【完結】剣士さんとドラクエⅧ   作:四ヶ谷波浪(ryure)

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89話 前駆

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 はーい私たちどこにいるでしょうかっ? 残念、まだ闇の遺跡じゃないよっ!

 

 ヒントは私の目の前にいる魔物かな! でっかい……サメ? 他になんといったら分からないね、こいつ! 正しく名前の通り「海竜」としか言い表せないね!

 

「ほらほらこっち狙ってみてよっ」

「トウカ、必要以上に煽るなッ」

 

 ここまで来たら答えは簡単だよね! 正解は船の上でした! いやぁ、あの鏡、魔力失ってるというのはやっぱり正しかったんだけど、力を取り戻す方法がこの魔物が放つ魔法を浴びせるって、なかなかめんどくさいよねっ!

 

 あ、でも一回浴びせるだけと見たらお手軽かも? 見解の相違ッ! ずーっと魔法をかけ続ける必要がないってよく考えたら魔力的にエコだし!

 

 今ね、私は海竜を煽って煽って魔法を使わせようとしてるんだ。ほかの魔物はいないし、倒しちゃいけないからちょっーとつまらないけど! 仕方ないよね! エルトは後ろで鏡を掲げて待機してるし、ククールはスクルトと小言しか言ってないし、ゼシカは丸焼きも氷の串刺しにも出来なくてやきもき、ヤンガスは私と一緒で暴れれなくて不満って感じ! 早く唱えてよー倒すからー!

 

 目の前で空振りしてみたり寸止めしてみたりしてね、煽る煽る!

 

 えっと、なんだったかな。魔法、ちっとも使えないけど知識だけは豊富な私、ちゃんとこの海竜が使ってくる魔法の名前も覚えてたんだよ。ど忘れ……うーんもやもや。

 

 とか余裕でもないけど考え事してたら唱えてきちゃった! 効果は……端的に言えばマヌーサ。急いで顔を背ける。そうだ、思い出した! ジゴフラッシュだ! 目が眩んじゃう魔法で焼け付くようなダメージも少々! 魔法に弱い私にはかなり痛い! 全身じわじわ焼かれてるぅ!

 

 目を閉じるぐらいじゃかわせない魔法だけど顔を背けたからなんとかなって、他のみんなが視界を奪われている間にさっくり首を落としてトドメっと。トドメ? いやいや一撃で倒したけどさ! 魔法でみんな見えなくなったら大変なことだけど本体はそこまで強くない、かなぁ……?

 

 日焼けになりすぎた時よりなおひどい全身の痛み。戦闘中なら多少の痛みは私にとって戦闘のスパイスみたいなもので気にしないんだけどそうじゃなかったら煩わしい。聖水をまいてもここじゃ無駄かなとか考えてるうちに視界が治ったエルトに治してもらって、無事魔力が回復した鏡を見せてもらう。

 

 ……おー……。全く違いが分からない。

 

 ククールはどう思う? え、ぜんぜん違う? 魔力、伝わってくる? へぇー……いけそうな感じかな? じゃああの忌々しい霧を払えるよね!

 

 ちなみに、夢とか泉とかいろいろあったせいでテンション上げるしかない、俗に言う笑うしかない今私は最っ高にハイってやつ!

 

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 新調したばかりだというのに折ってしまった槍の代わりに予備にしていた砂塵の槍を振り回し……強い武器を奥の手にしておいただけ……片手にはベギラゴン。ククールも片手はベホマラーしてるけど同時にバギクロスを唱えて正直同時に何もしてないのはしようもないヤンガスとトウカぐらいだと思う。それぐらい魔物は強かったし、数も多かったし、僕たちは弱すぎた。

 

 一般的な意見で、客観的に考えてみたら僕達すごく強い、と自惚れ抜きで思うけど……ここは別格。赤いミイラ男……ブラッドマミーの数は半端じゃないし、そいつらが放ってくる呪いの玉が効かないのは僕とトウカだけで他の皆は二割ぐらいの確率で行動不能になってしまうし! これでも突入してから必死で振り払えるようになって、それからこの確率まで下げたからほんと、必死。

 

 トウカが大剣と……あまり使わなくて殆ど見もしなかった長剣で双剣にして戦っても、ククールが回復の手をほんの少し緩めて攻撃に転じても、ゼシカがバイキルトと攻撃魔法を同時に使って常にバイキルトが切れないようにしても、僕が薙ぎ払ったりベギラゴンでダメージを蓄積させたり……もはや閃光系最高呪文ベギラゴンで倒れる魔物なんて稀、ゼシカがもしベギラゴンを使えたらいけると思うけど……してもなかなか進めない。

 

 倒すなんてことはいつもの間にかトウカも考えなくなっていて、魔物の波を切り開いて進撃、魔物を壁に叩きつけて道を開き突撃! ってね……あれ、なんかこの説明したような。とりあえずそんな戦い方をしていても倒せるときは倒せるし、自分でもみるみるレベルが上がってる感覚があるね。雷光一閃突きも多用したりして……うん。

 

 奥へ、奥へ。魔法の聖水や毒消し草、満月草も買い込んで、アモールの水を飲料水使いごとく使って。後先考えていられないけど後の健康より今の生存……。仕掛けを解き、時にトウカが待ちきれなくて壁を破壊して進む。

 

 魔物を倒すのが段々……楽しくないけどどんどん普通に感じられてくる。トウカが笑いながらマミーや気持ち悪いボール状の魔物を踏み潰している姿は見慣れているけれど、それが食事如く普通の行為に見えてくる。毒されてきたかも……。

 

 ゼシカが魔法の聖水を飲みつつぶっ放すメラゾーマの熱気が残り、ぶすぶすと焦げている地面を蹴って前へ。とっくに頭に巻いたバンダナは槍を握る手が滑らないようにするために使われているし、そもそも最近バンダナじゃなくて別のもの被ってるし。ククールだって、ヤンガスだって、最初の頃からとは装備がぜんぜん違う。強くなって、変わって、経験を積んで。

 

 さあ……なぜかあった綺麗な泉で水を飲めば何故か回復して体調まで万全だ。誰かが見ていて癒やしのポイントを作ってくれたみたいで謎だけど……まあいい。……この扉の奥にいるんだろう、ドルマゲス。

 

 決戦の時だ。


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