この時期になると、仕事などいろいろとやる事が多く執筆が疎かになってしまいます。次からは気を付けよう うん。
というか、今年も暑いですね〜(汗ダラダラ
「「何があった?」」
「おー、蓮太郎!ようやく来たか!」
蓮太郎がドアを開け、中に入ると赤い髪をツインテールにした女の子が目の前に居た。その子は、ソファに仰向け(ボロ布が脱がされ、半裸の格好)で寝ている優雨の上に馬乗りになっていた。
「延珠……お前、何やってんだ?」
「親睦を深める為に……」
「それで、なんで、服を脱がすんですか!!」
優雨が悲鳴混じりに叫ぶ。延珠という赤い子がどうして、そのような行動に走ったかは知らないが、取り敢えず優雨を救出しておいた方が良いだろう。
夜鈴は優雨の寝るソファへと移動し、優雨を起こして座らせ立て膝になり、半ば脱がされたボロ布を直そうと手を掛ける。が、途中その手が止まった。それは、優雨の身体に打撲や切り傷がボロ布の隙間から見えたからだ。
「……」
その傷は、長い間差別や迫害、暴力を受けてきた事が強く伝わってきた。
「…………」
「夜鈴さん……?」
「ん?いや、なんでもない」
黙ってボロ布を優雨の肩に掛け、立ち上がって蓮太郎に問う。
「銭湯ってのは、どの方向だ?」
「このビルから出て、右に歩いてきゃすぐだ」
「そうか…」
壁に掛けられている時計を見て時間を確認する。六時五分だった。
風呂にはまだ早いな。と、夜鈴は思う。
「じゃ、俺らは帰るよ。飯ならさっきのコンビニに行ってくれ」
「蓮太郎!もう行くのか!?」
「バカ言ってんな。もうこんな時間だ飯も作んなきゃいけねーよ」
「むう。それでは優雨、またなのだ!」
優雨は未だに延珠に対して怯えていたようだが、立ち上がって頭を下げる。
蓮太郎と延珠が出て行き、夜鈴と優雨が部屋に残される。
「先に飯にしよう」
ーーーーー
夜鈴は優雨とコンビニへと向かい、数多くある商品の中からどれにしようかと迷っていた。だが、どの品物も見た事が無い物ばかりで、コンビニというのも初めてな夜鈴はすごく困惑していた。
「夜鈴さん……」
「どうした、ユウ」
そこに、優雨が声を掛けてくる。
「あの……その……」
「……?」
躊躇うように言い淀む優雨。その手には、『ビスケットサンド』と記された商品が握られていた。おそらく、それが欲しいのだろう。
「買っていいぞ。それと、他に欲しい物があったらもってこい」
嬉しそうに頷いた優雨は、店の奥へと走っていく。
ーーーーー
その後、事務所に戻ってきた夜鈴と優雨は、ソファーに座り、コンビニで買った商品を机に広げて食べる準備をする。
優雨が食べる前に手を合わせて、「いただきます」と、挨拶をするが、夜鈴は挨拶をせず、一つおにぎりを手に取る。
「なぁ優雨。これは、どうやって食べる?」
「えっと……一番上をつまんで、下へと引っ張ってください……」
「こうか?」
優雨に言われた通りにおにぎりを包んでいるビニールを剥がしていく。海苔は破けてしまったが、なんとか剥がし終わる。
おにぎりを一口かじる。
「ん……?」
「ど、どうかしましたか……?」
「なんか、いつも食べてるやつと味が違う」
「いつも、食べてるもの……ですか?」
「ああ。ムツミって子が小腹が空いた時によく作ってくれてな」
「美味しくないですか?」と、優雨は首を傾げてくる。夜鈴は「いや、新しい味だなって思ってな」と、返して食事を進めていく。
自分の食べる分を食い終え、向かいに座る優雨を見ると、なぜか急いで食べていた。
「そんなに急いで食わなくていい。ゆっくり食え」
「は、はい…!すいま、げふッ!げふッ!」
「急いで食うからだ。ほら、これ飲め」
優雨にお茶を差し出し、それを優雨が受け取ってゴクゴクと喉に詰まった物を流していく。
「…ふぅ……ふぅ……。うぅ…すみません……」
「謝る事じゃない。それ食ったら風呂行くぞ」
「は、はい!……はむはむはむ……」
「いや、だから急がなくていい……」
案の定、喉に詰まらせた優雨に再びお茶を飲ませる事になるのだった。
その数分後。夕飯を食べ終えた二人は、銭湯に行く為の準備をして事務所を出た。
ーーーーー
「……ふふっ……」
銭湯へと歩いてる中、優雨が小さく笑っていた。
「ん…どうした、何を笑ってる?」
「はっ!?……す、すみません!」
「いちいち謝るな。で、どうしたんだ?」
「そ、その……銭湯に行くの、久しぶりなんで……」
「それで、嬉しいのか。肉親に連れてってもらってたのか?」
「はい……おばあちゃんに連れていってもらって……」
「そうか」
それ以上夜鈴は問うことをしなかった。優雨の顔が少し暗くなった様な感じがしたのである。
それから程なくして、優雨が指差して言う。
「あ、ここです……ここが、銭湯です」
「ここが……?」
なかなか雰囲気の良さそうな建物が目に入ってくる。高さにして、二階建てぐらいだろうか木造の『家』が建っている。奥域も合わせると結構広そうだ。扉の前には、『ゆ』と書かれた青い布が掛けられている。この布がまた良い味を出しているな、と感じた。
「……行くか」
「は、はい……あ」
「どうした?」
中に入ろうとしたところで、優雨が立ち止まる。
「その……や、夜鈴さんだけで行ってきて、ください」
「どうして……」
なるぼど、そういう事か。
優雨が自分の羽織っているボロ布を握っている。そうか、その身なりでは入りづらいという事だろう。なら……。
夜鈴は、左膝を地面につけ、片膝立ちになると優雨のボロ布を掴み、一気に剥がす。
「……………………」
優雨は、一瞬キョトンとした表情で棒立ちになるが、すぐに思考を復活させると顔を真っ赤にして胸元を右腕で下の方を左腕で隠す。
「な、なな、なにを………ッ!」
夜鈴は優雨の問いかけに答えず、無言で自分の上着を脱いで優雨の肩に掛ける。
「これで良いだろ?」
「え……?」
「行くぞ、優雨」
「は、はい!」
(もしかして、わたしを気遣ってくれた?)
優雨は小さく微笑むと、夜鈴の上着の襟元をぎゅっと掴み、夜鈴を追って銭湯へと入った。
かた苦しい文章で読んでくださった方、ありがとうございます。
次話は、一ヶ月中に投稿する予定ですが、遅れる危険もあるのでご了承ください(>人<;)