この超ポジティブまぬけがっ!   作:甚三紅

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サブタイトル、嘘は言ってない。
中身はものっそいシリアス(のつもり)です。
ジョセフとDIO様。
この二人はギャグもシリアスもガンガン書ける不思議。


ジョセフ、ディオにたらしこまれる

承太郎が二回目ベースになった事をジョジョもシーザーも花京院も喜んだ。おれとて煩わしい事が減った事を良くは思っても悪く思う事はない。

だがおれの近くでたった一人だけ寂しそうな、悲しそうな顔をするやつがいる。普段通りに振る舞い心の内を隠しているが、こうも分かり易いとうっとおしい。もっとも、余程の事らしくジョジョ達には完璧に隠しているようだが。

癇癪を起こさないだけの頭は働いている、むしろ頭が働き過ぎるのはあいつが隠しておきたい本来の性格故か。正に、世界や時空が変わった程度で性格なんぞ変わらないというやつだ。

今のお前は居場所を盗るな、と泣いた時にそっくりだぞ?ジョセフ。

 

気づいた、とは言えおれの事を嫌っているジョセフに何かをしてやる義理はない。隠しているなら尚更。

暫くは見て見ぬふりをして過ごしていたが、日に日に辛そうな顔になっていくジョセフに苛立ちが募る。本気でジョジョたちに知られたくないのだろう、確かに上っ面は完璧に繕えている。このDIOが保障してやろう、完璧だ。だがなぜこうも分かり易いのに誰も気づかない?完璧なのは所詮上っ面だけだろうが!

 

ある日、ジョセフよりもおれが先に限界をむかえる。

よく鉢合わせになる食堂にて、いつものごとく言い争いをしているジョセフとシーザーにブチリと頭の中で何かが切れた音を聞いた。

思い切りテーブルを叩きながら勢いよく立ち上がりジョセフを睨む。ジョセフもシーザーもたじろいだ様子でおれを見やり、周りで食事をしていたジョジョたちは驚きに目を見開いている。食堂内はしんとして物音一つしない。

 

「ジョセフ、来い。ジョジョ、午後の授業はおれもジョセフも休みだ」

「は、はい…」

「う、うん。分かった…」

 

思った以上に低い声が出たが気になどしない。迫力に完全に押された二人の返事を聞くとおれは黙って歩き出す。

近くの空き教室に…いや、声が漏れるとまずい。近いのは音楽室か、午後にはどのクラスも使わないし部活でも使っていない筈だ。

ジョセフの足音を聞きながら音楽室へと向かう。中には弁当を食べていた女子どもが居たが早々に追い出した。

 

 

「それで~こんなとこに呼び出して何の用事なわけ?おれだって暇じゃねェんだけど」

「ちっ、そのへらへらした顔を引っ込めろ。いい加減うっとおしい」

「は?うっとおしいのはてめーの方だろ」

 

グランドピアノに寄りかかり肩をすくめておちゃらけてみせるこいつに舌打ちをする。

苛ついているのを隠さずジョセフに視線を向けると、本来ならば流すであろう場面な筈が強い視線と口調で返してきた。

こいつはもう一杯一杯じゃあないか。本当に苛々させてくれる。

 

「何をそんなに怯えている」

「はぁ?頭だいじょーぶでーすかァ?」

「おれに承太郎までとられて寂しいのか?ジョジョもジョニィもシーザーも花京院もおれにべったりだからな」

「ーっってめーがッ!!」

 

あくまでも軽く返そうとするこいつに眉間にしわが寄る。ゆっくりと距離を詰めながら触れて欲しくないであろう話題にあえて触れると、予想通り大きな声と共に胸ぐらを掴まれた。

 

「てめーが今回いい子ちゃんやるってんなら別にいいさ、悪どいことやってねェのも分かった。おれが知ってるDIOと同一人物だってのを黙っててやるくらいには許してやる。でもなァ」

「「おれの居場所を盗るのは許さない」…ッ!」

 

こいつが察していた事に驚きはない、当然と思える程度におれはジョセフの事を知っている。胸ぐらを掴まれたまま台詞を被せてやればジョセフの方こそが驚いて手を離した。

 

「このDIOがその程度分からないと思ったか?この超ド級の阿呆が。寂しがり屋のくせに虚勢を張って何でもないふりをして限界以上にため込む。見ていて苛々するんだよ、ジョジョ以上のまぬけめ」

「ハッ、てめーこそDIO大好きジョセフちゃんと一緒に」

「今目の前にいる貴様の事だ馬鹿が。いいか、ジョジョたちがお前をはじき出す訳がない。あいつらは揃いも揃って底抜けのお人好しで甘ちゃんだからな、お前が受け入れるのを待っている。現に…」

「…る、せーんだよッ!てめーにだけは言われたくねぇな!偉そうに説教たれんな分かってんだよンな事はよ!!」

 

とうとう爆発したジョセフは手を出してきたが食らってやる理由はない、手首を強く掴んで止め飛ばされないよう踏ん張りつつ視線は逸らさない。

ジョセフもおれから目を逸らさず、暫し視線を合わせているとくしゃりと目の前の男の顔が泣きそうに歪んだ。

 

「なぁ…なんでおれだけ違うんだよ…同じとこのおれを引っ張ってきてくれりゃあ良かったんだ…そしたらこんな思いしなくて済んだのに」

「そこはおれの知らんところだ。くそったれな神とやらを恨むんだな」

「はっきり言ってくれちゃって…ずるいよなァ…お前ら全員さ…」

 

堪えきれなかった滴がジョセフの頬を伝う。もう腕に力は入っておらず、手を離すと重い荷物のように腕を下げボロボロと小さなガキのように涙を流すこいつに目を細めた。

男の泣き顔など見苦しいだけだ、おれが見えないよう距離を詰めるとジョセフは軽く寄りかかってくる。耳元で聞こえる嗚咽は…まぁ、許してやろう。おれは小さな子供をいじめるような大人気ない人間じゃあない。

 

「    」

「ッッ…」

 

相手は小さなガキと同じだ。だから、仕方なく慰めてやってもいい。

 

 

 

 

「あー…不覚、すっげー不覚!ジョセフちゃん一生の恥?」

 

椅子に座りピアノに寄りかかりながらおれのハンカチで目を冷やすジョセフにあえて笑ってやる。

 

「このおれの目を誤魔化せる訳がないだろうが」

「へーへー、そーですねッ!」

 

ハンカチを親指で軽くめくり赤くなった目で軽く睨むこいつに口の端を上げて返してやる。すると舌を出してきたので喉を鳴らして笑ってしまった。

 

「ったく、別人みてーに綺麗に笑うよなァ…。…DIOはさー…何で吸血鬼になったんだよ」

「決まっているだろう、頂点に立つためだ」

「そうじゃなくて…、……」

 

ジョセフは口の中で何やら呟くとハンカチを戻して黙ってしまった。いったいなんだというのか。

まぁ、この沈黙は気まずいものではないので構わないが。

 

大人しくなったこいつを見ながらようやく苛々がなくなり息を吐く。

さて、ジョジョたちへの説明はジョセフに押し付けてどこに行こうか。それが問題だ。




『DIO…ディオはおれに気づいたけど、ディオの事を気づいてくれる人は…?』

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