多分、私はもうすぐ死ぬ。
だから、ここに私の想いを書き残そう。
誰かが見るかもしれないし、誰も見ないかもしれない。読んで理解出来ないかもしれない。それでも良い。
ここに綴るのは、私の願いだ。
きっと叶わぬ、私の祈り。
だから、誰も見なくても、誰かが見てもそれで良い。
誰か見たのなら、見ている貴方がいるのなら、一つお願いをしたい。
読み終わった後でも、読まなくても、これを燃やして欲しい。
神様がいるのかは分からないけれど、この本が世界から消えれるのなら、その方が想いが届く気がするから。
ここに綴るのは、ある人への想いだ。
どうか、彼を助けて下さい。
私はこれから死を通して、最後の賭けに出る。彼を変えられる、最大で最後の選択だ。
私は世界などどうでもいいから。
それ以上に、彼が大事だから。
だから、彼が救われるのなら、それで良い。
これは贅沢な願いだ。
一度で良いから、彼に感情を出して欲しい。それは笑いでも、悲しみでも、何でもいい。彼が素直な感情を出してくれれば、それだけで良い。
笑うことも、怒ることも、泣くことも、彼には何一つ出来なかった。
幼い頃から不満を溜め込んできた彼は、きっと心の底から素直な感情を出したことがない。
ずっとずっと、自分を偽り続けてきた。
辛かっただろう。
苦しかっただろう。
痛かっただろう。
身勝手で、自分勝手な考えだけれど、それでも思うのだ。
きっと、彼は不幸だった。
だから、せめて一時だけでも、本物の感情を出して欲しい。
私の賭けが失敗したのなら、それが唯一の、救いとも呼べない、労わりとなるのだから。
彼は雪のような人だから。
誰かの温もりで、その身を滅ぼしてしまう人だから。
だけれど。
どうか、どうか。
どうか、あの人を救ってあげて欲しい。
どうか、あの人を助けてあげて欲しい。
あの人を救ってくれる人が、現れますように。
……ねぇ、ビャク。
私は貴方が好き。
でも、貴方は私が嫌いだったでしょう。ううん、嫌いとは違う。形はどうあれ、貴方を戻し、感情を乱す私を、大切に思って憎く思っていた筈だ。その感情すら、貴方は殺し続けていた。
ビャク。私はその感情をぶつけて欲しかった。貴方のありのままを晒してくれて良かった。
貴方は、自分より世界を取った。
自分を無価値と、マイナス要素だと取っていたのだろうけれど、それよりも世界に価値があると思っていた。だから、貴方は感情を殺し続けて世界を守り続けていた。
貴方はずっとずっと、戦い続けていた。
もう、無理をしないで。
もう、休んでも良いよ。
貴方はもう、苦しまなくて良いから。
ビャク。
どうか、どうか。
誰でも良い。
彼を幸せにしてあげてください。
悲しみを教えてあげてください。
喜びを与えて下さい。
感情を思い出させてあげてください。
彼を、救ってあげてください。
それが、私の願いです。
ああ、ビャク。
どうか、貴方が救われますように。
どうか、貴方が幸せでありますように。
ねぇ、ビャク。
笑って。