お馬鹿な武道家達の奮闘記   作:星の海

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四か月以上も音沙汰無しで漸く投稿したのがブツ切りの前編で申し訳ありません。それでも良いぞ、という方は読んでやって下さいませ。
遅くなって申し訳ありませんでした。


23話 まほら武道会本選第7試合 篠村VS小太郎 (その1)

高音・D・グッドマンと俺こと篠村 薊は出会うべきではなかったのではないかと思う。

 

無論のこと、俺は高音(あいつ)が憎い訳でも邪魔に感じている訳でも無い。鮮烈にして高潔な、才色兼備にして秀外恵中とはかくあるべしとでも評したくなる様な本物(・・)に出会わなければ、俺は今より大分詰まらない人間になっていたと思うし、あいつと後に出会った愛衣との三人で過ごした日々は俺の人生の中で一番に充実して楽しかった、何物にも代え難い宝物だ。本当の本気で出会わない方が良かったなどと考えちゃいない。

しかし、それでも何かにつけて思うことがある。

本物(・・)なんてものを知らずにいられたならば。俺は自分の有様を生まれの不運で片付けて、()に生きられたのではないかと。

そう、思うのだ。

 

 

 

 

 

 

『お前もさぁ、こんな郊外でンな地味~な鍛錬やってねえでたまの休日くらい外へ遊びに行って来いよ。根を詰め過ぎてもいい事無えだろ』

『一言一句そっくりそのままお返ししようかしら。…一緒に繰り出してくれる程親しい知り合いが居ないだけよ』

『……他人の事は全く言えない立場から敢えて言わせて貰うがよ、人付き合いって社会で生きる上では必須の項目にもう少し人生の容量(キャパシティ)割いてみたらどうよ?』

『余計な御世話…と言いたい所だけれど、正論ね。……子供の様な潔癖性だというのを自覚している上で反論させてもらえば、志の低い輩と足並みを揃える意味を見出せないのよ』

『何でもかんでもお勉強基準で考えんなよ。何もかもに目的を定めちゃあ、見聞がそれ(目的)関連しか得られねえから小さい人間になっちまうぞ?…まあ受け売りだけどな。お前はもう少し余暇を有効に使うばかりでなく、怠けて遊ぶべきだと俺は思う』

『私の知る限り、寸暇を惜しんで基礎の反復を只管繰り返し続けている鍛錬馬鹿の台詞とは思えないわね』

『一々揚げ足取んなや嫌味か優等生(エリート)!!俺ァてめえみてえな人生障害無し万事順風満帆の才女様と違って最低限の成果上げなきゃ此処(学校)追ン出されかねねえ赤点野郎なんだよ遊んでる暇なんざあるかぁ!?お前の状況と一緒にすんな!!』

『ならば私も同様よ!!他意なく言わせてもらうけれど私と貴方では目指したいる到達点(ゴール)が違う、花のハイティーン(十代後半期間)でのんびり青春を謳歌してから世界に出ようなどと、抜けた思考回路で生きている意識の低い連中と同じ課程で道草を食っている暇など私には欠片たりともありはしないの!最低でもあと三年で私は研修資格を手に入れて、魔法使い(・・・・)として歩き出してみせるわ。…心配して言ってくれているのは解っているけれど、私は楽しんで(・・・・)やっている。気遣いは無用にお願いするわ』

『……ホント可愛くねえなお前…………』

『可愛気の欠片も無いネガティヴ思考の問題児さんの歪んだ感性にとって魅力的に映らず幸いだわ』

 

 

ファーストコンタクト(出逢った時)から約一年、俺と高音は万事がこの調子だった。この悪友の如くありながら同好の士の様である、複雑な関係を何と表現すればいいかは未だに解らないが、一言で言うなら喧嘩仲間(・・・・)と表すのが相応しかろうか。理由は違えど、当時の俺も高音も学校生活というものにウンザリしていたのだ。

そりゃあ此方側にも問題はあったろうし、現在(イマ)に輪を掛けて子供(ガキ)だった俺達の態度は対応は、(教師)から見ても(同級生)から見ても、はたまた(後輩)から見ても頗る可愛気の無い苛つく代物ではあったのであろう。

しかしまあ、疎まれ蔑まれ、挙句の果てに有る事無い事悪評をでっち上げられて排除までされそうになる謂れは無い。そこまでされる筋合いは俺も高音もありはしなかった。

解ってくれる連中は教師や学生にも居ないではなかったが、残念ながら己が身を投げ打ってまで俺達を取り巻く難儀な状況を何とかしてくれる様な正義の味方(ヒーロー)は存在しなかった。

…まあ、今現在ネギ先生にくっ付いているようなバカレンジャー(底抜けの正義漢にしてお人好し)みたいな連中がそうそう何処にでもいる訳が無いんだからまあ普通だ、自然な話だ。

だから俺達は降り掛かる火の粉は自分で払っていた。自分がヘタレのビビリという自覚はあるが、辛い目に遭いたくないからと馬鹿にされながら媚び諂って愛想笑い浮かべるのは死んでんのと何が違う、ってのが俺の考えだ。落ち零れなのは事実だが、それを他所様にどうこう蔑まれる筋合いは無い。経緯や動機、状況は違えど高音も同じ様な考えでいたのだろう。嫉妬や羨望から来る陰口や嫌がらせなんぞにあいつは毅然と立ち向かっていた。人は自分より下の存在は扱き下ろして馬鹿にしたくなるし、上の存在には憧れ焦がれて、最後には妬み嫉んで憎むモンだ。

俺と高音は欠片も似てはいないが、全く真逆の存在故に境遇は似通ってしまった。全く以って皮肉な話である。

まあ当然だがそんな周り全部とは言わないが少なくない数が敵、みたいな生活はストレスが溜まる。自慢出来る様な話では無いが、俺にも高音にもそのフラストレーションをぶつけられるような親しく信頼できる知り合いは居なかった。だからまあ、身も蓋も無い言い方をすれば俺と高音はお互いを八つ当たりの憂さ晴らしに利用していたのだろう。なにせ初対面から盛大にして凄惨な罵り合いをかました間柄だ、トコトン己の見苦しい部分を既に見られている故に、遠慮なく皮肉や嫌味、時には聞くに堪えない罵詈雑言だろうとぶつけられた。

しかし、こればかりは断言できるが俺は高音を嫌っていた訳では無い。自惚れでなければ、向こう(高音)も同様に。

ただそう、自分の醜い所や嫌いな点も曝け出せる、気安い間柄だったのだ。だから互いに思った事は包み隠さず言い合って、相手の欠点も真っ直ぐに指摘し合えた。俺はまあ、言われて自覚が有る無しに関わらず素直にそれを改善しようと心掛ける程に人間が出来てはいなかったが、あいつ(高音)もあいつで頑固に中々非を認めようとはしなかったのでまあ、お互い様だろう。

時に喧嘩して時に協力し。互いの鍛錬にも口を出し合って、そしてやっぱり啀み合い、頭が冷えてから和解して、また喧嘩する。

些か奇妙な関係ではあったが、俺と高音は確かに助け合い、お互いを認め合っていた。

 

或いはこれを、友情と人は呼ぶのかもしれない。俺の知ったところではないが、少なくとも篠村薊にとって高音・D・グッドマンとは…大切な存在であった。

 

軈て、そんな変わり映えのしない日々にも変化は訪れる。

 

 

『だから貴方はどうしてそう……!自分の研究成果が馬鹿にされたからといって即座に暴力に訴えるから無法者扱いされるのでしょう!!所詮他人を見下げる事でしか心の安寧を保てないような卑小なな連中なのだから、相手にしなければいいだけの話でしょう!?』

『五月っ蝿えなお前にあん時の俺の気持ちが解ってたまるか畜生!!漸くだ、漸くこの腐れた身でやっていける(・・・・・・)目処が立ったんだ!頑張って頑張って、お前にも付き合わせて手間掛けさせて!…やっと形になった俺の(・・)魔法を、あの野郎共は……!!』

 

そう、あれは一際腹の立つ出来事があってこの上無く俺が苛ついていた時か。煩わしくも納得せざるを得ない高音の正論トークもその時は火に油状態で、出逢った時以来の険悪な空気を撒き散らしつつ何時もの場所(抉れた窪地)にずんずか向かっていたのだが。

 

『だから私は貴方のその斜に構えた所が……!……篠村?』

『ンだよ』

『誰か居るわよ』

『あー?……本気(マジ)だ………』

 

『ヒック、ヒック……!… う…うっ 、うっうっ

……くうっ …!!……』

 

そうして岩陰に引っ付く様にして啜り泣いていたのが我らが可愛い妹分、佐倉 愛衣であった。

 

『ふぇ…?……!…あ、あああの、あの……!?』

『何もしはしないし、今直ぐ出て行けなんて言うつもりも無いわ。落ち着きなさい…』

『別に俺等の場所でも何でも無えしな。…つーかどう見ても初等科の女の子、だろ?こんな所でどうしたよ?』

『…事情を訊くのはもう少しこの子が落ち着いてからにしなさい、気が利かないわね……!』

『…小声で怒鳴んなや器用な女め……ヘイヘイ悪うございました~~……まあ茶でもくれてやれホラ』

 

まあ何で態々人気の無い場所で泣いていたかと問えば話は簡単、他人に会いたくなかったからだ。

愛衣は今でこそなんか色々ブッ飛んだ育ち方をしてしまったが、その身は今も昔も変わりなく才能のある優秀な魔法使いの卵である。当時(よわい)九歳児の頃から素直な性格で物覚えも良く、真面目に教務へ取り組む非の打ち所がない良い子(・・・)であり、更には兄貴分としての贔屓目を抜きにしても可愛らしく整った顔立ちをしている…となれば、教師陣や同級生の男子勢から人気が出るのは当然の話なんだろう。

そんな美人の良い子(・・・・・・)を気に食わないと、一部の女子がやっかんでしまう事もまた、当然とまで言わずとも無理のない話だったのやもしれない。付け加えるなら、愛衣は少々気が弱い、というか他者に毅然とした態度を取るのが難しい性格だった。オドオドとした気弱な姿勢もいじめ(・・・)に拍車を掛けた一因だろうか。

 

『要は貴女の容姿と成績に嫉妬した同性からの嫌がらせ、ね……下らない話だわ』

『しかしホントに何処にでも居るなその手の馬鹿は。落ち零れやエリートや可愛子ちゃん寄って集って虐めてる暇あったら自分の事やれよな勉強でも遊びでもいいからよー』

『い、いえ、私が…私が悪いん、です。私があの、クラスで人気者の男の子が、その……』

『ああ大体話が見えた、お嬢ちゃんはアレだ、そいつをフッてしまったと』

『いいいえ!ただ、どんな人だかよく解らなかったから…その、お友達から始めましょう、って………』

『それほど話した事も無かったのなら妥当な判断よ、貴女が悪い訳じゃないわ。…袖にされた男子の逆恨みじゃ無いでしょうね?』

『…野郎を直ぐに悪者にすんな女子の偏見だ…と言いてえ所だがまあ、可能性はあんな…まあここで俺等があれこれ追求しても意味無えだろ』

『……すみません、私。先輩達のお邪魔に……』

『気にしなくていいわ、今日は半ば喧嘩をしに来た様なものだったしね……念の為にはっきりさせておくけれど、私とこの男は単なる友人…知り合いにすぎないから勘違いをしないようになさいね?』

『なんで友人(ダチ)から格下げしたよいいだろ別にお友達でよお前半ばボッチなんだし…あと聞かれてもいないのにそんなに必死になって関係を否定するなよ、逆にデキてると思われるぞ?』

『…喧嘩を売っているのかしら?』

『お前見かけによらず血の気が多いよな危ねえっ!?スカートで蹴りを出すな見えるだろうが!!』

『何処を見ているのこの変態!!』

『お前が蹴り入れた所為だろ見えてねえよ別に!!』

『あ、ああああの、あのっ!?……』

『ほら見なさい怯えているじゃない!!』

『先に手ならぬ足出したのはお前だろうが!?』

『ひあぁぁあの、あの………!?………喧嘩は止めてください、お姉様、お兄様ぁっ!!!』

 

『『お姉様(お兄様)っ!?』』

 

…まあすったもんだでこの後、結局事の元凶だったクラスの人気者を二人してしばき倒した所為か妙に俺達二人に懐いてしまった愛衣を加えて、我らが学園ボッチ相互補助同盟は本格的に動き出した。(嘘だンなもん作ってねーよ)

まあ俺も高音も愛衣も、他人(ひと)の悪意ってモンがちょっとした事でも己に向けられちまうことを知ってしまって、周りと関わるのが億劫になってしまったんだろう。結局魔法学校を卒業するまで、俺達三人は表面的な付き合いを別として、真面に他所と交流を持ちはしなかった。俺や高音は兎も角、まだ幼かった愛衣には悪い事をしたと今でも思う。

 

 

『どうだ俺の魔法の射手(サギタ マギカ)変型(ヴァリアーレ)第二弾貫通(トラーイキエーンス)!まだ試して無いが並の魔法使いが張る障壁程度は単発でブチ抜くぞ、弾の直径はかなり縮まるし魔力(コスト)が通常弾の二発分は掛かっちまうから改良の余地有りだがな!!』

『わあっ、凄いですお兄様!!』

『…前の高速弾を見てから思っていたけれど……相変わらず無駄に洗練されて無駄な高等技術を駆使した無駄のない無駄な術式ね………』

『無駄無駄五月蝿えよこの野郎ぁっ!?しょうがねえだろ俺が真面に運用可能で且つ実戦的な攻撃魔法なんざ魔法の射手(サギタ マギカ)位なんだからあぁぁっ!!』

『そ、そうですよお姉様!お兄様の努力を無にする様な発言は………!?』

『そ、そうね無駄は言い過ぎたわ……けれど篠村。貴方以外に汎用性の低い基礎魔法の改良は、研究成果として認められ難いと思うわ…それから私は性別上に於いて女性に分類されるのだから野郎(・・)呼ばわりは不適切よ!』

『情け容赦の無い無慈悲な正論をありがとうよそして如何でもいいわっ!!』

『よくありませんお兄様!お姉様はお兄様の大事な人なんですから、冗談でも野郎呼ばわりなんてしちゃいけません!!』

『愛衣っ、寝言は寝て言いなさい!!』

『そしてお兄様は止めろあらぬ噂を立てられる俺がっっ!!只でさえ初等部の娘毎日毎日連れ込んでる様なモンなのにぃっ!?』

 

 

『お゛兄ざまぁぁぁ゛っ、おね゛えさま゛ぁぁっ!!』

『如何したの愛衣、また虐められたの!?』

『何処のド畜生だ糞共がぁぁっ!心配するな愛衣っ!俺達が何とかしてやる!!』

『そうよ、後の事は全て私達に任せなさい!差し当たって貴女を虐めた同級生(クラスメイト)の名前と部屋番号を教えるのよ、…誰の妹分に手を出したのかを思い知らせれてあげるわ!!』

『……うわ~~んっっ!!』

『め、愛衣!?……篠村!!』

『お前とりあえず何かあったら俺が原因とみなすの止めろや!?今の流れで俺がどう悪かったってんだよ言ってみろ!寧ろ状況からしてお前の剣幕が恐ろしかったからより一層泣いたに決まってんだろ!!』

『何ですってこの……!!』

『ぢ、違いまずぅっ!!私、お゛兄様とお姉様が私のだめにこんなに゛怒っでぐれてるのが嬉じぐて…それでぇ~~……!!』

『ンなことで号泣すんなや一々大袈裟な……まあいいや兎に角愛衣、根性ヒネたガキ共の所に案内しろ!落ち零れとエリートの凸凹コンビが制裁加えたらぁっ!!』

『誰と誰が……まあいいわ、言い争っている場合でも無いから。行くわよ、愛衣!!』

『ええぇとあの、んン゛ッ!……お姉様、お兄様、午後の授業は……?』

『『サボんぞ(サボりなさい)!!』』

『え、ええええっっ!?』

 

 

 

『……篠村?』

『ん?』

『この術式のここなんだけれど……』

『……これ以上防御厚くする必要あんのか?お前が相当尖った才能してんのは承知の上で、ここまで一つの術式だけに特化するメリット薄いと俺思う』

『理解した上でよ。言われなくとも普遍的な魔法は一通り網羅する前提で勉強は並列進行させているから問題ないわ。私が今貴方に求めているのはバランスの駄目出し(心配)ではなく術式の駄目出し(アラ探し)よ』

『…よ~し高音(たくゎね)すゎん?理解(わか)っていない様だから何度も過去に忠告した内容を懲りずに言ったるが、世間一般ではそれをオーバーワークってんだ。お前の向上心が高いのはよ~~くこれまでの付き合いで理解したつもりだが、背伸びし過ぎたら人間コケるだけだからな?お前は適度という概念を知れ』

『嫌よ』

『即答か畜生め!?あのなあぁどうせ鼻で笑われるかヒステリックに怒鳴り返されるかだから言うものかと思ってたんで言うつもりは欠片も無かったがいい加減ガチでヤバそうだから大喧嘩覚悟で言わせてもらうが…』

『前置きが長いのよ貴方』

『ぃよぉぉうし上等だ戦争やったらぁ可愛気の欠片も無え無愛想女ぁっ!?これでも!俺は!一応なぁ!!お・前・の・こ・と・を!!…心配して言ってんだよこの大~馬鹿女ぁぁっ!!!』

『知っているわ、そして感謝もしている。…言動が伴っていない自覚はあるから謝らせてもらうわよ…ごめんなさい』

『……………、………っんんっっ!?………!?』

『……別に貴方の気勢を削ぎたいから口から出任せを言ったわけでは無いわ。異星人を見るような顔を止めてくれる?…根を詰め過ぎている自覚はあるのよ。貴方はスレている割に私や愛衣に対しては意外に良識ある態度でいるから、心配を掛けているのは解っているわ、…いえ、解っているつもりよ』

『……ならよぉお前………』

『…この手の議論で相手方の話を引き合いに出すのは水掛論になり易いし卑怯なのは承知の上で言うけれど、オーバーワークというなら貴方も他人の事は言えないでしょう。自愛を果たしていない者が、他者を気遣うのは些か可笑しな話じゃないかしら?』

『……前にも言ったろ。俺は事勿れ主義の怠け者だ、楽してそこそこ生きていけりゃいいって考えてる志の低~~い奴なの。…でも世間様は魔法の使えない魔法使いなんて無価値な生きモンのうのうと受け入れてくれっほど優しくは無え、後の人生で楽をする為には()頑張らなきゃいけねえんだ。並の傭兵か街(クラス)の衛士よかマシな実力付けられりゃ、何処でもそれなりに生きていけんだろうからな。…何も出来ない状態で放り出されて身を切るような生活しながら這い上がるのと、少なくとも衣食住と勉強、訓練には事欠かない環境で多少無理してでも頑張んのはどっちがマシかって話で俺は後者を選んだだけだ。こういう言い方は我ながら卑屈に過ぎてアレだが、多少周囲と上手く行って無かろうが将来は約束された様なモンである天才にして秀才、我が校トップクラスの才能持ってるお前さんと同じ目線で語るなや。俺はこうでもしねえと…生きてけねえ(・・・・・・)だけだ』

『確かに卑屈に過ぎる物言いね。……私貴方のそういう所は嫌いだわ』

『嫌いで結構…とは言わねえが、放っとけ』

『放っておくつもりは無いけれど、まあ今はいいわ。…貴方の心根は兎も角、貴方の目標を馬鹿にするつもりは無いわよ?地に足の着いた良い選択だと思う。…傭兵は実力が、衛士は加えて高い道徳観念に責任感が求められるわ。誰にでも就ける職業じゃ無い、…貴方が将来に夢を見ないなら、それはきちんと貴方が勤められると判断して目指しているのでしょう。余り自分を、低く見ないで。私は努力している貴方を見て、自分だけが頑張っているんじゃないと…救われているから………』

『……らしくも無え、と茶化したいとこだが………まあ、ありがとよ』

『……思う事をそのまま言っただけよ……』

『………………………………』

『………………………………』

『………止めようぜこの空気!』

『わ、私の所為みたいに言わないでちょうだい!?……でもそうね、らしくないにも程があるわ』

『そうだなその通りだそうしよう!!……てなわけであそこで俺達を見ながら気味が悪い程満面の笑みを浮かべている妹分をとりあえずシメるか』

『そうね、何を考えているかは大体想像が付くし、慈愛の微笑みが凄まじく癇に触るわ』

 

『え…あ、あの待って下さいお姉様お兄様!?私はただお二人が何だかんだ口では言い合いながらやっぱり心の奥底では深い絆で結ばれているんだなって再確認出来たのが嬉しかっただけでヒァアアアアアアッッ!?』

 

 

 

 

 

 

…まあ愛衣の言葉は大袈裟に過ぎるにしても、あの頃の俺と高音には臭い言い方になるが絆の様なものがあったと俺は思う。周りの連中とは違うぞ、俺達は同志を見つけて頑張っているぞ。……なんていう、まあ今にして思い返せば些か的外れな優越感に満ちた幼い(それ)ではあったが。

あの頃俺達は上手くやれていて、それがずっと続いていくと根拠も無く信じていた。

 

 

 

『おおお、お兄様、一大事です!!お姉様が、お姉様がぁっ!?』

『……愛~衣、お前の一大事は聞き飽きたっちゅうに。どうせまたあの堅物高音様が小競り合いでもやらかしたとかそんなんだろ?』

『違います!今度という今度は本当に一大事なんです!!』

 

だが現実ってのはそうそう順風満帆にいく事柄ってのは少ないもんであり。大抵詰まらない結末(オチ)を用意してくれるモンなのだ。

 

『お姉様が、お姉様が!…なんだかイケメンな人に告白されたんですっっ!?』

『っ!……………、…………そか……………』

『なんでそんなに落ち着いてるんですかお兄様ぁぁぁぁぁぁっっ!?!?』

『お前が俺の分まで驚いてるからじゃねえ?………ま、いつかはこんな話が上がると思ってたしなぁ………………』

 

思い返す度に身悶えして転げ回りたくなるような俺が若気の至りでやらかした大失態は、妹分のテンパった報告によりカーテンコールと相まった。

 

 

 

まあ初恋ってのは実らないと相場が決まっているもんである。

 

 

 

 

 

 

「小ー太郎君小太郎くーん。俺の頼みを聞いちゃくれんかい?」

「…言うだけ言うてみたらええんやないか?」

 

極めてダルそうにその背をぐんにゃりと軟体生物の如く折り曲げ長杖(スタッフ)に寄り掛かりながらの篠村 薊が溢した戯けた調子の問いに対して、元々三白眼気味の目付きを更に吊り上げた仏頂面という表現がこの上無く相応しい、絶賛不機嫌ゲージMAXな犬上 小太郎は素っ気無く返しの言葉を紡いだ。

 

 

『さあさあさあさあ皆様何処ぞの類人猿暴虐教師の暴挙によって折角控え目な崩壊具合で終わった闘技場が基礎から修復仕直しになった為時間を喰いましたが!!…これよりまほら武道会第七試合、見た目は唯の地味男子!その実態は金髪巨乳真面目委員長系幼馴染と赤毛ツインテ仔犬属性の後輩ガールの二人と日々イチャコラを繰り広げる麻帆良屈指のリア充野郎、キレ芸的なツッコミが売りの苦労人系主人公、篠村 薊選手!!……対するは、見た目は犬耳尻尾付き素肌学ランとお前何処のいいんちょ…もとい特殊性癖(ショタコン)挑発(ゆうわく)してんだよとのツッコミが飛んで来そうな属盛りショタ!しかししかし侮るなかれその実力、相手が例え乳飲み子だろうと勝負の場に立つならば容赦はしないという、控え目に言って頭オカシい病的負けず嫌いの群れである麻帆良武道家集団の筆頭部長に副部長を打ち斃して本戦出場を決めてみせた本物である事に疑いの余地は無ぁい!!子供先生ネギ選手に続く凶悪実力派ショタっ子誕生と相成るか、犬上小太郎選手ぅっ!!この組み合わせも勝敗が全く予想出来ません、どう思われますか解説の部長ぉ!?』

『お前テンションの上下で口調と呼び方変えるの止めろよ朝倉。…さておき、犬上選手は長瀬選手と似たような技術を用いつつスピードで搔き回す軽戦士(スピードアタッカー)タイプの選手です。言い方はアレですが此方は麻帆良でもよく見る普通の武道家として分析が可能ですが、一方の篠村選手は近接戦闘に於いて杖術を用いはするようですがその主武器となるのは高速且つ変幻自在な軌道を描く正体不明の弾幕です。此方の資料で近いのは武道家の一部が外氣と呼ぶ気の一種を飛び道具として飛ばす《遠当て》ですが、篠村選手の弾幕(それ)は明らかにレベルの違う異質な代物。篠村選手の射撃を犬上選手が攻略出来るか否か、が勝負のポイントでしょうね』

 

闘技場にて向き合う二人、片方は小学生以上にはどう見ても越えはしていない子供であるにも関わらず、これから始まる試合への期待によって場内は観客達の期待と興奮による熱気に満ち溢れている。

ほんの数試合前の子供先生(ネギ)を思い返すまでも無く最早誰もが理解しているのだ、このまほら武道会本選へ出場を漕ぎ着けた者は皆等しく、実力者であると。

まして予選に出場していた部長、副部長達篠村と小太郎に敗れ去った者は言わずもがな、中央に立つ怠そうな地味男とヤンチャな小学生の脅威を身に沁みて理解していた。

 

 

「……さてこの勝負、どう見る?」

「なんとも言えん、が言える全てだ。俺はあっという間にやられていたのでな、それも(篠村)はあのスタ○ド使い(高音選手)とコンビを組んで予選を突破していた。…タフな連中を仕留めるのに苦労していたようだから単独では火力(パワー)に欠けるのだろうとは思うが……あちらの少年と違い、ス○ンドか何か知らんが得体の知れない術を以って闘う以上は予想のしようが無い」

「まああのガキの方は影分身だの黒い気弾っぽい遠当てだのと、イマイチ根幹とする武術(ベース)が解り辛いが闘い方そのものは比較的真っ当なモンだ。予選落ちした俺が偉そうに言う資格は無えが実力的にはあの面子の中で下から数えた方が早えだろうし、捻りの無い真っ向勝負ならややガキの分が悪いと見るね、俺ぁ」

 

武道家達の期待が否応無しに高まる中、選手席にてバカレンジャーが一角にしてある意味筆頭。初代バカレッドこと中村 達也は盛り上がる背後の観客を鬱陶し気に首を捻じ曲げつつの横目で睨みつつ、呆れた様な調子で呟いた。

 

「さてさて無っ責任に湧いてる背後の馬鹿共ぁまあどうでもいいとして、どうなんのかねえこれは。ぶっちゃけアザミンの勝ちは覆んねえ気がすっけど…っつかアザミンやる気(ぬぇ)え〜少なくとも見かけ上」

「口に出すなら内容をもう少し纏めてしゃべれ脳無(・・)し。…まあ小太郎が弱い訳では断じて無いが、ネギと同格ならば勝ち目は薄い、を通り越して皆無に等しいと言わざるを得ないだろう」

「小太郎にとってある程度のガス抜きになればいい…とは思うが、篠村は戦闘に関してバリバリのガチ思考だからなぁ。逆に自信がヘシ折れる(おっぺしょれる)結果になんなきゃいいけど……」

 

「…ねえ先輩達、篠村先輩ってそんな強いの?そりゃあそこの馬鹿先輩あっさり伸しちゃうんだから弱い訳ないのは解ってるんだけどさ、あれって本気出してたんじゃ無いんでしょ。普段の振る舞いとか見てると正直……」

「…まあ強そうには見えない、と。そんな所でしょうか、明日菜さん」

「ん、まあね。あの変態爺い悪魔の一件でもあの人、言い方悪いけど最後にイイ所(トドメ)持ってった風にしか見えなかったし…小太郎だってかなり強いんでしょ?なんかしっくり来ないんだけど…」

 

相も変わらず身内だけで理解(わか)り合って完結している感のある、玄人染みたしたり顔でのレンジャーに明日菜が疑問をぶつける。明日菜とて真に実力のある人間が皆戦国武将の様な外見と性格をしている訳で無く、それどころか第二試合後に教師達の手でドナドナされて行った金髪幼女と優男を筆頭に、人畜無害そうな外見をしている奴に限ってヤバい場合が多いんという事はこの人外魔境MAHORAに住んでいる以上理解しているつもりではある。

それでも、篠村 薊という普段テンパリながら慌てふためくか逆ギレ気味に切れのあるツッコミを入れている印象しか無い、常識人にして苦労人といった男と実力者というフレーズが明日菜にはどうしても結びつかなかったのだ。

 

「……ん〜まあ俺がナチュラルに馬鹿呼ばわりされてんのは不平等にして残酷な世界の所為だから敢えて何も言うめえが、アザミンが強そうには見えねってか?まあ確かに見た目はモブ魔法使いCって感じだし性格はヘタレのビビりの根暗根性と来たもんだからまあ無理もねえけどなぁ」

「公然とdisれる程立派な人間かお前が。ともあれ、まあ篠村は解り易い強者じゃないのは確かだ。そもそも本人からして自分の事を凡人だの才能無しだのと率先して下げ連ねているんだから余計になぁ」

「過ぎた謙遜は嫌味にしかならんと言ってやった事はあったが聞く耳は持たんらしい。単なる意地にしか思えんがまあ当事者達にしか解さぬ事情が存在するかもしれんから強く問い質しはしなかったが……」

 

当事者、の部分でチラリと高音に愛衣を横目に見やりながら大豪院は一旦言葉を切って闘技場の二人に視線を戻し、続く言葉を紡いだ。

 

「話を戻すが奴は強いぞ。終ぞ模擬戦も手合わせも奴は拒否し続けていたからお前達には把握できんだろうが……」

「ぶっちゃけた話、俺らと実力的には互角なのよねぇアザミンってば多分」

「…いや、認めるのは少し癪だけど一対一なら分が悪い、と言っていいな。実力云々って言うより相性の問題だけれど、六四から七三位で篠村が有利だろうな」

「……まぁなーー……」

「……フン……」

 

「「「「……えぇっ!?………」」」」

 

大豪院を遮っていずれも渋い顔で吐き出された中村と辻の言葉の内容に、そして辻のそれ(言葉)を否定しない二人に、少女達(+カモネギ)は驚きの声を上げる。

 

「え、それって……本気(マジ)で言ってる……?」

「俺等がたとえ冗談でも自分よりも誰某が強えなんて口にするようなナマモノに見えっかアスニャン」

「…いえ、それは……しかし、それ程なのですかあの人は……!?」

「辻が言ったが相性の問題だ。桜咲後輩ならばまあ五分、という所か?」

「……軽々には判断しかねますが……篠村先輩は、それ程に……?」

「なんだ、刹那も解らないのか?」

「恥ずかしながら……」

 

意外そうな声を上げながら辻は己の恋人へ面を向ける。車椅子から振り仰ぐ様にして至近距離で合わされた顔と顔に刹那は若干頬を染めながらも、口にする言葉は困惑と疑念混じりのそれである。

 

「弱い、とは決して思いませんが……篠村先輩の強味は手数の多さであり、単体での制圧で無く援護、遊撃役として特化させたスタイル。…といった印象でしたので…火力に欠け、決定打となる何かを持たない以上はバカレンジャー(皆さん)に一枚劣る、というのが私の認識でしたが……」

 

刹那の見解に概ね同意だったらしい明日菜や夕映、ネギが頷きを返すのを辻は仄かな苦笑と共に見やり、ゆっくりと言葉を紡いだ。

 

「まあ、間違った認識では無いかな?確かに篠村は火力に欠けるし自分からサポート役としての役割を率先してこなしているからそう思うのも無理はない…っていうかそれが本領なのは確かだろうからなぁ。……しかし」

 

と、辻はかっ怠いと己の心持ちを全身で表している闘技場の篠村へ視線を向け、心なしか潜めた声音で続く言葉を吐く。

 

「だからといって篠村(あれ)一対一(タイマン)で弱いなんて事は無い。終ぞ俺達とは本気で闘り合おうとはしなかったから断言は出来ないけど…当人の言ってた出来る事(・・・・)が本当なら、大した事ないなんて篠村の自己申告は謙遜を通り越して嫌味になる」

「実力隠したい訳でも遠回しな自慢でも無くて素で言ってるっぽいけどなーアザミンは。まあお付きの恋人達(ラヴァーズ)は才能と努力の塊にして魔法使い様方の上は油断メガネに狂えるゴリラと化けモンばっかだから、強い弱いの基準値が高くなんのは理解(わか)んねえでもねえけどよー……」

「お前のような凡人がいてたまるか、という奴だ…情に厚いが仕事に公私混同をするタイプではあるまい、高音女史。奴に居てほしい(・・・・・)のは……」

 

単純に奴の実力を見込んでいるからでもあるのだろう?と、大豪院は高音へ言葉を投げ掛ける。

見事に出歯亀をされていたと含みのある台詞から理解した高音は半眼で大豪院を睨み付けるが、一つ息を吐いて眉間に入った力を抜いて渋々、といった様子ながら口を開いた。

 

「…まあ、あれだけの醜態を晒したのだから多少囃されようと揶揄されようと文句を言う気は無いけれど。気に入る気に入らないは別と知りなさい貴方達?」

「陳謝しよう。…それで?」

「……、…端的に言うなら、そうね。私は自身の実力を増長も謙遜も無しに冷静に判断しているつもりだわ。その上で言わせてもらうけれど、この学園に在籍する魔法生徒の中で単純な戦闘行為に於いては私が一番強いでしょう」

「あら潔いこの娘男前だわぁ〜」

「それほどでも、事実をありのまま口にしているだけだもの。謙遜は過ぎれば嫌味でしょう…話が逸れたわね。その上で言わせてもらうけれど、あれ(篠村)は相性もあって私相手にはほぼ勝てない。当然高畑先生や杜崎先生クラスの学園トップレベルの魔法使いにも敵いはしないわ」

「なら、それ以下。例えば他の魔法教師や生徒、俺達(麻帆良武道家)相手には?」

 

ともすれば酷評とも取れる高音の言葉に、されど笑みを浮かべて辻はそう被せる。フン、と不愉快気に一つ鼻を鳴らした高音だが、続く言葉には淀みが無く。

 

貴方達(バカレンジャー)でも分が悪く、桜咲さんのような組織有数の使い手でも勝つのは難しいでしょうね。最も、互いに万全な状態での一対一…なんて現実味の薄い条件ならばの話だけれど」

 

「……身内贔屓…では無いのでしょうね、貴女に限っては」

 

はっきりと名指しで篠村に実力で劣る、と断言された刹那は微かに顔を険しいもの(表情)にするが、高音の人となりを多少ならずとも知る者からすれば高音が篠村に、それがどういった事柄であれ贔屓をするなど到底ありえない事であると理解できる。故に高音は、篠村 薊の実力を自分達(ネギ一行)でも頭一つ抜けていると本気で思っているという事になる。

 

「まぁアレより下と言われては不快を通り越して殺意を抱くのも無理はない事だけれど、矢張り信じられないかしら、桜咲さん?」

「…正直に言わせてもらえば。油断の出来る手合ではありませんが、闘って負けるとは思えません」

 

刹那の言を聞いて高音と愛衣は顔を見合わせ、仕方がないなぁ、とでもアテレコ出来そうな苦笑を浮かべ合う。

 

「まあ普段がああだもの、残当というやつかしら?」

「昼行灯を気取ってる訳でも無く、お兄様は素であれですからね……」

 

『ほわあぁぁ…!篠村さんて中村さんより強いんですかー?』

「断じてそれぁ無え!!仮にそうだったとしてもさよちゃんが応援してくれんなら不可能を可能にしてみせんずぅえあぁぁぁ!!」

「喧しいわ」

「ひでぶ!?」

『中村さーんっ!?』

「天丼ですね……」

 

暑苦しい喚き声を上げて鬱陶しがられた中村が軽めの鉄山靠で宙を舞う様を冷めた目で見やる夕映を横目に、高音は納得のいかない様子の刹那へ告げる。

 

「もう試合が始まってしまうようだから、口で説明するよりも見てもらった方が早いわね。犬上君はアレが手加減出来る程弱くは無いようだから、直ぐに解ると思うわ」

「篠村先輩が圧勝する、と?」

「…圧勝どころか下手をすれば……」

「開幕十秒で終わりかもしれないです。お兄様は強いのに容赦がありませんから」

「そ、それは流石にあり得ませんよ!!小太郎君は近接戦闘では僕よりずっと強くて、獣化すれば中村さん達にもそうそうやられたりしないんです!篠村さんが強いのは解ってますけど、いくら何でも……!」

 

「いいえ、ネギ先生。先生は解っていないのです」

 

最早自分にとって友と変わりの無い修行仲間の瞬殺宣言に若干憤りながら抗弁するネギの様子に若干済まなそうに顔を微苦笑へ変えながらも、愛衣はキッパリと言い切った。

 

「お兄様が、どれだけとんでもない(・・・・・・)のかを。実戦ならまだしも、こんなよーいドンのスタートで始まる試合形式ではお兄様は…ヤバいんです」

「愛衣、もう少し用いる表現法を吟味なさい。頭が軽く見られるわよ」

 

些かフワッとした説明に混乱し始めたネギの様子に、愛衣を軽く窘めつつ高音が口を開く。

 

「愛衣が惑わかすような物言いをして申し訳ありません、ネギ先生…重ねて言いますが、見ていれば直ぐに解ります。愛衣の言葉は間違ってはいませんしね」

 

「ナーナーじゃあ本気(マジ)にコタくん秒殺あり得る?」

「答えになっていない当然のことを言わせてもらうけれど、アレの初手に対応ができなければ。…と言わせてもらうわ」

「ほう、それは楽しみだ」

「…本当にそうなったら小太郎君ガチで凹みそうだからできれば俺そうなってもらいたくないんだけど……」

(はじめ)ちゃんてば相変わらずお人好しなんだからも〜う。なったらなったでしょうがねえべ、コタくんがまだ弱かっただけの話ってことだ」

「いやそれで済む話じゃ……!……なんだか様子が変ですよ、あの二人」

「んん?」

 

ネギの言葉にみんなが闘技場に視線を戻すと、何やら剣呑な雰囲気で互いを見つめ合う二人の姿があった。

 

 

 

「……もっぺん言うてみてくれるか、篠村の兄ちゃん?」

「あ〜やっぱ気に触った?負けてくれね、って言ったんだよこの試合。お前さんが俺にさ」

 

時は僅かに遡り、冒頭の会話から篠村が小太郎に対しての頼み(・・)を吐いた直後。先ほど耳にした台詞が間違いでないことを確認した小太郎は、元より鋭く眇めていた視線をもはや殺気すら漂うそれに変え、低く篭った声音で言葉を紡ぐ。

 

「…それ聞いて、はいわかりましたお譲りします……なんて俺が言うでも本気で思っとるか、兄ちゃん?」

「欠片も思ってねえ。まあおめ様が憤怒バーニングファッキンストリームになんのは無理もねえんだけど聞いてくれよ、俺今負けられねえ状態なのよ」

「高音の姉ちゃんとのあれやろ?見て聞いとったらそんなんわかるわ。事情は知らんけど色んな柵に決着つけよう云々を別に否定はせえへん、兄ちゃん等見とったら必要なことやと思うしな」

 

篠村の軽口に小太郎は軽く目を閉じて静かに答えを返す。

 

「おお?キレて会話にもならねえと思ってたから助かるぜい。じゃあ…」

「でもそんなんは俺が譲ったる理由にはならへんわ」

 

しかし、想定していたよりも理性的であった小太郎の対応に見込みがあるかと喜色を表しかけた篠村に小太郎はカッと目を見開き、射抜くような鋭い目付きでそう続けた。

 

「負けられん理由、て…そんなんはぶっちゃけこんな場所(とこ)出場()とる奴なら一人残らずなんかしらあるやろ、負けたくない、位でもそら理由や。大体勝ち上がってきい言うた高音の姉ちゃんに恥ずかしい思わんのかい?」

「欠片も思わねえ」

 

篠村は即答した。

 

「…兄ちゃん」

「俺ぁそういう方面のプライド一切持ってねえんだわ。汚い外道手段も相手によっては位の心持ちだし、勝てりゃ結果がでりゃ割と何でもする輩だ。土下座が欲しけりゃこの公衆の面前でも躊躇いなくやるぜ俺は?…唯お前のその反応だと頭下げても無駄っぽいしなー…」

 

小太郎君よー、と、篠村は憂鬱そうな顔で語り掛ける。

 

「俺は凡才なのよ。こんな化け物揃いなメンツが集う大会で、楽して勝てる相手なんざ一人たりともいねえ訳。それでも俺は決着(ケリ)付けると決めた以上は石に齧りついてでも最悪三回戦までは上がらないといかんのだが…魔力量からしても体力からしても全力で闘ったんじゃとても三戦保たねえのよ。一回戦(ここ)を無傷で切り抜けられたならまあ何とかなるかな?ってな感じだからさぁ……頼むよ小太郎、譲ってくれ。後で俺にできる事なら何でもするからよ」

 

頼む。と、篠村は頭を深く下げる。決して巫山戯た理由(わけ)でこんな馬鹿げた事を言い出した訳でないのはその態度から十分に小太郎へと伝わってきた、が。

 

「…スマンな、兄ちゃん」

 

小太郎はそれでも、その申し出に是、と頷くことはできなかった。

 

「……篠村の兄ちゃんからすれば俺の理由なんて軽いように思えるやろ、何せ腕試し感覚でどこまでやれるか、なんて風にしか見えてへんやろからな」

「…なに、違えとでも言いてえの?」

「まあ間違っとらんけどな、それ以外もあるわ」

「何よ?」

「糞格好悪い理由や、話したくないわ。兎も角兄ちゃん、答えはNOや。覚悟決めてやりやってもらうで… 一つ、気にいらん事もあるしな」

 

小太郎は鼻の頭に皺を寄せ、一段階低い声で言い放つ。

 

「なあ篠村の兄ちゃん、兄ちゃんの台詞やと、俺は多少消耗はするけど、闘って負ける相手や無いて…そういう事なんやろ?」

「…ああ〜そっちが気に障ったか、まぁその通りだけどよ」

 

あっちゃー、と篠村は額に手を当てて呻くが、小太郎の言葉自体はあっさりと肯定した。

 

「…舐めている、とは言わんわい。兄ちゃんの実力はよう解らんけど、中村の馬鹿兄ちゃんから一本取った事もあるんやろ?やったらまあ、格上やわな普通に。…それでも、負ける可能性微塵も考えてへんのは自惚れ過ぎちゃうんか?」

「いやいや、何があっても負けないとかそんなこと考えてないよ俺神様かよ?普通に計算外の事態が一個二個あって、一回二回失敗(ミス)れば普通に俺はお前に負けるよ」

 

まあ、そんな事はほぼあり得ないんだけどな?と、篠村は笑い、

 

「…後よ、俺はやるとなったら相当身も蓋もない勝ち方するから、お前のプライドとか諸々心配したっつーのもある。なあ小太郎君よ、真剣(マジ)に止めとかね?…容赦しねえぞ俺は」

「……哀願の次は挑発かい、本当に手段は選ばずやな」

 

上等や、と、小太郎は犬歯を剥き出した獰猛な表情(かお)で篠村を睨め付け、堂々と告げた。

 

「必ず吠え面かかしたるわ、その顔にな」

 

 

 

『さあ、間も無く試合開始と相成ります!!両者開始戦の位置に着いて下さい!…言っとくけど本っ当〜〜にもう闘技場ぶっ壊すのやめてよね二人共!?修繕費だってタダじゃないし、ワンデイトーナメントだから地味に時間押してるんだからね!!』

 

「安心せえや朝倉の姉ちゃん、俺はわざわざ壊さへんし、篠村の兄ちゃんもなんつうか全体的に地味やからそんな派手な真似出来んやろ」

「さっきのお返しのつもりよ公然とdisりがって……なあ小太郎、本当に降参する気ねえ?」

 

切実な響きのこもった朝倉の念押しに笑って答える小太郎に、篠村はトントン、と手にした長杖(スタッフ)の石突きで床を軽く叩きながら不景気そうな顔で問い掛ける。

 

「クドイわ兄ちゃん、嫌だ言うとるやろ。よもや怖気づいたわけじゃないやろな?」

「いんや、これはもう何つうか、純粋な気遣いなんだがなぁ……何しろ」

 

『試合……』

 

「この段階で気付けてねえならお前もう負けほぼ確定だからよ」

 

『開始ィ!!』

 

「…フッッ!!」

 

朝倉の試合開始宣言とほぼ同時に聞こえてきた篠村の意味深な発言について小太郎は敢えて無視をした。ハッタリの可能性も無いではないが、事此処に至ってなおもこちらの棄権を奨める以上なにか(・・・)が有るのだろうと小太郎は思う。それでも黙ってただ負けを認めることが自分にとってはありえないのであれば、最初(ハナ)っから全力機動でブチ当たり、死中に活を見出す。何時もやってきたことであり、小太郎に油断は無く。地面を踏み締め、その身体は一瞬で篠村の右側面へと回り込みーー

 

「…お前の負け、と」

「……っ!?」

 

瞬動の抜きで床を踏み締めた時には既に空間から滲み出る様に出現していた複数の光球へと自分からぶつかりに行く格好で衝突し、瞬時に弾けた光帯によりその場に身体を縫い止められた。

 

「…っなっ!?」

 

魔法の射手(サギタ マギカ)の…戒めの風矢(アエール カプトゥーラエ)!?俺の開始直後の瞬動と、移動位置やタイミングを全て読んだっちゅうんかい…!?

 

「違えよ、よく周り見ろや」

 

驚愕する小太郎の心を読んだかのように篠村は言い放ち、反射的に言葉に従い小太郎は周囲へ視線を向けて。再度驚愕に息を呑んだ。

 

『こ、これはぁ!?謎の光る玉の様なものが篠村選手の周囲を取り囲む(・・・・・・・)ように突如として現れました!!そして開幕と同時に目にも止まらぬ速さで私野村選手の至近に踏み込んだ小太郎選手ですが、これまた謎の光る帯のようなものに拘束され身動きが取れない状態だぁぁっ!!』

『補足するならば、小太郎選手が踏み込んだ瞬間とほぼ同時に光る玉は篠村選手の周囲に現れ、光る帯は小太郎選手が光の玉に衝突してその玉が弾け出現したように見えました。原理は一切理解不明ですが、おそらく篠村選手は小太郎選手が開幕と同時に突っ込んでくる事を読んでこのような(トラップ)を仕掛けだのでしょう』

 

「ま、俺は近接戦闘能力じゃ獣化状態どころか素のままの前にも多分負けるからよ。瞬動で来る事は読めても何処から(・・・・)突っ掛けてくるか解らねえし、実際目で見ても到底追い切れねえからこう(・・)したんだわ」

 

やれやれ肝が冷えたぜ、と嘯きながら篠村は近距離の小太郎に身体毎向き直り、僅かに目を細めて告げた。

 

「言ったろ?身も蓋も無えって」

「…っこんの!?」

 

小太郎が何かを言い終える前に篠村は杖を軽く振り、それまで微動だにせず空中に浮き続けていた残りの五十発近い光球(戒めの風矢)が一斉に小太郎へと殺到。一瞬の内に全身を余す所無く光りの帯に包まれた小太郎は言葉さえも封じられ、物言わぬ彫像と化した。

 

 

 

「…………………!!」

「…………っ!?……!?」

 

「うっわーー………」

「えっげつね〜〜……」

「…この程度は予想して然るべきだったか……」

 

「言ったでしょう、下手をすれば秒殺だと……愛衣が」

「な、何だか私の所為みたいに聞こえます、お姉様!?」

 

おら、と軽い掛け声と共に小太郎を蹴り転がして審判の朝倉にカウントを求めている壇上の篠村が行なった文字通りの秒殺劇にネギ達が絶句する中、揃えた顰めっ面で呻き声を上げる三人(バカレンジャー)に頬から一筋の汗を垂らして高音が静かに告げ、愛衣が抗議の声を上げる。

 

「…いやつうかもうこれ終わりか!?何つう盛り上がりの欠片も無え……」

「か、カモ君!!まだ終わりじゃ……!」

 

「五十発前後の戒めの風矢(アエール カプトゥーラエ)をテンカウント以内に抵抗(レジスト)して立ち上がる事が先生には出来ますか?…因みに私は無理です……」

「…う………!」

 

声を荒げるネギに問い掛けたのは辻の後ろに控える刹那であり、その表情は驚愕と戦慄により歪んでいる。

 

「…これが。篠村先輩の実力という事ですか、高音さん、愛衣さん」

「ほんの一端に過ぎないけれどね。あの男は数秒あれば数十本の魔法の射手(サギタ マギカ)を無詠唱で展開出来る。もう数秒掛ければ出現の直前までそれを悟らせない様に隠蔽(サプレース)が可能。貴方達どころか、相当な力量(レベル)の魔法使いであろうと感知の難しい域でね……あんな風に、試合開始まで腐る程間が開いているのなら、試合開始と同時に無数の高速化、貫通化させた弾幕で相手を一瞬で蜂の巣と化す事さえ、アレなら出来る」

「…お兄様を相手にするなら、猶予を一瞬たりとも与えてはいけないんです。私達魔法使いはおろか、近接戦闘を得手とする前衛の人が繰り出す手足や武器よりも、お兄様は出足と手数で勝るんですから」

 

 

「……あの、豪徳寺先輩………」

「小太郎ぉー!根性見せろ、そんなんで終わんなぁぁぁっ!!」

 

保健室では些か以上に情け容赦の無い篠村のガチ振りに顔を引き攣らせた千鶴の呼び掛けも意に介さず、画面内でピクリとも動かず横たわる小太郎へと檄を飛ばしていた。見かねた千鶴が身体に手を添え、落ち着かせようとするが今一つ効果は薄い。

 

「…傷に障りますよ?」

「そこまでヤワじゃねえよ、それより小太郎だ。あんな負け方じゃ後を引いちまう…篠村が悪いんじゃねえが、あいつはこんなんで負けちゃいけねぇ!!」

「…お気持ちは解りますけれど……」

 

裏の世界を多少知っただけの、戦闘に関して素人同然である千鶴でも解る。小太郎は完全に、詰んでいるのだ。

魔法の射手(サギタ マギカ)の中でも捕縛、拘束のみに主眼を置いた戒めの風矢(アエール カプトゥーラエ)は風の帯による物理的高速に加えてごく低位ながら魔力関連の力に封印までも施す。一矢や二矢では並の魔法使いの魔法発動を一瞬から数瞬遅らせるに過ぎないが、数十矢が拘束しているならばたとえ高位魔法使い(ハイマジックユーザー)であろうとも真面に魔法を行使する事は困難となる。小太郎が扱うのは主に気の力だが、元を辿れば魔力と同じ力である以上関係は無い。

千鶴はそういった魔法理論が理解出来ていた訳では無論のこと無いが、豪徳寺が例え画面越しで実際に小太郎へ声が届く事はなかろうと具体的な解決策を口にしないことから、何とは無しにどうしようもない状況なのだと言うことは解っていた。

戦闘に関して様々な意味で門外漢である千鶴に、この状況で豪徳寺かける言葉が見つかるはずもなかったが、それでも憤りと悲しみを表す豪徳寺の僅かな慰めにでもなれば、と千鶴が声を掛けようとした、その時。

 

「……!小太郎、そうかそれが…!!…そうだよ、こんなことで終われねえよなぁっ!!」

「……えっ?」

 

突然目を見開き、喜色満面の笑みを浮かべた豪徳寺の様子に千鶴が慌ててテレビの画面に目をやると、そこにはタールのような黒い何か(・・・・)に沈み込んでいく小太郎の姿が映し出されていた。

 

 

『お、おぉーっと小太郎選手!!身動きの取れない状態でカウントセブンの迎え最早終わりかと思われたその時!なんと黒い影の様な何かが突如床より湧き出し、小太郎選手を呑み込んだぁぁぁぁっ!!』

『……敢えて言うなら第二試合終了時にエヴァンジェリン選手が出したものに似ていますが…これ迄に輪を掛けて解説実況泣かせですねこの試合』

 

……あっちゃ〜そうだ小太郎にゃこれ(・・)があったか〜〜………!

 

解説実況が騒ぐ中篠村はやっちまったと天を振り仰ぐ。

小太郎は単純な獣人族では無く犬神を使役する狗族のハーフである。身体能力の強化、飛び道具、影から影への移動と汎用性に富んだ妖にして式鬼にも似た存在が犬神である。この場合は試合開始前に小太郎もまた、何かあった時の保険として犬神を喚び出し忍ばせておいたのだった。

 

「……完全に身一つの無策で向かって来る程考え無しでも無かった、か………」

 

詰めが甘いんだよなぁ俺は、と、盛大な溜息を吐く篠村を余所に、朝倉は選手の一人が消えて無くなるという鬼振りにもめげず懸命に実況を続けていた。

 

『床下に沈んだ……訳じゃ無いのね!?場内には現時点で観測不能…解った……皆様!小太郎選手が謎の移動術により消えてしまいましたが、大会運営側の急速探知の結果少なくとも闘技場内には小太郎選手の姿は見当たらないため、これを場外と捉え二十カウント以内に小太郎選手が戻らないようであれば篠村選手の勝利とします!!小太郎選手が消えた時間から換算してカウントをサーティーンより…』

 

「あー朝倉?その展開(場外カウント負け)は恐らく無えから安心しろや」

「…なに選手私今忙しいんだけど邪魔しないでよ鬼振りに次ぐ鬼振りくれてくれちゃってもう少し解説実況に優しい試合してよ!」

「暗に魔法OKです発言した主催者(超 鈴音)恨めや。ともあれカウントは必要無えよ……何せそろそろ…」

 

篠村が完全に言葉を紡ぎ終えるよりも早く、観客席と神社の本殿を繋ぐ通路の屋根を勢い良く蹴って一人の影が闘技場内へと舞い降りる。

 

「せやな、待たせてすまん篠村の兄ちゃん」

「別に待ってないけどねイヤ本当に。あのまま沈んでてくれりゃ良かったのにさぁ」

 

「……え〜〜ちょっと会話の流れからして誰なのかは明らかなんだけどそれでも言わせてもらうと誰これぇぇぇっ!?」

 

朝倉がそのような叫びを上げた原因は戻って来た小太郎の姿にあった。身体の其処彼処を獣毛が覆い隠し背丈や肉付きは中高生並に発達。犬歯と手足に鉤爪の生え揃ったその姿は、第一試合の刹那が行ったのと同様に狗族の獣化形態である。刹那の場合の様に変身した過程を見ずにビフォアフターのみを見れば混乱するのは当然だろう。

 

「コスプレやコスプレ。刹那の姉ちゃんと同じやで。…気合入れる為にこの格好なったんや」

「本気出すなよ俺負けるから。ヤダヤダ初見殺しでさぱっと決着(きめ)るつもりが凡ミスでこの様だよ」

 

つーかよ、と、篠村はジリジリと後ろに摺り足で退がって間合いを作りながら面倒臭そうに問い掛ける。

 

「今からでも棄権しない?こっから先は痛え(・・)ぞ小太郎?ほら無理に戒めの風矢(アエール カプトゥーラエ)力技でぶち破って来た所為で彼方此方傷だらけじゃんよ」

「誰がするかい態々本気(マジ)モードになってきたんやで」

 

獰猛に牙を剥き出して笑う小太郎の返答に篠村は深い溜息を一つ吐き、半身の姿勢で長杖(スタッフ)を構えた。

 

 

「んじゃ塩漬けにして沈めてやんよ」

 

「手負いの獣舐めんなや兄ちゃん」

 

 

 




閲覧ありがとうございます、星の海です。
夏に投稿したと思えば冬になってました、この三分の一年自分が何をしていたのか明確に思い出せません。書こう書こうと唸っている内に此処まで掛かりました。しかも話は殆ど進んでおらず、楽しみにしていて下さった方々は誠に申し訳ありません。重ねて申し訳ない事に、作者はこれから一月近く電波の届かない場所で缶詰になるため感想やご意見等頂いても返信がかなり遅くなると思われます。本当に申し訳ありません。
なるべく早くなどと最早大口は叩きませんが、先ずは月一更新が出来るよう励みます。年度末には少しばかり真面な文章をお届けします故、どうか今後ともよろしくお願いします。
本編ですが、あまりオリキャラ無双にならないようにバランスを考えて篠村は動かしていくつもりです、なお、魔法の射手のアレンジや戒めの風矢に魔法封印効果があるなどは全て本作の独自設定です。修学旅行編でフェイトが数十秒動けないだけで無く魔法の一つも使おうとしなかったので考えた設定ですが、普通に舐めプレイの可能性もあるのでおかしいと感じたならば遠慮せずにご意見を賜わらせていただきます。
それではまた次回にて、次もよろしくお願いします。

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