ブラック・ブレット【神を喰らう者】   作:黒藤優雨

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会話って難しいなぁ
と、考えていたらこんな時間・日付になってしまった。

今回は、長めに作ってみました。どうぞ〜


第三話【決意 中編】

「こいつ……」

 

左右を石で作られた壁が並べられており、その間にある路地で夜鈴は"蜘蛛"と戦いを繰り広げていた。

 

(やはり、そうだ)

 

"蜘蛛"が前脚を振り下ろしてくる。それを、装甲を展開して防ぎ、そして、確信した。

 

「やっぱり、弱い」

 

「キシャァァア!」

 

弱いと言った事を怒ったように不愉快な鳴き声を上げ、もう片方の前脚も振り下ろして装甲を押してくる。

 

(コンゴウ以下、下手したら、オウガテイルより弱いか)

 

脚に力を溜めて、"蜘蛛"の脚を押し返す。

 

押し返され、顔がガラ空きになったところに右から半円を描くように斬り込む。

 

「浅いか……」

 

奴の眼を二つ程潰したが、斬り込みは浅かった。

 

怒りに任せて右前脚を横薙ぎに振ってくる。それを、ステップで後方に避け、距離を取る。

 

(奴の顔に突き刺して、インパルスエッジで終いだな…)

 

そんな事を考えていると、"蜘蛛"が恐るべき速さで距離を詰めてくる。これには、夜鈴も身体が一瞬固まってしまった。

 

(しまっ……!?)

 

慌てて装甲を展開しようとしたが、間に合わなく、"蜘蛛"の体当たりが直撃してしまう。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「向こうか!」

 

蓮太郎は爆発でも起きたかのような物凄い音を察知し、音源の場所へ走って行く。

 

「居た……!!」

 

戦闘がもう既に始まっていたようだ。左側の壁が崩れて砂煙を巻き上げている。

 

「クソッ!!」

 

蓮太郎は腰からXD拳銃を引き抜き、弾倉一本を撃ち尽くす。

 

「キシャアア!!」

 

ガストレアは悲鳴を上げるが、倒すには至らなかった。XD拳銃に弾を再装填し、再びガストレアに銃口を向ける。

 

だが、蓮太郎は引き金を引かなかった。否、引けなかった。横から黒い剣がガストレアの首に突き刺さってきたのだから。

 

「へぇ良い動きするじゃねーか」

 

「グガゥァァアァ!?」

 

ガストレアが悲鳴を上げるが、夜鈴は構わず深く、深く、剣を押し込んでいく。押し込む度に、ガストレアの首から紫色の血液が、破損した水道管のように吹き出る。

 

「喰らいな……」

 

いきなり爆発した。ガストレアの頭が飛んでくる。身体の方は、頭を失ったことにより、その場に倒れた。

 

ガストレアの沈黙を確認し、夜鈴は剣を左から右へと振り、血を振り落としている。

 

その一瞬の出来事に蓮太郎は、恐怖を感じた。夜鈴の顔が、事務所で見た眠そうな表情ではなく、目は吊りあがり、口は三日月を描いたような形をしていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「ええ……そうなの……ありがとう、延珠ちゃん」

 

そう言って、木更は電話を切り、優雨の向かい側のソファに座る。

 

「貴女、お名前は?」

 

その頃、夜鈴と蓮太郎が出て行き、優雨と木更の二人が残っていた。そこに木更が質問してくる。

 

「ッ……!!」

 

優雨は話しかけられ、ビクッとしてしまう。

 

木更は、柔らかく微笑みながら、話しかけてくる。

 

「そんなにビクビクしなくて大丈夫よ?私は貴女に危害を加えるなんてしないから。もし、良かったら名前を教えて?」

 

「こ……不来方……優雨」

 

不安で押し潰されそうになりながらも、なんとか自分の名前を言い出す。

 

「優雨……ちゃんね?私は天童木更、この民警の社長をしているわ」

 

「民警……?」

 

「ええ、東京エリアに侵入してきたガストレアを退治するのが仕事よ」

 

「…………」

 

ガストレアという単語に一瞬身体が強張ってしまう。この木更という人は、悪い人には見えないが、優雨は長い間色々な人から差別をされてきて、人と関わるのが苦手になってしまっている。

 

だが、何故だろうか。優雨は夜鈴と初めて会った時、恐れを抱いていなかった。

 

「ねぇ優雨ちゃん?」

 

「はにぅ!?え、あ、はい。なんですか?」

 

木更の顔が、吐息を感じそうな距離にあった。どうやら、覗き込んでいたらしい。

 

「ぼーっと、してるけど、大丈夫?聞こえてなかったみたいだけど……」

 

「あっえっと……すみません……」

 

「大丈夫よ。まぁ丁度、来たしね」

 

来た?来たとはどういう事だろう。と、思っていたら、木更の目線が優雨から見て右側に寄せられていた。右へと顔を向けると……。

 

「ふにぁぁあぁぁあ!!」

 

右を向いた瞬間、赤いツインテールの女の子の顔がそこにあった。驚いた衝撃で、床に落ちてしまう。

 

「おー、お主!なかなか、面白い驚きかたをするな!」

 

「あ、貴女は……?」

 

「妾は、藍原延珠!お主が、優雨か?」

 

「そ、そうですけど……(あれ?なんで、名前を……?)」

 

「ごめんなさい。私から延珠ちゃんに連絡して、来てもらったの」

 

疑問に思っている優雨に木更が補足して、言葉を続けてくる。

 

「申し訳ないんだけど、私、これから行かなきゃいけない所があるから来てもらったの」

 

「ご、ご迷惑かけてすみません……」

 

「いいのよ。じゃあ、行くわね延珠ちゃん。あとはよろしくね?」

 

「心得た!」

 

優雨と延珠を残して、木更が退室する。瞬間、延珠がキラキラと輝く瞳で優雨を見てくる。

 

「え、えっ……と……」

 

優雨は、その瞳から何かしらの危機を感じた。距離を取ろうとすると、延珠が優雨に向かって飛びついてくる。

 

 

ーーーーー

 

 

蓮太郎と夜鈴は、ガストレア討伐を終え、木更の事務所に帰ろうと歩いていた。

 

そして、蓮太郎が話しかけてくる。

 

「で、マジなのか?さっきの話は」

 

「さっきの話?」

 

「居候だよ、自分から話しといて忘れんな」

 

ガストレア討伐をネタに蓮太郎の所属する会社の事務所に居候させてもらう約束を取り付けた事だろう。

 

「ああ、マジだ」

 

「はぁ。木更さんには俺が説明しとくから。とりあえず、他に聞きたい事はあるか?」

 

「シャワーはどうすれば?」

 

「近くに銭湯があるから、そこを使え」

 

「分かった」

 

「しかし、どうも腑に落ちないな」

 

「なにが?」

 

「ここは、お前の世界じゃなくて、別の世界から来たって事だよ」

 

「さぁな、まだ情報不足だ。それに、その事はその木更って人も一緒に話した方が良いと思う」

 

「ま、その方が助かる。お、着いたな」

 

蓮太郎が足を止めて、見上げる。夜鈴も見上げると、『天童民間警備会社』と書かれた看板があった。

 

「取り敢えず、今日はここを使ってくれ」

 

「ああ、分かった」

 

蓮太郎がドアを開け、中に入る。

 

「「何があった?」」

 

目の前に起こっていた事象を見て、蓮太郎と夜鈴の声が重なった。

 


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