【完結】剣士さんとドラクエⅧ   作:四ヶ谷波浪

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パルミド編
36話 目的


 アスカンタ、決して悪い国じゃなかったけど、……王様のメンタルが弱い国だったなぁ。復活した王様も、なんかもっと自信を持って欲しい感じがした。すっごく不敬だね、この考え。

 

 何だかめんどくさくなって、何時もの大剣でもなく、双剣でもない、幅広なだけの武器を振り回しながら考える。考えことをするときは技量を考えずに戦いえる奴が一番いい。勿論、一撃あたりの攻撃力は劣るんだけどね。

 

 雑魚相手だったら充分。……注意散漫だから怪我するけど。ものすごい勢いでククールや、エルト、たまにヤンガスからもホイミとかベホイミとかが飛んでくるから気を付けなきゃ。

 

 槍みたいな見た目の、前世で言うなら「薙刀」かな。冷たい刃はもちろん魔力を封じにかかる特別製。動くのがめんどくさいだけだから、ただただ大仰な動きで簡単に魔物の首を狩る武器と言えば薙刀だろう、と言う安直な考えで取り出した代物だ。

 

 ……何故か薙刀でも槍の技出せるんだけどね。もしかして、この世界での分類上では槍なのかな……世界はアバウトな事で。私は魔法も使えないし魔力もないけど、超越的存在があることぐらいは感じ取っているよ。だって剣で槍の技は出せないから。モノマネすら出来ないんだから何かあるんだろうね。

 

「とりあえず、近くにいた魔物は倒したけど、これからどうするのエルト」

「さっきヤンガスの故郷がこの大陸にあるって聞いたんだけど……話聞いてなかったの?」

「……それはごめん。でも、まさかそれだけの理由で道決めたり……?」

「うん」

 

 思わずずるって転けそうになる。エルトってこんな計画性のない人間だったっけ? いや……今回はそうじゃないか。

 

「もしかして、他に行けるところがないからか……アスカンタから大陸渡らずに行けるのってパルミドだけだからなぁ……ボクたち船無いし」

「ヤンガスの知り合いに物知りの情報屋がいて、船を手に入れる方法を知っているかも知れないんだって」

 

 それを先に言って欲しい……。こっちを見ているゼシカが全力で飽きれているし、無駄にはらはらさせないでよね……。勿論、聞いていなかった私が悪いんだけども!

 

・・・・

・・・

・・

 

「一応正しい地図がこれ。家から持ってきたほうね」

「地図が家にあるお前は何者なんだ……」

「実家は貴族だけど……武力主義の傾向が強い」

「傾向が強いどころじゃ無いだろ……」

 

 ずっこけかけたトウカがこれからの動向についての会議を要求し、開かれた場でいきなり投入されたツッコミどころしかないもの。

 

 あっさりと明かされるトウカの出身。そりゃあの、完璧なマナーを見せつけられてトウカがただの平民ではなく貴族なのは薄々分かっていた。だが武力主義の傾向が強いって何だ。トウカの実家は何なんだ。この、後に語られかねないレベルの強さで……傾向が強いと表す程度なのか?

 

「トウカに関してツッコミいれてたらキリが無いから辞めときなさいよ」

「そうなのか……」

「躍起になるだけ無駄だよ」

 

 ゼシカ、エルトと順に言われ追及を止めさせられる。ヤンガスは何も言わずトウカと地図を見ていたが時折睨んでくる。へいへい、あんたが尊敬している兄貴には失礼なことはしねぇって。……最初に一目惚れしちまった事以外はな……。本当に俺、どうかしてるぜ。そろそろ諦めろよ……。

 

 にしても、トウカはお貴族様、か。確かに一介の旅人や薄給の兵士にしてはご立派な剣を持っているとは思っていたが……。いや、トウカにしろ、その同僚のエルトにしろ、エリートコースの近衛兵だったか。

 

 まぁ、それにしても武器が立派ではあったが……。それだけだったから気付きもしなかった。服装も丈夫そうな服にしか見えないしな。確か下に鎖帷子を着込んでるだとか言っていたが、知らなかったら分からないもんだな。とりあえず服装やらでは分かりもしない。

 

 口調も一人称も庶民と何ら変わりないし、滑らかだ。演技にしては出来すぎているからきっと慣らしていたか、貴族でも下っ端の貴族なのか。

 

「あ、魔物見っけ!」

「ヒャド!」

「取られた……」

 

 本当に貴族だよな? 愉快なエルトご一行の一員しか見えないんだが……。

 

 傍から見れば俺も愉快なエルトご一行の一員である事も忘れて失笑すれば、その隻眼で目敏く見つけたトウカに注意された。やれやれ、退屈は当分しないようだな……。

 

 先頭にトウカ……というよりは単騎突撃して突出しているトウカ、その次にエルトとヤンガス、その後ろに馬車、最後に俺とゼシカというフォーメーションで進む。とはいえ、突撃したトウカはわりと定期的に戻るからわりと固まって行動している。

 

 前衛のエルトと後衛の俺が普通に会話出来る距離だしな。襲い来る魔物はだんだんと強くなってきているのを感じるが、まぁ問題はない程度だ。数は減ってるからな。

 

 ……問題無いと言いながらも、この前エルトに渡された盾が大活躍しているが。武器はけして鈍くはなっていないが、あまり攻撃が通っていない気がするから替え時だとは思うがな。にしても……。

 

「トウカに気を取られて気付かなかったが、エルトお前……強いな」

「悪かったね目立たなくて」

「なんでそう取るんだか……」

 

 俺の頭ひとつ下の身長に女顔のトウカが馬鹿でかい剣を振り回したり、鉄格子を素手で破壊したら誰でも霞むだろうよ。しかし、見た目はそこらの町や村の住人でも居そうな細身のエルトが扱う槍は鉄製で到底俺が振るえるような重さではないようだ。

 

 しかも相当扱いが上手くて、だ。ヤンガスは見ての通り腕っぷしが強いんだろうし……まさか俺はパーティ内では力が弱い方……なのか?

 

「僕は力が小さいときから強かったし、幼少期のトウカを見て鍛錬の真似事をしてたし……もちろん僕は志願兵だよ?やる気が無いわけあるの?」

「悪かったから前を見て歩いてくれ」

 

 心外だと言わんばかりにこっちを見て喋るエルトの足取りは見ているこっちの方が怖くなるおぼつかないもので慌てて止めた。何故か競い合うのがバカバカしくなった。

 

・・・・

・・・

・・

 




エルト「槍という僕のアイデンティティが」

トウカはあからさまに隠しているようですが、実はわりと天然で、うっかりククールだけトウカの家名が分からないまま進みます。それはもうかなり先まで。

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