ブラック・ブレット【神を喰らう者】   作:黒藤優雨

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投稿期間を相当過ぎてしまった……
けして、GERBに没頭していた訳ではない。

今回は、少し短めですが、楽しんで頂ければ幸いです。


第三話【決意 前編】

「あんた、さっきの!?」

 

「よう。また会ったな」

 

扉を開けて入ってきたのは、さっきの依頼でガストレアを殺った女だった。

 

「里見くん、知り合い?」

 

「例の民警だよ、木更さん…」

 

「黒藤 夜鈴だ。よろしく」

 

木更さんの所まで歩いて、黒い腕輪が嵌められた右手を差し出した。

 

「ど、どうも。天童 木更です……」

 

困惑しながらも、木更は出された手を握る。と、木更は小さな存在に気が付いた。

 

「その子は、貴女のイニシエーターかしら?」

 

木更さんが向ける視線の先には、ボロ布を頭まで被った延寿と同い年くらいの女の子が、夜鈴の後ろに隠れるように身体を隠してくっついていた。

 

「イニシエーター?なんだ、それは」

 

「あんた、民警だろ?あんたのイニシエーターじゃないのか?」

 

「いや、オレは民警じゃないが……ユウはイニシエーターってやつなのか?」

 

夜鈴がユウと呼んだボロ布の子に目線を向ける。ユウは首をふるふると横に動かしている。違うって事だろう。

 

「?……まぁいいわ。取り敢えず、こちらへどうぞ」

 

木更がソファに座るよう促し、蓮太郎と木更も向かい側に座る。

 

「まず、貴女は何者なの?民警じゃないって言ってたけど…」

 

「フェンリル極致化技術開発局のブラッドだ。聞いたことないのか?」

 

「フェンリル…狼のことか?」

 

「まぁそうだな。そういえば、お前、拳銃使ってたよな?神機使いは居ないのか?」

 

「まぁな。てか、神機使い?」

 

「これだよ。この腕輪」

 

腕輪を見せてくるが、言っている意味が分からなかった。

 

「どうなってんだ……?」

 

夜鈴が右肘を左手に乗せ、顎に親指と人差し指をつけて考え込んでしまう。

 

木更さんが蓮太郎の耳に顔を近づけ、小さく耳打ちしてきた。

 

「ねぇ里見くん。この人本当に何者なの?言ってることが、よく分からないんだけど……」

 

「それは、俺も同じだよ木更さん」

 

「それに、彼女の挙動に隙が無いわ。相当の実力者と思える」

 

「ああ、それは間違い無い。奴の戦いを見たけど、動きに無駄が無かった。てか、木更さん奴の情報とか分からないか?」

 

「調べてみたわよ。所属している会社どころか性別も名前も分からなかったの。少なくとも、東京エリアの人間じゃないわね」

 

木更の情報を聞いて、警戒の色を濃くしながら夜鈴に目を向ける。夜鈴は体勢を変えずに深く考え込んでいるようだ。

 

そして、何か考え至ったのか、落としていた視線を上げ、木更に口を開いてくる。

 

「なぁ。今って、2074年だよな?」

 

そんな事を聞かれ、木更と蓮太郎は口籠った後、木更が夜鈴の問いに答えた。

 

「いえ、今は2031年だけど……何故?」

 

「2031年…」

 

夜鈴がキッと目を尖らせ、黙り込んでしまう。

 

「……ねぇ貴女……」

 

ピピピッ

 

「あ、ちょっと、失礼するわ」

 

夜鈴は答えず、黙ったまま動かずにいた。木更は、音の発信源である社長机の上にあるノートパソコンを開き、キーを打ち出す。

 

キーを打っていた手を止め、蓮太郎に叫ぶ。

 

「里見くん、依頼がきたわ!場所は、さっきのマンションの近くよ!!」

 

(またか、もし感染源ならさっさと片付けなーと!)

 

「分かった!!悪い、ちょっと空け……あれ?」

 

向かい側のソファに夜鈴の姿は無く、優雨の姿だけが残されていた。

 

「おい、あいつは!?」

 

「え、えと、夜鈴さんなら今……」

 

ユウの指差す先には、開け放たれたドアが力無く動いていた。どうやら、一足先に出たようだ。

 

「早ッ!?」

 

「里見くん、追って!!」

 

「クソッ!」

 

木更の号令の下、蓮太郎は脱兎の如く飛び出す。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

(一日に二度もアラガミが入ってくるとは、ここのアラガミ防壁どうなってるんだ?あ、そういや、防壁無いじゃん)

 

夜鈴はコンクリートで舗装された地面を滑走していて、そんな事に気付く。

 

(だが、もしオレの考えが合っているとしたら、相当やばい事になってる。でも、情報量に欠けるな)

 

「ああああぁぁあ!!」

 

もう少し情報を集めようと考えていると、男の悲鳴が聞こえてくる。

 

「あっちか…?」

 

声の聞こえた大きさからして、結構近い。道を左に曲がって対象を見つける。

 

「あいつか……」

 

3、4メートルはあるだろう大きい胴体に、八本の長い脚、黄色と黒の体毛を生やしていた。いわゆる蜘蛛だ。

 

(さっきの同じタイプか……取り敢えず)

 

夜鈴は走りながらケースのロックを外し、開いた隙間から手を入れて神機の柄を握る。そのままケースごと神機を上空へ振り上げ、ケースを取り払う。

 

(走ってじゃ間に合わない、か)

 

神機を銃形態に変更する。今にも青い服の男を喰おうとしている"蜘蛛"の口に照準を合わせ、引き金を引く。

 

「キッシャァァア!!」

 

火炎属性の弾丸は赤い線を描いて"蜘蛛"の口に着弾し、"蜘蛛"は甲高い悲鳴を上げ後退する。

 

「下がれ」

 

男の横まで来てそう言うが、男は腰を抜かしたまま動かない。

 

「え……?」

 

「早くしろ」

 

「は、はい!」

 

銃口を"蜘蛛"に向けながら、催促する。こちらの意図が分かったらしく男は、立ち上がって後ろへ走り去って行く。

 

「さて、始めようか」

 

夜鈴は口を三日月に歪ませていた。戦闘と闘争、両方を楽しむ為に……。

 

 




今回の回は、短いので前編とさせていただきました。
中編か後編か分かりませんが、お楽しみに〜

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