この超ポジティブまぬけがっ!   作:甚三紅

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本編、番外編、共に読んで下さる沢山の方々に支えられて出来ています。
本当にありがとうございます!

予告通り七部!
ディエゴの中身は当然DIO様です。
気がついたら七部世界にいたDIO様、気づけばディエゴになってました。DIO様なら絶対どこでも生きていけるよ!

四日に文章修正。
原作を読み返してあれ?となったので。


ジョニィ・ジョースター。んん?ジョニィ?

初夏の太陽の光は眩しく、夏の訪れを感じさせる空気を動かす風は爽やかで実に清々しい。愛馬に身を任せ森の中を散歩するというのは実に優雅だ。

 

「ディオ!ここにいたんだね、探したよ」

 

トレードマークである帽子を被った「友人」が笑顔で手を振りながら馬を寄せてくる。正に穏やかで平和な日の午後だ。

 

 

…さて、なぜおれはこんな平和な一日を過ごしているのだろうか。

順を追って思い出す。

数年前、1880年代に居るという事に驚いた。自分は既に2000年代を越えた先にいた筈だ。場所もアメリカからイギリスへと移動している。

幻覚や催眠系のスタンド能力かと思ったが何をどうしても戻れず、自分の事を可能な限り調べてみればディエゴ・ブランドーという似た別人だった。しかも、競馬の騎手であり全く違う経歴だ。

ディオ・ブランドーという人物は存在せず、またジョースター家もイギリスではなくアメリカにあるという。

ジョナサン・ジョースターという人物もやはり存在していない。いたのはジョニィ・ジョースターという騎手だった。

 

もう少し調べてみるとジョニィの本名はジョナサンである、と判明した。ならば直接接触してみよう、とアメリカへと足を伸ばす。馬なんぞに思い入れはたいしてなかったが、周囲の猛反発により一緒に海を渡る事になった。

貴様ら馬は人間などよりよほど繊細な生き物なんだぞ?弱って死んだらどうするまぬけどもが。

そしてジョニィと対面して思った事は「天狗になっている甘ったれたクソガキ」だった。姿もジョジョとは似ても似つかない。

容姿はともかくお前は本当にジョースター家の男か?いや、ここのジョースター家は「こう」なのだろう。

余談だが、太陽の光を浴びた時は正直死ぬかと思った。ちりにならずに心底安堵したものだ、吸血鬼としての能力を失ったかわりに「普通の人間の体」になったらしい。

百十何年かぶりの太陽は暖かった。

 

おれも騎手、やつも騎手、ならばする事は一つ。コネを駆使して非公式ながら勝負を取り付ける。

結果は当然ながらおれの勝ちだ。

ただし辛勝ではあったのでジョースター家特有の爆発力のようなものは健在らしい。

 

それからはジョニィは一方的にライバル視してきて何度も勝負をする羽目になる。ところでジョニィ、お前の女を選ぶ目は最悪だな。

ディオであった頃のおれの周りにいた女達は、頭の緩い馬鹿女ではなくて良かったと今更ながらに思う。

自分の騎手としての力、コネ、伝手を最大限に使い暫くはイギリスとアメリカを行ったり来たりして暮らしていた。何だかんだいってジョニィとの勝負は楽しかったのだ。

そんなある日、どこぞの馬鹿女とデートに出かけたジョニィを街中で見つけた。しかも馬鹿女にけしかけられて劇場の列の先頭に割り込みをしている。

こいつは本当に頭のネジが緩いな、自らどうぞ前に来てくださいと言わせなくてどうする。悪評は瞬く間に広がるというのに。

ジョジョがいれば間違いなく鉄拳制裁だ。

それにしてもあの元先頭の男はちょっとマズい、あれはテンパると「やる」タイプだ。

予想通りジョニィに向かって銃を構えた男、咄嗟に走り出して男を取り押さえる。関節を完全に決めてやると男は暴れなくなった。

男を警備員に引き渡すと怯えた風な女とジョニィの元へと足音荒く近づいていく。ほっとした顔をしたこいつに酷く腹が立ち、拳を握って力の限り頬を殴り抜いた。

 

「なっ、何をするんだよ!?」

「それはこっちの台詞だ馬鹿がッ!」

 

女は何やらやかましく騒いでいるがこいつはどうでもいい。

倒れた拍子に唇を切ったのか血を拭うジョニィの胸倉を掴み強く睨みつける。

 

「何をみっともない真似をしている。有名人だから何だ、お前の頭は穴の空いたチーズなのか?自分の価値を自分で貶めるなどとふざけた真似は二度とするな!」

 

でないとお前と交流があるおれまで嘲笑の対象だ。

おれの言葉に噛みつく事もせず目の前の男は俯く。乱暴に手を離すと小さく謝罪の言葉が聞こえた。

まったく、わざわざ変装までして来たというのに折角の休日が台無しじゃあないか。ちなみにおれは大分前にいたのだが、順番はおれのために喜んで並んだ下僕に捧げられたので受け取ってやった。

 

その日を境にジョニィの態度は一気に友好的になる。

 

「ディオはボクのために叱ってくれたんだ。天才だ、ルーキーだ、て傲慢になってたオレをディオだけが叱ってくれたんだ。実の親ですら「叱って」はくれなかったのに。ディオはライバルで大事な親友だよ」

 

と爽やかな笑顔でインタビューに答えているのを見た時はめまいがしたものだ。

お前…変なところでジョースター一族だと実感させてくれるな…。

 

 

そして現在に至る。

 

暫く馬を歩かせ日中であるという事を満喫する。木漏れ日が差し込む湖のほとりにて、馬を休ませるために休憩を入れる事にした。

地面へと降りると愛馬は優しくおれに擦りよってきてからジョニィの馬へと歩いていった。ジョニィは眩しい程に満面の笑みで馬とは反対におれに近づいてくる。いかにも信頼してます、一緒の時間が楽しいです、といった脳天気なまぬけ面だ。

あのジョースターだ、ある程度諦めてはいたが何だか違う。ライバルだけで良かったのに(競争相手は己を高めるために必要だ)、なぜプライベートで一緒に馬で遠出などしているのだろう。微妙な気持ちに耐えきれなくなり地面に手をついてうなだれているとジョニィが慌てて傍らに膝をついた。

 

「デ、ディオ、大丈夫かい?具合でも悪い?」

 

ああ、何だかこの展開は過去に体験した気がする。

あの時はもう一人と一匹いたが今回は二頭の馬が寄ってきた。数は合ってるな、などとどうでもいい事が頭を巡る。

 

うなだれながら思う。

二回目でおれが作り上げてきた権力、人脈、部下、気に入っていた人間達、吸血鬼としてのパワーにスタンド、全て何もかもなかった事にされた。

これはもう神とやらをフルボッコにしろ、という事だろう。泣こうが喚こうが許しを乞おうがフルボッコ決定だ。

ジョジョ達を巻き込んで絶対にタコ殴りにしてやるからな!!




ジョジョ達がいなくてちょっと寂しいDIO様、みたいなシリアスは有りですか?

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