「これより九校戦メンバーの任命式を始めます」
と、進行係が発表すると壇上に明かりが灯りまず九校戦の競技に出場する選手の紹介とそれを証明するバッチのようなものが深雪から渡されていく。いやはや深雪から付けられるときに照れ臭い顔をするやつも見受けられる。いや、と言うか寧ろ冷静な顔をしている方がすくない。
因みに選手には雫やほのかのような知り合いもいるし森……何とかと言う奴もいる。まあ今回の九校戦は七草に十文字とそれに匹敵する渡辺先輩……他にも多数の有能な魔法師が集まっていて姉の真由美いわく歴代でもかなり粒揃いの年らしい。
そんなことを考えていると今度はエンジニアチームの発表だ。
「緊張するね」
と話し掛けてきたのは達也を挟んで隣の五十里先輩だ。中性的で女にも見えそうな彼に大翔は笑顔だけ返す。無下にする理由はないし、しようものなら彼の彼女……と言うか許嫁の千代田 花音先輩にぶっ殺される。
五十里先輩に色目を向けた女子が魔法で消し飛んだ……何て言う都市伝説がたつくらい二人はラブラブだ。
「次に司波 達也」
「はい」
と、達也が呼ばれて一歩前に出ると深雪がバッチをつける。深雪さんすごく誇らしそうですね……すると、
『ワァー!!!!!!』
と、二科生の面子が拍手喝采した……間違いない、この騒ぎの下手人はエリカだ……証拠に一番前の列で音頭を取っている。つなりこの流れは……
「最後に草繋 大翔」
「は、はい……」
案の定達也同様拍手喝采である……凄まじく恥ずかしいし気まずいし後ろの方の一科生の視線が痛い……エリカ……お前今度おぼえてろよ……
そんなことがあった発足式の後……美月は昇降口の辺りに立っていた。達也や大翔、深雪の三人は準備に終われてるしレオやエリカは運動系の部活なのでその手伝い……唯一の文科系部員とも言える美月は今日は一人だ。何だかんだで最近は騒がしく帰っていたためか少し手持ちぶさた感は否めなかった。
「ん?」
すると視界の隅で何か強い光と言うか波動のようなものを感じた。
「あれは……」
美月は何の気なしに眼鏡をはずす……すると霊視能力過敏症であるその目が写す光が強くなりそのあまりの光力に目を薄くつむる……
「…………」
だが耐えると少し目がなれた……そこから特に強い光を発してる場所を見つけ美月はそこに向かった……
場所は実技練の一角……そこでは魔法薬学等を勉強する場で美月も授業で数度使ったことがあった……するとそのなかにはとある男子とそれを取り囲む色彩色豊かな何か……
「吉田くん?」
そう、とある男子とは同じクラスでこの間体育の授業で大翔たちが話していたのを見て顔も多少知っている男子を見て思わず呟いた。だが、
「っ!誰だ!!!!!!」
集中している最中に突然声をかけられれば驚いて当然だ。そのため幹比古は鋭い声をあげた……そして美月に先程まで幹比古を囲っていた何かが襲いかかる。
「キャ!」
美月は体をこわばらせ目をつむった……だが次の瞬間急に体を後ろに引っ張られ誰かが間に入った……そして目を開けると目の前にあったのは達也の背中……そして自分を引っ張ったのは大翔だった。
「は、大翔くんに達也さん?」
驚く美月をしり目に達也は幹比古にストップをかける。
「落ち着け幹比古……お前とやりあうきはない」
「あ……ごめん。助かったよ達也……お陰で柴田さんに怪我をさせなくてすんだ」
「そんなことはないさ。術の制御も聞いていたしな……」
と達也が言うと大翔が頷く。
「それに術者の集中しているときに声をかける方も悪いからな」
「え?私ですか!?」
大翔に怒られるのかと顔を窺った美月の目に入ったのは滅茶苦茶意地の悪い笑みを浮かべる大翔の顔だった……そして完全にからかわれてるのだと気づいた……
「だが集中している状態で不用意に声をかけたのに問題があったのは本当だぞ」
と達也に言われて美月は幹比古にごめんなさいと頭を下げた。
「まあ幹比古も人払いの結界を掛けたからといって油断しない方がいいな」
「え?大翔は結界がわかるの?」
と幹比古が驚くが大翔は首を横の振る。
「んなわけあるかい。俺じゃなくて結界を知覚してるのは達也だよ」
と大翔は達也を指差す。
「なんと言うか……君も大概規格外だね、達也……」
「失礼だな……だが俺には精霊を見る力はないがあれがそうなのか?」
「何かあるなぁ位にしか俺にもわかんなかったしな」
そういうと幹比古は頷く。
「それだけ見えてれば二人とも結構鋭いよ?まあ今回は水霊を呼び出してたんだ」
「ああ、それで……」
と美月が口を開いた。そして次の瞬間幹比古の顔が凍りつく。
「だから青系統の色をしてたんですね?」
「色の違いがわかるのかい!?」
「きゃ!」
幹比古は美月の手を掴むと目を覗き混む……端から見ればキスを迫ってるように見える体制だ。
「なぁ達也……これは俺達は席を外すべきかな?」
「同意の上でなら……な」
『あ……』
幹比古は慌てて離れる……美月に至っては顔が赤い……まああんまりそういう事態に慣れてる感じじゃないしな……でも美月だって可愛いんだぞ?何か一緒にいると安心する不思議な雰囲気がある。何かお日様みたいだ。
「んで?何をそんなに狼狽したんだ?別に色があってもおかしくないんじゃないか?」
人間だって肌の色や髪の色に違いがあったりするんだ。精霊に色違いがあってもおかしくないんじゃないかと精霊魔法に詳しくない大翔が聞くと幹比古は首を振った。
「僕たちも精霊を見る修行を積んでいても色は見分けられない。と言うか色があると言われてることすら真偽が怪しいと言われたりするんだ。でも柴田さんは色を見分けられた……この能力は神降ろしの巫女に必要な能力なんだ」
ふむ……つまり何が言いたいのかと言うと……
「美月は幹比古……と言うか精霊魔法の使い手が欲しがる目を持ってるってことだな?」
「ざっくり言えばそうだね。まあでも今の僕にはそんな力はないしするつもりもないよ。今のは少し驚いてしまっただけだしね……すまなかった柴田さん」
「いえ……気にしてませんから」
と、顔の火照りが少し取れた美月は答える。
「じゃあ美月。もう皆も待ってるから行こうぜ」
「え?そんな時間だったんですか!?」
大翔に言われて美月は慌てて時計を確認した。確かにもうそんな時間だ。
「それとも幹比古と一緒にいるか?」
「だ、大丈夫です!行きます!」
また意地の悪い笑みを浮かべる大翔の問いに美月は慌てて首を横に振り外に出ていった……
「それじゃあな幹比古」
「あ、うん。またね」
と達也は言って大翔と一緒に美月をおっていった……
そんなやり取りが行われて数日後……達也は代表選手を九校戦開催地へ運ぶバスの前で人数を数え大翔はもう一台のエンジニアが乗るバスに機材を運び込んでいた。
「あ、持ちますよ」
「あ、大翔くんありがとうございます」
と、機材のひとつを持ち上げようとして一ミリも上がらず唸っていたあずさから大翔は機材をかっさらいながらあずさと一緒にエンジニア用のバスを目指す。
「大翔くん力ありますよねぇ」
「そうですかね……まあ結構重量はありますけど……」
それにしても暑い……太陽光がジリジリとこっちを攻撃?いや、光撃してくる……一応大翔は制服でこの制服は通気性、撥水性に暑い日でも寒い日でも快適で過ごしやすいように作られてるがそれも関係なく暑い……因みに私服でも問題ないがそれは基本的の女子が殆どでしかも二、三年に限られる。因みにあずさは女子でも制服のタイプである。だがやはり暑いのか首筋が少し濡れてて頬も若干赤い……息も暑いのかフウフウといった感じで……
「…………」
ゴク……と少しだけ生唾を飲んでしまい大翔はブンブン首を振って慌てて煩悩を払う。落ち着け自分……
「どうかしましたか?」
「ナンデモナイデス……」
大翔は顔を逸らしてバスの方に向かうと丁度真由美がバスのところに到着した所だった……確か今朝急にあの狸親父に呼び出されたらしく真由美は遅れてくると連絡が入った。
「ゴメンね達也くん」
「いえ……連絡は来てたので大丈夫です」
と言うと真由美は笑ってクルリとその場で回る。
「どう?似合う?」
真由美の格好はサマードレスで頭には帽子を被っている……姉と言う部分を除けば真由美は誰もの目を引く美人である……良く似合う。
「良くお似合いですよ」
「そう?ありがと。でもお姉さんはもっと照れながらいってくれると嬉しいなぁ~」
あ~あ……完全に姉は達也で遊ぶ構えだ……相当ストレスがたまったんだろう……ああやって完全に達也で遊ぶ気である……序でに上目使いで更に胸元が空いた服装である……普通の一般男子なら顔を赤らめたり反応に困るかもしれないがそこは天下の達也様である。
「お疲れなんですね……」
「……え?」
「バスの中では少し寝られますし良くお休みください」
「ちょ、ちょっと達也くんなにか勘違いしてない?」
と、あっさり躱され達也がエンジニア用のバスに入った後笑ってやったら誰もいないのを良いことに真由美からドライアイスの弾丸を威力を相当抑えてあるとはいえ頭にぶつけられたのは余談であろう……
16、17巻読んで思ったこと……あれ?大翔を主人公に出すタイミング難しくね?