やはり、タグに「不定期更新」を入れた方が良いのか…
今回も話を前編という形で分けさせていただきました。申し訳ございませんm(_ _)m
夜鈴と優雨が事務所で一晩過ごした次の日の朝、優雨は目を覚ます。
(……朝……?)
窓の外から射し込んでくる光を見て朝だということが分かった。
(起きようかな…………あれ?)
朝ごはんを準備しようと上体を起こそうとして“何か”が胸の上に乗っかり、行動を妨害してくる。胸の上に乗っかってるであろう“何か”を見る為、下に目を向けると、“白い腕”が乗っていた。
「……スゥ……スゥ……」
寝息が耳元で聞こえた気がして、ゆっくりと顔を右に向ける。すると、瞼を閉じ気息正しく口で寝息をたてている夜鈴の顔が距離僅か2cmのところにあった。
「……はぬ!?」
急いで離れようとするが、夜鈴の腕が身体をガッチリとつかんでいるようで、抜け出すことが出来ない。
「…………」
不意に夜鈴の表情を見る。どういうわけか心が落ち着いてきた。眠たそうな目は閉じ、桜色の口を少し開けて寝息をたてていた。
優雨は気づくと数分の間、夜鈴の寝顔を見ていた。ふと寝息をたてている口に視線が向かう。
(ちかい……夜鈴さんの……くちびる……)
無意識に夜鈴の唇に自分唇を重ねようとする。が、夜鈴が身じろぎして我に帰る。
(な、なにをわたしは……!は、はなれ……ないと……ぇ!?)
離れようとまず胸の上に乗っかってる腕を動かそうとするが、離れない。いや、それ以前に相当の力が入っているのか全然動かない。そんな事をしていると、突然“枕”が動き出した。よく見てみると、それも夜鈴の腕である事が分かる。
どうやら、左腕で“腕枕”をされ、右腕で身体を押さえられている状況みたいだった。
今、それはどうでもよかった。問題は、枕になっていた夜鈴の左腕である。その腕が身体を包むように背中へとまわされる。
優雨はいつの間にか、さらにガッチリと捕まっていた。まるで、幼い女の子がぬいぐるみを抱きしめる様に。そして、次第にゆっくりと夜鈴の顔が近づいてきていた。
そこで、ハッと気づく。このままではぶつかる。何が?決まっている。両者の唇だ。
「え……ちょ……やすずさ…ん!?」
慌てて呼び止めようとする優雨だが、その言葉を途中で遮ってしまった。否、遮られたというべきだろう。
優雨の思考が一瞬停止した。その理由は、本人にも分からなかったが、すぐに気づく。自分の唇と夜鈴の唇が重なっていたのだった。
「…………………………」
その事実を受け止めると、心臓がバクバクと激しくなり、自分の顔が真っ赤に染まっていくのが嫌でも分かった。頭も混乱し思考回路が停止した。
蓮太郎は、物干し竿に最後のワイシャツを干し終わると「ふぅ…」と一息入れて額の汗を拭う。
「蓮太郎ー!朝ごはんできたぞー!」
「おう、延珠。今行く」
俺が座ると、延珠がちゃぶ台に手をつけて目をキラキラさせながら話しかけてくる。
「なぁ!なぁ!蓮太郎、今日はもちろん会社に行くのだろう?」
「ああ、夜鈴の事もある。それに…木更さんにこの事を説明しなきゃならないからな…」
「よし!」
力強い声と一緒にガッツポーズを決めてくる。
そんな延珠を見て、蓮太郎は昨日の光景を思い出す………………延珠がボロ布を着た少女を脱がしているところを。
「とりあえず言っておくが、あの子に手を出すなよ?」
「……あの子?」
「昨日、お前が脱がしかけた子だよ」
「優雨のことか?妾は、親睦を深めただけだぞ!」
「それで、なんで脱がすんだよ……」
そんな話をしながら、冷蔵庫に入っていた最後の二枚である食パンを二人で食べ終え(延珠は「物足りない!」と、言っていたが)、準備をして家を出る。
家を出てから一○分ほど経ち、もうすぐで会社に着く頃だった。
「む、蓮太郎。あそこにいるのは、木更ではないか?」
延珠が前方を指さし、蓮太郎は自転車を止めて指さす方向に目を向けると、黒いストレートの長く美しい髪を持ち、美和女学院のセーラー服を着たバッグ肩に掛けている女性の姿が見えた。
「あ、本当だ……おーい、木更さーん!」
木更は、自身の経営する会社へと向かう道中、一つため息を吐いた。
昨日の午後八時頃、蓮太郎から電話があり、ガストレアを横取りしてきた女を会社へ泊まらせる、ということだった。取り敢えず、泊まって良いことにはしたのだが……それよりも。
「今月の学費どうしよ……」
今の木更は、学費、食費、家賃とその他諸々で頭が一杯だった。"横取り女"の事など、二の次、三の次である。言ってしまえば、どうでもいい。また、次の依頼を確実にこなせばいいだけの話だからだ。
「おーい、木更さーん!」
そんな事を考えていると、背後から誰かに呼ばれていた。振り返ってみると自転車に乗った蓮太郎と延珠が走ってきた。
蓮太郎と延珠は、木更の隣まで来ると自転車を降りた。
「よっ、木更さん」
「おはようなのだ、木更!」
「おはよう。里見くん、延珠ちゃん。今日は早いのね?」
「ああ。延珠が早くあの子に会いたいってきかなくってな……」
「あの子って……優雨ちゃんのこと?」
あの子というと、昨日夜鈴という女と一緒にいた女の子の事だろうと思い言ってみると、蓮太郎は少し困ったような顔をしながら首を縦に振って肯定してくる。
蓮太郎の表情から察するに延珠ちゃんが、何かをしたのだと木更は想像する。
「じゃあ、行きましょう?いろいろと、話も聞かなくちゃいけないわ」
「ああ、そうだな木更さん」
その後、蓮太郎と延珠、木更の三人は数分歩き「天童民間警備会社」の看板が掛かっている四階建てのビルが見えてくる。三人は、備え付けのエレベーターで三階まで昇っていく。
「木更さん。アイツのこと、どう思う?」
「夜鈴のこと?それが、分かれば苦労しないわ。何を考えてるのかよく分からないもの」
事実、夜鈴の事はよく分からない。無表情で眠たそうな目をしている。ついでに一晩泊めてくれと言う始末だ。得体の知れない者を泊めるのは抵抗があったが、木更には気になる事があった。
「というか、二人とも気をつけてよね」
「気をつけるって……何をだ、木更さん?」
「昨日の夜に調べたのよ東京エリアにある全民警を調べたのよ。そしたら、『黒藤夜鈴』なんて人物は存在しなかったわ 」
「どういうことなのだ、木更?」
「つまり、東京エリアに存在しない人物よ。他のエリアから来たのかどうかは分からないけれど」
蓮太郎は腰に差しているXD拳銃のセーフティーを静かに解除する。
エレベーターが到着し三人は降りる。木更は扉の前に立つと、ドアをノックした。
だが、部屋の中から返答はなく静まっていた。
「寝てるのかしら?」
木更は、仕方なくバックから鍵を取り出し扉を開けて部屋に入る。
「あはよう。まだ、寝て……る……」
木更が部屋に数歩入ったところで止まる。どうしたんだと思い、蓮太郎は声をかける。
「どうしたんだ、木更さん?」
蓮太郎は木更の隣まで来てみると、固まっている理由が分かった…………どうせなら、分かりたくなかったが。
二人が目にしたものは、“夜鈴が優雨を抱き、唇を重ねていた”。
その光景を見て、蓮太郎も木更と同じように固まってしまった。二人の間から頭を出した延珠も目を丸にして驚いた顔をしていた。
数秒すると、夜鈴と優雨の唇が離れる。夜鈴の方は、目をつぶったままでいる。優雨は重傷だった。顔を熟れたトマトのように真っ赤にし、目は泳いでいる。心ここにあらず、といった感じだった。
それまで寝ぼけていた夜鈴がゆっくりと目を開けて、目の前に優雨が居ることに気がつく。今の状況が理解できず、周りを見ていると蓮太郎達と目が合う。
「…………」
「…………」
少しの沈黙。誰もが動けないでいると、木更が震えている手で携帯電話を取り出す。横から見てみると、木更が打った番号は、「110」だった。
「す、すぐに……警察呼ぶから……」
「落ち着け、木更さん!!」
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます!
自分的には今回、キマシタワー展開を書いてみました(願望)
よくわからなかったら、ごめんなさい(汗
次回は多分、中編になるやと思います( ̄▽ ̄)