【完結】剣士さんとドラクエⅧ   作:四ヶ谷波浪

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陸路編
60話 陸路2


 船から降りて程近くに教会があった。地図にも小さな小さな字で記してあるくらいだね。なになに……「海辺の教会」か。そのまんまだね、実に分かりやすい。

 

 何人か修道士や神父様、シスターもいるみたいだからちょっとだけ話でも聞けば……って、私が聞きに行く前にエルトがとても素早く私の前に回りこんで、塞いだね? 先に話しかけたね? そこまでして私が情報収集するのを見るのが嫌なの?

 

 仕方ないから警護しながら遠くの方でこっちを狙ってきている魔物を狙撃して待っていようか。拾った石で攻撃するんだ。石つぶてってレベルが上がろうがダメージ変わらないらしいけど……それ、ほんとなのかな?

 

 しっかり力を込めて投げれば魔物の体ぐらいなら貫通するし……そしたら流石に結構なダメージが与えられているみたいだよ。一撃では倒れてくれないけど。

 

 一応こっちに敵意とか殺気とかを向けてくる魔物にしかやらないし、逃げた奴は追わないでおく。遠距離攻撃はね……命を奪うのが簡単になりすぎてて、たまに怖くなるんだ。……ばくだん岩のカケラで大量虐殺しておいて言うなって?全くもってそのとおりだ。

 

 まぁ、情報収集をサボれるっていうのはいいんじゃないかな……私は別に、働きたくない訳じゃないけど、進んで動きたいのは護衛と戦闘だからね。それ以外は別に自分からやりたいなんて特に思わないし。

 

 のんびり待っていようか……ククールとゼシカは教会の中も行くの? いってらっしゃい。外の守りは任せたって? 普通は教会に押し入ろうとする魔物なんていないんだけどな……。いいよ、続けて狙撃してるからさ。

 

 周りを警戒しつつ……指で弾くように小石をすっ飛ばす。パチンコ? 要らない。だって自分で弾いたほうがよっぽど強いからね。

 

 その前にゴムが引きちぎれてしまうからパチンコは使えないんだけどね……小さいときから鍛えてるし、力の加え方は身についた……けど、力を目一杯加えると砕け散るものに対してはどうにもならないね。それだったら素手でやるさ。

 

「狙いを定めて……距離、目測五百」

「励むの」

「勿論です。殺気確認、三、ニ、一……狙撃完了」

 

 無言で撃ちまくるけど非情でもないし、狙いを定めてからもちょっと猶予を与えている。……単に暇だから待てるともいう。

 

・・・・

・・・

・・

 

 新大陸の魔物は強かった。パルミドやトロデーン近郊の荒野、トロデーン場内部の魔物だってここまでの中じゃ指折りに強い魔物どもだったけれど、それ以上なんだよね……どうも、進めば進むだけ魔物が強くなっていく気がするんだけど……これ、ドルマゲスに誘導されているんだったら相当怖いよね。まぁ、船を手に入れた時点で結構自由度が高かったし、さすがに図ってできるようなことでもないけどさ……。

 

「すぐそこに見えている街に行くだけなのに……なんでこんなに魔物が沸いているのかしら」

「知らないけど、手を止めていられないね……」

「ベホイ……スカラ! ベホマ! ベホマ! ぼさっとすんなっ!」

 

 ククール、大変だね……とはいえ、中衛後衛の僕とゼシカは大したダメージを受けること無く戦ってるし、カッカしてる間にトウカが殲滅完了して帰ってきてるし、そこまで躍起になって慌てなくても……。

 

「イオラッ! あのねククール、エルトは基本的に分かってくれるけど、一番トウカに毒されているのよ……一番影響されているのはヤンガスだけど……ベギラマッ!」

「ボクは別にそういった洗脳してないんだけどな?」

 

 随分と失礼な事を言われたなと思っていたら、ぬっと僕の背後から、突然現れたトウカが声をかけてきた。さっきまで、魔物を屠ってなかったっけ……? トウカのことだし瞬殺するだろうとは思ってたけど、その速度のまま背後に回りこまないでよ……びっくりするよ。

 

「この辺りの魔物はあらかた倒しておいたよって伝えに来ただけなのに、武器と魔法の恐ろしい攻撃が最後の魔物に襲いかかっていたから回り込んだんだよ。うっかり食らったらククールの喉とMPが更に枯れてしまうし」

「あぁ、ごめん」

「それより早くベルガラックに行こうよ。ボク、前に来た時はずっと宿屋に閉じ込められてたからどんな街か知りたいんだ」

「……ギャンブルって知ってるか、トウカ」

「知識では」

 

 剣を鋭く振って血糊を全部地面に叩き落としたトウカが、鞘に大剣を収めた音を合図にして僕達はベルガラックに向かって進みだした。少し強い風が生臭い血の匂いを吹き飛ばしていく。それとともに爽やかな空気が鼻をくすぐった。トウカとククールの少しのんびりとした会話が、さっきまでの惨殺現場と対照的すぎて少し、苦笑する。切り替えが早いな、というかなり今更な認識とともに。

 

「ハマりこんだら抜けれなくなる泥沼だ。そして大抵の奴は金をスッちまうな」

「でも、ククールはトランプやってたよね? あれもギャンブルの一種だって記憶してるけど? イカサマしてたように見えたけど」

「……素人が真似しないほうがいいぜ。ま、俺ぐらい手慣れていればバレないが」

「ぶっちゃけあの程度のトリックなら速さで見えないようにカバーできたりするけど」

「手がぶれてバレるだろうな」

「そうだね」

 

 ……このまま、ベルガラックに着くやいなやカジノに行くって言い出したりしないよね? パルミドにもカジノはあったみたいだけど、ベルガラックはパルミドと全然規模が違うのは確かだし、かなり興味もあるみたいだし、……ククール、トウカを誘導しないで。

 

 貴族の息子なのに妙に俗っぽいから忘れがちだけど、トウカって箱入り息子だから、そういったことから隔離されて生きてきたんだよね。隣で見てて顔が引きつるレベルで過保護に大事に育てられていたんだよね。……そのトウカが自ら危険に飛び込んで、生傷作りまくってたけど。

 

 ともかく、そんなことを許したら……僕がトウカの父君と母君に申し訳が立たないからやめて欲しい。

 

「え? カジノ?」

「行かないで欲しいな……」

「最初から行く予定ないよ? だって、パンチングマシーンがあるわけでもないし」

「パンチする機械?」

「……あ。今のは忘れて」

 

 ……時々トウカは理解の出来ないことを言うね。普通の範疇を越えた考えで述べている言葉って意味じゃなくて、本当に理解できない言葉って意味で。難しい言葉とかは……ちょっと得意じゃないからわからないな。

 

 

 




パンチングマシーンは多分、ドラクエ世界にないのでエルトには理解できません。

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