多重世界の特命係   作:ミッツ

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1.11 感想欄においてご指摘を受け、内容の一部を大幅に変更させていただきました。
これまでに読んでいただいた読者の皆様、本当に申し訳ありません。


プレイデータ 7

 杉下たちは伊丹たちの後に続きレクト本社ビルを出る。岡部、柴田、ペリエ、そして最後に浜中がパトカーに乗せられ、警察署へと連れていかれるのを見送ると、杉下たちもその場を後にしようとする。

 その時だった。

 

「杉下警部、甲斐巡査部長!」

 

 そう後ろから声を掛けられ杉下たちが振り向くと、そこには杉下とカイトがよく知る顔があった。

 

「大河内さん…」

 

 杉下たちを引き留めたのは警視庁警務部首席監察官、大河内春樹警視であった。大河内は杉下たちの元まで歩いてくると、和人と明日奈に目を向けた。

 

「君達が桐ケ谷和人君と結城明日奈君だね。初めまして。私は警視庁の大河内というものです。」

 

 大河内は和人達に対しても丁寧に挨拶をし軽く頭を下げる。和人と明日奈は戸惑いつつも返礼する。その様子を眺めていた杉下がおもむろに口を開く。

 

「いずれ何かしらの接触はあるかと思ってましたが、まさか大河内さんがいらっしゃるとは思っても見ませんでした。」

 

「…その様子からすると、なぜ私がここに来たのか見当がついてるようですね。」

 

「なんとなく、ではありますが。」

 

 その言葉を受け、大河内は再び和人たちに目を移した。恐ろしいほど感情を移さない眼光に、SAOで数々の修羅場を経験した和人も思わずたじろぐ。

 

「だったら話は早く済みそうですね。率直に申します。今回の事件に関して今後は我々に引き継がせてもらいます。なお、事件の詳細については他言無用の上、捜査資料も全て提出してもらいます。」

 

「…やはり、現状では公開できませんか。SAO内で殺人が行われていたという情報は?」

 

 杉下の言葉にカイトや和人たちは驚いた様子を見せるが、大河内は黙ってうなずく。

 現在、SAO事件の捜査において公開されている情報はかなり限定的なものだ。それは被疑者である茅場博士が既に死亡しており、事件の発端を調べることがかなり難しいことに加え、ゲーム内という外界から隔絶された特殊な環境下、そこでの2年にも及ぶ膨大なデータを解析するにはどうしても調べきれない部分があるとされているからだ。

 

「しかし、僕は今回の事件を捜査するに当たり実感しました。プレイデータさえあればプレイヤーがどの様な事をしていたのか追跡するのは比較的容易だと。にもかかわらず、ゲーム内で死亡したプレイヤーの死因が遺族にすら知らされていないのは、プレイヤーキルの存在があるからですね?」

 

「…ゲーム内での殺人をどう裁けというんですか。彼らはゲームをして他のプレイヤーを倒しただけ。ありとあらゆるゲームで普通に行われていることです。それに、仮想世界に囚われた彼らには現実で自分が倒したプレイヤーが本当に死んだのか確認することはできなかったんです。『本当に死ぬとは思わなかった』、この一言で彼らは殺人者ではなくなる。」

 

「死因を公開すれば余計な混乱を招く、ということですね。家族が死んだ原因が他者からの攻撃にあると分かれば、必ず攻撃したプレイヤーを処罰しろとの声が上がる。」

 

「杉下警部は勘違いをされているようですが、死亡した被害者たちの死因はナーヴギアからの高出力電磁パルスによって脳を焼き切られたからです。諸悪の根源は茅場博士です。」

 

 有無を言わせぬ強い口調で大河内は告げる。その言葉に和人の顔が怒りで歪む。

 罪に問えないのであれば公開したとしても余計な手間がかかるのみ。ならば全ての罪を茅場博士に着せればいい。

 和人には大河内の言葉がそういっているように聞こえた。また、和人自身、かつては茅場にあこがれ、彼の理想の一端に触れた人間であったことも影響したのだろう。

 

「待ってくれよ。それじゃあ死んだ人の家族には何も教えないつもりなのかよ。どう生きてたのかも、どうやって死んだのかも。その人たちが、どんな思いで消えていったのかも…。そんなのあんまり過ぎる!せめて、死んだ時の状況くらい」

 

「教えればいいのかい?あなたの息子さんは他のプレイヤーに殺されました。けれど、ゲームの中の出来事なので罪には問えません、と?」

 

 今までよりも一段と低い声色で大河内は和人の言葉を切る。その瞳には僅かながら怒りが見て取れた。

 

「きっと阿鼻驚嘆の地獄が起きるだろう。被害者の家族は家族を殺した犯人をなんとしても見つけようとし、加害者側は法を盾に家族を守ろうとするだろう。近々SAO被害者による集団訴訟が始まるが、それも無くなるかもしれない。仲間の中に自分の子供を殺した人間の家族がいるかもしれないのだからな。」

 

「そ、それは…」

 

「そういえば、君のことも調べさせてもらったよ。結構な人数を斬ったようだね。」

 

「大河内さん!」

 

 大河内の言葉に和人は顔色を無くし、杉下は大河内が何を言おうとしているのかを察し、それを止めようとする。

 

「杉下警部、私が見るところ彼の心はまだSAO内にあるようなので、ここで現実を教えておいたほうがいいと思います。桐ヶ谷和人君、私は君が他のプレイヤーを斬ったことを咎めようとは思わない。君の場合、正当防衛に値するものだったり、他人を救うため致し方ない場合だったのがほとんどだ。しかしだ、そうは思わない輩というのは一定数いるものだ。それは君が殺害した人間の家族はもちろん、君が救えなかった人間の関係者、そして君の英雄としての活躍を妬む者達だ。彼らは自分たちこそ正義の情けを必要とする被害者だと嘆き、君を罵倒し、糾弾し、処罰や賠償の対象として訴えるかもしれん。」

 

 この時大河内は和人の心を折りにかかっていた。大河内の目的はプレイデータ内の真実が世間に公表されるのを防ぐことである。そのために、特命係や和人や明日奈がSAO被害者の為に動き出そうとするのを徹底的につぶしておく必要があったのだ。

 大河内は尚も続ける。

 

「自身を正しいと思っている人間は悪とみなした相手にどこまでも冷酷になれる。自分の行いは絶対的に正しい。奴らは悪党でこの世から滅せられるべきなのだ。正義は我にあり、とな。特に匿名性の高いネット内ではその傾向はより強くなる。それは君自身よく知っているだろう。」

 

「で、でも、私たちが現実世界に帰ってこれたのはキリト君がいたからです!キリト君が私たちのために戦ってくれたから、救われて、今こうして生きていられる人たちがいるんです!」

 

 大河内の言葉に反論するのは明日奈だった。彼女はこれまで何度も和人から助けられ、命を救われた。そんな彼女にとって、恋人でもある和人が人から恨まれても仕方がない、と云った風に言われるのは我慢ならなかった。

 それでも大河内は淡々と現実を教える。

 

「その救った人間の中にも、英雄としてのキリトに不信感を抱いている人間は少なからずいるんだ。主に物語序盤で彼自身が自分をビーターと自称し出した影響でだ。その所為かネット上には英雄キリトの活躍に懐疑的な意見も目立つ。それが表立ってないのは、プレイデータをはじめとする詳細な記録が無く、噂話で留まっているからだ。もし、データが公表されれば称賛もされるだろうが、同じだけの誹謗中傷も君たちは受ける事になるだろう。」

 

 今度こそ明日奈は言葉を失い、悔しげに唇をかむ。大河内の言うことは恐らく正しい。自分を正当化した時の人間の醜さや恐ろしさは、明日奈もSAOで嫌というほど体験した。

 だが、明日奈や和人たちはそうした人間の負の部分を前面に出す者たちと戦い、勝利してきた。それは紛れもなく、誰かを救いたいという純粋な思いや大切な人を守りたいと言った情が人の醜い部分に勝ったからだと彼女は信じている。

 だからこそ、ここで引き下がるのはSAOで日々を否定するように思えたのだ。

 だが、なおも食い下がろうとする明日奈の肩にポンッ、と手が置かれる。

 

「ありがとう明日奈。でも、もういいよ。」

 

「そんな…キリト君…」

 

「大河内さん、あなたの言う事はよくわかりました。いま真実を公表しても辛い思いをする人が出るだけだって。それに、被害はそれだけじゃないんだろ?俺の家族や近しい人たちも同様のバッシングを受ける。」

 

「…ちゃんと理解してくれたようで安心したよ。もはや問題は君一人でどうこうできるモノじゃない。」

 

「ああ、いくら仮想世界で英雄と言われてようと、現実じゃただの高校生でしかない。スキルも扱えなきゃ、剣もまともに振り回せない。だから一つだけお願いがある。」

 

 和人は一歩前に進み出ると大河内の目を見据えた。

 

「SAOが原因で起きる事件をこれ以上ださないようにしてくれ。笹本が浜中を脅そうとしたのはSAOが原因で職を失い、生活に行き詰まりを感じたからだ。きっと生活に苦しんでいる生還者は他にもたくさんいるだろうし、被害者の家族にも支援が十分に行き届いていない人たちがいるかもしれない。そういう人たちが犯罪に関わらないような仕組みを作らなきゃいけないんだ。真実を覆い隠すんだから、それくらいはしてくれないと。」

 

 和人の申し出に大河内は少し驚いた様子を見せる。そして、最初に抱いていた桐ケ谷和人という少年の評価を替えなければいけないと判断した。

 大河内の和人に会う前の彼への評価は、仮想世界と現実世界の自分を同じだと思っている子供、というものだった。

 未曾有の大事件ともいうべきSAO事件を解決に導いた功績は確かに賞賛すべきものがある。だが一方で、命の危険にさらされながら、いまだにVRMMOに関わり続けるのは大河内から見て自分の力を過信し、調子に乗っているように感じられた。

 おまけにゲーム内で出会った社長令嬢と恋仲になり、おとぎ話の王子のように彼女を救い出したとなれば、同年代の若者であれば自分が人生のおいても勝ち組なのだと調子のよい事を思いたくなるのは無理がない。桐ケ谷和人は生還者の中でもあらゆる意味で恵まれ過ぎているのだ。

 だが目の前に立つ現実世界の和人は、冷静に自分の立場を考え、大河内と対等な立場であろうとし、最善の解決策を提案しようとしている。

 その様子を見ていた杉下が和人の横に並び立つ。

 

「なかなかいい案だと思いますよ。警察官僚である大河内さんの力をもってすれば、多少実現に向けて力添えが出来るのではないでしょうか?」

 

「……そうですね。何が出来るか分かりませんが、検討させていただきます。最後に一つだけ。桐ケ谷君、君が持つ人工知能、いまのところ彼女に手を出す者はいないが、君が今回の様な事に彼女を利用する場合、彼女の存在を危険視し抹消しようとする人間が現れかねない。彼女を大切に思うならば使いどころを誤らない事だ。では、これで。」

 

 そう言って身を翻し、大河内はその場から離れていく。

 その後、とある新聞の紙面にSAO被害者の現在を取材した記事が掲載された。そこには事件によって仕事や財産を失い、未来を悲観する被害者やその家族の実情が記され、読者から多くの反響を得た。それからしばらくし、国会ではSAO被害者に対する追加支援、及び保障の必要性が改めて訴えられ、被害者救済に向けて新たな枠組みが動き始めた。

 そして、桐ケ谷和人は仮想世界に関わり続けていく。その過程で時には現実世界にも影響を与える大きな事件の解決に奔走し、苦しみつつも仮想世界で暮らす人々の安寧に貢献し続けた。

 だが、ある事件をきっかけに彼は再び仮想世界にとらわれることになる。それが彼にとって大いなる苦痛と苦悩を与えることになる事を今この時点では誰も知らない。

 

 

 

 

 警察庁のとある一室で初老の男性が電話口で部下からの報告を聞いていた。その報告は吉報らしく、男性の口元には深い笑みが浮かんでいる。

 

「そうか、うまいこと説得は出来たようだな…ああ、そこまで釘を刺しておけば倅や杉下も無茶はせんだろう。念のため未成年の二人にはしばらくの間、監視を付けておいてくれ。では、頼んだぞ。」

 

 男性は電話を切ると部屋の中央のソファーに座っている眼鏡の青年に目を移した。

 

「聞いての通りだ。君の所のお気に入りの少年とは我々で話がついた。よっぽどのことがない限り彼が再びハッキングをしてデータを世間に公表しようとすることはないだろう。」

 

「ありがとうございます。このたびは憎まれ役を務めていただいて。我々としては桐ケ谷君とは良好な関係を維持していきたいと思っていたので、甲斐次長からの申し出は渡りに船でした。」

 

 柔らかな笑みを浮かべつつ総務省総合通信基盤局高度通信網振興課第二分室職員、菊岡 誠二郎は頭を下げる。

 

「もし下手にSAOの情報が外に漏れたら社会的な影響が出るのは避けきれませんでしたから。桐ケ谷君たちがレクトで保管されていたデータを抜き取ったと聞いた時は肝が冷えましたが、警察が万が一に備えていてくれたおかげで本当に助かりました。」

 

「なに、こちらも運が良かっただけだよ。ところで、君の本来の所属先が推進してる、プロジェクト・アリシゼーションだったかな?高性能AIをはじめ、SAOの技術を軍事転用させるとは恐れ入ったよ。もし今回の件でSAOのデータを深く追求せよという声が上がってたら、プロジェクトに大きな影響が出る所だったね。」

 

 甲斐次長の軽く発せられた言葉に菊岡の動きが一瞬だけ止まる。だがすぐに先程より笑みを深くすると、何事もなかったかのように応対する。

 

「流石警察庁次官。自衛隊内部についてもよくご存じで。」

 

「それほどでもないよ。ただ、非常に興味深い計画だなと思ってね。是非とも、より詳しい話を聞いてみたいと思ってるんだが、どうかな?」

 

「…そうですね。ただ今のところは極秘の計画ですので計画を知る人間は選ばなければいけないと思います。例えば、優秀な警察幹部だとしてもSAOで子息が殺人ギルドに所属していたりすると、何かの拍子に世間に情報が漏れた時、いろいろと問題になりますから。」

 

 思わせぶりな表情で菊岡が投げかけた言葉に甲斐次長は苦笑いを浮かべる。

 

「いやはやまったく、個人の家庭問題とはいえ、あまり世間には知られたくない事なんだがな。まあ、それについてはデータが来たら修正するとして、一つ忠告しておこう。省だからと言ってあまり調子に乗らない方がいい。我々が正義をもって君の組織を探れば、いくらでも黒いところは見つけられるのだから。」

 

「ご忠告痛み入ります。ではこちらからも一つ。庁ごときが余計なことに口出しするな。この国で人々が正義と平和を美徳に出来るのは我々が国家防衛の先陣に立っているからだ。あなた方は犯罪者だけを相手にしていればいい。」

 

 年齢にして親と子ほどの差がある二人。だがお互いに目を離さず、口元に僅かな笑みを浮かべながらも彼らは静かにぶつかり合っていた。お互いの組織の正義を御旗に…

 

 

 

 

 事件解決の翌日、新聞の紙面やテレビのワイドショーでは一流企業の研究グループによる殺人が大々的に報道された。SAO内で起きたトラブルが原因であるという事もあり、世間の関心はなかなかに高い。

 特命係の部屋で杉下とカイトは今回の事件の記事を熱心に眺めていた。

 

「それにしても、トラブルの詳細についてはあまり書かれていませんね。ここの情報だけじゃ、浜中が佐藤さんを殺害したかどうか判断がつかないですよ。」

 

「ですが記事によると事件関係者は皆素直に取り調べに応じているとあります。新たな事実が判明する期待が持てない以上マスコミも深くは追及しないでしょうねぇ。」

 

「…結局、大河内さんが言ってたみたいに、今回の事件に関しては無難な結末が一番幸せなんですかね?」

 

「そうとは限りません。正義が立場によって変わるように、幸せな結末というのも人によって違います。ですが我々の仕事は万人が幸せになれる結末を用意する事ではなく、ただひたすら真実を追い求める事です。」

 

「…杉下さんでもどうにもできないんですか?」

 

「ルールがある以上、盲点を突く事は出来ても穴を開けることは僕にはできません。ゲーム内の殺人を禁じる法がない以上、僕らが殺人ギルドに所属していた人間をとらえる事は不可能です。」

 

 そう言いつつもどこか悔しげな様子の杉下を見てカイトは思う。

 殺人という大きな罪を犯しながら罪に問われない者がいる。彼は今、自分が犯した罪をどう思っているのか。後悔しているのか。何も感じていないのか。それとも、また同じことをしたいと思っているのか。カイトたちには何一つわからない。

 だが今のこの状況を放置していると何かとんでもない災厄が起こるような気がカイトにはしていた。

 そうしてカイトが不安に侵されていると、部屋の入り口からひょっこりと角田が顔を覗かせる。

 

「よう、お二人さんにお客さんが来てるぜ。」

 

「お客さん?」

 

 カイトが首を伸ばし確認すると、角田の横から岩月が現れた。

 

「こんにちは。杉下警部に呼ばれてきたんですけど。」

 

「ああ、岩月さん。よくいらしてくれました。さあさあ、どうぞこちらへ。」

 

 杉下は岩月の手を引き部屋の奥の椅子に座らせると、手早く紅茶を用意する。岩月は戸惑いつつも出されたお茶を一口飲み杉下に切り出す。

 

「それで、今日はどういった要件ですか?事件は解決したんですよね?」

 

「ええ、無事解決できました。しかしながら、一つだけあなたに確かめておきたい事がありまして。」

 

「確かめたいこと?」

 

 岩月が検討もつかないといった様子で首をかしげると、杉下の右氏と差し指がピンと上を指す。

 

「ずばり、僕たちがレクトのプレイデータを欲していることを察し、その事を上層部へ報告したのは岩月さん、あなたですね。」

 

「………」

 

「思えば、あなたの行動は些か不自然でした。普段なら自分の管轄以外の事にはあまり積極的にかかわろうとしないあなたが、どういう訳か監視という名目で捜査に同行しました。あれは僕たちがプレイデータの存在に気づき、その内容を公表するのではと恐れたからですね?岩月さんはSAO事件の捜査に大きく関わり、事件の事後処理にも参加しています。当然、被害者の方々がSAO内でどのように過ごしていたのかも知る事になったはずです。被害者が亡くなった際の遺族の反応も…。そしてあなた自身、ゲームには深い知識があるためにプレイデータが公表されればどのような事が起こるのかも予想できた。だからこそ、僕たちがレクトに手を出そうとするのを警戒したんです。僕たちがレクトにデータの開示を求めた際、部長たちが止めたのもあなたが手を回したからですね?」

 

「……軽蔑しますか。」

 

 その言葉が全てを肯定していた。杉下は岩月の問いかけに静かに首を振る。

 

「いいえ。今回の件に関しては何が正しく、何が間違っているかなどはないと僕は感じます。ただ、望むのであれば…」

 

 杉下は机の上に置かれているアミュスフィアに目を移す。

 

「例え世界が仮想の物でも、正義だけは本物がまかり通るものであってほしい。そう思います。」

 

 杉下に言葉を返すものは誰もいない… 

 

 




 多少詰め込み気味になりましたがSAO編はこれで最後です。正月休みはISの方に集中したいと思います。
 
 それでは最後に現在この作品で書きたいと思っているクロスを簡単なあらすじと共に紹介したいと思います。それではどうぞ。



・黒い医師
 とある大学病院で手術中に一人の患者が亡くなった。その手術の執刀を務めたのはなんと無免許医であった。警察はすぐにその医師を逮捕し、過失致死の容疑で捜査を進めるが、杉下は現場の状況から計画的な殺人の可能性があると指摘する。組織から外れ黒に染まろうとした天才医師と、組織から外れながらも白くあろうとする天才が交わる時、事件は思わぬ方向に転がっていく。



・傷だらけの天使たち
 ある日、特命係を新咲祐希子という若い女性が尋ねてくる。かつて喧嘩に明け暮れていたところを杉下に補導され大変世話になったという彼女は、その時のお礼の意味も込めて現在所属する女子プロレス団体の興業に特命を招待する。無事興業を終え、特命係が佑希子の控室に見舞いに訪れた時、団体の社長が死体で発見される。



・探偵たちは学園に集まる
 私立探偵、マーロウ矢木のもとに人気スクールアイドルの護衛の依頼が舞い込む。依頼を受け、音ノ木坂の地を踏んだマーロウだったが、そこには想像を超える思惑と罠が潜んでいた。私立探偵、トラブルシューター、物理学者、論理学者、祓い屋、執事、猫。彼らがそろった時、音ノ木坂に何かが起きる。



・世界で一番暑い夏
 米沢の依頼を受け、特命係は千葉県で行われる同人誌即売会に行くことになった。あまりにも異様の空間に戸惑いつつも目的の品を確保し帰ろうとした時、特命係はトイレで男性の死体を発見する。早速捜査を開始した杉下は現場に最も近い場所でブースを出していたサークルの参加者が、顔なじみである千葉県警の高坂刑事の子供だと気づく。



・亡霊の呟き
「えー、皆様に大変残念なお知らせをしなければなりません。このエピソードには杉下右京は登場しません。それどころか亀山、神戸、甲斐、冠城、いずれの相棒も登場しません。んふふ、このエピソードの主な登場人物は伊丹 憲一、芹沢 慶二、米沢 守、それと犯人と被害者、そして…この私。いずれのエピソードも連載時期は未定ですので気長にお待ちください。それではよいお年を。古畑任三郎でした。」

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