この超ポジティブまぬけがっ!   作:甚三紅

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DIO様の引力は凄まじく強そうだ。
DIO様に引かれてパパ大好きっ子達が集まってもおもしろいかもしれない。


こうして六部は始まらなかった

さて、あまり認めたくはないが悪くない人生(正確には人じゃあないが)だがやはり以前の友であったプッチが気になる。偽物はとうの昔にいなくなった。プッチが生きているのは知っているし、グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所で教誨師をしている事も知っている。今ならば会えるのではないかと思い教会へと足を向ける。

以前の思い出があるからか教会は嫌いじゃあない。おれを人生二回目に放り込んだくそったれな神は嫌いだが。

 

「そこに誰かいるのか」

 

夜の礼拝堂で椅子に座り月明かりを通すステンドグラスをなんとなしに眺めていると懐かしい声が聞こえた。

あんなにも会えなかったというのに、叶う時は随分とあっさりしたものだな。

 

「こんばんは、神父様。この場所には思い入れがあったもので、つい」

 

立ち上がり声のした方へと顔を向けると人当たりの良さそうな笑みを作る。

声の主はやはりプッチで酷く驚いた顔をしていた。

 

「DIO…わたしを迎えにきたのかい…?」

 

掠れた声で呟かされたのはあの偽物の名で、それが少々面白くないが今回は仕方がない。

それよりも気になるのはプッチの歩き方だ。左足をかばうようにしてこちらに歩いてくる。

 

「DIO、とは?…失礼ながらどこか怪我でも?」

「あ…い、いえ。これは生まれつきなのでお気になさらず」

 

おれの言葉にはっとして足を止めるプッチ。生まれつき?なるほど、おれより先に出会っておきながら足を治せなかったとは所詮偽物は偽物か。

プッチが歩みを止めたために自分から近づいていく。出会った時はまだ少年と青年の間ほどだったというのにでかくなったものだ。

 

「ずいぶんと驚いていたようですが、わたしが誰かに似ていましたか?例えば…亡くなった友、とか」

 

ゆっくりとプッチへと近づき自然に見えるよう肩へと触れる、最後の言葉は秘密を囁くように耳元でひっそりと。

「友」の言葉にプッチはゆるく首を振ると自重を支えきれなくなったかのように近くにあった椅子へ体を落とした。

椅子の端へ腰掛けてしまったため隣に座るには迂回せねばならず、今は諦めて背もたれに手を置き視線の高さを合わせる。

プッチは指を組んで膝に肘をつき前屈みになって床を見ていた。

 

「彼は…、…彼は、友、だったのか、よく分からないんだ…」

 

偽物と容姿がほぼ同じなのがいい方に働いた。強いショックを受けたようで、プッチがぽつりぽつりと語り始めた。

曰く、夜の教会で出会い日光アレルギーだと言っていた。足を治そうとしてはくれたが効果はなく、それに酷く腹をたてていた。向こうから交流を持とうとしてくれたがあまりのり気にはなれず申し訳ない事をした。色々な話をして一冊のノートを預けられたがそれをみる気にはあまりなれい。

などなど、プッチにしては珍しく否定の言葉ばかりだった。

 

「何よりも、彼には違和感があった。どうしようもない違和感が」

 

最後に付け足された言葉に笑い出したくなったが寸でのところで堪える。ここでも失敗しているとは愉快すぎるぞ。

 

「引力と同じように反発力もきっとあるのですよ。きみと彼はどうしようもない程合わなかった、きっと磁石のS極とS極のように」

「そう、なのだろうか」

 

小さくこぼれた言葉には何も返さず床に膝をつき彼を見上げる。

 

「辛い事を思い出させてしまったようだ。これはほんのお詫びです」

 

左足に手をかざし前と同じように「治療」を行うと、正常である事の違和感にプッチは目を見開いた。

反応に満足して微笑み(顔は当然作り笑いだが)、立ち上がろうとしたところでがっしりと手を掴まれる。…みしみしと骨が軋む程強い力なのだがどういう事だ。

 

「主よ、今わかりました。あの苦行の(DIOとの)日々はこの出会いのためだったのですね」

 

副音声が聞こえたような気がするのだが気のせいだろうか。

いきなりはらはらと泣き出したプッチにぎょっとする。何もしていない筈なのになんだこの罪悪感は。

 

「わたしの名はエンリコ・プッチという。どうか名前を教えてくれないだろうか」

 

このまま骨を折る気か?という握力はそのままにふっきれたように微笑む目の前の男。

否と言った瞬間に手の骨を折られる気がする。

 

「…ディオ・ブランドー」

 

妙な迫力につい名前を教えてしまった。このDIOが気圧されるだと!?

 

「ディオ。ディオ(神)とは正にきみに相応しい名だ。ああすまない、感動のあまり涙が…」

 

片手でおれの手を掴んだまま、またあふれてきたらしい涙を拭うプッチ。いい加減手を離さないか?

 

「きみとはぜひ天国「いいかいプッチ、真面目なきみには分かり難いかもしれないが人には誰しも黒歴史というものがある。もしきみが預かったノートに天国うんぬんという事が書いてあるのならばそれはちょっとした思春期の思い出だと思って今すぐ捨てるんだ」あ、ああ、わかった」

 

やたら強い力で掴まれていた手を振り払い今度は自分がプッチの肩を掴み言葉を遮って言い聞かせる。

スタンドの行き着く先に興味はあるが、あれは正に黒歴史だ。天国だと?そんなものはない。くそったれな神をぶん殴れるなら行きたいが。

 

あの偽物はおれのした事をなぞっていたようだからな、天国への生き方とかいって書いてありそうだ。おれの書いたものをなぞってな。そんな物はゴミと一緒に捨ててしまえ!

 

その日は連絡先を交換してプッチと別れ帰路につく。

 

「神を愛するようにきみを愛すると誓うよ」

 

帰り際にそう言われたが早くないだろうか、もっと仲を深めた後だった筈だが…。

 

 

 

「パードレ、迎えにきましたよ」

 

教会を出ると路上に停まっているいかにも、といった黒塗りの車からジョルノが顔を出す。用事があってアメリカにきているというので迎えを頼んだのだ。

 

「一人か?ギャングのボスが不用心な事だ」

「ぼくがそう簡単にやられると思いますか?ましてやパードレもいるというのに」

 

助手席に乗り込みながらからかうとジョルノは肩をすくめてさも当然とばかりに返してくる。

確かに、と笑ってやるとジョルノも笑い車を出した。

 

「そうだ、徐倫ですが少々面倒な事に巻き込まれていたので穏便に話し合いをしておきましたよ」

「あいつらは本当に…。ジョルノ、よくやったな」

「パードレ、今は運転中です!」

 

途中ジョルノから話を聞き息を吐きたくなる。ジョースター一族は本当に面倒事が多い、それを解決したというのなら褒めてやってもいい。手をジョルノへと伸ばし頭をくしゃくしゃに撫でてやる。運転中である事に文句はあれど撫でられる事は嫌ではないらしい。まったく、可愛いやつじゃあないか。

 




プッチ神父的には

スタンドも使わず治した→神の御技!?→そういえばDIOより神々しい、何か安心感半端ないし→神の御遣い、いや神だといっても信じられる!→ディオ=神!

くらいのビックリな思考がめぐりました。

さ~て、次回のポジまぬは「DIO様がディエゴになっちゃった」をお送りします!(某長期アニメ風)

覚悟はいいか?オレはできてる。

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