三題噺   作:フリューゲル

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初めまして、そしてお久しぶりです。フリューゲルです。

現在進行形で別作品を投稿しておりますが、文章の練習を兼ねて投稿することにしました。

早く文章を書くことと、引き出しを増やす意味で、制限時間五十分でいろいろ書きたいと思います。


今回のお題は「公園」「成長物語」「アイスクリーム」です。

それでは、ご覧ください。


公園、成長物語、アイスクリーム

「……ねえ、今度の土曜日どこ行こっか?」

 

 

 

 しんと冷えた秋空の下、悠々と隣を歩くハナがいつものように尋ねてきた。

 

 

 ハナは休みが近くなるといつもこうだ。休みの日は基本的に遊ぶものだと思っているから、いつも私と遊ぶことを提案してくる。

 

 

 

「今度の土曜日は模試だよ……。ねえ、そろそろ進路とかちゃんと決めたほうがいいんじゃない? 私たちもう三年生だよ」

 

 

 

 そう、もう三年生である。そして、もう季節は十月になる。私たちはこうして呑気に帰っているけど、今ごろクラスの子たちは塾に通って、勉強を始めているかもしれない。

 

 

「んー? 早苗と同じとこ行く」

 

 

 

 やっぱりハナは呑気だ。

 

 

 ハナの勉強は別に悪くない。テスト前はいつも私が教えているのもあって、平均くらいはとれている。

 

 

 それでも私が行きたい高校に受かるには、少し足りない。今からしっかりと勉強をすれば、同じ高校に行けるかもしれないのに。

 

 

 

「だったら、もうちょっと勉強しないと駄目じゃん。今のままじゃ、同じ高校に行けないよ」

 

 

 このやりとりも何回も繰り返したやりとりだ。ハナは一向に勉強をしてくれない。

 

 

 ハナはいつもそうだ。その気になればある程度のことはできるのに、いつだって適当にやってしまう。

 

 

 

「うん、考えとくー。……あっ、ファミマ寄ってこうよ。ファミマ」

 

 

 

 週に三回くらいは寄っていて、店員のおばちゃんとほとんど知り合っているファミリーマートを見つけると、ハナは指を差して促してくる。

 

 

 

「……いい、私先に行ってるから、ハナだけ入っていれば」

 

 

 

 思わず声を荒らげてしまうと、そのままハナを見ないまま駆け出す。

 

 

 少し遠回りになる脇の道へと入り、そのまま走り続ける。秋の空気は思っていたより冷たくて、スカートから伸びた足がどんどんと冷えていくのが分かる。

 

 

 もう一度右に曲がった所で足を止めると、息の乱れが止まらなくなる。

 

 

 どこかで休もうかと思って見渡すと、小学校のころにハナとよく遊んだ小さな公園が近くにあったので、そのまま入る。

 

 

 昔からある古くてトゲがありそうなベンチに座ると、ぎぃと不吉な音を立てるので、思わずベンチに拳骨をお見舞いしてしまう。別に私は太くないのだから。

 

 

 なんでハナは、私の言ってることを分かってくれないのだろう。私だってハナと同じ高校に行きたいのだ。でも私だって、行きたい高校があるのだ。制服がかわいくて、男女のバランスもちょうどいい。学力だってそこそこだ。

 

 

 同じ制服を着て、慣れない電車に乗りながら、二人で登校する姿を何度も何度も、想像したのに……。

 

 

 

「……ひゃっ!」

 

 

 

 両頬にいきなり冷たい感触がふれ、変な声を出してしまう。

 

 

 後ろを振り返ると、少し申し訳なさそうな顔をしたハナが両手にパピコを掴んでいた。

 

 

 

「早苗ー、おいてかないでよー」

 

 

 

 そう言ってパピコを持ったまま、後ろから抱きしめられる。

 

 

 そうしていると、何だか小学校の頃を思い出す。喧嘩してしまって仲直りをするとき、大切なぬいぐるみを汚してしまったとき。そんなときはこの公園でいつも相手を抱きしめながら謝って、一緒にアイスクリームを食べた。食べているうちに、自分たちが何に怒っているのか分からなくなって、ついつい笑ってしまうのだ。

 

 

 

 中学校になってからは、いつの間にやらなくなってしまったけど。

 

 

 

「良くわかんないけど、早苗がどっか行っちゃうのは嫌だよー」

 

 

「……私だって、ハナと別々になるのは嫌だよ」

 

 

「早苗が私の学力に合わせられないの?」

 

 

「いや、私行きたいとこあるもん」

 

 

「あはっ、自分勝手だ」

 

 

「うん、私は自分勝手だよ」

 

 

 

 そう言って二人で微笑みあって、パピコを口に含む。

 

 

 これからハナとたくさん勉強しよう。引き摺ってでも勉強させて、できる限り一緒にいるよう努力しよう。

 

 

 ……もし、それでもハナが届かなかったら、そのときはちょっとだけ私の進路を変えることも考えよう。

 

 

 冬が直前にまで迫る中、私はそんなことを思いながら、パピコのおいしさに身を沈めた。

 

 

 

 




ご覧いただきありがとうございます。

書き終わってから最初の疑問が、パピコってアイスだったけ?ということです。

というか成長物語の縛りがキツイです。五十分で登場人物を成長させるのが難しかったので、昔とちょっとだけ成長したよ、みたいな感じで書きました。

とりあえず、第一話終了です。

それでは、また次回。

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