魔法科高校の劣等生 欠陥品の魔法師   作:ユウジン

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姉弟

姉さん……言っておくが先ほどの風紀委員達が言っていた敬称である姐さんではない。

正真正銘七草 真由美と草繋 大翔は同じDNAを受け継ぎ更に大翔が8歳までは同じ釜の飯を食べていた実の姉弟だ。

色々あってと言うか紆余曲折を経て七草の遠縁で親戚の草繋家に大翔が養子としてだされて七草 大翔から草繋 大翔になってからも真由美とは交流が続き(と言うかこの姉は平然と遊びに来た上に養父と養母が普通に歓迎するのだ)弟を苛めて遊ぶと言うとんでもない女だ。

 

「そんなに人をおちょくって楽しいか?くそ姉」

「スッゴク♪」

 

我が姉ながらとんだドS女だ……生徒の前では公明正大でその愛くるしい外見に騙されるものもいるが騙されてはいけない。真の性格はこの腹立たしいほどのドS差にある。普段は猫被りまくってるが大翔や親しい人間の前ではそのベールが脱げ落ち口から溢れんばかりの毒を出す。

 

「全く。入学したんだからお姉ちゃんに顔くらい出すものでしょう?」

「一応学校では他人と言うことになってるんじゃねえの?」

「あんな狸親父の言うこと聞く必要はないわ」

 

無論狸親父とは二人の実の父親、七草 弘一のことだ。

 

「どちらにしたって学校で実の姉弟だってバレたら面倒だぞ?色々複雑な事情が絡んでるんだから……」

「大丈夫よ。もうみんな帰ったわ」

 

そう言う問題では断じてない。

 

「それに私の遠隔視知覚系魔法・マルチスコープは知ってるでしょ?ちゃんと見回ったわ」

 

マルチスコープと系統外魔法と呼ばれる魔法でようは違う場所をその場にいるように見ることが出来る魔法だ……だが、

 

「魔法の不正使用は禁止じゃないの?」

「学校の治安を監視してるのよ」

「同時に弱味も探ってると?」

「そこまで腐ってないわ」

「どうだか」

 

バチバチと二人の間で火花が散る。

 

「ねえ大翔。お姉ちゃんに対して随分ぞんざいじゃない?」

「そうか?性格がくそ悪いのは事実だろ?と言うか今朝だって何が達也く~んだよ。あんまりにワザとらしすぎて背中に悪寒が走ったわ」

「貴方だって随分手が早いんじゃないかしら?ビックリしたわよ?弟が幼女趣味に走ったかと思ったときは」

「ちっげぇよ」

 

バチバチと火花が強くなる。

 

「あと、人を裏表激しい人間みたいに言わないでくれる?」

「人をロリコンに祭り上げないでもらえるかな?」

 

真由美は大翔を見上げるようににらむ。怖くないね。

 

「無駄に図体ばっかりでかくなって」 「可愛そうだねぇ。成長が止まった人は」

 

ピキ!っと真由美のこめかみがヒクついた。

 

「いいのよ私は。その分スタイルが言いから」

「深雪の方がスタイルいいし美人度合いで言ったらあいつの方が上だと思うが?」

「っ!」

 

内心では負けたと思っていたらしい真由美は固まる。

 

「わ、私の方が愛くるしいわ」

「自分で言ったら世話ないぜ姉さん……」

『……くく……アハハハハ!!!!』

 

それから二人は隻を切ったように笑う。

 

「あーあ……でもあのときの騒動であなたが一緒にいたときはビックリしたわ」

「俺だって姉さんが止めに入ったときは卒倒するかと思ったよ」

「ふふ、でも入学式サボったのはいただけないわね」

「ぐっ!」

「しかもその後貴方の入学祝に何か奢ってあげようと思ったのにな~」

「ぐぅ……」

 

流石にその話題では大翔の分が悪い。

 

「で、でさ……最近どうなんだ?」

「話題を変えに来たわね。まあいいわ。楽しくやってるわよ。生徒会も皆いい人だしね。はんぞー君はからかうと面白いし」

(絶対この人はんぞー先輩にどんな感情を自分に向けられてるか分かってやってるな……)

 

はんぞー先輩に大翔は同情する。

 

「大翔もいい友人に出会えたみたいだしよかったわね。お姉ちゃんとしては心配だったのよ?」

「嬉しくてお腹が捻れそうだね」

「笑ってるじゃない!」

 

二人は自然な態度で話す。大翔も大翔で猫を被ってる節がない訳じゃないし真由美なんぞ言わずもがな……

 

「で?なんで呼んだんだ?」

「弟と話したかったじゃダメ?」

「……はぁ……じゃあナンバーどうやって知ったの?」

「叔父様によ」

「あの人は……」

 

真由美の言う叔父様とは草繋の家で大翔を実の息子同然に育ててくれた人だ。とは言え家系図的には殆んど他人だ。

 

「叔母様も心配してたそうよ」

「さいで」

 

叔父も叔母も大翔や真由美にとって下手すれば実の親以上に信頼を寄せる人だ。だがナンバーを教えたのはいただけない。

 

「それにしてもこの髪は何~?切った方がいいんじゃない?私と貴方って顔似てるんだから伸ばしたら余計バレやすくなるわよ」

「ある程度長い方が髪結べば櫛通さなくても良いから楽なんだよ」

「ふぅん……」

 

大翔は真由美の反応を見るとドアを見る。

 

「どうし……そういえば大翔は最近どうなの?」

「別に特にはないよ」

 

大翔は喋りながらドアに近づく。

 

「まあ……ネズミは見つけた!」

 

ドアを勢い良く解放……そして、

 

「はわぁ!」

 

床に転がったミニ少女……と言うか、

 

『あーちゃん(先輩)!?』

「あーちゃんって呼ばないでくださ……」

 

あずさはゆっくり立ち上がると、

 

「失礼しました!」

 

逃亡を開始……

 

「待ってください」

 

する前に捕獲された。

 

「少しお話ししましょうかあーちゃん」

「いえあの……」

「時間は取らせませんからあーちゃん先輩」

 

ズリズリと生徒会室に引き込まれた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり実の姉弟で良いんですよね?」

「そうね」

「遺憾ですけどね」

 

大翔の言葉に真由美はジロッと睨む。

 

「でも草繋くんとはどこかで会ったことあるなぁって思っていたんですよ。そりゃ見たことあるはずですね」

 

腹立たしいことに顔立ちは良く似てるものでして……とは言わないようにしておいた。沈黙は金である。

 

「それであーちゃん。この事は秘密にしておいてほしいのよ。そうじゃないと……」

「じゃ、じゃないと?」

 

あずさは恐る恐る聞く。

 

「七草の総力を持ってあーちゃんを追い詰めて日本から国籍も履歴も更にレンタルカードまで無かったことになるわ……」

 

無論冗談……だがあずさは完全にビビった。無駄にこわい言い方する真由美も真由美だが……

 

「わわわ分かりましたぁ!」

「じゃあ良いわ。私はこれで帰るから大翔途中まで送ってあげなさいよ。あ、送り狼になったらダメよ~」

「ならねえよ!」

「狼?」

「あーちゃん先輩は分からなくても良いですから!」

 

意味が分かる相手だったら大翔への警戒心ゲージは一気に上限を突き破っていただろう発言をしてから真由美は、

 

「またね~♪」

 

っと帰って行った……

 

「あのくそ姉……」

「大丈夫ですか?」

「あんまし大丈夫じゃないです……

 

そのうちあの姉があること無いこと言って自分はロリコン判定を受けるんじゃないだろうか……絶対にそれだけは避けよう。

 

「じゃあもう暗くなってきてますし途中まで送りますよ」

「すいません」

 

あずさも流石に暗くなって不安だったのか申し出をおとなしく受けた。

 

「でも良かったです」

「え?」

「草繋くんは会長と仲が悪いのかと思っていたんです。そしたら本当が仲が良かったん……なんですごく嫌そうな顔をするんですか?」

「ナンデモナイデス……」

 

甚だ遺憾である。仲なんて良くない……達也と深雪の方が良い(そこは特別だ)

 

「後本当にお願いしますよ」

「大丈夫ですよ。前にも言いましたが口は固いんです。これでも大人の女性ですから」

「……ぷふぅ!」

「なんで笑うんですか!」

「す、すいません……ぷぷ……くはは!腹痛い……」

「流石に怒りますよ!?」

「すいませんって……」

 

大翔はまだ笑いながらあずさのあたまをポンポン叩いてフォローする。

 

「ものっすごく子供扱いしてますね!」

「そんなことないですよあーちゃん先輩」

「ですから草繋くん。あーちゃんって呼ばないでください」

「大翔で良いですよ。草繋って呼ばれるの未だに違和感があって」

「そうですか!じゃあ私はあず……」

「分かってますよ。あーちゃん先輩」

「いえ、あず……」

「はいあーちゃん先輩」

「ですからあず……」

「あーちゃん先輩」

「……もういいです……」

「さ、そろそろ行かないと学校閉じられますよ」

 

大翔にあずさは続く。

なんと言うかいい感じに話を聞かない辺りが物凄く真由美と同じ血を感じたがその辺りはあずさは黙っておいた……沈黙は金である……




これは……真由美・大翔姉弟にあずさが弄られることになる序章である。
この時はあんな目やこんな目に会うとは思っていなかっただろう。

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