お馬鹿な武道家達の奮闘記   作:星の海

62 / 88
お待たせ致しました。麻帆良学園祭編スタートです。


四章 お馬鹿な武道家達の恋と戦模様
1話 祭りの始まりは混沌と


「……私には、無理です………」

少女は力無くそう零す。

「……大丈夫や」

静かに、されど力強く少女を励ますもう一人の少女は、膝を着く己が掛け替えの無い親友の弱々しい瞳をしっかりと見つめ、再び告げた。

 

「せっちゃんならあんじょう行くわきばりやさあ早くぅ〜〜!」

「無理や、無理なんやこのちゃん〜‼︎前立っただけで口聞けへん自信があるねん〜〜‼︎」

 

「……駄目かもな、こりゃあ…………」

 

腰の辺りに縋り付いていやいやと首を振る半泣きの刹那と、力付くで二十m先を歩く辻に刹那をけしかけようと愛らしい顔を必死の形相に歪める木乃香を見て、アワアワと状況を見守るネギの肩上のカモはそう呟いた。

 

「…にしても刹那さん。半ば他人事なのは承知の上で言わせて貰うけれど、今更デートに誘う位で何でそこまで狼狽えてんのよ……」

「解ってます、解ってるんです意識し過ぎて勝手に追い詰められてるだけなのは……‼︎」

 

埒があかないので一旦突貫作戦は中断して、道を歩く辻の後方から全員でコソコソと後を尾けながら呆れた様に傍らの明日菜が言い、青白い顔で頭を抱えながらテンパった声で刹那が返す。

「せっちゃん、何度も言うけど大丈夫や〜、別に今直ぐ告白するわけや無いんやから、一緒に学祭廻りましょうてだけなら100%(ヒャクパー)OKしてくれるえ〜?」

大仰に考えすぎるな、と逆隣りの木乃香も告げるが、刹那の表情は晴れない。

「いえ、私去年までお嬢様の警護を名目に辻部長のお誘いを素気(すげ)無く払い除けて来ているんです。絶対にこの件では相当に悪い感情を持たれてしまっていますし、考えてみれば辻部長とは鍛錬以外の話題を進んで話した事がありませんし、剣の道に邁進する脳筋女子だとか、辻部長の私に対する女子的な評価って底辺を通り越してマイナスに至っているに違いないんです、…うぅぅぅぅ〜〜…………‼︎」

終いには唸り始めた刹那を見て一同はなんとも言えない感慨に包まれる。

 

「…あのせっちゃんが良くぞここまで、とも思うけどなあ〜…」

「っていうかテンパって勝手にネガティヴ方面に流れ出す一連の流れが辻先輩にそっくりよねえ……」

「…なんだか僕でももういいからさっさと引き合わせれば解決するのに、って投げやりになりそうですよ……」

 

兎にも角にもぐったりしている刹那を半ば引き摺る様に尚も辻の後を追う一同。

「刹那さん、なんて言うか気持ちは痛い程よ〜〜〜〜く解るけどさ。…ぶっちゃけ辻先輩って結構モテるのよ?」

ピクリと俯いて歩く刹那が反応する。明日菜は木乃香に目配せし、そのまま二人は代わる代わるに辻 (はじめ)PRを始める。

 

「そりゃあのお馬鹿集団に属してるから一般受けは最悪に近いんだけどね〜、ほら、辻先輩ってあの人らの中だと良識的で指導なんかも丁寧でしょ?武道系部活の女子達の間では密かに人気あるんだって」

「せやせや、辻先輩勉強も出来るし顔の造りもすっきりしてて綺麗な方やし、基本スペック高いんよ〜。中村先輩達が何やオヒョヒョな感じやし、相対的にイメージ良く見えるんもあるんやとウチは思うわ〜」

 

「…あ、あの、明日菜さんも木乃香さんも急にどう…」

「黙ってな兄貴。これもその気にさせる為の作戦よ作戦」

ヒソヒソと話すカモネギを余所に、漸く顔を上げた刹那には明らかに動揺が見てとれた。

好意を自覚したばかりの想い人が、学祭前という如何にも(・・・・)な青春炸裂期間に異性からの人気が大などと聞いては内心穏やかでいられないのはある意味当然ではあるが、実際にはそれは無用の心配というものである。

確かに辻はバカレンジャーの中において、単純に顔のいい山下に次いで女子人気が高い。本来ならば明日菜達の言うように、こういったイベントで粉をかけられることもあったかもしれない。

しかし実際には、辻の隣りに刹那がいる。二人は四六時中連れ立っている訳では無いが、つい最近まで辻は鍛錬の虫であり(無論それは現在もだが)、口から出る言葉は桜咲は〜〜、である。そりゃあ話題自体は色気の欠片も無いとはいえ、少しでも見る目のある人間ならば二人が単なる先輩後輩の間柄で終わらないであろうことなど、簡単に予想がつく。麻帆良生徒の中で辻 (はじめ)と桜咲 刹那とは、既にセットで捉えられて久しいのである。

故に刹那が此処で焦る必要など微塵も無いのだが、そんな周囲の認識など当然刹那は知る由も無い。取り敢えずその気にさせれば万事解決すると確信しているこその、明日菜と木乃香による少々手洗い発破であった。

 

「い、いえまあ、辻部長は確かに魅力的な方ではありますが……し、しかしですよ、明日菜さん、お嬢様。私はそれなりに辻部長と付き合いは長いですが、あの人がそういった浮ついた話題を出した事など一度も……」

「う〜〜んそれはほら、あれやせっちゃん。せっちゃんかて立派な一人の女の子やし、辻先輩はデリカシーとかそういうとこは人一倍きちんとしてる人やろ?恋仲で無いとはいえ、女の子と話しとるに他の娘の話題出すなんて失礼な事辻先輩はまずせえへんと思うわぁ〜」

「そ、それは、そうかもしれませんが……」

「だからさ、刹那さん。辻先輩って押し弱い所あるでしょ?今迄は幸いそういう声が掛らなかったかもしれないけれど、辻先輩も来年には卒業した大学部に移るか、ひょっとしたら就職して麻帆良を出ちゃうかもしれないのよ?一念発起して想いを告げようなんて娘がいても、おかしくないとは思わない?」

「な、あ、……そ、それは確かに………!」

 

再びオロオロと頭を抱え出した刹那。なんというか色々余裕が無さ過ぎる姿である。

 

「あ、明日菜こん位にしとくで〜、あんまり急かし過ぎると暴走して変な方向行きそうや」

「OK。……にしても発破かけてて言ってる事の半分位が己が身に突き刺さって痛いわ…心が……」

「おいおい姐さん、自爆してる場合じゃねえぜ、仕上げはこっからなんだからよぉ?」

「え…まだ何かやるの、カモ君?」

 

ネギの問い掛けにカモはニヤリと悪どい笑みを浮かべ、手にした煙草で辻のいる方角を指し示す。

「寧ろこっからが本番だぜ兄貴。見てくだせえや、中村の旦那方まで抱き込んで、細工は流流仕上げを御覧じろ、ってな」

 

 

 

「ヤッホー辻君、暫くだったねえ。お姉さん会えて嬉しいよぉ」

「…太刀嵐先輩、お久しぶりです。また急にどうしました?」

 

目の前に立つ、薙刀袋を背負う黒髪のロングヘアーの鮮やかさとは対照的に、なんともほんわかした雰囲気を纏った女性、薙刀部部長太刀嵐(たちあらし)大蛇(おろち)を、何とも言えない嫌そうな目付きで辻は見返していた。

「あ〜何だか傷付くなあその反応。別にちょっとした昔みたいにいきなり斬り掛かったりしないから、楽にしてよ〜」

「寧ろ口ぶりからその行為をきちんと非常識なことだと自覚していながら、平然と声を掛けてくる先輩の肝の太さにこそ気圧されてますよ。…それで本当に何のご要件でしょうか?」

引き攣り気味の笑みを浮かべながらあくまで話を急かす辻に、太刀嵐はぶぅー、と子どもの様に頬を膨らませる。

「つれないなぁ辻君。まあ、いいかぁ…確かに戦線布告(・・・・)に来てあんまり仲良くしてても雰囲気出ないしねぇ」

「待って下さい、戦線布告とは何事ですかちょっと⁉︎」

うんうん、と一人で納得している太刀嵐の吐いた不吉な単語を聞き咎め、辻は堪らずツッコみを入れる。

「何事も何も…辻君出場するんでしょう、まほら武道会。私も出場()るからさぁ、負けないよ〜、って言いに来たの」

って言いに来たの」

あっけらかんと太刀嵐は言い、背中の薙刀を袋入りのまま引き抜くと体前でヒュウ‼︎と風切り音を上げさせながら素早く一振りする。

「んふふ〜、武器持ち(・・・)麻帆良最強の栄冠は辻君に永らく明け渡しちゃってるけど、私だって何時までも遅れを取り続けるつもりは無いからね〜。…進化した結界刃(・・・)、その眼に焼き付けてあげるよ。…敗北って烙印でね」

ビシィッ‼︎と薙刀を突き付けての決め台詞に、辻は暫し頭を片手で押さえて項垂れていたが、やがて顔を上げると不承不承、といった体で頷く。

 

「…元々俺は学園最強を名乗った覚えはありませんし、今回は勝たなきゃいけない事情があるんで先輩みたいな強い人とはやり合いたくないのが本音ですが……わかりましたよ、もし闘り合う機会がありましたら、存分に」

「…辻君ってなんていうか、めちゃめちゃ腕は立つ癖に、争い事に乗り気じゃ無い所とかまるで普通の人みたいだよね〜。彩華ちゃんとかはそこら辺が余裕ぶってる、な〜んて感じるから気に入らないらしいけどさ〜…気取らない感じが私は割と好きかな〜」

 

どう見てもあまり乗り気では無い次の返答に、太刀嵐は笑みを深めて呟き、じゃあ大会でね〜、とヒラヒラ手を振りつつ踵を返す。

 

「…あああ、色々大変そうなのにまた厄介な人が……」

と、辻はバトルジャンキーの増加に頭を悩ませていたが、その辻の後方ではこれまた大変な事態になっていた。

 

 

 

「………………っ⁉︎…」

「うわー何か随分親しそうな感じじゃなかった、ちょっと木乃香?」

「せやな〜なんや大人っぽい見た目の割にほんわかした感じがギャップでえらい可愛らしい先輩やったな〜」

「そうね〜何話してたかはよく聞こえなかったけど、ひょっとしてモーションかけられてたのかもね辻先輩ったらー」

「いえ、あのどう見ても一触即発みたいなムグッ⁉︎」

「兄貴兄貴、ここは沈黙が吉だぜ」

 

ワナワナと全身を小刻みに震わせつつ、無言で一連のやりとりを目撃していた刹那。その傍では明日菜と木乃香が何処か態とらしい応酬をやり合い、ネギの冷静な意見(しんじつのくち)はカモによって妨げられる。

「い、いえ…き、きっとアレはアレですよ!、太刀嵐先輩は獲物持ちの武道系部活の中では有数の使い手と確か前に副部長が言っておられましたし、今度の武道会での意気込みを語りに来たとか、そのような感じの話かと……!」

「え〜でもせっちゃん、態々辻先輩にそれを伝えに来るんやったら、どっちにしても辻先輩をなんかの形で意識してるゆーことやないかな〜?」

「え…う……⁉︎」

木乃香の切り返しにタジタジになる刹那。実は予想の通りであるのだが、今の刹那に冷静な判断力は残されていなかった。

 

「……ねえ木乃香、大丈夫なの刹那さん?なんか動揺の度合いが半端無いんだけど…?」

「大丈夫や明日菜。追い詰め過ぎるのもアレやて確かに言うたけど、せっちゃんは割と引っ込み思案で理由付けて物事を諦められる(・・・)様にしとる一面あるからなー。此処は勢いで行動して貰わんとせっちゃん前には進めへんのや」

「…でもやり方が何だか『辻 はぁじめえぇぇぇぇぇぇっ‼︎‼︎』…わあっ⁉︎」

ハラハラしながら何事かを言いかけたネギの呟きを、遠方から上がった叫びが打ち消す。

「え、何々⁉︎」

「明日菜、あっちや‼︎」

「え…あ⁉︎つ、辻部長にまた、女性の方が……⁉︎」

震える指で刹那が指し示した先には、途方に暮れて佇んでいた辻に向かって爆走する、ショートヘアーの女性がいた。

 

 

 

「……うわぁ…………」

「き、貴様辻 (はじめ)‼︎人の顔を見るなり呻き声を上げるとは、礼儀というものを知らんのか⁉︎」

 

心底嫌そうに呻く辻のあんまりといえばあんまりなリアクションに堪らず抗議の声を上げるのは全長五m、刃の部分が畳半畳程もありそうな巨大なハルバードを無理矢理斜めに背負った、長身で三白眼気味の切れ長な眼がやや威圧的なボーイッシュの女性、刀剣甲冑部部長鎧塚 彩華(よろいづか さいか)である。

 

「そりゃあ嫌そうにもするだろ彩華さん。鎧と刃物で完全武装した殺戮集団を指揮して定期的に襲い掛かってくる通り魔擬きの長を前にして、まさか歓迎の笑顔を浮かべるとでも思うのかい?」

「ぬ…っ!ま、麻帆良では強者は常につけ狙われる運命(さだめ)なのだ‼︎それに貴様に対して私は一対一でしか挑んだことは無いだろうが‼︎」

「そのイカれた世紀末理論をそもそも俺は受け入れてないって話なんだよ前提として‼︎それで今日は何の用だこの馬鹿力女、まさかそんな格好(・・・・・)で挑戦なんぞと吐かさないだろうな⁉︎」

曲がりなりにも丁寧な応対を心掛けていた辻だったが、圧し掛かる諸々の事情から精神的な余裕が欠けているらしく、格別親しくも無い女性相手にしては何時に無く言葉が荒い。鎧塚はそんな初めてみる辻の様子にやや面食らったようであったが、気を取り直す様に小さく被りを振り、ビシィッ‼︎と人差し指を辻に突き付けると、清々しい迄に堂々と宣言した。

 

「辻 (はじめ)ぇっ‼︎どうやら太刀嵐のゆるふわ女に先を越された様だが、貴様を打ち倒し武器持ちの頂点に立つのはこの私だ‼︎そして私が貴様に勝利した暁には、予てからの私の要求、貴様を我が刀剣甲冑部への転部を果たさせて貰おうか‼︎」

「俺がその滅茶苦茶な話にはいと頷くとでも思ったか脳筋女」

「ふん、貴様がどう思おうが関係は無い‼︎私は何をしてでも刀剣甲冑部を麻帆良一の強集団としてみせる!首を洗って待っていろ、辻 (はじめ)‼︎」

「なんで麻帆良(ここ)は他人の話を聞かない奴がこうも多いんだ畜生」

最早色々なものを諦めたのか力無く呟く辻に構わず、不敵な笑みを口端に鎧塚は去って行く。

「ではな、武道会で会おう我がライバルよ‼︎」

「フレースウェルグにでも攫われて巣のグラデーションになってしまえ鋼鉄女が」

ボヤく様に吐き捨て、ふらふらと歩みを再開する辻。

 

「…なんなんだ今日は、学祭が近いにしても変人が集まり過ぎだろうに。誰かの陰謀じゃあるまいな……?」

 

 

 

「…………このちゃん、ウチ如何したらええん……?」

「……行動するんや、せっちゃん。ウチとの時も、身ぃ引いてしもてせっちゃんは、いっぱい後悔したんやろ……?」

 

泣きそうな刹那の揺れる瞳を胸の中に閉じ込め、柔らかくその頭を抱え込んだ木乃香は優しく、諭す様にゆっくりと告げる。

 

「…刹那さん大丈夫かしら……」

「だからやり過ぎなんじゃって僕は…」

「ま、まあハッパが効き過ぎた感はあるが悪くねえ状況だぜ。今の旦那なら強引な女共との対比で刹那の姉さんがより可憐に見えたりなんかするかもしれねえ!」

 

きまり悪げなネギ達を脇目に木乃香は懐中の刹那に語り掛ける。

「せっちゃん、辻先輩のこと好きやろ?」

「そ、それは…………、…はい……」

真っ向からの問い掛けに、刹那は赤面しつつも小さく肯定する。木乃香は想いをきちんと口に出せる様になった親友を嬉しそうに見て、言葉を紡ぐ。

「ウチな、まだせっちゃんと仲直りする前に、せっちゃんのこと辻先輩に聞きに行ったことあるんよ。…碌に話したことも無いようなウチ相手に、辻先輩凄く親身になってくれてな〜…優しくて、頼りになる人やって、そう思ったわ。……なあせっちゃん」

「…はい」

「辻先輩って、いい加減なこと言うような人やあらへんやろ?」

「え……、は、はい、そうですね……」

木乃香のやや唐突な質問に、戸惑いながらも刹那は肯定を返す。木乃香は我が意を得たりとばかりに笑って、刹那に告げる。

「そんな先輩がなぁ、せっちゃんなら大丈夫だ。ウチとまた仲良うしてくれるようになる、ってはっきり言うてくれたんや。…辻先輩はせっちゃんのこと、ちゃんと見とるとウチは思う。只の先輩後輩だなんてこと、絶対無いわ。…自信持って行きぃやせっちゃん!辻先輩と一番仲直うしとったんは、せっちゃんやろ‼︎」

「…………このちゃん………………‼︎」

 

眦をキリリと可愛らしく上げて、木乃香は刹那を激励する。刹那が胸の奥から込み上げるものを堪えつつも、親友の名を呼んだ時、傍らから明日菜の声が響く。

 

「あ‼︎も、もしもし、高畑先生ですか⁉︎」

 

「…………え?」

「あ、明日菜ー?」

 

携帯電話を耳に当て、ガチゴチに緊張しながら想い人、自らの前担任高畑・T・タカミチと会話をする明日菜の唐突に過ぎる行動に、木乃香達だけでなく傍らのネギもポカンとして見つめているが、明日菜は構わずに突っ走る。

 

「あの‼︎高畑先生、今度の麻帆良学園祭なんですけど!高畑先生はお暇な時間とかありますか⁉︎」

「はい、あの、あの…‼︎もし宜しければ、私と学園祭、一緒に廻って頂けませんでしょうか⁉︎」

「いえ、本当に、そんなこと無いです‼︎……はい、はい…そ、そうですか!ありがとうございます‼︎…はい、また連絡させて頂きます、失礼します‼︎」

ピッ!と電話を切ると同時に、盛大に溜め込んでいた息を吐き出しつつガックリと膝を着く明日菜。

 

「あ、明日菜さん、大丈夫ですか⁉︎」

「…だ……大丈夫よ、ネギ……!…緊張の糸が一気に、切れて…ちょっと力抜けただけだから………、刹那さん‼︎」

「は、はい‼︎」

 

息も絶え絶えにネギへ返事をした明日菜は、一つ大きく深呼吸をした後、大声で刹那へと呼び掛ける。小さく跳ねる様に身体を震わせて応える刹那に、明日菜は無理に笑顔を浮かべつつも言葉を放った。

 

「私、今高畑先生と学祭巡る約束、取り付けたわ‼︎」

「…は、はい……あの、明日菜さん何を……?」

「あたしが成功したから、刹那さんも大丈夫よ‼︎」

「…ええ⁉︎」

トンデモな理屈を唱え始めた明日菜に、堪らず刹那は驚愕の声を上げるが、明日菜は構わず先を続ける。

「なんていうか、あたし刹那さんと同じ様な立場だったのに、自分は行動しないで無責任に発破掛けてたから、さ。他人に対して自分が出来ないこと言うなって、言うじゃない?…だからもう真っ正面から、偉そうに言わせて貰うわよ刹那さん‼︎あたしに出来たんだから、刹那さんも大丈夫‼︎私も勇気出したんだから、刹那さんも勇気出しなさい‼︎辻先輩と刹那さん、すっごくお似合いだとあたし思うから。…一歩でいい、踏み出してみてよ、刹那さん」

 

ドーン‼︎と息を整え、立ち上がって仁王立ちに構えつつ明日菜は宣告した。

 

「……明日菜ー………」

「明日菜さん、あの……」

「なんつうか、姐さん。……理屈になってねえんじゃねえですかい…?」

「っっさいわね‼︎恋は理屈じゃ無いのよエロガモ‼︎」

「えぇー…………?」

 

理不尽な切り返しにカモが大層不満気に呻く。

 

「…………明日菜さん……」

「うっ⁉︎……いや、刹那さん。私はこう、あのね………」

刹那に呼び掛けられ、明日菜は先程までの勢いが嘘の様にへどもどと言葉を濁す。

「………ありがとうございます」

「いや、だからね……へ?」

刹那は明日菜の手をがっしりと握り締め、真摯にそう告げた。

「今の私なら、解ります。先程の明日菜さんが、どれだけ不安で、どれ程の勇気を振り絞って前に踏み出したのかを」

「え…うん。そうなんだけど…」

「そんな、途方も無い行動を、私を激励する為に………私は、明日菜さんの心意気に、返す言葉が見つかりません……‼︎」

「い、いや刹那さん、私もなんか、場の勢いに便乗した見たいな感があるし、結果的に成功したんだからそんなに思い詰めなくても……」

感激して目から涙を零す刹那を前にして、対照的にテンションの落ち着いてきた明日菜は凄まじく気不味い様子で首を振るが、言葉は届いていない様だ。

 

「お嬢様‼︎」

「ふえっ⁉︎な、なんやせっちゃん⁉︎」

 

ぐりんと急速に首を向け、異様に輝く瞳で見据えてくる刹那に、ややどもりながらも返事をする木乃香。

 

「お嬢様と明日菜さんの温かいお言葉、確かにお受け取りしました‼︎こんな意気地の無い私を、奮い立たせて下さり、本当にありがとうございます‼︎……私、行ってきます‼︎見ていて下さい、二人共、ネギ先生と、カモさんも‼︎」

「わ、わかったえせっちゃん…」

「う、うん…ファイトよ、刹那さん……」

「え、ええっと……が、頑張って下さい‼︎」

「健闘を、祈るぜ…」

「はい‼︎」

 

刹那は瞳に炎を宿し、確かな足取りで辻の元に駆けて行った。

 

「…………明日菜」

「……うん…………」

「……ちょっと、やり過ぎたな…………」

「…………そうね………………」

 

 

 

最早結果は語る迄も無いだろう。各所に恋の花を芽生えさせつつ、その他大小様々な悲喜交々を飲み込んで。

混沌の麻帆良学園祭は幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「麻帆良戦隊、ま「「「「バカー‼︎」」」」レンジャー‼︎…ってオンドゥルアァァクソガキ共ぁーっ‼︎毎回毎回人様を馬鹿にした合いの手入れてんじゃねーよ馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ馬ー鹿馬ー鹿‼︎」

「隣に立っていて恥ずかしいから小学生以下の文句を止めろ超の付く馬鹿が‼︎曲がりなりにも金貰ってやってんだから真面目にやれ‼︎」

 

世界樹前広場に仮設された舞台の上、五色カラーの戦隊物の衣装に身を包んだ五人がヒーロー見参を決めた後に、自らの名乗りを上げるシーンにて。

ショーを見ている子供達が名乗りの一部を息の合った斉唱で掻き消し、戦隊ヒーローのレッドが両腕を振り上げて観客席に怒鳴り声を張り上げる。 如何にも馬鹿の見本の様な言動を取る麻帆良戦隊、まほレンジャーレッドの中身は中村 達也という馬鹿であり、吠え立てる中村の首根っこを引っ掴んでいるまほブルーは豪徳寺 薫という番長だった。

ならば残りのイエロー、グリーン、ブラックは言うまでも無く残りのバカレンジャー三人であり、結論を言ってしまえば辻達バカレンジャーは麻帆良学園祭開始時に行われるヒーローショーにてアルバイトをしていた。

 

『おおっといきなり出ましたここ数年の麻帆良戦隊バカレンジャー名物が一つ、ヒーロー同士の仲間割れーっ‼︎』

「わぁぁすっげー‼︎」

「馬鹿じゃねーの?まだ怪人も出て無いぜー?」

「それが面白いんじゃんか!」

 

司会がギャアギャアとやり合っている中村達を囃し立て、子供達は早速妙な方向性で盛り上がっている。

 

「…噂には聞いていましたが、何をやっているのですかあの方達は?」

「ええやん夕映ー、ハマり役やと思うでウチ。あ、戦闘員出てきたで、そこやブラックー‼︎」

「…っていうか妙にあの黒尽くめ達動きが良くない?ああいう下っ端って弱いものなんじゃないの?」

「ああ、あれ?なんか麻帆良武道系部活の部員達を有志で募って配役してるらしいから、そりゃ強いんだろね。見なさいよあの縦横無尽な殺人攻撃の嵐、あの人達でなきゃとっくにボコボコになってると思うわよ?」

 

夕映が 『麻帆良農業部栽培極大カボチャ使用 720倍超濃縮 パンプキングジュース』と記入されたパックジュースを啜りつつ呆れた声で呟き、隣の木乃香が突っ込んで来た戦闘員の胴回し回転蹴りをゴテゴテした近未来的なブレードで叩き落とすレンジャーブラック、辻に対して声援を送り、やたらキレのある動きで四方八方から襲いかかる、雑魚である筈の戦闘員に対する明日菜の疑問をハルナが解説する。その後ろにはポカンとした表情でショーなんだか乱闘なんだかよく解らないドンチャン騒ぎを見る、ネギや小太郎の姿もあった。

 

学園祭の前日、ネギ達の元へ止めようとする大豪院や辻を振り切って中村が現れ、自分達が高校に上がってから毎回主役をやっているヒーローショーが学祭初日いの一番にあるから見に来いよ、と全員にチケットを配った。 学祭開始直後からギュウギュウに予定を詰めている者はいなかった為、3ーAの面々はこうして特等席で見物をしている訳である。

 

「この麻帆良戦隊まほレンジャーって、当初は麻帆良学祭期間限定で複数の弱小サークルがやってたなんの変哲もない興行の一つだったんだけど、雑魚役の戦闘員募集に麻帆良の腕っ節が強い奴らが応えて、ヒーロー役の人達を返り討ちにしちゃってから流れがおかしくなり始めてさー。

そこからは何故か競う様にヒーロー側怪人側に腕自慢達を呼び寄せて、ガチンコの対決をするショーだか乱闘劇だかわからない代物になり果ててるって訳。それでお客の方も唯のヒーローショーよりよっぽど面白いって人気が出たもんだから、現在では麻帆良学祭三日間で毎日朝晩に公演を行う学祭メインイベントの一つ。んで圧倒的に他より強いんで三年前位からヒーロー側でレギュラーやってるのが、バカレンジャーこと我らが先輩って訳だねー」

「確か近年では、学祭期間以外でも麻帆良の近隣県で地方公演を行っているらしいのよね?」

 

凄絶な乱闘を繰り広げている中村達を余所に解説をする朝倉に、千鶴が楽し気な様子で気弾を連射して戦闘員達を吹き飛ばす、まほブルーこと豪徳寺を見やりながら補足する。

 

「そうそう、あの人らの滅法強い暴れっぷりと漫才地味た掛け合いが大人気でさー、全国的な興行も視野に入れてるんだって。もうケーブルTVでは放送されてるし、ひょっとしたら次は映画化するかもねー?」

 

「…もうこれ仕事にした方がええんちゃうか?兄ちゃん達」

 

小太郎が呆れた顔でそう呟いた。

 

 

「ああもう今畜生‼︎俺は今日大事な予定があるのに、こんなことやってる暇無いってのに⁉︎」

 

使い慣れない装飾過多のブレードで、鋭い横突き蹴り(ヨプチャ チルギ)を叩き落としつつ嘆くまほブラックこと辻。短く悲鳴を上げて地面に転がる黒尽くめはどうやらテコンドー部の部員であるようだ。

 

「五月蝿えよ泣き事ほざくな中学生に手を出さんとしているエロ剣士がぁ‼︎全員が全員貴様のリア充街道を祝福すると思うなよ⁉︎」

「我ら色恋に現を抜かし武道家としての本分、飽くなき強さへの求道心を忘れた愚かなる武人に制裁を加えるべくして集いし真なる武道家達‼︎」

「とりわけ最近の貴様らの不順異性交遊は目に余る!そんな羨ま…ゲフンゲフン‼︎もとい唾棄すべき堕落に心身を貶めた貴様らは、我々『し◯と団』が成敗してくれるわ‼︎」

「名が体を現してんじゃねえかボケ共がぁっ‼︎」

 

口々に小難しい言い回しで『美少女とお付き合いしているこいつらが妬ましい』との本音をオブラートに包みながら飛び掛かって来る見苦しい連中(へんたい)共に、ゴテゴテした籠手(ガントレット)を装着した両腕から気弾をぶちかましつつまほブルーこと豪徳寺が吼える。

雑音(アドリブ)を相手にするな豪徳寺、引き受けた以上これは仕事だ。早急に全員沈めれば済む話だ」

金銀に彩られた三叉鉾の様な槍を構えてまほイエローこと大豪院が宣言すると、各々に襲い掛かっていた戦闘員達は一旦動きを止めて不敵に笑い(マスクで見えないが)、まほレンジャーを半包囲するかの様に半円状で散らばる。その上で一人の戦闘員が態とらしく高笑いなど上げながら指をまほレッドに突き付け、口上を放つ。

 

「フハハハハハまほレンジャーよ!今日という今日こそは貴様ら忌まわしき正義の味方に引導を渡してやろうぞ‼︎」

 

「今更台本に倣いやがったぞあの戦闘員…」

「まあまあ、予定通りに進むならいいことじゃない」

まほブラックの呟きにまほグリーン(with山下)が苦笑して返す。

 

「憎っくき貴様らへ冥土への案内役を果たすのはこのクソやろ……お方だ!出番です、無垢なる者の守護人よ‼︎」

「ねえなんか今クソ野郎って言いかけなかったあの戦闘員?」

「いや、そんな事よりも今回の怪人(ゲスト)は誰だ?なんか酷く不安な前口上が…」

 

何やら本音の洩れかけた戦闘員にグリーンがツッコみ、ブラックが果てしなく嫌な予感と共に呟きを洩らしたその時、舞台奥の幕が開き、一人の男がまほレンジャーに歩み寄ってくる。

その姿は馬をモチーフにしたらしい面長の兜に白銀の各所へ同色のフサフサした体毛が生えた全身装甲。目立つ特徴として、額の部分から螺旋状に溝が刻まれた一本の角を生やしていた。

男の登場と同時におどろおどろしいBGMが流れ出し、スモークマシンによって発生した霧の中でその馬怪人が眩いライトアップを遂げる。

そして司会者は、高らかにその()を告げたのだった。

 

『いよいよ真打ち登場です!穢れた大人を憎み、純真なる幼子を慈しむと()は常々言い募る!故に今回のゲスト(怪人)に我々は彼を選んだ‼︎無垢な子供達の為ならばと快諾したその麻帆良一とも呼ばれる変態…いいやもう変態で‼︎その名はぁぁぁぁ‼︎…只野 富永地(ただの ふえいち)こと、怪人ロリコーンダァァァァァッ‼︎‼︎』

「オイ司会者‼︎私をその理解と愛情の足りない呼び名で表すな!私は単に年増の中学生以上(ババア)が到底持ち得ない、幼い少女のなんとも言えないあのプニプニとした肌の質感をこの上無く愛しているだけの健全な一市民だ‼︎」

 

「「「「「ギャアァァァァァァァ⁉︎⁉︎」」」」」

 

なんかもう取り繕うのを諦めた司会者の若干投げやりな紹介に対して、怒りを滲ませながらも尚耳に心地良く響く見事なバリトンボイスで色々アレな言葉を返した一角馬(ユニコーン)怪人ーー只野の存在に、まほレンジャーことバカレンジャーの面々は一斉に焦りと恐怖の悲鳴を上げた。

 

「バ、バッカヤロースタッフ、何でこいつをよりにもよってこんな場所(子供向けヒーローショー)に招き入れてんだ阿呆か⁉︎」

「直ぐに女子小生以下の女の子をここから逃がせ、襲われんぞ‼︎」

「ここは僕達が食い止めるから早く‼︎くっそ、本当になんでこの下手をすれば中村以上の変態がここに……⁉︎」

「考えるのは後だ、何がなんでもこの屑を殲滅するぞ、忌々しいがこいつは強い‼︎」

「…ようやく俺は躊躇わずに断てる(・・・)、そんな都合のいい存在を目にすることが叶ったみたいだな……」

 

辻達は一人残らず只野をボロクソに言い捨てると一斉に構えを取り、戦闘員達には最早目もくれずにジリジリと只野との距離を詰め始める。その身体からは、下手をすればエヴァンジェリンや京都の一件以上に激しく立ち昇る戦意が見て取れた。

 

「…ゲッ⁉︎あの怪人の中身あの超絶変態教師⁉︎⁉︎」

「ゆ、ゆえ〜今直ぐ逃げて‼︎私は兎も角ゆえが危ないよ〜⁉︎」

「そうアル‼︎万が一ゆえ吉達狙いで来たんだとしたらヤバイアル‼︎」

「…くっ⁉︎不本意ですが一旦逃げる他無いようですね‼︎」

「拙者は風香達がショーを見に来ていないか確認に行ってくるでござる‼︎」

 

等と3ーA一行の間でも散々にこき下ろされる只野であったが、この男にはその様に扱われるだけの立派な前科があった。

只野 富永地、三十一歳。見た目は切れ長の目が映える細面の二枚目であり、撫で付けたオールバックから額に一房垂れた髪がなんとも言えない色気を醸し出す美丈夫である。

が、黙っていればイケメン人気教師と成れたであろうこの男は、純度百%混じりっ気無しの少児性愛者(ペドフィリア)であった。麻帆良に赴任して来た経緯からして魔法世界の獣人系亜人種の少女(ヘラス帝国の高官の一人娘だったらしい)に対して『お医者さんごっこ』をやらかして追放されたという猛者であり、当然の如く学園での目線は冷たかった。

しかし、教職に就いてからの只野はその前科と前評判から伝わる性犯罪者というレッテルとは裏腹に、実に真面目に授業や生徒指導へと取り組み、周囲に対する人当りも良く、幼稚園児や小学生女子に対して問題行動を起こすことも皆無であった。

これはキチンと反省が済んで改心出来たのでは?と周囲も徐々に警戒を緩め、只野が真面目なイケメン教師として評判を得始めてから三年、新任教師として瀬流彦が麻帆良に赴任して来た年に、只野はやらかした(・・・・・)

その事件、生物災害(バイオハザード)死の眼鏡(デスメガネ)といった広域指導員の猛者十数名及びほぼ総員の魔法教師、生徒により、本当に麻帆良のあらゆる住人にとって幸いな事に未遂で終わったその計画、『麻帆良全未成熟肢体補完計画』は、何故こいつ(只野)が野放しになっているのか?という疑問と共に麻帆良七不思議、麻帆良衝撃事件Best5の一つとして語り継がれている。

 

故に、平たく言えば超の付くロリコンが子供の集まるヒーローショー等に出現したのだからこの大騒ぎはある意味当然と言えた。

 

「フッ、安心するがいい罪深き愚か者の集団、バカレンジャーよ。今日は後ろの麗しき果実達や夕映たん、鳴滝たん達に、至極残念ながら愛を囁きに来た訳では無い」

「殺していいな?」

「まあ待て、全面的に同意だが一応言い分を聞いておこう」

 

一角馬怪人(with只野)の戯けた言動にまほレッドが早くも拳に気を収束させて進み出ようとするが、まほブラックが肩を掴んで押し留め、油断無くブレードを構えながらも一角馬怪人に先を促す。

 

「今日私が此処に出向いたのはそう、貴様らを処刑する為だ!まほレッド、まほグリーンよ‼︎」

「「……はぁ?……」」

 

ビシィッ‼︎と指を突き付けられ、そう宣告されたレッドとグリーンは揃って訳が解らんと疑問符を上げるが、他の三人は暫く考えた後、そっちかー!とでも言わんばかりにピシャリと額に手をやる。

「…え、何?どういう事?」

「変態は変態同士で独自の言語を発達させてっからこのパーフェクツまほレッド様にはあいつが何言ってっか解らねえ!変態予備軍のお前らが解説しやがれ」

「そうだとしたら貴様と只野はパーフェクトコミュニケーションが可能な筈だがな麻帆良一、二を争う変態が」

「まあ色々面倒だからもう答えるが、レッドにグリーン、最近割と仲良くしている女性、若しくは女の子を各々思い浮かべてみろよ」

イエローがレッドに吐き捨てるのを余所にブラックが告げた言葉に、レッドとグリーンが僅かに頭を捻り、

 

「「…ああ……」」

 

と二人揃って納得した様に呟きを洩らす。

一角馬怪人はそんな二人をマスク越しでも解る位に憎々し気な眼差しで睨みやると、憎悪滴る怨声にて言葉を紡ぐ。

 

「ようやく己の罪が自覚出来た様だな変態共が‼︎」

「お前にだけは変態とか言われたくはないよ‼︎」

「黙れ!無垢なる幼児を愛する我等真実の愛を求める者達にとっての数少ない希望‼︎永遠にその愛らしい肢体を保ち続ける究極の身体を持つエヴァたんにもう数年、その美を保ち続けてくれれば晴れて合法的にお突き合い…ゲフン!お付き合いする事が可能となる夕映たん‼︎貴様ら二人がそんなダイヤモンドよりも貴重な奇跡の女体達を誑かし、我が物にしようと最近暗躍しているのをこの私が知らぬとでも思うたかぁ⁉︎私の望む合法的なチョメチョメの機会を潰さんとする者には、この幼愛怪人ロリコーンが成敗してくれるわぁ‼︎‼︎」

ドドーン‼︎と背後に演出の爆発音を響かせながら史上最低のロリコンは高らかに宣言した。

 

「気持ち悪いからもう殺していいよな?」

「まったくゴミをゴミ箱にちゃんと入れとかねえからこんな臭え台詞をわざわざ聞かなきゃならねえ羽目になんだよなぁ?」

「とりあえず貴様はもう要らないから黙っていろ只野教員」

 

余りの気持ち悪さにレッドとグリーンが吐き気を堪えている中、ブラック、ブルー、イエローの三名は手早くゴミ(只野)を排除しようと歩み寄る。

「フン、黙っていろ異常性愛者共が!初老の中華娘やブヨブヨした脂肪をぶら下げているババアと付き合っている年増趣味の貴様らに用は無えんだよ‼︎…しかしブラック‼︎少々薹が立っているとはいえ貴様の女の趣味は悪くない!貴様が望むのならば我が軍団に入り、共にこの罪人共を滅ぼす機会を授けてやろうでは…」

 

「「「「「死ね‼︎」」」」」

 

「な、貴様ら五人がかりとは卑怯な…ギャアァァァァァァッ⁉︎」

 

怒りの魔神と化したまほレンジャーの全力攻撃の元に、怪人ロリコーンは瞬く間に湿った赤黒い肉の塊へと変貌した。

 

 

 

「いや悪かったなお前ら、まさかゲストにあんな変態呼び込む程スタッフ連中が阿呆だとは思わなかったからよお……」

「バイト料を水増ししてふんだくってやったからとりあえずこの場は俺らのオゴリだ、食え」

「はーい、それじゃ遠慮なくー!」

「学祭開始早々にケチが付きましたね…」

「まー私は学祭初日の夕刊発行に向けてさっそくいいネタが入ったからいいけどねぇ?」

「というか私も一発ぶち込んでやりたかったアル!誰が初老アルか⁉︎」

 

只野を血祭りに上げた後、何とかショーを無事に終えて一行はカフェテリアで一息吐いていた。

 

「…なんちゅうか、この街には変態しかおらんのかい?」

「今更だと思うな、小太郎君…」

「失礼な、ちゃんと常識人も存在しているわ……全体の三割いかねえかもしれねえけど」

「まあまあ、イカレポンチが大勢居るから学祭は楽しいんだしいいじゃない」

「色々それで済ませてしまっていいのでしょうか……うっ…」

「ゆ、ゆえ〜まだ動いちゃ駄目だよ、安静にしてて〜…」

「そーだよあんな間近に只野菌の元がいたんだから対象者のアンタは安静にしてなって」

『わ、私お水持ってきましょうか?』

「いや、此処らの連中が今更物体浮遊位で騒ぐとは思わないけど一応止めといてさよちゃん、私行ってくるわ」

「…取り敢えず九割九分殺し位にはしておいたけど、どうせ学祭二日目には復活してるんだろうなぁ…」

「何故変態とはどいつもこいつも不死身なのだ?」

 

「というか車ぶっ壊された件で杜崎先生に襲い掛かって半殺しになってたんじゃなかったのかあの屑は……うん、言っておいてなんだけど止めようか屑の話題は、お茶が不味くなるし」

 

ワイワイと何だかんだで一部が楽しそうに繰り広げる害虫(只野)の話題を打ち切りつつも、辻は先程からある考えを頭の中で巡らせていた。

 

…どうやってこいつら(・・・・)に気付かれない様に桜咲と学祭を廻ろうか……

 

すなわちデートの算段である。何処の店行こうかとか服装どうしようかとか、それ以前の問題に関してではあるにしろ。

麻帆良のパパラッチ(朝倉 和美)は言うまでも無いが、中村達も恋バナ関連に対する喰い付きっぷりはそれこそ現役女子中高生以上である。記事にしない噂を広めないと誓約書まで書かせた朝倉以外に知られてはいない筈だが(実際はとうの昔に手遅れである)、辻がおかしな素振りを見せれば間違いなく尾行してくるし、それを仮に撒いたとしても、実際手を繋いだだけでもホテルでS◯Xしたとか噂が広まりかねない。普段そこまで悪ノリしなかろうと、祭りの熱気で半分脳味噌のトロけた現在(いま)の麻帆良人ならば有り得ると。辻は実に嫌な確信を得ていた。

 

…かといって……

 

と、辻は昼前から学祭巡りを共にする予定である、先程からソワソワとやたら落ち着かなさ気な後輩へと目を向け、こっそりと話し掛ける。

 

「…おーい、桜咲?」

「ひゃっ⁉︎…あ、は、はい辻部長‼︎な、なんでしょうか⁉︎」

 

が、刹那は照れているのかテンパっているのか、小声で掛けられた辻の呼び掛けに、まるで怒鳴り付けられたかの様に過剰反応して大声で返してくる。結果一瞬で集まる周りの視線に、思わず頭を抱えそうになった辻である。

 

…駄目だ、桜咲がこの調子では最初(ハナ)から注目して下さいと言っている様なモンだぞ……!

 

「何なに(はじめ)っちゅわ〜〜ん?二人で仲良くディトの算段くぅわしらぁぁぁん?」

「あぁぁぁら二人してコソコソと…これはとても人前では言えない様な過激なプレイの計画を立てていると見たわ‼︎」

「断じて違う!俺に絡むな黙っとれい貴様ら‼︎」

 

中村やハルナ(ハイエナ共)を追い払いつつ、八方塞がりな現状に溜息を洩らす辻である。

しかし、悩める青少年辻 一に思わぬ方面から助け船が出た。

 

「……、…あーせやせやせっちゃん‼︎ウチ占い部の会場設営で場所が移動になってしもぉてな!ちぃと人手が足りひんでかなんのや〜悪いんやけど手伝ってくれへんか〜?」

「え?あ、はいお嬢様‼︎願っても無い…い、いえ、それは大変ですね、手伝わせて頂きます!皆さん、申し訳ありませんが私達はここで…」

 

木乃香の何だか今更な感が無いでもない取って付けた様な頼み事に、一瞬呆けてから勢い込んで立ち上がる刹那。

「はいはい了ー解」

「また後でね木乃香ー?」

それに対して特に誰が何を言うことも無く、全員がにこやかな笑顔のまま二人を見送る。

「んー悪いな皆〜」

「すみません、失礼します…‼︎」

自然(ナチュラル)に別れの仕草を醸し出す木乃香と違い何だか慌しい刹那であったが、出て行く際のすれ違い様、物言いた気な視線を辻はしっかりと捉え、また後でな、と小さく呟く。刹那は顔を瞬時に赤く染め上げながらもやはり小さくはい、と返してその場を後にした。

 

「…じゃあ私も、そろそろ失礼させて頂きますね?」

木乃香達が出て行ってから間をおかず、千鶴がそう言い出した。

 

「あれ?那波さん何か予定あるの?」

「いや、神楽坂、追及すんな」

「は?なんで豪徳寺先輩が言うわけ?なんでかなぁ〜ん?」

「てめえ朝倉……‼︎」

 

明日菜の問い掛けを豪徳寺が遮り、朝倉が態とらしく怪訝そうな顔で尋ねる。千鶴はうふふと笑うと、その笑みを悪戯っぽいものに変えて、そう言った。

 

「だって少ししたら豪徳寺先輩に学祭を連れて頂くんですもの、お化粧も直さないのじゃあ失礼でしょう?」

「「「「……おぉ〜〜っ………」」」」

 

にこにこと余裕の笑顔のまま言ってのけた千鶴に、思わず一同が感嘆の声を洩らし、豪徳寺はやっちまったとばかりに顔を片手で覆う。

 

「豪徳寺先輩、ではまた後で」

「…………おおよ………」

 

力無くも何とか応える豪徳寺に満足そうな顔でひとつ頷くと、千鶴はご機嫌な様子でカフェテリアを後にした。

残された人員は暫し無言でグッタリと項垂れる豪徳寺を見ていたが、

「…んだよ、文句あんのか?」

「「「「いえいえ」」」」

と追い詰められた獣を思わせる目付きの豪徳寺に、とばっちりは御免だと張り付いた様な笑みで首を振る。

 

「うっしゃ男性陣移動ー、金は置いてくからレディ達はまた後でなー」

中村がそんな言葉と共に他のバカレンジャー及びネギコタを促して立ち上がる。

「……何を企んでいるのですか?中村先輩?」

そんな中村にグッタリしていた夕映がムックリと半身を起こし、目元の濡れタオルを取りながら尋ねる。

「ヨイヨイ夕映っち、無理すんなもう暫く寝てろってー、なんも企んで無えよ、ほら誰とは言わねえがこっからデートよD・E・T・E!」

「正しくはDATEだ阿呆」

「黙ってろタラコどうでもいいわ‼︎ンなもんで男子で作戦会議だよ作戦会議!なもんだから追いてくんなよ女性陣‼︎」

 

「はいはい了解」

「にひひひ結果報告楽しみにしてるよん豪徳寺せ・ん・ぱいっ‼︎」

「中村殿の発案は自動的に却下でお願いするでござる先輩方、碌なことにならんでござるからな」

 

「五月蝿え腐れた同人作家が腐界に埋もれてろ‼︎」

「どうどう豪徳寺、任せておいて長瀬ちゃん」

「屑は調子に乗らせん、安心しろ」

「信用無えなぁくわぇでちゅわぁん‼︎この俺様のふがっ⁉︎」

「黙ってろ。…じゃあ、また」

「おいなんで俺まで…」

「あ、あの大豪院さん、僕色々予定が…」

「「いいから来い」」

 

やや慌しく出て行った男性陣一行の後ろ姿を見やりつつ、明日菜がポツリと呟く。

「……、大丈夫かしらねーあの人達…」

「んー千鶴と豪徳寺の方はどうなるかわからんないアルが、辻と刹那の方は失敗する方が難しいから大丈夫だと思うアル」

「 な、那波さん凄いですよね……私も、あれ位勇気が、あればなって…」

「…のどかは充分勇気があるですよ。 まあ他人事で無いから焦る気持ちは解るですが…」

「まああの人はねえー…っていうか他人事じゃないのはアンタもでしょ明日菜」

「ゔっ⁉︎…い、いいのよ私はまだ時間あるんだから……‼︎」

「うん、当日に死にそうな顔でワタワタしてんのが目に浮かぶわねー」

『なんだか青春、って感じですよね‼︎私今何だかすっごく嬉しいです、こんな風な、恋バナっていうんですよね!ずっとやってみたかったんです‼︎』

「…さよちゃんの経緯知ってる身としては文句付け辛いんだけどさ……こっちは楽しんでる余裕なんて欠片もありゃしないのよーー‼︎」

「暴れなさんなって、成るように成んでしょー?」

「全力で他人事な感じで言うなぁー⁉︎」

 

 

 

「…何なんだ那波の奴はそんなに俺がテンパってんのが面白えか畜生ーっ‼︎」

「暴れんなや豪徳寺。俺の見たとこあの娘も案外余裕は無さ気なんだがなー……」

異形溢れる街並みを歩きつつ憤懣やるかないといった様子で怒れる豪徳寺の横で、此方は気楽に宥めに入る中村。

「まあ那波ちゃん遊んでる感じの娘じゃ無いものねえ。結構無理して気張ってるかもしれないんだからあんまりキツい態度で接しちゃ駄目だよ豪徳寺?」

「貴様の女の扱いが熟達しているとも思えん。デリカシーの無い言動にだけ気を付けて後は慌てず騒がず、オマケにキレずに思うままに接してやれ。ガチガチに畏まった貴様が見たい訳でもあるまい、那波後輩も」

「……五月蝿えな、解ってるんだよそんな事は」

山下と大豪院の助言にふて腐れた様に唸りながらも、豪徳寺は素直で無い了承の意を返す。その様子を何処か眩し気に見やりながら、辻は静かに言葉を述べる。

「…言っておくが、俺の方には間違っても貴様ら余計な茶々を入れに来るなよ?尾行なんざ持っての他だぞ」

「え〜(はじめ)ちゃん何よ何よ〜?俺の方にはって何か大事な要件でもあるのかしら〜?」

「白々しいわ」

辻はピシャリと中村のグネグネした言語を遮り、告げる。

 

「今日桜咲と俺が学祭廻りするの知ってるだろ、お前ら」

「「「「………………」」」」

 

ネギと小太郎を含めて、その場の全員共通の感想は、まさか知られていないとでも思っていたのかこの鈍チンは。であったが、辻は構わず言葉を続ける。

「いいか、俺と桜咲の間に何があろうとお前らには関係無いんだからな。普段の悪ふざけはまだしも今日まで邪魔をしやがったら承知せんぞ」

「…色々言いたいことはあっけど、まあいいや、俺達(・・)は付いて行きやしねえ、約束すんよ。…ただな、(はじめ)ちゃん、一つ答えやがれ」

中村は頭をガシガシと掻きながらも辻の言葉に了解を返し、ただその先に言葉を続ける。

 

「…女の子はさぁ。どうでもいいと思ってる奴をデート(・・・)に誘ったりなんざしねえからな?」

 

そこら辺、解ってんのか?と中村は最前までのヘラヘラした顔を引っ込め、告げる。辻は何時に無く真剣な中村の目から視線を逸らさず、言葉を聞き終えると小さく、されどはっきりと返した。

 

「……理解(わか)ってるつもりだ、俺は」

「…………そか」

 

中村は頷くと、ヘニャリと表情を崩して前に向き直り、歩みを再開する。

「うっし、なら俺らが心配すっことは本気になにも無えな。そこの軍艦頭はどうしようも無え童貞野郎だがそこら辺(・・・・)は弁えてっからいいとして…」

「…本気に今日辺り決着つけてやろうか脳無し野郎?」

「極めて遺憾な事に全体的には真面目に話しているから、抑えろ豪徳寺」

息を吸うように他人をdisる中村に豪徳寺が右拳を光らせつつドスの効いた声で唸るが、大豪院が心の底から不本意そうな顔をしながらも押し留める。当然中村はそんなやり取りを気にせず言葉を紡ぐ。

「後はネギ、てめえだオラ」

「え゛っ、僕ですか?」

黙って小太郎と後方を付いてきたネギが驚いた様に声を上げる。

「ったりめえだコラ、お前も午後から本屋ちゃんとデートだろうがよ」

「デ、デートじゃ無いですよ…⁉︎」

ネギが言葉を言い終えぬその内に、ゴドギャン‼︎と中村の踵落としがネギの鼻先を掠めて地面に小規模なクレーターを作る。

 

「んん〜〜?何か戯けた戯言が聞こえた気がしやがりましたけどネギちゅわん、何か言ったかしらぁ〜ん?」

「……いえ、そうですね、僕、午後からのどかさんとデートでした……」

 

目が全く笑っていない中村の濁り(ニッゴリ)した笑みを向けられて、ネギは脂汗が背中を流れるのを感じつつ最前の言葉を撤回する。

「それでいんだよネギ。正直お前の歳じゃまだまだピンとこなくて当然かもしんねえがな、本屋ちゃんはお前に告白(・・)してんだ。…想いに応えろなんぞと強要は間違ってもしねえが、その辺りを意識して、ちゃんと接してやれ。いいな?」

「……はい‼︎」

「うし、いい返事だ」

中村が普通の笑顔に戻り、ワシャワシャとネギの頭を掻き回す。

 

「………………」

「何か言いたげだねぇ、小太郎?」

その様子を心無しかムスッとした表情で眺める小太郎に、山下が尋ねる。小太郎は山下の顔を若干鬱陶し気に睨むが、邪気の無いほんわかした笑みを返されてガックリと肩を落とし、唸る様に内心を語り出す。

「…まぁ、アレや。兄ちゃんらやネギのあれそれ(・・・・)を下らんとか、んな事言いたい訳や無いんや」

「あれ?そうなんだ、小太郎位の年頃ならそんな風に考えてても不思議は無いからさぁ、てっきり女なんぞに現抜かしとらんで今日の大会予選の事考ええやー‼︎…とか思ってるのかと」

何やら矢鱈と上手い小太郎の声真似を交えつつ返してくる山下を半眼で見やりながらも、小太郎は言葉を紡ぐ。

「…前に姉ちゃんに拳骨喰らわされとるからな。『アンタが家族大事にしたいんやったら、家族になる()の段階大事にしとる連中軽く見るんを止めえ。男女の付き合い言うんは、アンタが考えとるより万倍大変なモンなんやから』…言うて」

「…ハハッ、そっかぁ良いお姉さんだねえ」

懐かしさの中に一抹の寂寥感を滲ませつつも、今は別れ別れな義姉との思い出を語った小太郎に対して、山下は余計なものは考えずに、ただ小太郎の家族としての千草を褒める。

「ふん、自分が実践出来とらん行き遅れやけどな……まあ兎に角、正直面白う無いけど文句付ける気は無いんや。ただなぁ……」

「ただ、何だ?」

唸る小太郎の逆隣を並走していた大豪院が先を促す。

 

「いやな?あの団子頭(・・・)の姉ちゃんも意味深な事言うとったやろ。無粋なんは承知の上で、なんや呑気にラブコメしててええんかと思うんや」

「「……………………」」

 

小太郎の言葉に、俄かに表情を曇らせて山下と大豪院は口を噤む。

 

「い、いやな兄ちゃんら。せやから俺も女関連のそれに文句言いたい訳や無いねん、ただ…」

「いや、小太郎。お前の意見にも一理あるのだ。のっぴきならない事態をあいつは起こしかねんから、な……」

 

空気を一変させた二人の様子にやや焦りつつ弁明する小太郎を宥め、大豪院が心持ち厳しい表情のままそう返す。

「…まあ、超ちゃん如何にも訳有り、って感じだったからねえ。…出来ればほぼ初仕事が可愛い後輩の捕縛、何て事にならなきゃいいけど……」

山下も顰めた表情のまま何とは無しに空を見上げる。対照的に地面へ視線を落とす大豪院だが、二人が思い返すのは、数日前の情景である。

 

 

 

 

 

 

「…フム、私が何を企んでいるか…と。そう聞きたいネ、大豪院?」

「そうだ。此処まで迷惑を掛けた以上、黙りは通用せんと思え」

 

ムムム、と何処か態とらしく、戯けた様子で唸る超 鈴音(チャオ リンシェン)に対して、怒った様に眉間に皺を寄せ、真剣そのものに尋ねるのは大豪院である。

 

事はネギが魔法関係者に正式に紹介され、学祭中の仕事に於ける説明を受けての帰り道。黒尽くめに追われるローブ姿の人物を、美少女センサー反応、乙女の危機じゃあー‼︎との奇声と共に突貫した中村に引き摺られる様に助けに入れば黒尽くめの集団はピタリと静止。暫しして現れたのは高音を始めとする三人組とガンドルフィーニという名の黒人教師。ローブの中身を確認すればあらビックリ、3ーAの一員にして大豪院、古の良き拳の道に於ける竞争对手(ジンジェンドゥイショウ)、超 鈴音であったのだった。

超は今回の会合のみならず、以前から手を変え品を変え魔法関係者の秘匿する案件に対してピーピング《覗き行為》をやらかしていた。魔法使いにとって魔法の秘匿は何よりも重んじねばならないものであり、再三の通告を無視して再犯に及んだ超に最早情状酌量の余地は無し。規則(ルール)に従い超の魔法に関する記憶を消す、というのがガンドルフィーニ達魔法関係者の言い分だった。

それに待ったをかけ、超を庇い立てしたのがネギと大豪院である。言い合いの末、最終的に超が身柄を拘束される事は無くなったが、規律に関して厳格な高音等はかなり立腹な様子で去って行った。

未だ魔法関係者の大部分と関係が良好とは言えない中でのこの一件は、小さく無いしこりを両者の間に残してしまったと言える状況である。

故にこそ大豪院は、超の真意を確かめるべく動いたのだった。

 

「そうネ、確かに今の一件は一つ借りが出来たと言てイイ。しかしスマナイね大豪院、軽々には話せぬ問題ヨ、私のこれは」

「…それでは筋が通らぬと解らぬお前ではあるまい。あまり見損う様な真似をするなよ、超」

「…フム……」

 

「待て待てンな喧嘩腰で尋ねちゃ聞き出せるモンも聞き出せ無えよポチ」

 

尚もはぐらかす超の言葉に一段階目を細め、剣呑な口調で告げる大豪院に、困った様に小さく唸る超。膠着状態になり掛けた両者の間に中村が割り込み、大豪院を宥めに掛かった。

「ならば如何様に取り計らうというのだ脳無し?」

「何時に無く口が悪いなタラコ。簡単だ、お前が超ちゃんを庇った時に、何でそうしようと思ったかを正直に言ってやりゃあいい」

「…何だと?」

あっけらかんと言う中村に眉根を寄せる大豪院だったが、

「情に訴えろ、ってんじゃ無えよ。単純にお前は超ちゃんとこん中でいっちゃん付き合い長えだろが?…お前の友達(ダチ)は好意を無にする様な奴なのかよ?」

との言葉に一瞬目を見開き、暫しして頷く。

 

「…最近やたら真面じゃないか、馬鹿村めが……」

照れ隠しの様にそう言い捨てると、大豪院は超に向き直る。

 

「…超」

「何かな?」

「俺はお前を先程庇った。しかしそれは、お前が友だからと無条件でそうしたのでは無い。…俺は関係性そのものを免罪符であり理由として語る、友人を助けるのに理由は要らない、などという思考停止の言葉を正直好いていないからだ」

「フフフ、大豪院のそういう所は嫌いではナイヨ、私は」

ある意味友達甲斐の無い台詞をはっきりと告げる大豪院を愉快そうに笑って、超は先を促す。

「例え竹馬の友であろうと、いや、友だからこそ諌めるべき所は諌めてこその友胞だ。…お前は他人よりもずっと頭が良いからか、誰に何も言わずにしばしばとんでもない事を仕出かす。天才の(さが)と言えばそれまでだが、ならばこそお前を此処で野放しにすべきでは無い、と思う俺がいる」

「…ならば何故、私を庇い立てしてくれたのカナ?」

淡々と告げる大豪院に超は動じた様子は無く、寧ろ楽しんでいるかの様に尋ね返す。その問いに対して、大豪院は真っ直ぐに己の思うがままを告げた。

 

「お前が本当に他人を害する前提で何かをやらかす女では無いと俺が信じているからだ」

「………おお…………」

「茶化さずに聞け、この場で巫山戯た返答は要らん」

 

ストレートに告げられた信頼の言葉に超は目を丸くして驚くが、大豪院は照れるでも無く釘を刺すと言葉を続ける。

「お前は意地こそ悪いが性根が腐っている訳では無く、狂化学者(マッドサイエンティスト)特有の倫理観欠如も見られない。ならば今回の一件にしても已むを得ない訳があり、必要に迫られて行っているものだと信じる迄だ。友を助けるのに俺は理由が要る。お前は助けるに足る理由を持つから助けた、それだけだ」

大豪院は一旦言葉を切ると超の目を新ためて見据え、真っ直ぐに言葉を放つ。

 

「超、一体何をしようとしている?魔法使いについて知っているならば俺達の立場も知っているだろう。事の次第によっては力になってやる。曲がりなりにもお前の言う通り貸しを作ったのだ。…俺達は少なからず関わった、ならばお前も説明責任を果たせ」

 

超はそれまでの飄々とした笑みを消し、僅かに細めた目で静かに大豪院とその後ろのネギ達を見つめる。

「…フム、後ろの皆さんも同じ意見カナ?」

超の確認に、言うまでも無いと辻達は頷く。刹那や小太郎は超に対して、バカレンジャー程に面識は無い。しかし、この人が良い男達が信じている以上は、自分達も信用する。そのつもりであった。

 

「アイ、解たよ。条件云々を前に出した交渉事ならば幾らでも煙に巻くつもりだたが、私を朋友(ポンヨウ)として信を置く、などと言われてしまてはネ。私も誠意に応えぬ訳にはいかないヨ」

ポン、と手を打ち、応じる姿勢を見せた超に、大豪院も表情を僅かに緩ませる。

「…そうか」

「ただ、ネ。誠、申し訳無いがポチ、少しの間でいい。事情(わけ)を話すのは待ってくれないカ?」

「何?」

再び渋面に戻る大豪院に、超はまあ落ち着くネ、と制して話し出す。

「私が関わているものは私一人で行っている訳では無いヨ、話して良い事、悪い事も纏めねばならない。それに大豪院達は、ネギ先生達と学祭の大会に向けて修業をしていると聞くネ。今、話しても話さなくとも、どちらにしろ私の案件にまで取り掛かる余裕は無いのではないカナ?」

「……むう…………」

 

ある意味最もな事を指摘され唸る大豪院だったが、暫ししてから再び超に呼び掛ける。

 

「後に真実を語ると誓えるか、超?」

「無論だとも。私も拳士の端くれだ、拳に賭けて誓おうじゃナイカ」

「…わかった」

 

俺に免じて引いてくれ、と大豪院の言葉に、一同は超への追求を止めたのであった。

 

 

 

 

 

 

「…まあ大豪院、同門っていうのかな?の超ちゃんを信頼する気持ちは理解(わか)るけれど……」

「皆まで言うな。問題を起こしている時期からして、超はこの学祭期間中に何かを仕出かそうとしているのは間違いないだろう。こと今日に至るまでこちらに訪れてはいない以上、問い詰めに行くのが筋だとは俺も解っている、が……」

 

「超ちゃんは思わせぶりな言動こそするが嘘をつくような奴ではない。もう少しだけ様子を見させてくれ、ってなトコだろポッチン?」

 

何時の間にかネギへの忠告を終えて近付いてきていた中村が、大豪院の台詞を遮ってそう言った。

 

「…………」

「何だかんだでもう長い付き合いだ、これぐれぇは解るっちゅうのと。野郎のことなんざ解っても全然嬉しか無えがな〜」

 

何も言わずに半眼で睨み付けてくる大豪院をケタケタと笑ってそう告げる中村。

 

「ま、いいんじゃねえか?あの中華娘part2が何企んでっかは知らねえが、学祭中にやらかすなら何やらかそうが祭りの華だぜ。それこそ麻帆良存亡の危機なんざ毎年の様にあるからな」

「そんな所が自分の生活している場所だなんて認めたくないが、事実なんだよなあ……」

 

気楽そうに中村に賛同する豪徳寺と今更ながらにトンデモ都市な麻帆良の実態に遠い目をする辻である。

更にはネギが進み出て、大豪院に対して言葉を放った。

「恥ずかしい話ですけど、超さんがどういう人なのかは大豪院さんの方がよく理解していると思います。大豪院さんが大丈夫だと思うんだったら、超さんを信じて待つのがいいんだと思います。短い期間ですけど、教師として僕も超さんと接してきました。悪い人じゃないって、僕も思います」

 

そう言われて大豪院は、少しきまり悪げに頭を掻くと、ネギの頭にポン、と手を乗せ、ややあって頷いた。

 

 

「…逢引には準備も重要だろう。もう行け、辻に豪徳寺」

 

「解ってんよ、冷やかしに来るんじゃねえぞてめえら」

「右に同じく。一刀両断にされたきゃ話は別だけどな」

 

それから暫く歩いて、大豪院が午の刻に入ろうかという大時計を見咎めて二人を促す。辻と豪徳寺は出歯亀行為に対してこれでもかと言う程に釘を刺してから、足早にその場を後にする。

 

「…で?本当に中村は尾行したりしないのミスター出歯亀の癖に」

日頃の行いを鑑みるに到底大人しくしてはいないだろうと、半ば確信に近い思いを抱いていただけに山下は疑わし気な口ぶりで中村に尋ね掛ける。

 

「……フッ!」

中村は無意味に前髪をかき上げて格好付けると、ドジャァァァン‼︎、と効果音の聞こえてきそうな程見事な○ョ○ョ立ち(ヴァレンタイン大統領ver)を決め、高らかに宣言する。

「ブァカめが‼︎こんな(はじめ)ちゃんと薫っちのデート風景なんつうクソ面白え事態を黙って見送るなんざ例えトムが許そうともこの俺様が許さねえってもんよヌァハハハハハハハハハハ‼︎‼︎」

 

「誰だよトムって」

「ゴダイヴァ夫人を覗き見たピーピング・トムのトムではないか?」

 

端から見れば狂人の様なテンションの上がり様を見せている中村を冷めた目で見やりつつどうでもいい会話を交わす山下と大豪院。

「で?実際どうするつもりだ覗き魔。彼奴らはやると言ったら殺るのはそのミジンコ並の知能でも解っていように?」

「フォッフォッフォッ、なーに俺ぁ約束はきっちり守るぜ、あいつらの後は追いていかねえ誓ってな」

半目の大豪院の疑問に不気味に笑いながら中村は自慢気に策を披露する。

「何故ならば(はじめ)ちゃんには俺が何か企むまでも無く剣道部の副部長,Sを主体とする盗撮…もとい、サポート集団が万全の体制で追いて廻るからなあ‼︎軍艦頭にゃ俺がショーの時に制裁加えてデート中は決して手を出さねえ様に調教しといた◯っとマスク共を同じく向かわせた、後はリアルタイムで映像公開のオ・タ・ノ・シ・ミって訳よフォォォォォォォォォッ‼︎」

 

「本当に今更だが最悪だなこいつは」

「殺して埋めておいた方が世の為人の為なんだろうけどねえ……」

「なんだなんだよおめぇ様方、いい子ちゃんぶっててもぶっちゃけ興味あんだろぉ?俺様に対してそんな態度取ってるとトンデモ衝撃リアルタイム映像見してやんないんだゾ 」

「「要らんわ(ないよ)」」

 

クネクネとウザったい中村に声を揃えて吐き捨てると、二人は別々の方向へ足を向ける。

 

「およ?何処行くのよおめえら?」

ムンクの叫びを270度斜め下に捻った様なポーズを取りつつ尋ねる中村。

「中武研で昼前から演武を行うからな、下準備だ。どうせ何時もの様に連中を一通りブチのめさねば俺の言うことなど聞かんだろうしな」

「僕は夕方の予選に向けて最後の調整。…正直今回は、他に構ってる余裕は無いからね」

 

「…ほうかいほうかい」

中村はやや真面目な顔に戻って頷き(捩れたままではあるが)、親指を立てて激励を送る。

「まあカンフー美少女嫁にしてんだからそのしっとマスク共の襲撃は甘んじて受け止めやがれリア充タラコが。山ちゃんはあれだ、死ぬなや本気(マジ)に」

 

「死ね」

「うん、じゃあまた」

何とも温度差のある返答を各々返しつつ、二人は雑踏に紛れていった。

一人残った中村は、う〜んと奇妙な体勢からバキボキと身体中の骨を鳴らして二足歩行に戻ると、ブラブラと無意味に左右へ揺れつつ歩き出す。

 

「さ〜てデート開始(イッツ ショウタイム)迄トキテーにブラついてますかねじゃあ。なんだかんだで全員予定詰まってっから午前のパトロール俺だけになってるしよぉ…さーよちゃんも今日はクラスの女子とはしゃぎてえみたいだし……あ〜あなんか俺だけ侘しいねえ〜〜……」

スライム娘(・・・・・)共迎えに行きがてらキャシーの土産見繕うか…待てよ、学祭中ならあいつ連れ出して空飛ばせてやってもいんじゃねーか?、などと微妙に不穏な呟きを洩らしつつも自称非リア充は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「おおおお嬢様、私何か変では無いでしょうか…………⁉︎」

『大丈夫や大丈夫やせっちゃん。テンパり過ぎてるテンション以外は超可愛く決まってるで〜』

 

時刻は待ち合わせ時間の十八分前、刹那はガチガチに緊張しながら、待ち合わせ場所の麻帆良大庭園噴水前にて頼みの綱である木乃香に携帯電話にて縋っていた。

刹那の服装は格子の細かなグレンチェックスカートで知的且つ上品な印象を出しつつも丈はちょっぴり短めに。トップスはショート丈のシャツを選ぶ事でメリハリを持たせ、ボディラインを強調することでスレンダーな刹那の魅力をよく現していた。何時ものサイドテールを下ろし、ワンポイントに可愛らしい花飾りの髪留めを付けたその姿は木乃香の言う通り、年頃の女の子らしく愛らしい魅力に溢れているが、生まれてこの方デートなどした事の無い刹那は何もかもが不安で仕方が無いらしい。

『せっちゃん〜?そんなにガッチガチやと辻先輩まで気不味くなるえ〜?あの人ヘタレな所があるんやから、せっちゃんも出来るだけ自然体で居らんと竦み上がってまうで〜?』

「そ、それは重々承知しているのですが……‼︎」

何気に辻をdisりつつの木乃香のアドバイスだが、残念ながら言われて直るものならば、デートのデの字始まってもいないのにここまでテンパりはしないのである。

 

……未だに実感が湧かない…これから辻部長と、……で、デートをするだなんて…………

…自覚してから、まるで私が私じゃ無い……‼︎……本当に、どうすれば……

 

どうにも制御出来ない想いに悩む刹那だったが、そんな様子を遠くから眺めていた木乃香は、何やら当事者で無い自らにまで伝染して来た緊張を一震いして打ち消すと、柔らかい声色で刹那に告げる。

『せっちゃん、辻先輩とデートすることになって嬉しいやんなぁ?』

「お、お嬢様、正直今真面に喜べる様な余裕は…⁉︎」

『ええから考えてみてぇな、せっちゃん。辻先輩と学祭廻れるんは、嬉しいと思うんか?』

ある意味悠長な木乃香の質問に遠回しに噛み付く刹那だが、再度尋ねられたその問いを黙って胸の内で反芻する。

 

「……はい、嬉しいです」

『ん、そか……』

木乃香は笑い、徐に刹那へ言葉を放つ。

『せやったらせっちゃん。その気持ちを表に現す様にして、辻先輩と楽しめるせっちゃんに自分を持ってくんや』

「…楽、しむ………」

『せや。せっちゃん、当たり前やけどデートは嫌なもんや無い、好きな人と楽しむもんや。辻先輩もせっちゃんと同じ位緊張しとるやろけど、せっちゃんと楽しくデートしたいから来るんや。…あないに気張って掴んだデートやで。せっちゃん、目一杯楽しんでえな』

木乃香の言葉に、刹那は僅かだが緊張が解けるのを感じた。

 

……そうだ、私は………

…好きな人と、デートに来てるんだ………

 

楽しまないで(・・・・・・)どうするというのだ。それ程迄に焦っていたことを自覚して、ふとそんな自分をおかしく思う。

クスリと密かに笑った刹那を見たか聞いたか、木乃香は漸く人心地をつく。

 

そして。

 

『…あ!来たでせっちゃん‼︎流石辻先輩やな、十五分前ぴったりやー』

「え、い、いらっしゃったのですか⁉︎ま、まだ私心の準備が……⁉︎」

『せっちゃん、その準備は未来永劫決まらへんから後は当たって砕けろや。じゃあ切るで〜、あんじょうきばりや、せっちゃん』

「お、お嬢様、待っ⁉︎」

 

ブツリ、と無情にも電話は切れ、再び最大限に緊張した刹那の視界に、刹那の姿に気付いて片手を上げる辻の姿が映る。

 

 

「……済まない、待ったか桜咲?」

 

「い、いえ‼︎私も、今来た所です‼︎」

 

 

 

 

 

 

「あの〜すいませ〜ん、これに載っているこの建物は〜此方の道で合ってはりますか〜?」

「ん?……ああ、そうだよ。真っ直ぐ行って、自由の女神像のレプリカがあるから、それを目印に左へ曲がればいい」

「そうですか〜どうもご親切に、ありがとうございます〜」

「いやいや、じゃあね」

ぺこりと頭を下げて去っていく少女の後ろ姿を見やりながら、道を訊かれた麻帆良の一般教師は、なんとは無しに思った事を口に出す。

 

「…やっぱり年々派手になってきてるよなあ、麻帆良の学園祭は。外部から来る人までコスプレして来るんだから……」

 

でも、ゴスロリ衣装(・・・・・・)日本刀(・・・)だなんて、ちょっと何を狙っての扮装か解らないなあ、と教師は残りの感想を己の内で呟き、巡回に戻る。

 

 

 

「うふふ〜(はじめ)さん…漸く逢えますなあ〜〜……」




閲覧ありがとうございます、星の海です。プロローグに等しい部分だというのに偉く長い文章になりました。あまり進んではいませんが、次回からは各々の学祭初日を描写していきます。とりあえず次話は辻と刹那のデートですね。ラストの少女は一体何者なのでしょうか棒 )
色々と波瀾万丈が確定していそうな二人のデート成功をお祈りください笑)それではまた次話にて。次もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。