をかけようとした俺の背後から仕掛けてきたグレモリー部長の魔力弾を回避しながら

仕舞っていたショットガンを取り出し、撃ち返す。

弾込めの難易度が拳銃より高いので、隙ができやすいのが困ったものだが……

こっちは普通の祓魔弾、散弾式。単発は弱いが、纏めて当たれば通常の祓魔弾よりも強い。

まあ、滅びの魔力で防がれたのでダメージは入っていないようだが。

 

「セージ!! 今すぐ医務室に戻り、イッセーへの非礼を詫びなさい!!

 私への言動は不問にするわ、けれどイッセーにあんな手傷を負わせたことは許さない!!

 祐斗! 2人がかりで仕掛けるわよ!」

 

……は? こいつは何を言っているんだ、そんな顔をしているのかもしれない、俺は。

兵士が戦いで傷つき倒れるのは当たり前だろうが。

そんなに傷つくのが嫌なら戦わせるな。それとも一方的な蹂躙がお好みか。

フェニックスみたいな「犠牲(サクリファイス)戦法」の使い方にも思うところはあるが

今回のはそれとは違うと俺は思っているんだが……あんたには同じって事か。

 

まあ、1人で勝てない相手に2人がかりってのは正攻法だよ。

素人の俺が思いつくくらいには、な!

 

「部長、そうしたいのはやまやまなんですが……っ!」

 

「はっ、俺がまだいることを忘れてもらっちゃ困るな。

 スタミナ的には選手交代してないが、まだまだ続けるぞ!」

 

「……っ、本当に厄介な分身ね。けれど同時に頼もしい。

 セージ、あなたが私の言う事を聞いてくれないことが本当に残念でならないわ」

 

渋々――と言う風に見えたが――俺の背後から攻撃しようとする祐斗に対し

先手を打つかのように俺が飛び出す。ややこしいが、こっちは最大6人でやってるんだ。

これはルールで取り決めた事、とやかく言われる筋合いはない!

 

……それにしても、まるで成長していないとはこの事か。

いや、そもそも悪魔って奴は成長するのか? ちょっと疑問なんだが。

子供が生まれるって事は成長するんだろうけれど……確か寿命がえらい長かったよな。

寿命の長さに比例して成長にも時間がかかるとか、そういうのはあったりしないよな、まさか。

 

「グレモリー部長。俺は前に言いましたな。

 『他者を従えるに相応しい王たれ』と。ところがこれは何ですか。

 己が我儘のために私兵を使い、私闘を演じさせ、配下を危険に晒す。

 俺にはまだ、あなたが『王』として相応しいとは到底思えません。

 ここで質問を変えますが……あなたにとって『王』とは、『眷属』とは何なのだ!!

 

 ……俺が消滅するに値する存在なのか!? 俺と言う存在を否定するだけの価値があるのか!?

 俺の過去を、未来を、それぞれ否定するだけの『現在』であると言いたいのか!?

 お答えいただきたい! そして、その返答如何では……っ!!」

 

「ええそうよ! 朱乃も、ギャスパーも、小猫も、祐斗も、アーシアも、そしてイッセーも

 全部私のものよ! 私には皆を守り愛でる役目がある!

 皆に危害を成す者はセージ、あなたであっても許さない!!」

 

ショットガンの銃口を向けながら言う事でもない気はするが、自然と言葉が出た。

一度出てしまえば、あとは堰を切るのみ。

そう、そうなのだ。俺は別に悪魔社会が何をやっていようが

人間に迷惑をかけるのでなければ「そういうもの」として無視することだってできた。

 

しかし、事ここに至り俺の存在は、過去は、ひいては未来さえも否定、強制されようとしている。

そんなものが許されていいはずがない。生きると言う事は、誰かに強制されることでは無い。

それはまだ20年も生きていない俺でも何となく、いや本当におぼろげだが分かる。

自ら死を選ぶのも論外だが、生き方を強要させるなんてあってはならない事だ。

そうして生かされた生は、死と何が違うと言うんだ。

 

忠誠の強要、自由の否定、価値観の上書き。そのどれも、俺にとっては

不信に値し、唾棄すべき行いだ。

まして、愛情の強要など最悪の部類だ。双方の心が噛み合わぬ愛に価値など……

 

――明日香姉さん――

 

……っ!? い、いや……そんなことは……ない、と思いたいが……

って、今はそんなことを考えている場合じゃない!

振り切るように、俺は咆える!!

 

「今すぐこの『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の共有を解けとまでは言わない!

 だが、俺が何を望んでいるのかぐらいは王を僭称するのならば理解してほしかった!

 だからこそ、俺は今ここであなたに戦いを挑んでいる!

 己の未来を掴むのは、他の誰の手でもない……いつだって俺自身の手だ!!」

 

「それなら無駄な事よセージ。悪魔の駒で転生した悪魔が元の種族に戻る術は確立されていない。

 私は悪魔として、悪魔としてのあなたを受け入れる。けれどその前にイッセーに謝りなさい!」

 

確立されていない? 種族を、生きざまを変えて元に戻す方法がか?

はっ。やっぱり最低最悪の発明品だよ。VXガス位しかそんな発明を知らないけど

それと肩を並べるくらいには最低の発明だよ。あんたらにとっては救世主かもしれないけれど

それ以外にとっては、生涯を捻じ曲げられ、未来を決め付けられ、過去を否定される。

そんな発明品、この世にあっていいわけがないだろう!!

 

もし俺が悪魔になってしまったとしても、俺の心は人間のままだ!

魂を悪魔に捻じ曲げられてしまったとしても、俺と言う存在は人間であり続ける!

だからリアス・グレモリー! あんたの寵愛は今の俺には不要なんだ!!

そして俺は探し続ける! 俺の道を! 俺が消える前に!

 

「どうあっても逆らうのね、セージ。ならば仕方ないわ……

 私自ら、あなたの立場と言うものを……」

 

ふと、グレモリー部長の懐から黒い光が溢れた様な気がした。

あれは……何の光だ? 何かすごく不吉な予感がするが……

 

――き、気を付けろ! 滅びの力かどうかはわからないが、とてつもない力を感じる!

  警戒しろ! 詳細は調査している!

 

「くっ……これは……お兄様が私に渡した……!?」

 

……今の言葉が聞こえた時、一瞬穿った考えが過ったが

別に穿ってもなんともないと言う意見もまたあった。

フェニックスとの戦いのときのように、初めから勝たせるつもりのない試合。

それと同じだと思えば、サーゼクス陛下が裏で糸を引いても別段おかしくない。

だが、それにしたって……

 

「だ……ダメっ! 力が……祐斗……避けっ……!!」

 

「!? セージ君、避けろ!!」

 

次の瞬間、俺は我が目を疑った。

何せ、グレモリー部長から発せられた黒い光の帯は徐々に紅く染まっていき

祐斗を貫いていたのだ。と言うよりは、祐斗ごと俺を狙っていたようにも見えた。

 

いくらなんでも、あのグレモリー部長がそんな事をするはずがない!

犠牲戦法に難色を示しておいて、こんな真似をするはずがない!

これではまるで、制御が効いていない風にも見える。

 

「が……はっ……!? ぶ、無事かい……?」

 

「祐斗!? な、何をしているんだ!? 正気か!?」

 

しかしこれではどう見ても、グレモリー部長が祐斗を倒したという風にしか見えない。

くそっ、一体何がどうなっているんだ!

慌てて祐斗に駆け付けようとするが、制止されてしまう。

 

「ダメ……だ、セー……ジ……君……

 おそ……らく、部長……は……なに……かに……かはっ……!!

 こう……なったら……せめ……て……生き……のび……」

 

――リアス・グレモリー様の「騎士」、脱落。

 

その状況とは似つかわしくないほどの冷淡なアナウンスが流れ、祐斗も消失する。

残されたのは俺と、俺の分身と、グレモリー部長だけだ。

今の攻撃の正体が掴めない以上は、迂闊に出られない。

 

「わ、私……なんてことを……お兄様! これは一体……!?

 う、うああああっ!?」

 

返答がない? まさか、これはサーゼクス陛下が仕込んだことなのか!?

なんて考える間もなく、紅い光の触手がグレモリー部長から無数に伸び

こちらを貫こうと狙ってきている。

 

――攻撃範囲が広すぎる、このまま分身を増やしているのは的を増やすだけだ!

 

そう考え、俺は一度近場の分身を全部消去させる。

広範囲攻撃に弱いのがこの分身の欠点だ。アレを何とかしない事には

攻撃に転じるのも難しそうだ。

幸いにして神経断裂弾でなくとも特効があるから……

って、こうも激しく触手を振り回されてはこっちから近づけないし攻撃も出来ない!

わが身を抓ってなんとやら、か!

だが手をこまねいているわけにもいかない。さてどうしたもんか。

 

狙撃。狙いをつけている暇がない。アウト。

接近。あれを掻い潜る機動力が確保できない。アウト。

寧ろこっちに引っ張る。触手が絡まるか切断されてアウト。

 

……ん? 引っ張る?

いや、しかしこの方法は一度敵陣に乗り込まないと出来ない。

そこまで追いかけっこになるが……やってみるか!

 

決まれば話は早い。可能な限り全速力で、俺は旧校舎めがけて走り出す。

当然向こうも紅い光鞭(堕天使でもないのにこんなのを使うのも変な話だが)で矢鱈めったらに

周囲を薙ぎ払いながら追いかけてくる。おいおい、ここが異世界でよかったな。

 

「ま、待ちなさいセージ! あなたこの上アーシアまで巻き込もうと言うの!?

 本当に見下げ果てた男ね、あなたは!!」

 

「力の制御も出来ない方に言われたくはありませんな! 祐斗をやったことは棚上げですか!」

 

何とでも言え。アーシアさんを置いてきたのはそっちだろうが。

それに、こっちは部室まで殴り込みに行くつもりは無いんだ。

あのカードさえ使えれば、まだ勝機は見いだせる。それだけだ。

 

だが、とにかく逃げるので必死だ。

何せあの光鞭、掠めただけでもかなり痛い。

俺の調べによると、滅びの力が何らかの要因で変質したものらしいが。

その何らかの要因まではロックされていて調べられなかったようだが……怪しすぎるだろ。

 

まあ、今までの動向から推測するに……なんて推測立ててる暇がない!

こうして旧校舎めがけて走っている最中にも、向こうはどんどん攻撃してきている。

一体どこからどこまでが自分の意思かわからないが。

とにかく今は、「昇格(PROMOTION)」のカードが使える場所まで移動することが先決だ!

 

――――

 

俺とグレモリー部長の鬼ごっこは、体感ではかなりの時間続いたように感じた。

何せカードを引く暇もないのだから、時間操作してその隙に逃げると言う手が使えない。

おまけに分身を強制消去したものだから、手札が混線している。

……つまり、今どのカードがどれだけ使えるかが把握しきれていない。

それだけでも俺にとっては死活問題だ。早急に何とかしたいのだが……

 

「セージ! 隠れても無駄よ!」

 

どうやら、時間と共に使い方に慣れてきたのか、あの力が的確に俺を狙ってくるようになった。

それはつまり、こっちにとってはどんどん状況が悪くなるばかりの有様である。

今は何とか、新校舎の教室の一室に逃げ込むことに成功したので息を潜めている。

 

「どうあっても出てこないつもりね……なら強引にでもイッセーの前に引きずり出すわ!」

 

……今、俺の脳裏を凄く嫌な予感が過る。

この場で強引に仕掛ける、しかもそのパワーソースは滅びの力。

ルール上、建造物の破壊は不問。これらが導き出す答えは。

 

――新校舎ごと俺を叩き潰すつもりか。

 

規模から考えても、フェニックス戦でやられたアレの比にはなるまい。

前回は昇格で切り抜けられたが、ここは敵陣ではないのでそれは使えない。

つまり、今それをやられると完全にアウト。

 

ではどうやって状況を切り抜けるか。

教室――理科室の中を見渡すと、おあつらえ向きのものがぞろぞろと置いてあった。

小道具へのモーフィングもルール上は不問。ならば……これしかない!

 

そう考え、俺は隣の準備室からビーカーを1個取り出し、モーフィングで空き缶に変える。

この中の薬剤も色々使えそうだったが、今は逃げるのに専念しよう。

そしてもう1つ。こっちが本命だ。

 

「モーフィング! 『人体模型』を『歩藤誠二のマネキン』に変える!」

 

ここで歩藤誠二としたのは、向こうは何処まで行っても俺を「歩藤誠二」として見ているからだ。

となれば、俺=歩藤誠二と言う方程式が向こうの脳内に完成されているとみて間違いない。

分身も補充したかったが、まだ逃げている途中で分身を補充するのは危険だ。

分身を囮にする方法も、自爆と違いダメージ計算が難しい。避けた方が無難だろう。

そんなわけで、俺のマネキンと空き缶を用意する。さて、用意は出来た!

 

マネキンを1階の適当な廊下にセット。あとは空き缶をグレモリー部長を誘導するように投げながら

相手の出方を窺う。食いついたらこっちのものだ。

1階を選んだのは、下からの攻撃を受けないようにするためだ。地下室があるそうだが

鍵がかかっているのを逃げ込んだ時に確認した。壊す手間も惜しいので地下には入っていない。

性格を考えても、入っていないところで待ち伏せるって事も無いだろう。多分。

 

ともかく、これで後はグレモリー部長がこっちに向かってくれれば……

空き缶を適当に投げていると、近くでグレモリー部長の声がする。食いついた!

一際大きな音がするように空き缶を投げ、大声で叫ぶ。

 

「グレモリー部長! 俺はここだ!」

 

「観念したのねセージ、今行くわ。一瞬で終わらせてあげるから、そこは心配無用よ」

 

勿論、そこで棒立ちで待ち構えている義理なんかあるわけがない。

予め窓を開けておいた近くの教室から、そっと抜け出して一目散だ。

そういえば、マネキンにも1個細工をしておいた。

準備室の薬剤の1つを、煙幕にモーフィングさせてマネキンの中に入れたのだ。

そして、そんなマネキンをあの光鞭で貫通すれば……

 

刹那、背後から衝撃が伝わる。

……あれ? 俺、間違えて爆薬仕込んだか? それならそれでいいんだが……多分違う。

こんな爆発が起こる位、相手の攻撃が半端じゃないって事だ。

とにかくこれで距離を稼いだ。体育館を通り過ぎ、何とか旧校舎までたどり着くことが出来た。

 

さて。ここからが問題だ。

数か月前の俺からは色々な意味で考えられない事態だ。

迎え撃つなら旧校舎に入った時点で色々罠を敷いて昇格すれば済む話だが……

 

間違いなく、アーシアさんは巻き込まれる。

もう既に要らん犠牲を出し過ぎている。これ以上犠牲者を出すのもどうかと思いながらも

相手に追い付かれるのを覚悟の上で部室まで駆け込むことにした。

こうなったら、事情を話してアーシアさんは逃がす。

ダメなら昏倒させてリタイアを狙うが……

 

最後の最後、敵はやはり強大だ。

これを何とかして乗り越えなければ、俺に未来はあるまい。

いや、乗り越えたとしても……

 

……それでも、今やれることをやろう。

仮に死ぬのだとしても、笑って死ねるように。




神経断裂弾が民間で使用される事案発生。
オリジナルよりも強化しすぎか、あるいはこんなものか。
やろうと思えばドラゴンの鱗破れると思うんです。
全盛期二天龍とか無限と夢幻はさすがにアレでしょうけど。
まして神経断裂弾は「身体にめり込ませる」だけでいいので
「貫通させる」必要が無いですからね。目玉とか狙うでもOKではなかろうかと。

Q:で、なんで神経断裂弾が赤龍帝の鎧に効いたの?
A:無機物の赤龍帝の籠手由来の赤龍帝の鎧に神経なんかないじゃないかと
 お思いかもしれませんが、ドライグの意思が宿っている=疑似的に神経が通っている
 と判断。イッセー本体ではなくドライグの側を狙ってます。なのでなお更。
 鎧ほど宝玉部分は頑丈にできてなさそうですし、要は急所狙いですね。
 いずれにせよ、「神経の通った生物」である以上
 神経断裂弾は特効になると言う事例ですね。オルトロスの時と同様。
 逆に言えば、人形みたいに中身が空っぽの奴には神経断裂弾は効きません。
 まぁ、内部から破壊するから炸裂弾としては使えるかもしれませんが……

 ネタバラシしますとアインストゲミュート(鎧の奴)みたいに
 完璧に空っぽだと効きません。
 意外なところではアインストレジセイアにも効果はあります。
 ただ規模が違い過ぎて蚊に刺された程度でしょうけど。

ともあれこれでイッセーが脱落、ドライグに相当なダメージが入っているので
向こう1か月神器使用不可状態です、イッセー。
……あ、あれ? これ夏休み合宿フラグと
冥界のソーナ戦フラグへし折っちゃった!?(今頃
セージマジ疫病神。素直に自由行動権を与えていれば……

リアス。
紅い光の鞭を振り回してますが、イメージは第4使徒(新劇では第五の使徒でしたっけ)
シャムシェルをイメージしていただければ。
悪魔なのに。悪魔なのに。
木場をやったのは、単純に制御不能だったから。
今回のラスボスポジ(一応)ですのでやばい感を出すのに結局暴走と言う
ある意味会談時のカテレアと同じような状態に。
ワンパターンは改善できるよう努力します……

でもやばさは前章のカテレアよりもマイルド。
戦力比的に仕方ないね。

Q:で、どうしてこうなった?
A:アジュカからサーゼクス経由で寄越された道具のせいです。
 「王」の駒のドーピングは原作では強力過ぎて危険な代物でしたが
 拙作でもそこは変わっていません。リミッターはつけられていますが。
 そしてそのドーピングにあやかれたのは原作ではごく一部の悪魔だけですが
 拙作では「王」の駒自体は悪魔の駒を所有する悪魔全員に
 行き渡っているとしてあります(勿論、転生には使えませんが)。
 ドーピング効果だけがそのごく一部の悪魔の対象となっています。
 勿論、リアスに寄越された駒はドーピング効果のないリミッターガチガチのもの。
 (その事をアジュカは把握しており、本来のリミッターの目的通り、リミッターによって
 プレイヤー間の能力の均整化を図るために作った
 いわばリミッターの上書き装置とも言えるのが件の道具ですが
 結果として「特異な能力」である滅びの力が暴走。つまり完璧な失敗作)

実は「己が我儘のために私闘を演じる~」の件はブーメランになってます。
セージとて完璧超人ではありませんので
こういうブーメランを投げることも稀によくあります。

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