恋ぞ積もりて 淵となりぬる   作:鯛の御頭

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神社とか寺とかに纏わる怖い話・不思議な話 まとめ風味

夏なのでホラーっぽいものを一つ。若干グロい表現あり。
九重神宮とか九重家にまつわる話です。そんなに怖くないと思います。
そしてなんちゃって2chまとめ。
読まなくても今後の話に支障はないので、読み飛ばし可です。



番外編

Episode1

 

 

117:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

神社の話と聞いて、私の身に起きた不思議なことを語ってもいいでしょうか。

 

118:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

おk

 

119:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

いいよ

 

120:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

ありがとうございます。書き溜めていないので、ゆっくりですが、ご容赦ください。

 

 

私が当時アラサーのころの話です。

結婚する前からいずれ子どもが欲しいと言う話は夫としていたが、中々子宝に恵まれなかった。

夫も私も仕事が忙しい時期がずれていたし、できたらいいねーぐらいにしか考えていなかった。

けど、結婚生活がたつにつれ義実家も実家からも孫はまだかと催促され、職場でもそれとなく子どものことを聞かるのが苦痛になってきていた。

私の後から結婚した後輩たちの妊娠出産の話を聞くと喜ばしいとは思いながらも、すごく羨ましく思っていた。

あんまり年齢が上がると体力的にも厳しいし、そろそろちゃんと調べて不妊治療とか始めた方がいいのではないかと考えていた。

それを夫に愚痴ったことで喧嘩になってしまった。

普段なら大きな喧嘩になることは無いんだけど、私がそれを口にしたのが夫の夜勤明けだったのがいけなかったんだと思う。

 

 

長くなったけど、ここからが不思議な体験。

普段は関東で仕事をしているけれど、偶々年何回かある出張で京都に行ったんだけど、先方の都合で面会がキャンセルになった。

翌日も大阪で仕事の予定だったから、会社もそのまま休んでいいと言われたので、気分転換に京都観光でもすることにした。

出張は私一人で特に気を遣う同僚がいないのはラッキーだった。

修学旅行以来だなあと思いながら、どうせなら前に行けなかったところに行くことにした。

前は清水寺とか嵐山とか金閣寺とかド定番のところしか見てなかったんだよね。

桜のシーズンは終わっていたけど、新緑の時期も緑の多い神社とかお寺とかはなんだか落ち着いた。

夫には出かける前に謝ったけど、帰ったらちゃんともう一回謝ろうという気分にもなれた。

下開けといて。

 

 

 

121:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

 

ありがとう。続きます。

 

昼過ぎだったかな。

厄除けで有名な某神社に行って、本殿前にお参りしてから、なんだから歩き疲れて参道の途中にあったベンチで休んでいた。

平日だったけど、観光客はそこまで多くなくて、じろじろ見られることもなかったし、仕事用のヒールのある靴で歩いていたから気が付いたら結構足が痛かった。

早めにホテルに帰ろうかなと思ったんだけど、なんだかそこから動けなかった。

 

ぼんやり遠目に人が行きかうのを見ていて、ふと横を見たら、ビックリするほど綺麗な幼女がいた。

4歳とか5歳とかそのぐらいの子どもなんだけど、目はくりくりしてて、睫毛は長いし、髪は艶々天使の輪っかになってるし、これは生涯を通じた美人になると確信できる子だった。

おかっぱぽい髪型もやぼったい感じじゃなくて、とりあえず天使かな?って冗談じゃなく思った。

 

 

122:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

幼女キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

123:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

幼女キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

124:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

幼女キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

125:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

幼女キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

 

 

126:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

>>122~125 おまわりさん、こっちです。

 

って冗談でもなく、正直変態じゃなくても誘拐されたり、大富豪に貢がれたりされるレベルの美少女。

あまりにびっくりして声が出なかった。

一瞬どっか迷子か、近所の子かな?とおもったんだけど、その子は子供用の巫女さん衣装だったから多分その時は神社の関係者じゃないかなって思った。

また巫女さんの衣装がすっごく可愛かった。コスプレ用の安っぽい衣装じゃなくて、本当にきちんとしたいい布を使っていた。

昔バイトでいい値段のアパレルで働いていたから、多少縫製とか布の良し悪しは素人目だけど分かった。

 

「お姉さん、どうしたの?」

 

コテンって首を傾げながらその子が聞いてきた。

顔だけじゃなくて声まで可愛いなあと思いながらも、自分がここからずっと動いていなかったことに気が付いた。

 

「大丈夫よ。歩くの疲れて休んでいたから」

「お姉さん、頑張たんやね」

 

その瞬間、私は泣いていた。

恥も外聞もないけど、その子の前でボロボロ泣いた。

情けないけど、緊張の糸が切れたみたいに頑張ったねって言われて涙が出て止まらなかった。

ここまで美少女じゃなくても小生意気な女の子でも、夫に似たちょっと眉の濃い男の子も見てみたかった。

なんで自分に子どもができないのか、子どもがいないことにとやかく言われないといけないのか。

言っている方に悪気はなくても、知らず知らずにストレスになっていたんだと思う。

私が泣いていてもその子は慌てたり、逃げたりせずに俯いていた私の頭を落ち着くまで撫でていてくれた。

それにまた泣いた(´;ω;`)天使だった。

どっちが子どもか本当に分からない様子だったけど、運よく誰も近寄ってこなかった。

 

 

127:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

アラサーを慰める幼女(天使)

 

128:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

アラサーうらやま。

 

129:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

幼女は心まで天使だったか。

 

130:117改めアラサー

もうコテハン、アラサーでいいや。今はもっとBBAだけど。

 

続き。

しばらく泣いてから、嗚咽もちょっと落ち着いてきたら女の子が、じっとこちらの眼を見て話をしてくれた。

 

「あのな。お姉さんのおうちのお庭におっきな柏の木があるやろ。その木もお姉さんみたいに疲れとるみたいやから、日の当たるとこに移したってな」

 

一体何のことだろうと思ったが、とりあえず分かったと頷いておいた。

 

「大事にしてやってな。おじいちゃんが言っとるよ」

 

にっこり笑われて、それに見惚れていたら気が付いたら予約していたホテルの部屋だった。

端末で確認したら神社からホテルまでコミューター使って帰っていたらしいけど、本当に記憶がない。

チェックインした覚えもなかった。

あまりに疲れすぎていて記憶が飛んだのだとその日は早めに寝て、次の日の出張に備えた。

 

 

出張は無事に終わって、幸い夫とも仲直りができた。

変に仲が拗れることもなく、それまで通りに生活していた。

けど、神社で会った子が言っていた柏の木って言うのがずっと気にかかっていた。

柏かどうかその時は分からなかったけど、確か実家の庭に大きな木があったなあと思いだした。

交通の便があんまりよくないから、結婚してからあんまり実家には帰っていなかったけど、思い切って有給使って帰ることにした。

突然帰ってきて驚かれたけど、まあ母も喜んでくれた。

 

帰ってから知ったんだけど、私が結婚してから家の隣に3階建てアパートができていた。

おかげで庭の一部は日が当たりにくくなって、一部ジメジメした感じになっていた。

庭の隅に植えてあった立派な木も元々日当たりがそんなに良くなかったのが、悪化して素人目にも元気がないと分かった。

ネットで調べてみたらそれが柏の木っぽかったので、本当にうちにあって驚いた。

父に聞いたら、父方の曽祖父がとても大切にしていた木で家を建て替えるときも前の家から持ってきたらしい。

手入れも自分たちが年を取ってからだと大変だし、近頃元気がないからいっそ伐採してしまおうかという話も出ていたが、私がお金を出して移動させることにした。

母はちょっと渋っていたが、父も大切にするようにと言われていたらしく、木を残すことには賛成だった。

料金は安くはなかったけど、この前の出張手当と子どもができた時にとちょくちょく自分で貯めていたお金でどうにかなった。

樹木医さんにも木を見てもらったけど、植え替えたら元気になるだろうという事で、植え替えも問題なく終わった。

 

 

131:アラサー

長いので分けました。

 

 

それからしばらくして、やっぱり子どもが欲しいから不妊治療をしようと夫と話し合って色々調べてもらうために産婦人科に行ったら、何と妊娠が分かった。

確かにダメもとで一発試してしてみてはいたけど、まだ悪阻もなかったから妊娠は思いもよらなかった。

そして驚くことに、ここから私だけじゃなくて親戚一同ベビーラッシュだった。

新婚の妹夫婦には双子が生まれただけじゃなくて、晩婚で子どもは諦めていた兄夫婦もなんとおめでた。

兄嫁は高齢出産だったけど、母子ともに超健康。

私も3人の子どもに恵まれた。

男の子は立派に夫の遺伝子を継いで生まれた時から眉が濃いwww

墨で書いたかな?ってくらい生まれてきたときから夫そっくりwww

そこから数年は出産子育てに追われ、実家も義実家も振り回され、ヒーヒー言っていた。

あれだけ厭味ったらしく孫はまだかと言っていたので、疲れ顔の義母に念願の孫ですよ~っとあやしてもらっている。

 

今は子育ても少し落ち着いて、末っ子が小学校入学したのを記念にカキコ。

 

 

132:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

幼女は天使ではなく、木の精霊だったとか?

 

133:アラサー

>>132

分からない。実際お礼に何回か参拝したけど、宮司さんも心当たりがないそうだ。

ただすごく感謝している。

 

あと、実家の柏の木は子宝の木として近所でも評判になって、今ではウチのご神木と化している。

後で調べてみたら、柏の木って子孫繁栄の縁起のいい木らしい。

孫に甘いジジババも、この木だけは悪さすると鬼のように怒るし、今でも大切にされている。

 

 

 

 

 

 

 

Episode2

 

7つ上に従姉がいるんだけど、この従姉が小さいころ、不思議な体験をしたらしい。

 

当時、従姉は4歳。

 

ある夏、従姉とうちの家族が河原でバーベキューをしていたそうだ。

川と言っても山の方じゃなくて下流の川幅の広くて流れも弱いところだったから、私の兄や従姉他数人は川辺で遊んでいたそうだ。

勿論、間違って川の深いところに行かないように大人は目を離さないようにしていた。

ただ従姉は足を滑らせて、川は浅く溺れはしなかったものの、石に頭をぶつけて脳震盪を起こしてしまった。

直ぐに病院で診てもらった、レントゲンもCTも異常なかったし、その日のうちに家に帰った。

 

だけど、帰ってから様子がおかしかった。

従姉は今でも大人しいと言うか、どちらかというと内気なタイプで、外で遊ぶより絵を描いたり、本を読むのが好きな子だった。

それが手の付けられないくらいやんちゃな子になった。

男の子と喧嘩はするし、外でこんがり焼けるくらい遊びまわるようになったし、叔父大好きだったのに叔母にべったりになった。

それが一時的なものなら子どもの気分変わりで済ませられるんだけど、逆に好きだった絵や本に見向きもしなくなったから、従姉の両親も困惑していろいろな病院で診てもらったそうだ。

だが、どの病院も検査は異常なし。

心理的な検査もしたみたいだけど、知能的にも対人関係も問題ない普通の子どもの範囲内だと言われてしまった。

 

祖父母も甘えたい盛りだからしばらくは様子を見ても良いのではないかと、変わりようは不思議に思いながらもそれほど気にはしていなかった。

当時、叔母は第2子妊娠が分かって赤ちゃん返りではないかと思っていた。

 

だけど叔母はどうしても気になって、ダメ元で中学時代の友人を頼ったそうだ。

その友人は九州の方ではかなり有名な某神社の一人娘で、叔母とは仲が良かったらしい。

連絡はしばらく取っていなかったが、幸いにして家の場所は分かるため手紙を送った。

連絡は思ったよりもすぐに帰ってきて、子どもを連れて遊びに行くから様子を見せてほしいと言われた。

夏の終わりごろ、友人夫婦が5歳男の子を連れて遊びに来た。

叔母は妊娠中だったため、友人と家に残り、叔父と従姉と友人夫とその男の子で遊びに出かけることにした。

 

 

叔父たちの方は、例のバーベキューをしていた河原へやってきた。

何かするのかと思ったら、始めたのは土手での駆けっこに鬼ごっこ、水切り遊びに変わった石探しなど、本当に普通に遊んでいたそうだ。

年が近かったのもあって男の子と従姉もめいっぱいで遊んで、時には喧嘩したり、叩きあったりして怒られながら、川遊びを楽しんだらしい。

ちなみに普段デスクワークの叔父は早々にばてて一人監視という名の休憩をしていたと聞いた。

 

一通り遊び終わって、土手に座りながら休憩していると、友人夫が従姉の頭を撫でながら奇妙なことを尋ねたらしい。

 

「楽しかったか、(ボン)

 

坊って、男の子に対する呼び方に、叔父も一瞬首を傾げた

従姉の当時の服は遊びやすい服装とは言え、きちんと女の子だと分かる格好をしていた。

単に言葉の意味が分かっていなかったのか、従姉は大きく頷いた。

 

「そうか、そうか。楽しかったな。じゃあそろそろ帰ろうか」

「やだっ。まだ遊ぶ。まだここにいる」

「坊」

 

その男性は従姉の頭を撫でると、目線を合わせてしゃがみこんだ。

 

「坊は独りぼっちでここにおるのが寂しかったんやろう。……そうか。坊は従姉ちゃんと同じように呼ばれとったんか。従姉ちゃんが羨ましかったんやな。お母ちゃんに抱っこされたかったし、もっと遊びたかったなあ。けど、坊が行く場所はここやない。坊も分かっとるやろ。母ちゃんがきっと探しとるよ」

 

まるで迷子の子どもに言い聞かせるように従姉に話していたそうだ。

従姉は終始泣きじゃくっていたらしいが、叔父はなぜか止めることができなかったらしい。

 

「お母ちゃん、探しとる?」

「探しとる。向こうで首長くして待っとるよ」

「お母ちゃん、怒らん?」

「寂しかったのはお母ちゃんも一緒や。いっぱい抱っこしてもらい」

 

この時叔父は友人夫が従姉ではなく、別の誰かに話しかけているのではないかと感じたそうだ。

従姉はその後散々泣いて、泣いて、泣き疲れて家に帰って起きたら前の内気で絵と本の大好きな女の子に戻っていたそうだ。

まるでケロっとしていて、叔母が拍子抜けするほどあっけなかったらしい。

友人夫は、しばらくは少し敏感な部分があるかもしれませんが、年と共に落ち着いてきますので、大丈夫だと言っていたそうだ。

 

従姉は大人になってからその話を聞かされたそうだが、全く覚えていなかったみたい。

友人夫の話だと、従姉にはあの川で昔亡くなった子どもが憑いていたらしい。

その男の子と従姉が丁度同い年で、太郎だから“たーちゃん“みたいなかんじで同じように母から呼ばれていたから、羨ましくなって、だからたまたま波長の合った従姉に憑いて、母に甘えたり、遊んだりしていたそうだ。

従姉はしばらくは確かに何となく嫌な気配がするとか、変だなと思った場所は昔墓地だったり、事故現場だったり、第六感が冴えていたこともあったそうだが、今はぼんやりとしか分からないと言っていた。

 

 

結局この叔母の友人夫は、京都の方の超絶有名な神社の家の出で入り婿にとても来てもらえるとは信じられなかったほどの家柄らしい。

曰く、やんごとない方々の血を引いているとかいないとか、陰陽師とのつながりもあったとかないとか、実家の方にも個人的にも眉唾な話は山ほどあるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

Episode3

 

825:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

そういえば、先週京都の九重神社でお守り買ったら、旅行先で一人だけ牡蠣に当たらなかった。

厄除けのお守りってウイルスにも勝てるのか。

 

826:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

>>825

某スプレータイプの消臭剤には除霊効果があるくらいだから、効くんじゃないか?

 

 

827:以下名無しに変わりましてVIPがお送りします。

 

>>825九重神宮のお守りは人によってはガチ。特に厄除け。

 

俺のじいちゃん。死ぬまで毎年正月の参拝とお守りを買う事続けてたらしい。なんでか聞いてみたら、なんでも爺ちゃんが若いころの車って今と違って事故率も高くて、自動運転もそんなに進んでなかったらしい。

 

旅行で記念と何となく気分で厄除けお守り買ったんだけど、ある日、高速道路走ってたら反対側の大型トラックが突っ込んできた。中央線はあったけど、縁石とかも低くて普通に乗り越えてきたんだって。

危ないって咄嗟にハンドル切って衝撃が来た!!って思ったら助手席側がペチャンコにつぶれてた。

幸い、じいちゃんは無傷。相手のトラックの居眠りだったらしい。

 

ただ、不思議なことに運転席側に吊るしていたはずのお守りがまるで圧縮されたみたいに小さくなってたんだって。こう、トラックに踏みつぶされた助手席側みたいに。

 

 

 

 

 

 

 

 

Episode4

 

部活の先輩が、超有名な某神社の息子だったんだけど、やっぱり神社関係ってなんらかの神通力持ちの人っているのかな。

 

中学高校で俺は武道系の競技をしていた。何の競技か想像に任せる。

先輩は3年で俺は2年の時だった。

ある日の部活終わり、部室の更衣室で着がえていた。

その先輩は奥のロッカーを使っていて、俺たちは入り口に近い側だった。

先輩が先に着替え終わって、帰ろうとしていたので、俺と友人Aは『お疲れ様です』と挨拶をした。

先輩は足を一瞬止めて、『お疲れ』と俺と友人Aの肩を叩いた。

普段、あんまりそんなことはしない人だからびっくりしたけど、俺も友人Aも部活の顧問に叱られた日だったから、励ましなんだろうなと思っていた。

 

Aと俺は、学校の帰り道を一緒に駅まで歩いていた。

特にいつも通りの道だったんだ。

今日の部活のこととか、顧問への愚痴とか、先月発売された漫画のこととか特に変わったことは話していなかった。

 

駅までの道の半分ぐらいだったところで、俺とAはなぜか肩を引かれた。

何も言われずにただ肩を引かれて驚いた。

誰かがすぐ後ろにいるなんて全く気が付いていなかったが、後ろを振り返るとそこには誰もいなくて、Aと揃って首を傾げた。

 

途端、俺たちが進んでいた方向から轟音がした。

慌ててそっちをみたら、ほんの数歩先に看板の一部が落下していた。

看板は結構大きくて、2mはあったと思う。それが大きくひしゃげていて、もしそのまま歩いていたら直撃していたのは間違いなかった。

俺とAは呆然としていたんだが、直ぐにその店の店員がやってきて、怪我がないか聞かれた。

呆然としたまま俺とAは頷いた。

その後警察とかに事情を聞かれたり、親にも心配されたし、翌日は学校の連中にも知られていた。

 

まあ次の日も普通に部活があって俺とAは部室で着替えていたんだけど、俺たちが入った後に例の先輩が入ってきた。

 

「昨日は大変だったな」

 

先輩がそう言ったので、先輩も俺たちが危ない目にあったことを知っていたようだ。それで通り過ぎるときに昨日の帰りみたいに俺と友人の肩を叩いて行った。

マジビビりましたよー、とか俺は普通に話していたんだが、Aは無言だった。

俺たちが先に着替え終わったので、部室から先に出たんだが、Aは青い顔をしていた。

体調が悪いのか聞いたが違うらしい。

何なんだと聞いたら、Aは声を潜めて俺に聞いた。

 

「なあ、あの日、何かに肩引っ張られただろう」

 

そんなに強い力じゃなかったが、誰もいなかったのに確かにAも俺も肩を掴まれて立ち止まった。

幽霊とか信じる方ではないが、助かったので悪いものではなかったのだと勝手に思っていた。

俺が頷くと、Aはさらに顔を青白くさせた。

 

「肩引っ張られたのって、昨日と今日、先輩に叩かれたのと同じ所じゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

Episode5

 

お守りとか絵馬とかは別だけど、神社のものは無暗に持って帰らない方がいい。

場所は言えないけど、京都の某神社。

丁度桜が満開の時期で、俺はその写真を撮りに神社に来ていたんだが、偶々見かけた参拝者のマナーが最悪だった。

その神社は敷地内にかなり桜が植えてあって、名所としても有名だから、観光客でごった返していた。

立ち止まっていると後ろの人の流れがつっかえるくらいだったので、俺はできるだけ通行人の邪魔にならないように写真を撮っていた。

 

マナーの悪い参拝者は5人組の外国人だった。

はっきりした国籍までは分からないが、とりあえず海外からの観光客っぽい感じだった。

とにかく、声は大きいは、横に広がって歩くわ、通行人の邪魔にはなっていた。

嫌な感じだなあとは思っていたが、そのうちの一人の男が手を伸ばして桜の枝を折った。

その神社の桜は樹齢の長い老木が多いから、すごく大切に手入れがされているのを知っていたので、その男の行動に怒りが込み上げてきた。

だが、チキンな俺はそれを注意することはできず、悔しい思いをするだけだった。

写真を撮って証拠があれば神社の人にも言えたんだろうけど、その時の写真は丁度撮っていなかったし、落ちていたと言えば言い分は通ってしまう。

 

俺は気を取り直して場所を変えながら写真を撮っていたが、神社から去ろうとする例の集団とまた遭遇してしまった。

もうさっさと帰れと思いながらそいつらを見ていたんだが、そいつらの一人が入り口の階段のところで突然消えた。

その後悲鳴が聞こえて、辺りは騒然としていた。

俺も野次馬根性むき出しで近づいて行ったら、その男は頭から血を流し、腕や足の骨が折れていた。

その神社は門前のところが長い階段になっていて、男はほぼその一番上から落ちたようだ。

階段で転んでどの程度怪我をするかよく知らないが、足は変な方向に曲がってたし、腕の骨も皮膚を突き破っていたのでかなり重症だってことは素人目にも分かった。

しかもも折れた方の腕がさ、ちょうどあいつが折った桜の木の枝みたいに骨が出てるみたいだった。

 

仲間が必死に呼びかけているが、男は弱弱しい反応をしていた。

すぐ救急車がきて搬送されたが、その後の男については俺も全くわからない。

 

ただ、あれ以来その神社だけではなく、どこで写真を撮るときも周囲を確認している。

 

 

 




ちなみに設定

Episode1 悠(幼少期)厄除けで女の子の格好をしていたころ
Episode2 雅の叔父(嵐)
Episode4 雅の兄(煉太郎)

そんなに怖くなかったですよね?

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