この超ポジティブまぬけがっ!   作:甚三紅

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今回は三人称に挑戦。
ナチュラルにいい人認定され続けるDIO様。
このままだと多分六部は起こらない。


あったかもしれない日常。六部前

ジョナサンと承太郎の場合

 

「娘がグレた。『ちったぁディオを見習え』と言ってトリッシュのところに泊まりにいった」

「うん、まずは着替えようか。風邪をひいてしまうよ」

 

どしゃ降りの雨の日の夜、玄関を開けた先にいた承太郎のあまりの落ち込みっぷりにジョナサンは自分の事を棚に上げて幽霊でもきたのかと思ってしまった。

全身びしょ濡れの承太郎を心配してまずは家の中に上げる。よく温まるように言い聞かせながらバスルームへと押し込み着替えを用意すると、コーヒーでも淹れようとお湯を沸かす事にした。

承太郎があがる頃合いを見計らいドリップ式でコーヒーを淹れる。ジョナサンのコーヒーはディオも気に入っており、ちょっとした自慢だ。

 

テーブルに向かい合わせに座り腹から温まったところでジョナサンは話を切り出した。娘がグレたとはどういう事なのか、と。

 

「突然キレられて辺りにある物ぶん投げられて、荷物を持って出て行った。行き先だけはトリッシュのところだと言っていたが…」

 

ゲン○ウポーズで深々と息を吐き出す承太郎にジョナサンは曖昧な笑みを浮かべる事しか出来なかった。

もしこの場にディオがいたのならば「自業自得だ馬鹿太郎」とバッサリ切っていただろう。

 

「えーと…そうだ、最近徐倫に何か変わった事なかった?」

「変わった事?テストでいい点とったとか服装を変えたりした事か?」

「あ、気づいてたんだね。褒めたりは…」

「何でそんな事しなきゃならねぇ」

「………」

 

ジョナサンは、原因はそこじゃあないのかい?という言葉をコーヒーと共に飲み込んだ。

 

「ああそうだ、家には帰ってる?研究が忙しいだろうけど家族と過ごす時間は大切だよ」

「最近は帰ってないな。だがあいつらは分かってくれている筈だ」

「………」

 

ジョナサンは再び沈黙する。

全然駄目じゃあないか、承太郎を擁護できない。ここははっきり言った方が承太郎のためだ。そしてそれ以上に承太郎の奥さんと徐倫のためだ。

ジョナサンはそう決めると、コーヒーをもう一口飲んで真っ直ぐ承太郎に視線を向ける。

 

「いいかい、承太郎。きっと徐倫はそんなきみに怒ったんだと思うよ。彼女も、きみの奥さんも、きみからの言葉や態度が欲しかったんじゃないのかな」

「じゃあディオを見習え、てのは」

「ディオは言葉にも態度にも出すからね。他人の事をよく見てるから、褒めるのもその気にさせるのも上手いよ。心当たりはあるんじゃないのかい?」

 

ジョナサンの言葉で承太郎は自分が幼かった時の事を思い出す。

確かにディオはその気にさせるのが上手かった。成果を出せば褒めてくれるし、例え失敗してもそれが全力を尽くした上でなら原因や解決策のヒントをくれた。海洋生物が好きになったのも、実はディオがきっかけだったりする。

小さい子供特有のなぜなに攻撃に対し、嫌々ではあったがきっちり答えてくれたのだ。おかげで海洋生物に深く興味を持つ事ができた。

 

昔を思い出しているのか喋らなくなった承太郎にジョナサンは雰囲気を和らげる。心当たりは絶対ある筈だ、と確信をもっているがために。

 

「まぁ、ディオみたいには難しいだろうけど、もう少し家族を大切にしている、て目に見える形で表してあげたらどうかな」

「…そうだな、少し反省した。徐倫を迎えに行ってくる」

「今からの便はないよ。まずは奥さんのところに帰ってあげなよ」

 

承太郎はジョナサンの言葉に頷くとコーヒーを飲み干して席を立つ。

そんな承太郎をジョナサンは微笑みながら見送った。

 

 

 

- - - -

 

 

 

徐倫とトリッシュの場合

 

「ったく信じらんねェあのクソ親父!ディオを見習え!」

「まぁまぁ、落ち着いて。それで、パパとジョータローがどうしたの?」

 

徐倫は母親のいるアメリカから家出のためにわざわざイタリアまで来ていた。

資金はディオに借りてトリッシュに会いにきたのだ。

徐倫とトリッシュはディオを通じて知り合い、年は離れていたが二人は本当の姉妹のように仲良くなった。その二人は今カフェでお茶をしている。

 

「あのクソ親父、ママの事ずっとほったらかしにしてあたしの事も何も構わないくせに!たまに帰ってきたと思ったら文句ばっかでママもあたしもあんたの召使いじゃないってーの!」

「うーん、確かにジョータローって日本の典型的な…かん、ぱく?亭主ってやつよね」

「褒められた事なんか一回もない。あたしだって頑張ってるのに…!」

 

徐倫は涙ぐみながら悔しそうに唇を噛みしめる。そんな徐倫の様子にトリッシュは眉尻を下げ優しく徐倫の背中を撫でた。

 

「それで頭にきてパパと比べちゃったのね」

「そう!あんまり会わないのは一緒だけど、クソ親父よりよっぽど「父親」してるわよ!何で父親がディオじゃなかったんだろ…」

 

徐倫は悲しげな顔をしてテーブルに上体を預ける。カップやケーキはトリッシュがさり気なく避難させている。

トリッシュは落ち込む徐倫の手を掴むと努めて明るい笑顔を浮かべて声を弾ませた。

 

「じゃあパパの事お父さんとでも呼んじゃう?そして、今日はあたしと買い物をたくさんして美味しい物をお腹いっぱい食べて遊びまくるのよ」

 

トリッシュの提案に徐倫は目を丸くしたが次第に顔には笑顔が浮かんでいく。

曲がっていた背中は伸び生き生きとした表情へと変わった。

 

「それいい!今日はもう遊びまくって請求は親父に押しつけてやる」

「その意気よ!」

 

その日は二人は思い切り遊び心身共にリフレッシュできた。

迎えにきた承太郎を徐倫が一発殴るほどに。

 

「ところで、パパはすっごく素敵なパパだけどジョナサンやノリアキじゃ駄目なの?」

「ああ、確かに優しいけどあの二人の一番はディオじゃん?あたしとディオが同時にピンチになったら絶対ディオを優先するもん」

「分かるかも。パパを助けられるなら犠牲はしょうがないよね、て感じする」

「でもディオならあたしと、ジョナサンとか典明とか、とにかく全員助けてくれそう」

「それ、分かる」

 

 

 

- - - -

 

 

 

オラ親子の喧嘩に巻き込まれたディオの場合

 

「だからウゼェつってんだろー!」

「ウザイとは何だ、その服は肌を出し過ぎるから止めろと言っているだけだろう」

 

テーブルに肘をつきゲ○ドウポーズでディオは思う。

親子喧嘩など好きにすればいい、ただしおれのいないところでやれ。と。

ディオはたまにはジョナサンのコーヒーでも飲もうと今のジョナサンの家に来たのだが、空条親子もきておりコーヒーを飲むディオの後ろで盛大な喧嘩を始めたのだ。

ジョナサンはスタンドで殴り合いを始められると止められないから、と言って既に避難している。

この薄情者め、お前ならスタンドなど関係なしに本体を止められるだろうが。

ディオはそう思わずにはいられない。

 

「ディオはどう思う?この服イケてるだろ、トリッシュと一緒に選んだんだ」

「ディオ、こいつに言ってやれ。肌を出し過ぎだと」

 

矛先がこっちにきた。

心底面倒だが実力行使に出るのは堪える、加減を間違えてしまいそうだからだ。ここから逃げるためだけにスタンドを使うのも馬鹿馬鹿しい。

それはもう深い深い溜め息を吐いてディオは二人へと振り返った。

 

「おれに振るな馬鹿親子が。もっとお互いに「会話」をしろ」

 

ディオは短く返すとカップの中身を飲み干して席を立つ。折角のコーヒーの味は分からなかった。

 

 

 

「流石ディオだね。ぼくじゃ、ああはいかなかったよ」

 

空条親子は口喧嘩をしつつも二人一緒に帰っていった。

疲れた様子でソファに横になるディオにジョナサンは朗らかと言えるような雰囲気で話しかける。ディオはそんなジョナサンの様子にちらりと視線を向けてふん、と鼻を慣らした。

 

「さっさと逃げた薄情者が。だいたいお前の馬鹿力なら承太郎を押さえられるだろうが」

「否定はしないけど、スタンドを使われたらぼくにはどうもできないよ。そもそもスタンドが見えないし」

「チッ…ジョジョの肉体には発現していたじゃあないか…」

 

ディオの最後の言葉はジョナサンには聞こえなかったようで、不思議そうな顔をしてディオを見ている。

 

「何はともあれお疲れ様」

「まったくだ、今日はもうこのままのんびりとする」

「最近会ってなかったからね、大歓迎だよ」

 

ジョナサンはディオの隣へと座り労るように頭を撫でる。

最初は殴られる程度には抵抗されていたが、今では気持ち良さそうに目を細めるディオにジョナサンは達成感のようなものを味わいながら頭を撫で続けた。




ジョナサン「子供ってやっぱりいいよね、ディオの子供も欲しかったなァ」
ディオ「ジョルノがいるだろう」
ジョナサン「そうじゃなくて実子だよ。エリナもディオの子供なら、て言ってたのに」
ディオ「!!?」

なんて会話もあったかもしれない。

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