ラインフォルトの見習い使用人   作:まぎょっぺ

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実技テスト【一】

 自由行動日が明け三日目の水曜日、兼ねてより通達してあった実技テストの為にⅦ組の生徒達はグラウンドに集められていた。

 それぞれ武装を携えて並んだメンバーの前に立ったサラは皆の準備が整ったことを確認し口を開く。

 

「それじゃあ予告通り実技テストを始めましょう、前もって言っておくけど――」

 

 注意点としてサラが告げた事は単純に戦闘するだけでは高評価を望めないということだった。

 『状況に応じた適切な行動』を取れるかを見る為のものであるという、少なくともこのテストにおいてはその結果よりも内容が重要であるらしい。

 

「単純な力押しじゃ評価に結びつかないわけね」

 

 アリサが呟いた通りどれだけ早く勝利しようともそれだけでは良い成績は修められないだろう。

 どういった行動がその『適切な行動』に結びつくと言うのかⅦ組の面々が思索する中サラによりまずリィン、エリオット、ガイウスの三人の名が呼ばれた。

 全員まとめてテストに臨むわけではなくいくつかのグループに分け評価されるらしい。

 オリエンテーリングの時のような全員による連携は偶然の賜物であり現段階で望めないことは学院側も理解しているのだろう。

 どういった試験内容となるのか気を引き締める皆の前で、サラが指を鳴らす。

 すると正面の空間が一瞬歪み次の瞬間には何もなかった筈のそこに奇妙な物体が出現し生徒達を驚かせる。

 目の前で滞空するそれは金属の柱に金属鎧の上半分を被せたような独特の形をしており、呼び表すなら機械仕掛けの操り人形――傀儡といった見た目だろうか。

 

「そいつは作り物の動くカカシ、みたいなものよ。実技テストではこいつを相手に戦ってもらうわ。

 そこそこ強めに設定してるけど決して勝てない相手じゃないわ――ARCUSの戦術リンクを駆使すれば尚の事ね」

 

 その言葉でこの実技テストの内容を理解した皆が納得した様子を見せ、リィンらはそれぞれ武器を構え臨戦態勢を取っていた。

 固唾を呑み残る七組メンバーが見守る中、サラがテスト開始の合図を言い放つ。

 

「――それでは、始め!」

 

 

 

 

 

 

 

 先日旧校舎で戦術リンクを意識しながら共に戦った経験が生きたのかリィンら三人はさほど手こずることもなく傀儡、戦術殻と名付けられているらしいものを戦闘不能に追い込んでいた。

 鎧われている肩周りを除けば人よりも小さいぐらいの相手に息を合わせ攻撃を打ち込む見事な連携を見せた三人にはサラも上機嫌で拍手を送っていた。

 続けて呼ばれたアリサ、ラウラ、エマの三人もほぼ全身金属製で硬い上にアーツまで行使する機能が搭載されているらしい戦術殻にリィンらと比べ多少苦戦を強いられていたが大きな怪我もなく勝利を収めている。

 そして――

 

「次、ユーシス、マキアス、ルドルフ、フィー」

 

 最後のグループとなる四名だったがその内の二人は名を呼ばれた瞬間表情に苦いものを浮かべていた。

 言うまでも無くそれは今もって関係性が最悪と言えるユーシス、マキアスの二人でそんな間柄であるだけに彼らが連携した行動など取れるかどうかすら疑わしい。

 

「くっ……サラ教官、この人選には――」

 

「異議は却下、Ⅶ組に参加した以上この程度のことに文句つけてもらうわけにはいかないわよ。大人しく前に出なさい」

 

 マキアスが何を言わんとしているのかはその場の誰もが察していたが口にするよりも早くサラによって拒まれてしまう。

 納得いかないとばかりに歯噛みするマキアスだったが抗議が意味を成さないことは理解したらしく、首を振ると大人しくサラの指示に従った。

 

「せいぜいつまらぬ事にこだわって足を引っ張らないようにしてもらいたいものだな」

 

「っ……ふんっ! ならばそちらこそオリエンテーリングの時のように先走らないようにしてもらいたいものだ」

 

 これから共闘しなければならないというのに早速不穏な空気を漂わせ始めた二人に先にテストを終えた六人の心配が一層深まる。

 同じグループとなった二人はたいして表情に変化は見えないものの、この編成が爆弾を抱えていることを理解してのことかフィーの方は普段から瞳に滲ませている気怠さの色合いが増しているようだった。

 選考したサラですらも険悪な二人を前にため息を漏らしている。

 

「まったく……いくらテストといっても遊びじゃないのよ、油断すればタダじゃ済まないことは理解しておきなさい。

 それじゃあ――始め!」

 

 そうしてようやく新たに用意された戦術殻との戦闘が始まるも率先して前方へ出たユーシスにマキアスが苛立ちを見せる。

 このメンバーの中で騎士剣を持つユーシスが最も前衛に向いていることは彼にも理解できることではあったのだが――

 

 ――まずは牽制するなり、やりようはあるだろうに!

 

 マキアスの獲物は主として散弾を扱うショットガン、その性質上攻撃範囲は広くなってしまいこうして味方に敵と接近されると同士打ちの危険性から迂闊に射撃することは出来なくなる。

 弾を破壊力の高い榴弾として撃ち出す機能も彼の銃には搭載されているがその機能は通常の射撃よりも多くの導力を要し、導力で弾丸を撃ち出す導力銃にとっては多用できるものでもなかった。

 止むを得ずマキアスは射角とタイミングを測るために戦術殻の側面へと駆け出す。

 

「ふっ!」

 

 一方先んじて交戦に入ったユーシスは縦長の体幹を振り子のように回した体当たりを身を反らして躱すと騎士剣による一撃を見舞った。

 踏み込みながら繰り出された刺突は関節らしき部分を狙ったものだったが戦術殻が宙に浮いたまま身を揺らめかせたことで的を外してしまう。

 しかし浮遊している分剣に乗せられた衝撃は余すことなく通り激しい擦過音を鳴らして金属体を打ち飛ばす。

 すぐさま追い打とうとしたユーシスだったが次の瞬間、機械故怯むことを知らない戦術殻は肩当のような部位の先から光刃が伸ばすと旋回しながら振るい付けた。

 導力により生み出された刃は斬るというより熱量で以て灼く性質の代物で致命傷にはなりえないだろうことは予測されたが、実体の無い刃は受け太刀することが適わず舌打ちと共にユーシスは跳び下がりその軌道上から逃れる。

 その瞬間を見計らっていたように、小さな影が入れ替わる形で飛び込んだ。

 拳銃とナイフの機能を併せ持つ銃剣を両手に構えた少女、フィーの接近に戦術殻は鋭く反応し光刃を出力したまま更に機体を旋回させる。

 少女の俊敏な動きにも構造上勢いを殺すことなく振るうことが出来る刃は対応し今にも届こうとしていたが、フィーの前面に突如として展開した光壁がそれを阻んだ。

 導力刃を受け止め霧散させたそれは後方からアーツとしては下位の術式にあたる防御障壁展開術式、《クレスト》を行使したルドルフによるものだった。

 戦術殻の反応が間に合わない程ギリギリのタイミングでアーツが発動させることができたのは勿論戦術リンクによる疎通、フィーの敏捷な動きにも合わせることが出来るという確信がルドルフからフィーへARCUSを通じて伝わったお陰だ。

 リィンらが先日の旧校舎探索で戦術リンクの運用法を掴んだのと同じように、ルドルフは自身に与えられた黒耀石(オブシディア)製のマスタークオーツの機能を把握していた。

 マスタークオーツに限らずこの種のクオーツの一部はごく狭い範囲ではあるが特殊な導力場を発生させることができ、その空間内にもたらす効果は――時間の流れに対する干渉という破格の代物である。

 強弱に関わらず他の導力場に接触してしまうだけで解けてしまうほど不安定な力場だが戦術オーブメント内にその効果、時の流れを遅滞させる作用を絞ったこのクオーツの恩恵は甚大だ。

 周囲で一の時が流れる間に効果の発生した戦術オーブメント内ではそれ以上の時間が経過している、即ち相対的に加速している戦術オーブメントはそのアーツ駆動の時間を短縮することができるのだった。

 元より駆動時間の短い下位のアーツならば今ルドルフが披露して見せたような高速発動も可能となり、戦術リンクの効果も相まってアーツによる連携行動が容易となる。

 そうしてがら空きとなった懐へ踏み込んだフィーはすれ違うように駆け抜けながら戦術殻の脇へ銃剣を閃かせ、同時に引き金を絞り銃弾を撃ち込む。

 刻み撃たれた部位からスパークを放ち深刻なダメージを受けたのか戦術殻はその機体を大きくよろめかせた。

 

「マキアス」

 

「ああ!」

 

 アーツを発動し原点化の始まったARCUSを一瞥しルドルフが呼びかけると側面に回っていたマキアスがすかさず導力銃の引き金を絞る。

 撃ち放たれた散弾により痛烈に穿たれた戦術殻は破壊には至らなかったものの錐揉み回転しながら宙を舞う。

 思いのほかルドルフらが順調にダメージを蓄積させていることに観戦するⅦ組メンバーらは緊張をいくらか和らげ、日頃から何かとフィーの事を気に掛けているらしいエマなどは胸を撫で下ろしていたのだが。

 

「!」

 

 肩部を折りたたみ身を守るように縮こめた戦術殻の周囲に紋様が浮かぶサークル、アーツの術式陣が出現する。

 先の二組の戦闘でその機能は全員に知られており、ルドルフら四人も心構えはしていた。

 

「――させるかっ!」

 

 だが今回に限ってはそれこそが仇となってしまう。

 駆動を解除させるべく刺突の構えで踏み込んだユーシス、そして威力を強化した銃弾を発射しようとしたマキアス、二人の攻撃タイミングが声と共に重なってしまっていた。

 

「――マキアス、ストップ!」

 

「ユーシス! 退いて下さい!」

 

「な……っ」

 

 現状複数の相手と戦術リンクを繋げることはできないルドルフとフィーは咄嗟に二人へリンクを結びながら警告を放つ。

 あわや射線に飛び込もうとしていたユーシスとそれに気づかず銃撃しようとしていたマキアスは寸でのところで踏み止まった。

 しかしそれは敵の前で動きを止めてしまうことでもある、追い詰められたように見せながら同士打ちを誘うような位置を取ることで時間を稼ぐことに成功した戦術殻のアーツが発動する。

 

「くっ!」

 

 ズシリと響く地鳴りと共に足元の大地が揺れ始めユーシスは立っていることが出来なくなり地に剣を突き立てながら膝をついてしまう。

 局地的な地震を引き起こすそのアーツにより足を止められたユーシスに、浮遊し地震の影響を受けない戦術殻が肩を向けた。

 

「くそっ、狙いが……」

 

 マキアスの居る所まで届く地揺れの影響は弱いものだったが、不安定な足元に加え狙いの傍にユーシスがいることでまともに狙いがつけられずマキアスが歯噛みする。

 逃れられないことを悟り覚悟を決めるユーシスだったが、その頭上を――影がよぎる。

 

「――!?」

 

 そこには持ち前の導力を感じ取る感性、そして駆動時間から行使された術式を読み取りアーツの発動に先んじて跳躍していたルドルフの姿があった。

 その接近に反応した戦術殻が標的を切り替え、肩口から導力刃を出力させる。

 

「ふっ!」

 

 しかし狙われたルドルフは空中で宙返りを打ち、振るわれた導力刃を躱すと同時に回転の勢いを乗せた踵を頭から叩き込んだ。

 金属が破砕されたような甲高い音を響かせると戦術殻は異音を内から漏らしながら今度こそ偽装では無いだろう動きでふらふらと宙を漂う。

 そこへ地揺れの収束と共に一瞬で背後まで忍び寄ったフィーが両手の銃剣を突き立てた。

 

「終わり」

 

 呟きと共に二つの銃口から放たれた銃弾が傷跡を抉り、正に糸の切れた操り人形のように動きを止めた戦術殻は地面へと墜落しその機能を停止した。

 

「これでテストは終了よ、あなた達の課題は――言わなくても分かるでしょうね」

 

 目標を沈黙させ勝利を収めることが出来たわけだが、サラの指摘に試験内容に対して最悪の形で自分達の間の問題を露呈させたユーシス、マキアスの表情には苦い感情が浮かぶ。

 そんな反応にため息を一つ漏らしサラが指を鳴らすと、出現したときと同様に転がっていた戦術殻が空間へ溶け込むように消失する。

 

「指摘事項はたっぷりあるけど、まずはこの後の事について説明させてもらおうかしら」

 

「この後……?」

 

「ええそう、Ⅶ組独自のカリキュラムとして最たるものである《特別実習》について、ね」

 

 言葉に出したリィンを始め、Ⅶ組の面々が気を引かれたその言葉について、足元に置いていた鞄から封筒の束を取り出しながら、意味深そうに微笑みながらサラはその内容を語り始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 第三学生寮一階のエントランスに設置された応接用のソファーに座り込んだサラはコートを放ると今しがた食堂で明日の仕込みに入っていたルドルフに用意させたヴルスト(腸詰め肉)をテーブルに置き、手にしたビール缶のプルタブを起こし小気味の良い音を鳴らして口を開ける。

 早速ビールを一気に半分ほどまで呷り、病みつきとなっているのど越しにくしゃりとサラの表情が顔を緩んだ。

 

「あ~~この一杯の為に生きてるわね」

 

 他の人間に見られたなら間違いなくおっさん臭い、などと評されるだろう台詞を口にしながらビール缶を置くサラ。

 教官業務に加え実技テストの評価をまとめ日頃より疲れの溜まった体で味わうビールは心地良く、ついそんな独り言まで漏らしてしまうのだった。

 カレーソースの乗ったばら切りのヴルストをフォークに一刺し口へ放りこみ、辛味と割けた皮の下から溢れ出した肉汁の程よく調和した旨みに舌鼓を打つ。

 こうして晩酌のお供のレパートリーが増えたことはⅦ組担当教官を任じられてから増えた数少ない喜ばしい事だ。

 先日はリィンの冗談を真に受けて大層な食事を用意したものの、支給金を使い込むわけにはいかず自腹を切っていたことがバレてしまいアリサに大目玉を食らったらしいが。

 丸投げしてしまっていた寮の管理について話し合った方が良いだろうかと思い浮かべるも、その程度のことは自分達で何とかしてしまいそうなぐらいには生徒達が優秀であるせいかすぐにサラはその思索を打ち切ってビールをまた呷り、ふと階段を誰かが下りてくる気配に目を向ける。

 

「……サラ?」

 

「あら、まだ起きてたの」

 

 姿を見せたのはⅦ組の中では最もサラと馴染みのあるフィーだった。

 若干特殊な間柄ではあるものの入学以前から付き合いのあった彼女のサラに対する態度には親し気とまで言わないものの気安い印象がある。

 

「キッチンにでも用事?」

 

「ん」

 

 コクリと頷き淡々と答えるフィー。

 クラスメイト達と比べ二つ年下だというのに表情の変化に乏しく年相応な幼気とは縁遠い。

 

「ホットミルク、たまにもらってる」

 

 言い方から察して眠る前ルドルフにつくってもらっているということだろう。

 物怖じせず使えるものは使うフィーはアリサを除きⅦ組メンバーの中で最も彼に順応しているのかもしれない。

 

「そう、アンタでも今日はそこそこ疲れたでしょうから、遅くならないうちに寝ときなさいよ」

 

「分かってる」

 

 目の前の少女に対してそれは言うまでも無いという事をサラは十分に知っており社交辞令としてその言葉を口にしていた。

 普段から瞼を眠たげ緩め実際暇があれば教室の机に突っ伏し眠っているフィーに生真面目なマキアスなどは眉を顰めているが、それは別に彼女が怠惰であるというわけではない。

 必要な時に体を動かせるよういつでも体を休める為に身につけた技術、それが求められる環境で彼女は生きてきたのだ。

 そんな彼女をこのⅦ組へ誘ったのは他でもないサラ自身、今回のようについ保護者のような言葉をかけてしまうこともある。

 フィーの方もそんなやりとりには慣れてしまっていた筈だが、この日に限っては何故か自分を見つめる瞳に何かを訴えかけるような色が浮かんでいることにサラは気づく。

 

「なあに? ひょっとして班分けのことについて不服でもあった?」

 

「別に」

 

 口ではそう言いつつも指摘されるなりついと視線を背けた仕草からして昼の実技テスト後発表された特別実習、その班分けについて本心では多少なり不満があるのだろう。

 今週末、Ⅶ組の生徒達は二つのグループに分かれ帝国内の指定地に赴き様々な課題が与えられることになっている。

 リィン、エリオット、ルドルフ、アリサ、ラウラのA班。

 ユーシス、マキアス、ガイウス、エマ、フィーのB班。

 その課題を通して戦術リンクの練度を高めることがこの特別実習の主目的となるわけだが。

 サラの脳裏によぎる、Ⅶ組設立の立役者である飄々とした人物の言葉。

 

『彼らに感じ取って欲しいのですよ、この帝国が抱える歪みを。そして――』

 

 彼が密かにⅦ組に期待しているであろうもう一つの役割、それが果たされるかどうかは担当教官を任されたサラにもまだ分からない。

 何しろこのクラスときたら頭を抱えたくなるような問題までも抱え込んでいるのだから。

 その問題の一つ、ユーシスにマキアスと同じ班に回されてしまったのだからフィーの態度も無理からぬことだろう。

 あの二人が行動を共にしてまともに実習課題をこなせるかどうか、懸念材料だけは十分だ。

 

「まあ初回はあたしもサポートには回るつもりよ、大変かもしれないけど出来れば委員長やガイウスを助けてあげなさい」

 

「……了解、じゃ」

 

 Ⅶ組のクラス委員長となったエマとの仲はまんざらでもないらしくしっかりとした頷きを返してフィーはダイニングへと入って行く。

 それを見送り扉の奥から微かに聞こえてくる二人のやり取りを耳にしながらサラは今日の実技テストで目にしたものを思い起こしていた。

 予想通り戦術リンクを繋ぐ気を全く見せなかった二人に対して懸念は抱いていたが、その失態をまるで動揺することなくフォローした彼についてもいささか気になるところである。

 フィーのように特殊な環境に身を置いていた経験があるなら話は分からないでもないが、年頃の男子にしてはドライに過ぎる反応ではなかったかと。

 まるで二人が連携を取ることなど期待してもいなかったかのような。

 冷静であることはむしろ評価すべき長所、悪意的な見方だとはサラも自覚している。

 しかし時折彼が見せる――いや隠すのを忘れる、素の表情がその疑念を増量させるのだった。

 あの()()()()()身のこなしも含めて、気にかけておくべきだとサラの前職で培った勘が告げていた。

 

「ま、ひとまずは様子見かしらね」

 

 考えを重ねたところで解決しない問題はあるというもの。

 今日のところは絶えない気苦労を紛らわそうと思索を打ち切り、新しく口を開けたビール缶に口をつけるのだった。


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