【完結】剣士さんとドラクエⅧ   作:四ヶ谷波浪

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47話 古代船

・・・・

 

 じゃりじゃり、ざくざくと音を立てながら小走りで荒野を進む。ここは喉は乾くわ、魔物は強いわ……好きじゃないな。植物が少ないからか、じりじりと照りつける太陽が何時もより暑く感じるし。……そうだ、パルミドよりも夏なんだよね、トロデーンの周辺は。それもあるのかな……。

 

「邪魔、邪魔ァ!」

「ベギラマッ!」

 

 地形的にトウカが一人で魔物を減らそうにも、砂の柱に隠れられたら意味が無いから一緒に戦っている。大抵は前線で僕とヤンガスと一緒に戦う。隣に人がいることもあるからか、いつもの大剣じゃなくて、普通より少し短い剣を二つ装備して双剣スタイルで。トウカって剣ならなんでも使うね。

 

 リーチが短いから、双剣は人を巻き込みにくいんだよって笑顔で言われたから多分、人が近くにいたら槍は使わないってことなのかな。武器被りしなくていいけど、それ、暗に僕に巻き込むなって言ってること? ……流石に考え過ぎだよね。

 

 トウカの攻撃がもしも人を巻き込んだら……うう、寒気がする。挽肉? ミンチ? どちらにせよ、五体満足では居られないだろうな。最悪の場合は細切れかな、充分有り得そうだけど。でも、不安を消し飛ばして余りあるほど、トウカは剣の達人だ。だからこそ隣にいても怖くない。

 

「うーーん。上から見たら分かりやすかったけど、いざ向かうとなればちょっと分かりにくいなぁ」

「そうだね」

 

 確かに次々と襲い来る魔物は鬱陶しいし、違いは確かにあるとはいえ、同じような色の砂や土の柱ばかりだから分かりにくいし、魔物のせいで巻き上がる土埃が視界を悪くするし。

 

「危ないよっ」

「ありがとうっ!」

 

 トウカは時折僕の背後から襲って来る魔物を蹴り飛ばし、反動を利用してその先に居る魔物を剣気で刻みながら倒すなんていう他の人間には到底真似の出来ない芸当をやってのける。

 

 見てるだけじゃどうなっているのか、全く訳が分からないけど、真似するように槍を振る反動を次の動作に繋げてみれば、なるほど、攻撃速度も威力も上がる。こうやって、あの破壊的な力を更に高めて魔物をぶちのめしているんだ……。

 

「おっと、エルトもそれに気付いたね?」

「駄目だった?」

「駄目じゃないよ。味方が強くなって、生存率が上がって、しかも戦闘能力まで、上がるなら言う事なしさ。ただ、それ体力を使うんだよね、慣れないうちは」

「なんで? 力を無駄にしない動きなのに」

 

 話してはいるけれど、戦闘の手を休めることなく進み続ける。するとふと耳に別の会話が聞こえてきた。

 

「話しながら戦っているわよ、あの二人」

「何時もの事だろ」

「君たちもだよ?」

 

 話していたのはゼシカとククール。それを言い合う時点で君達も、だから。確かに褒められる行為じゃないけどさ。ヤンガスは最初から誰よりも真面目に魔物のトドメを差しに駆けずり回っているからそんな事は出来ないみたいだ。

 

 ……一番迷惑を掛けているのがククールだとしても、二番目は間違いなくヤンガスだね。いや、ゼシカにも掛けているんだけどさ。

 

「そりゃ、この世界の摂理を無視した動きだからに決まってるじゃないか。魔法と同時に攻撃するとか、魔法をいっぺんに二つとか、二回分使うとか、はやぶさ斬りとか、さみだれなんとかとは違った意味で複数行動すると制限を食らうんだよ。……聞いてる?」

「あ、ごめん。でも、聞いてたよ」

「ならいいけど。そういう事をするのは魔力がないのに無理やり攻撃魔法を使おうとするようなものさ。分かり易いのはメガンテ。それでも少しだけ魔力を要求してくるけど、とんでもない制限……というか、対価を要求してくるだろ」

 

 ……分かったような、分からないような。でも、それなら慣れたら関係なくなるみたいな言い方をしていたトウカは、連続攻撃の対価を払っていないってことかな? 慣れたら要らなくなるものかな?

 

「疑問が顔に出てるよ。答えはノーだよ。だからボクは普段から耐久力がない。もちろんそれだけじゃないんだけど、原因の一端ではあるね」

「……ざっくり言えば、火力の変わりに守備を失うんだ」

「そういうこと。辞めといた方が無難じゃないかな? ボクのように馬鹿みたいに力を求めるんじゃないならさ」

 

 ……あ、戦闘狂の自覚はそれなりにあったんだね。って、そうじゃないよ。ククールとゼシカがこっちを見ながらなんかこそこそ喋ってるけど、それも置いといて。何だかんだ言って二人、打ち解けたし、仲良くなったよね。恋は生まれそうにないけど。……そうじゃない!

 

 僕だって、力が必要なんだけどな。でも、確かにトウカは耐久力がない。ククールを主とした、浴びせるような回復魔法と、呆れるほど出てくるアモールの水や薬草が無ければ今ごろ生きているのか分からないぐらいに。回避率こそすごいけど、それじゃ足りていないんだから。

 

 ……あんな回復をしなくちゃいけないのが二人になったらパーティを維持できないよね。そうだね……諦めるよ。

 

「あ」

「何さ……あっ」

 

 戦闘と、会話に夢中になっていて気付かなかったけど、何時のまにか僕たちは大きな古い船の前で、近くにいる魔物の全て屠っていたのだった。辺りには、散らばる魔物の死骸が転がり、それらは次々と青い光になって散らばっていく。余りに不思議な形をしたその船に僕たちが見とれている間に光は四散していった。

 


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