ブラック・ブレット【神を喰らう者】   作:黒藤優雨

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今回、この作品が第一号です。
色々と至らない点が有ると思いますので、
「これ、ダメだな」などと思った方はブラウザバックを
「これ良いんじゃない?」などと思った方は、是非、ご意見、不備な点などのコメントを受け付けます。



第一話【出会い】

「…ハッ……!」

 

闇に染まった地表を満月が照らす中で、黒藤 夜鈴の脳は起動された。

 

「ここは……森…?」

 

上半身を起こして、周りを見回すと、至る所に地面から木が伸びていた。

 

「…ぐッ……」

 

夜鈴は立ち上がったと同時に耳鳴りの様な感覚と頭痛が頭を襲った。

脳内に今居る場所とは違う場所の映像が再生される。

目の前には、狼のような顔をしたアラガミが三体、背後には巨大な虎が夜鈴を挟むように陣取っている。計四匹が、同時に飛びかかるが、夜鈴は神機を用いてこれを殲滅した。そして、仲間と合流する為に自分は合流場所へ向かう途中、何かの衝撃を受け、そこで映像が途切れた。

 

「ナナ、ギル、シエル、誰か応答を頼む…」

 

通信機が壊れてるのか、砂嵐のようなノイズしか聞こえなかった。

 

「……神機は…」

 

仲間への通信を止め、自分の"神機"を探す。

幸運な事に自分の寝ていた近くに落ちていた。膝ぐらいの草むらから自分の背丈程の無骨で真っ黒の剣を取り出し、腕輪と神機を接続する。

 

「神機との接続…問題なし。銃身への変形…問題なし。シールド…問題なし」

 

"神機"に内蔵されている全てのパーツの機動を確認し、他の装備品の確認へ移る。

 

「アイテムはそのまま…か…さて、どこに……」

 

装備品の確認を終え、歩き出そうとした瞬間、後方に何かの気配を察知し、前方の地面に飛び込み、前転し、上体を起こす。そして、今まで自分が立っていた地面を"何か"が抉った。

 

「(アラガミ?いや、でもなんか違う。)」

 

地面を抉った"何か"が土煙りの中から赤い二つの光を発しながら出てくる。黒と黄色のツートンカラー、二本の鎌の形をした腕と長い身体に六本の細い脚をしていた。

 

「新種?面白い……」

 

女は不敵に口を弧に描き、"神機"を腰に構える。

だが、女を囲う様に気配が四つ増えた。

 

「フフッ…そう来ねぇと、な!」

 

 

夜鈴の声を号令にして、夜鈴と五体の闘争が始まる。蒼く澄んだ瞳には、心の底から闘争の意思が見えた。

 

 

〜次の日〜

 

 

昼前の朝に自転車を爆走させる高校の制服を着た黒髪の男、里見 蓮太郎はとあるマンションの前で自転車をドリフトによって止める。

 

「ここか…!」

 

〜マンション入り口〜

 

「…で、お前が今回の俺たちの応援だってぇのか?」

 

「ああそうだよ、里見 蓮太郎。民警だ。ライセンスもあんよ」

 

木更さんの連絡を受けて現場のマンションにいた。蓮太郎は、多田島警部にライセンスを見せる。

 

「けッこんな不幸面な高校生の力借りなきゃならんとは、世も末だなぁ全くよ」

 

ライセンスをひったくる。

 

「なぁ仕事の話しをしねぇか?」

 

「……こっちだ」

 

多田島警部に促され、エレベーターにのる。

 

「被害者は、マンション四階の一番端に住んでいる。男性一人暮らしだ」

 

「下の階の住人が、血の雨漏りがするってんで通報してきた」

 

「そういや、お前とこのイニシエーターはどうした?」

 

「え?」

 

「お前らは、二人一組だろ?片方どうした?」

 

「あ、いや、こんぐらいの仕事、俺だけで充分だと思ったんだよ…」

 

そうこうしている間に、現場の部屋のドアに付く。

 

多田島警部は突入隊の格好をした部下に話し掛けた。

 

「状況はどうだ?」

 

「ハッ部隊員のニ名が窓から突入…連絡が途絶えました……」

 

多田島警部が、部下の胸ぐらを掴んで怒鳴る。

 

「なぜ突入した!!あれほど、勝手に動くなと言ったろ!!」

 

「だって、民警に手柄を取られたくなかったんですよ!!」

 

蓮太郎は、腰から拳銃を抜き出し、初弾を装填する。

 

「多田島警部どいてくれ、俺が行く。」

 

そう言ってドアの前に立ち、深呼吸する。

 

準備を整え、ドアを蹴破って部屋に突入した。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

五体の新種と思われるアラガミとの闘争の後、巨大な建築物を発見し、その先へ進んだ。

夜鈴の手には、この街に入る前に拾った大きい長方形のアタッシュケースが握られていた。中には神機が入っている。

 

「(なんだったんだ?あの新種のアラガミ…)」

 

捕食してもコアが取れなかった。それに、死骸が消滅しなかっし、そのまま残ってたから"喰った"けど、職員に聞けば分かるだろうか。

 

「(とにかく、ここの職員を探そう。そうすれば、保護もしてくれるだろうし)」

 

「てめぇ目障りなんだよ!!」

 

「?」

 

広く開けた場所に出て、何かを罵るような男の声が聞こえた。何事かと女は声の発生源へ目線を向けると、広場の中央に噴水が見えた。そこに人混みが出来ていて、汚れてボロボロの布を纏った少女が暴行を受けていた。

 

「このガストレアが!」

 

ガストレア?あの女の子の事か?

 

その時、人集りの中に居た茶髪の男が女の子を蹴り飛ばした。その衝撃で、女の子は噴水の台に背中が激突する。

 

「…ッ……!?」

 

夜鈴は咄嗟に女の子の下へ走り出し、男の目の前に立ちはだかる。

 

「あ?なんだ、テメェは?」

 

「只の通行人だ。なぜ、この子に暴行をする」

 

「テメェ!そいつの"目"をよく見てみろよ!」

 

「…目?」

 

男は女の子に向かって指を指す。

夜鈴は肩越しに目線を向けて、女の子の目を確認した。赤目だった。

 

「それだけ?」

 

「ああ、そうだよ!赤目は"呪われた子供たち"の証拠なんだよ!!そいつを殺さなきゃいけないんだよ!!」

 

「そうだ!ガストレアをぶっ殺せぇー!!」

 

「"赤目"を許すなぁー!!」

 

女の子の周りに集まっていた人達も、男に便乗して口々に罵声を浴びせてくる。

大半は女の子に向けてのものだった。

そして、聞こえてくる言葉も決まっていた。『ガストレア』『赤目』『呪われた子供たち』

 

つまらない…

 

「ほら、分かっただろ?さっさとそこを…」

 

そんな、つまらない理由で罪もないこの子を殺す?

 

「だまれ」

 

無意識にそんな言葉を発していた。

 

夜鈴から発せられた言葉は、それまで聞いていた声とは違い重く、冷たく、得体の知れない感情が男と周りに居た人達を一瞬にして凍りつかせた。

 

「て、テメェ!ガストレアを…」

 

「もう一回言ってみろ」

 

「ああ、言ってやr…」

 

ドンッ!!

 

いつの間にか、男を殴っていた。無意識に、しかし確実に、胸に直撃を食らった男は、立っていた場所から3メートル先に頭から床に激突、そこから2メートル数回転し、、男は倒れたまま動かなくなった。

夜鈴は、蒼く澄んだ双眸を人集りへと向け、次の対象を探す。

 

「さぁ次はどいつだ?」

 

人集りに向けられた蒼い双眸からは、戦意を削ぐには十分過ぎる程の殺意が込められていた。

 

彼女を取り巻いていた人混みは、溶けるようにして崩れていった。

 

「腰抜けが…」

 

逃げていった人達に向かって台詞を吐き捨て、女の子の方へ歩み寄ってしゃがんだ。

 

「大丈夫か?」

 

「あ…はい、大丈夫です…」

 

「なんだってあんな事をされるんだ?」

 

女の子は俯きながら、答えた。

 

「私が……『呪われた子供たち』だからです……」

 

また、この単語だ。意味はさっぱりだが、差別用語には違いないと確信する。

 

周りから視線を感じた。

恐怖、怒り、といった感情が込められていると直ぐに分かった。

女の子も視線を感じたのか身体を小刻みに震わせている。早急にここから立ち去ろう。

 

「立てるか?」

 

「え、あ、はい…痛ッ……」

 

苦痛を聞いて見やると、女の子の脚から出血していた。足下にガラス片がある。立った時に踏んだなだろう。

 

「ちょっと、我慢してくれ」

 

「え、ちょっ……?!」

 

有無を言わせず女の子を担いで、ケースを持って広場から立ち去る。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

広場を抜け路地に入った先に公園があった。夜鈴は女の子を椅子に座らせ、消毒を済ませた傷口に包帯を巻いていく。

 

「ありがと…ございます……」

 

治療を終えると、女の子は頬を赤らめながら俯き加減に礼を述べてくる。

 

「気にするな。オレは黒藤 夜鈴(ヤスズ)お前は?」

 

「……不来方 優雨(こずかた ゆう)です…」

 

「ユウ…だな?家はどこだ、送ってやる」

 

「……」

 

ユウは俯いて黙ってしまった。ユウの顔は、暗く、目には溢れんばかりに涙が溜まっていた。心配になって、膝立ちになって視線を合わせると、椅子に座っていたユウが胸に飛び込んでくる。

 

「ひっぐ…ひっぐ…クスン…」

 

突然のことに驚いたが、泣きじゃくっているユウにかける言葉は見つからず、落ち着かせようと左腕で抱き、右手で栗色の頭を撫でた。

 

〜数分後〜

 

「落ち着いたか?」

 

「はい…すみませんでした…いきなりあんなことを……」

 

数分の間、自分の肩に顔を押し付けて泣いていたユウの精神状態は落ち着きを取り戻し、さっき買ってきた(自販機を殴ったら出てきた)缶ジュースを握っている。

 

「気にするな。で、これからどうする?」

 

やはり、黙ってしまった。格好から見る限り、孤児なのだろう。着ている服ががボロ布一枚とは、ここのお偉方はどういう神経をしているのだろうか。考えるだけでも、腹が立つ。

 

「あ、あの、付いて行っちゃダメですか?」

 

「なに?」

 

突然、そんな事を聞かれる。

 

「親や親戚はいないのか?」

 

オレの質問に、ユウはコクリと首を縦に折る。肯定という意味だろう。

 

「別に構わないが、大丈夫なのか?」

 

「はい。もう、行く所なんてありませんから…」

 

「……」

 

ユウの言葉が、深く胸に突き刺さった。見た目からして、十歳程の女の子がその短い人生で何を体験したか分からないが、何かがオレと同じだと思った。

 

「分かった。連れて行こう」

 

「本当ですか!?」

 

初めてユウが笑った。伏し目がちだった目はパッチリと開き、口元も柔らかく、なんて言ったら良いのだろう。とにかく、笑っていた。

 




最後まで読んで頂いた方、ありがとうございます。
次の投稿は来月以降になると思いますのでそれでは皆様、また次回お願い致します。

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