Devil/Over Time   作:a0o

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 最初に言っておきます。これは思いつきとノリで書いた物で無理・矛盾があっても接合性のないブッ飛んだ話である事をあらかじめご了承下さい。



番外編
ありえない結婚式


―――三咲町、会田教会

 

 

 控え室で純白のウェディングドレスを着た凛は心臓をドキドキさせながら、式の開始を待ちわびていた。

 そして、トントンというノックの後に扉が開かれたとき嬉しさとは違う意味で驚愕した。何故なら入ってきたのはホテルマンの制服を着た父親、遠坂時臣だったからだ。

 

「あと十分で式が始まりますのでよろしくお願いします」

 

 事務的に話して去って行く父親に唖然とするも束の間、控え室を飛び出てもう一つの控え室に早足で向った。

 

 新郎の控え室では、黒いタキシードを着た元魔王こと鮫島恭平が腕を組み窓の外を見ており、乱暴に扉を開けて入ってきた花嫁を一瞥する。酷く興奮しているその顔は、どう見ても嫌な予感しない。

 

「どうかしたのか?」

 

 それでも一応と尋ねてみると案の定、噛み付かれた。

 

「どうしたのかじゃないわよ!なんでお父様が居るのよ!!それもあんな格好で!!!」

 

「・・・・そうか、折角の晴れ姿だし、もう少し縛りを緩めて娘に祝辞を言わせぐらいしても良かったな」

 

 とぼける様な仕草に凛は益々興奮して、ズカズカト歩いて胸元を掴み寄せる。

 

「二度は言わないわよ、一体どういう事なの?」

 

 傍から見た者が勘違いしそうなほど顔を近づける凛にフッと溜息をつき簡潔に説明する。

 

「どうしたもない、格好通り結婚式のスタッフとしてかり出したんだ。こんな結婚、一般人は身内以外は関わらせたくないからな」

 

「私が聞きたいのは其処じゃない。なんでお父様が――――」

 

「かつて俺が負かした奴らを使役する、勝者の特権だ」

 

「・・・・あのねぇ・・仮にもアンタの義父(ちち)になる人を―――――」

 

「あれを義父とは呼びたくないな。それでも凛はお嫁さんに欲しいがな」

 

 凛の抗議を気負う事無く流し、サラッと(図々しく)葉が浮くこと言う恭平に今更ながらに頬を赤める。

 そうしながらも恭平の言葉に新たな疑問が沸く。

 

「そう言えば奴ら(・・)って?」

 

「ほら、どうこう言ってる間に時間だ。それとも止めるか?」

 

 唯でさえ近い顔を更に近づけてくる恭平に、頬どころか顔を真っ赤に染めて否定を示し凛は一緒に礼拝堂に向った。

 

 

***

 

 

 静かな礼拝堂でゆっくりと扉が開き、カレン・オルテンシアの奏でるオルガンの音色が響くなかで凛と恭平は腕を組んでヴァージンロードを歩いて行く。その後ろを凛のウェディングドレスのヴェールを持ちながらイリヤと美遊・エーデルフェルトが続く。

 

 ゆっくりと歩を進める二人に参列席に座っていた招待客たちは祝福の眼差しを向け、やがて二人は文柄詠梨司祭(代理)の居る祭壇で止まる。

 

「これより式を執り行います」

 

 司祭の宣言から賛美歌斉唱、聖書朗読、祈祷が執り行われ、いよいよ誓いに入る。

 

「新郎、鮫島恭平。汝は主の御名において、病める時も健やかなる時も生涯この者を敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか?」

 

「誓います」

 

「新婦、遠坂凛。汝は主の御名において、病める時も健やかなる時も生涯このものを敬い、愛し、そして夫とすることを誓いますか?」

 

「誓います」

 

 誓約を終え、控えていた周瀬律架が指輪を差し出す。

 恭平は指輪を受け取り、その場で肩膝を着き凛の左手を優しく握り、プロポーズに使ったダイヤの指をはめてゆく、その様は美しくとても絵になっており、客達はおろかその場に居た者全員が魅入られていた。

 そして、凛からも恭平に指輪をはめられたところで司祭が口を開く。

 

「では誓いの口付けを」

 

 恭平は凛のヴェールを軽く手を掛けた。

 凛は頬を染め緊張した顔で微笑んでいた。そして目を閉じたのにあわせて、キスをする。頬に両手を添えてゆっくりと愛しむように二人の唇が合わさった。

 

「ここに誓いは交わされた。二人の門出に祝福あれ!」

 

 司祭の宣言とともに、埋め尽くさんばかりの祝いの言葉と拍手が鳴り響いた。

 盛大な祝福を受け、花嫁の手を取って礼拝堂を出る恭平、フラワーシャワーが降りしきる中で少し後に出てきた招待客に凛がブーケトスをする。

 ブーケを巡り女性達が火花を散らしかけるが、こともあろうにブーケは男である遠野志貴の手に渡った。複雑な顔をする当人としかめ顔の女性人の中で一人の少女、両義未那がはしゃぐ様に出て、嬉しそうに手を握ってきた。

 

「まぁ、素敵!次は貴方が結婚ですのね。よろしければわたくしと―――――」

 

「あ、あの~未那・・・・・」

 

 ブーケを持った遠野志貴でなく、父親である両義(黒桐)幹也に。

 

「あ~ら、ごめんなさい。声も容姿も良く似てたので間違えちゃいました」

 

 てへっ、と惚ける未那に全員が思った。

 

(絶対、ワザとだ)

 

 

 ***

 

 

 所代わり披露宴の会場。

 

 主賓席で凛は目を引きつらせながら隣に座る恭平を見ていた。

 当の恭平は涼しい顔で会場を眺め、その姿がまたイラダチを募らせる。

 別に披露宴そのものに問題はない。新郎新婦の紹介や主賓の挨拶、ウェディングケーキの入刀、乾杯と滞りなく進んでいる。現在は蒼崎青子がギター、久遠寺有珠がピアノ、静希草十郎がタンバリンで演奏を披露している。

 

 問題は進めてくれ居ているスタッフ達だった。

 遠坂時臣を始め、言峰綺礼、璃正の親子、衛宮切嗣、アイリスフィールの夫婦も然ることながら第四次、第五次で敗れていった英霊(サーバント)等々、かつての魔王に嵌められた者達が給仕姿で料理や飲み物を運んでいる。

 

 もてなしを受けている彼らの関係者はと言うと―――――

 

 一つのテーブルでは間桐桜と慎二の兄妹が苦笑いにしかめ顔で食事をしており、うっかり桜がフォークを床に落としてしまうと、間桐雁夜が即座に拾い上げ声を掛ける。

 

「直ぐに代わりをお持ちします。飲み物のお変わりはどうしましょう?」

 

「よろしくお願いします」

 

 物凄くいい感じであり、もう一方のテーブルでは豪快に笑いながら食事をする前ライダーに辟易しながら雑に食事をするウェイバーに、ケイネスがお盆で制裁を加える。

 

「食事はもっと綺麗に食べろ!!」

 

 そして、その不機嫌の理由は別のテーブルに嬉しそうに一緒に仕事をしているソラウと前ランサーにあるようだった。

 

 直ぐ近くではランサーがバゼットにシャンパンを注いでおり、気さくな態度で話しをしていた。

 

「橙子氏も出席できれば良かったのですが」

 

「この町には来たくても来れねぇって言うんだから仕方ねえだろう」

 

 バゼットが義手でグラスを持ちながら呟き、ランサーが応じる。

 そして本来、橙子が居るテーブルでは両義式が娘にブーケの一件をネチネチ言っており未那は涼しい顔で受け流し幹也が苦笑している。テーブルには空席が一つあり、その主である黒桐鮮花を探してみると少し離れた場所で何故か遠野秋葉とお互いに悲痛な顔で抱き合っていた。

 秋葉の方の原因は自分のテーブルで手を取り合いバカップルをしている志貴とアルクェイドにあるようで何とも奇妙な共感があるのかもしれない。

 そのバカップルに感化されイリヤは士郎にはしゃぎながら抱きつき、切嗣とアイリスフィールは微笑ましく見て、同席していたセイバーは呆れながらも(しっかり料理を口に運び)微笑んでいた。

 

 そんな様子をよく見える場所で眺めていた恭平と凛の下に美綴綾子が笑顔で話しかけてきた。

 

「いや~、恭平さんでしたっけ、遠坂から話を聞いてたから凄い奴だと思ってたけど、予想以上だよ。食事も式も物凄く豪勢で」

 

「いや、とある金持ちの王様が全面的に財布を持ってくれてな。つくづく出会いは大事だと思うよ」

 

(白々しい)

 

 傍から見れば綾子の賞賛を恭平が控えめに返すだけだが、凛には釈然としないものがあり、とある王様が居るテーブルに目を遣った。

 

 そのテーブルでは金髪紅眼の子供が焼け食いのように料理を口に運び、同席していた穂群原学園の生徒、三枝由紀香がオドオドしながら宥めていた。氷室鐘、後藤劾以は我関せずで、引率役である葛木宗一郎はキャスターに笑顔で口説かれていた。

 

 そうこうしている内に衣装直しの時間が迫り、二人は退場する。

 そして、シンプルな青のドレスを着た凛が恭平と腕を組んで再登場し会場からは拍手が巻き起こり半数のテーブルにキャンドルサービスを行う。

 二人は再び退場し、今度はオレンジ色の花が飾りつけられたドレスで登場し、一緒に残り半数のテーブルにキャンドルサービスを行い、最後のテーブルであるルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトと美遊が座るテーブルに火をつけた時、背後にあったイリヤと士郎のテーブルから何かが飛び出し凛の背中に当たった。

 

 瞬間、鮮やかな光が凛を包み込み、収まって現れたのはネコ耳にフリフリの赤いコスチュームを纏った凛であった。

 

「魔法少女、カレイドルビー参上!」

 

 五望星に羽の生えたステッキを持ってポーズを決める凛に会場中が唖然とする。その凛は明らかに正気でなく誰か別の人物が言わせているように思えた。

 その心象は正しく直ぐに正気を取り戻した凛は全身を真っ赤にしてイリヤのテーブルを見る。イリヤは顔を真っ青にして両手を前に突き出し首をブンブンと振って『私じゃない』と無実を訴えていた。

 一方、近くで客と一緒に唖然としていた恭平は失笑し口を押えながら言う。

 

「赤いドレスは発注が間に合わなかったと言っていたが、こんな余興を考えていたのか」

 

 その言葉に会場中から爆笑と拍手の嵐が巻き起こり、凛の羞恥心は頂点を超えて恭平の胸倉を掴み上げて声を荒げた。

 

「そんな訳ないでしょ!!!ってかなんとかしなさいよ!!!!!」

 

「心得た。妻の恥は夫の恥、本当は今日一日は返上するつもりだったが、こうなっては仕方ない」

 

 凛の手をやんわりと外し、深呼吸をする恭平に黒いオーラが発せられる。

 

「魔王の名の下に変成せよ」

 

 黒いオーラは凛を包み、形を変え鮮やかで気品溢れるウェディングドレスを構成していった。

 

「うーん。やはりオーソドックスな白もいいが黒もよく似合おう。実に美しい、何より俺好みだ」

 

 忌憚無い感想を言う魔王に凛はハッとし抗議しようとする。

 

「なにやってのよ!アンタが魔王に戻っちゃ、折角した主への誓いが―――――――」

 

「俺は魔王だ、問題ない。今更、神が結婚を認めないといっても従う義理はない」

 

 きっぱり開き直る魔王に更に声を上げようとするが、その前にお姫様抱っこで持ち上げられ言葉が出てこなかった。

 

「わわわわわ・・・・」

 

「ライダー!」

 

 慌てる凛を間近で見ながら呼ぶ魔王に豪笑して前ライダーが顔を上げる。

 

「なんだ?」

 

おっさん(おまえ)じゃない、美女(おんな)の方だ。」

 

 それをあっさり流し、今度はコンパニオン姿のライダーが近づいて来る。

 

「なんでしょう?」

 

「お前の子供、少し借りるぞ」

 

 魔王が言うとライダーから光が発し天馬(ペガサス)が現れる。白の天馬は黒く染まっていき、魔王が凛を抱えたまま跨る。

 

「ちょっと段取りが変わるが、私達はこれで退場する。

 後は無礼講だ。好きなだけ飲んで食べて騒ぐがいい」

 

「ちょっと、そんなのあり!?」

 

 凛は夫の腕の中で赤くなりながらも抗議する。

 

「お前ももう魔王の妻だ。このくらいは許容しろ」

 

 納得で出来ず尚、言い募ろうとする妻にキスをして口を離した瞬間に手綱を握り去って行く。

 

「さぁ、新婚旅行(ハネムーン)と洒落込むぞ」

 

 そのまま夜の空を駆けていく新婚夫婦、二人を照らす月はとても綺麗だった。

 

 

 




 そして結婚披露宴は宴会に切り替わり、ドンちゃん騒ぎになりました。

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