書くことが全くないので、今回もお題のみです。
神社、段ボール、コロッケ
色褪せたコンクリートの上に腰を下ろすと、ひんやりとした感触が尻を上ってきて思わず背筋が震えてしまう。
綾も同じように感じたのか、猫のように背中を伸ばすと、敷くものを探して辺りを見渡した。
「ううー、冷たい」
「ちょっと待ってて、何か探してみる」
立ち上がって周囲を確認してみるが、ちょうどいいものは見当たらない。仕方がないので神社の敷地から離れて、辺りを探してみるとちょうど外構屋がカーポートを組み立てている姿を発見する。
浅黒い肌に筋骨隆々な体格、頭に白いタオルを巻いた二人組は、太い梁を軽々と持ち上げると、脚立を上り、柱と接続してナットで固定する。ちょうどそれまで梁を敷いていた段ボールが風に揺れてふわふわと舞い上がりそうになっている。
「あのっ、この段ボールもらっていいですか?」
「いいけど、ちゃんと処分してよ。これ、会社名とか入ってるから」
一言お礼を言って段ボールをいただく、大きな梁を梱包していただけあって、四人くらいは平気で座れそうだ。
「おお! おっきい」
「そこで工事してた職人さんから貰ったんだ。これだったら冷えないと思う」
コンクリートの上に二畳はあろうかという段ボールを敷き、再び座る。今度は冷たい思いをせずに、ゆっくりと会話が出来そうだ。
「あたしたちが初めて会った時のことって、覚えてる?」
「そりゃあ、忘れられるわけないよ。放課後にコロッケでも食べて帰ろうかと思って惣菜やに寄ったら残りが一つしかなくってさ。しかも同じタイミングで綾が買おうとしていたんだよね」
「そうそう。あたしが買おうとしたら、健司が横から入ってきてさ。これは僕が買うべきものなんだってね」
「綾だって、おなかがすいているから君は諦めてって、言ってたじゃん」
二人で向き合って笑いあう。
よく考えればなんてベタな出会い方だったんだろうか。しかもその後口論になった僕たちを店員のおばちゃんが諌められて、ふたりで半額ずつだして、半分こしたのだ。
それからもう一年くらいは経つ。帰りにふたりで適当にぶらぶらしたり、クラスのみんなと一緒にテスト勉強をして居残ったりした。
別に大したことはしていないはずなのに、思い返すとどれも大切な思い出だった。
過ごしてきた日々を思い出しながら、くるくると枯れ落ちる葉っぱを眺めていると、僕の頬が綾のか細い指で包まれる。
首を綾の方向へ向けられるとともに、唇が柔らかいものが触れる。
綾の唇から洩れる吐息を感じる。目をぎゅっと閉じた綾は顔を紅潮させていた。
それからしばらく、そのままの体勢でいたが、やがて唇が自然と離れる。
「……あのさ」
「う、うん……」
「今度は僕からするよ」
「……えっ」
綾の返事を待たずに、唇を奪う。綾が戸惑ったのを唇越しに感じるが、すぐに力が抜かれた。
そうして僕たちは、ようやく彼女と彼氏の関係になれたのだった。