【完結済】インフィニット・ストラトス 〜狼は誰が為に吼える〜   作:ラグ0109

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初めまして、ラグ0109と申します。
薬にもならない駄文でございますが、これからよろしくお願い致します。


狼の足跡
エピローグにしてプロローグ


これは、此処ではない何処かで起きた銀の狼の終わりの物語。

 

 

「フン、随分と弱々しくなったものだな、『間男』?」

 

歳の頃は50程だろうか、齢を重ね渋みを増した顔の所々に白い蛇の鱗を持つ男が足元で力無く倒れ伏している2メートルもの巨躯を持つ銀の狼に語りかける。

その声は何処か忌々しく、または悪友に向けるように優しい。

 

[俺も歳と言う事だろう…地に帰り、世界を巡り…皆、俺を忘れていくのだろう…お前はどうか知らんがな]

 

対する狼はちら、と白蛇を弱々しくも確かな意志を持つ金の瞳で見つめ、口元を笑む様に歪める。

 

[永い、永い年月だ…白と出会い、別れ…それから…]

「言葉を発するのも辛そうじゃぁないか……随分と念話が小さい…本当に逝くのだな」

 

苦い顔をしながら白蛇が座り込めば、銀糸の様に美しく手触りの良い狼の身体に触れ、撫でる。

 

[止せ、男に撫でられると残り少ない時間が余計に無くなる]

「仮にも神に向かって…減らず口が絶えんな…間男めが」

[俺が間男だと言うのなら、嫁を口説ききれなかった自身を呪う事だ]

 

白蛇は平手で狼を叩けばとっとと死ねと悪態をつく。

 

「まったく、身体中穴だらけにされても死なん奴が老いに負けるとはな…」

[不死、なんぞ存在せん…俺の様な幻想種でさえ、理から…そうそう、外れんよ…分かっているのだろう?]

「天の狼等と大層な種の癖に、理からは逃れられんか…」

 

 

 

[静かだ…]

「そうだな…」

 

狼がその金の瞳をゆっくりと閉じる。

 

[きっと、白の元へは逝けんのだろう…俺には地獄がお似合いだ]

「誰が俺の嫁の所に逝かせるものか…お前には地獄すら生温いわ」

 

ギリっと歯軋りするのは、憎いからだろうか…それとも、名残惜しいからだろうか…?

そう白蛇が考えれば頭を振り、くだらないと思考を止める。

 

「…俺は嫌なんだがな…」

[………]

「キラたっての願いでな……お前の魂を此処ではない何処かへ飛ばす。そこで人になるのも塵芥になるのも俺には分からん。俺の嫁を掠め取った罰だ、精々苦しめよ」

 

[ほん、とうに…会えなそう、だな]

「ザマァ」

 

白蛇が小馬鹿にしたように言えば、狼は深く溜息を吐き決して動くことは無かった。

 

「幸せな世界へ…か…キラもとことん物分かりの悪い」

 

何処か羨ましそうにそう言う白蛇は、立ち上がり狼の遺体に背を向ける。

 

「奴は奴で、充分幸せだったろうに。腹立つ」

 

深い溜息と共に蒼い月を見上げその場から立ち去る。

 

そこにあったはずの狼の遺体は、幻の様に消え去っていた。




えぇ、ファンタジー要素はほぼ此処で終わりですよ。

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