いつもクヨクヨした言い訳など見飽きていると思うので、ここで開き直ります!
今回はコーキさんの物語の詰め合わせです
それでは、本編スタート!
第一話
ぱち···ぱち·······ぱち。
コーキの部屋にそんな将棋の駒を指し合う音が響く。
「ところで、コーキ。質問いいですか?」
「別にいいけど、その前に逆にこっちが質問していいかな?」
コーキは少し考える素振りをしてまた一手進める。
「はい、どうぞ」
「別に全然構わないし、白雪ちゃんがやりやすいようにしていいんだけど、何で敬語になってるの?二度目に会った時は普通だったのに」
「そ、その時のことは色々忘れていただきたい!」
「ええ~、でもあの時の白雪ちゃん可愛いかったよ?」
「か、かわいい!?私が!?·······本当ですか?」
「うん、本当に可愛いかった。···色々な意味でwwww」
「バカにしてますね?」
白雪はコーキを睨みつける。しかし、それもほんのちょっとのこと。
コーキがこういう時にふざけるような人間であることは、まだ一緒のコミュニティの仲間として過ごして短い白雪も知っている。
「ゴホン。えー、それで何故私が敬語なのかでしたね」
「あ、答えてくれるんだ」
「簡単なことです。コーキ、貴方と話す時に普段の話し方では失礼だと思ったからです」
「別に僕は気にしないのにな~。むしろ、もっとフレンドリーでOKだよ☆」
「それに理由はもう一つあるんです」
「無視ぃ·····」
チラッとだけコーキの悲しげな顔を見て白雪は話を続ける。
「あの小僧と、貴方と話す時の話し方が一緒などありえないことです!あんな礼儀知らず生意気でふてぶてしい小僧と、一見いつもニコニコ笑っていてイマイチ掴み所ないですが紳士であるコーキの対応は分けるべきだと判断しました」
「君、本当に十六夜君のこと嫌いだよね」
「当たり前です。何でしたら、今すぐ私の所有権をあの小僧から奪って来てください。貴方なら出来ます、コーキ!」
「無条件の期待が重いよ。というか、それは僕じゃなくて白雪ちゃん自身が自分で取り戻さなきゃいけないものだと思うよ。白雪ちゃんは白雪ちゃんのだけのものだからね」
「もちろんその通りですが、全くもって本当にその通りですが、コーキになら······私の所有権をあげても、いいですよ?」
頬を赤らめ恥ずかしそうに言う白雪。
コーキはそんな白雪の顔を直視することができず、
「いや~、参ったな·····」
とそっぽを向きながら頭をかいた。
◇◇◇
第二話
ぱち、はち······ぱち。
盤面の戦いが進む音がする中彼らの会話は続く。
「それで、白雪ちゃんが聞きたいことって何?」
「あ、ああ。いえ、聞きたいことって言うよりちょっとした推測を聞いて欲しいのです」
「推測?また、何について?」
「貴方についてですよ、コーキ」
蛇の瞳で彼女はコーキをじっと見つめている。
ちなみに、コーキには白雪に推測されるようなことなど心当たりは全くない。
だって全部しっかり偽装してあるからだ。偽装の錬金術師なだけに。
「コーキ、貴方はメイド長のギフトゲームで白猫と行動をしていたそうですね」
「白猫?白猫なんかと一緒に行動していた記憶ないな~」
「いつも黒いですが、その時は白かった
「ああ、白カズマのことね。うん、嫌なことにあいつが復活しやがってたけど、まぁ一緒に行動してたよ」
コーキは明らかに不機嫌そうな声でそう答える。
「その言い方からして、やはり貴方は以前からその白猫のことを知り合いだったんですね」
「知り合いとか言わないで欲しいな。あんなの知り合いですらないし」
「余程嫌いなんですね」
「そりゃあ、大ッ嫌いさ」
不快そうに駒をパシッと置く。
「それで、私は思ったんですが――」
「――コーキ、貴方は箱庭のこと、ギフトゲームのこと、召喚されること、その他もろもろのこと
「もし、そうだとしたらどうなの?」
コーキはいつもの掴み所ない笑みで白雪を見る。
「貴方は私たちとは何か違うものを見ているんじゃないですか?いや、それとも私たちすら知らない何かを知っているのかも」
ここで白雪は一拍あけると、
「貴方は、本当の貴方は何処にいるんですか?」
その問いにコーキはヘラヘラニコニコしながらこう答えた。
「チェックメイト」
「えっ?」
この返答に白雪の頭の中は真っ白になった。
一体何を言っているんだこの人は?
「あ、間違えた。ショーギは『王手』だったね」
そう言いながらコーキは将棋盤をコツコツと指で叩く。
「う、嘘だ!だって、まだ三回目···。私が負けるはずが···!」
「いやいや、そう驚くことかな?一回目で駒の動きを覚えて、二回目で白雪ちゃんの戦術をトレースする。そして今の三回目で倒す。普通のことじゃないかな?」
「全ッ然普通じゃありませんよ!········やっぱり、貴方は天才なんですねコーキ。完敗です。もう将棋では貴方に勝てる気がしません」
「でも、白雪ちゃんが新しい戦略でやれば勝てるかもしれないよ?」
「いえ、そう簡単に今までの戦術を捨てて新しい戦術を編み出すなど出来ません」
「そういうものかなぁ」
「そういうものです」
と言いながら二人は駒を集めて片付ける。
「あー、でもつまんないなー。こういうタイプの遊びは白雪ちゃんと一回しか出来ないなんて」
「そうですね。でも、こういう運がゲームを左右するタイプならずっと遊べるはずです」
そう言って白雪は和風絵の描かれた札の束をテーブルに置いた。
「花札って言う日本のカードゲームだったっけ?」
「その通り。では、まずは絵柄の説明から――」
こうしてコーキに話をはぐらかされたことすらを忘れて白雪は花札の説明を始めた。
果たしてあのタイミングで『王手』になったことは偶然なのだろうか?
それを知っているのは本人であるコーキだけだ。
一つ言えるとしたら、二人の仲は良好であると言うことだ。
◇◇◇
第三話
“ノーネーム”本拠、四階
そこの個室を使う者はほとんどいない。
ジンや黒ウサギは一階に自室を持っており、その他が主に二階を使っている。
どうやら“ノーネーム”には、コミュニティの貢献度が高いほど上の階に自室を持つという習慣があったそうだが、十六夜たちは「一階まで下りるのが面倒」や「上の階で寝泊まりするメリットがない」などの理由で二階を使っている。
なお、レティシアも元は上の階に自室を持っていたが「主より位の高いメイドがいるわけないだろ」というよく意味のわからない理由で一階に部屋を持っている。
そんなわけで、四階に近づく者はなく静かだ。
だから、コーキたちはそのフロアに研究室を作った。
まぁ、研究室と言っても箱庭で手に入れた研究書や薬品、器具が置いてあって物置と言った方がしっくりくるものだが。
その研究室の机についてコーキはガラス棒で黒い粉末と茶色の粉末をかき混ぜていた。
特に危険のあるものではないが、慎重に余りなく混ぜていく。
それが終わると、今度は薬匙を出してそれを木製の筒を複数出して中に均等に入れていく。
中の粉末が漏れ出さないようにしっかり蓋をすれば完成。
「これで良し···。さっそく実験するかぁ」
コーキは左手で白衣から探ってギフトカードを出しながら、器用に右手で遮光板のゴーグルを装着する。
ギフトカードからショットガンを取り出し、リロード。
さっき出来たばかりの筒を一本持つと、それを放り投げると同時にトリガーを引いた。
その瞬間、突如その部屋に太陽が出現したかのごとく強い光を放った。
もし、この場にコーキのように光を遮る物もなく直接見た者がいたのなら、その人物の視界は真っ白になり何が起きたか理解出来なかっただろう。
「···うん。問題なく機能してくれるね。これで閃光弾の完成だ!」
コーキは外したゴーグルを適当に投げて喜んだ。
これまで彼はマグネシウムと着火材の配合で、最も早く全体に燃焼が広がる割合をずっと模索していた。
初めは大雑把に割合を変えて実験し、その中で最も良かった配合した物を元に今度は少しずつ分量を変えてようやく前回作った閃光弾で納得のいく物となった。
今回は同時に複数分作っても、効果にズレがないかの最終チェックだったのだ。
「出来たのは全部で十本、で一つ使ったから九本か···。ちょっと足りないかな」
コーキは再び椅子に座ると瓶に入った着火材を薬匙ですくい、天秤に乗せていく。
天秤が釣り合ったところで着火材を乳鉢に入れ、天秤の重りを交換する。
「今みたいにゆったりした時間はもうすぐ終わって忙しくなるし、作れるだけ作らなきゃって、あれ?」
重りの交換が終わってマグネシウムの瓶に薬匙を入れるとほとんど入っていなかった。
「しまったなぁ。調合の実験に使い過ぎちゃったか。えーっと、確かもう一瓶あったはずなんだけどな~」
と棚に置いてある瓶のラベルを見ながらあれでもないこれでもないと探す。
「ああ、これはマジでないな。どこにいったのやら」
と部屋の中を見回してると、燃えないゴミに出す予定の使用済み瓶の中に“Mg”と書かれたラベルそ見つけた。
「あ······うん、新しく買いに行こう!」
コーキは明るくそう言って白衣を脱ぎ捨てると、部屋を出ていった。
「あら、コーキ君。今からお出かけ?」
「街に行くのか?」
階段を下りていると飛鳥と十六夜と会った。
「うん。ちょっと切らしてしまった物があってね。買い物に」
「そういえばお前最近部屋に籠ってること多かったよな。何してんだ?」
「閃光弾作り」
「閃光弾か。随分面白いもん作ってんじゃねぇか」
「そうかな?作り方自体は簡単だし、ただ光るだけだよ?」
「いやいや、そういう物にはロマンがあるだろ!特に自作には」
「まぁ、確かにね」
「私には全然分からないけど、頑張ってねコーキ君」
「うん、そんじゃあ二人とも」
「おう、帰って来たら俺にも作らせてくれ」
「気をつけてね」
コーキは二人に手を振ると、階段を下りきり、外へと出たのだった。
街の一角にある、とある雑貨店。ここには日用品から食料、果てはオーダーすれば何で揃えてくれる。
そのコーキ御用達の店の名前は“ハボック雑貨店”。コーキは今日もここに足を運んでいたのだった。
「ごめんくーだーさいっ!」
と言って店に入る。中はそれほど広くなく正面にカウンター、左右の壁には日用品と食料品が置かれた棚があるだけとシンプルな作りだった。
「あれ?誰もいないんですかー?ハボックさーんっ」
いつもカウンターにいるはずのジャン・ハボックの姿が見えなかった。
何度か呼んでいると、
「ちょっと待っててくれ、大将ー!」
と店の奥から声がした。大将って言うのは常連であるコーキのあだ名である。
しばらくすると、中からタバコをくわえた金髪の男が出てきた。
「おっ、またせたな大将!今日は何を買いに来たんだ?」
「前にオーダーしたマグネシウム全部使っちゃったからもう二瓶ほど、ってまたタバコ吸ってるの?早死にするよ」
「そんなに俺の人生の楽しみを取り上げたいのか?」
「人生の楽しみがタバコって言ってて哀しくない?」
「うるせぇ、大将のとこみたいに美人揃いじゃないんだから仕方ねぇだろ」
「美人っていうか、ウチは美少女揃いだからハボックさんの趣味に合う人いないと思うよ」
「まぁ、確かに美少女っていうのも可愛いだろうけど、あまり年下は趣味じゃないし。やっぱり女じゃないとな」
「女ねぇ···。そういえば、ウチって大人の女性ってレティシアちゃんと白雪ちゃんだけだな。男にいたっては一人もいない」
「二人はその、大きくて美人なのか···?」
ハボックは自分の胸の前で何かを持ち上げるような仕草をして問う。
それ対してにコーキはニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「もちろん!そこいらの美人とはわけが違う。二人共かなりの上玉だよっ☆」
マジかよ!!!と歓喜の声を上げ、拳をグッと握るハボック。
「あ、厳密にはちょっと間違えた」
「どういうことだ、大将?」
今度はまるで重要な作戦の詳細を聞くように真面目な顔になる。
コーキはこのハボックの食いつき方に口角が上がってしまいそうになるが、それを真顔に上書きする。
彼はこういうバカ話を大真面目にすることが面白くて好きだ。
「レティシアちゃんは、巨乳ではなかった。でも、スタイルが良くて気品溢れるスーパープラチナブロンドの美女。正直、彼女より美しい女性を僕は見たことはない。白雪ちゃんは日本の蛇神様。和服ってけっこうスタイルが分かりにくくなる服だけど、白雪ちゃんの場合その和服を着てもわかるほど大きいんだ···」
「なん···だと!?」
この衝撃的な話にハボックは思考がフリーズしかけたが、頭を振って回避する。
しかし、それでは足りず頭を押さえながら思考の整理を強引を行った。
「つまり、アレか。金髪超絶美女か和服巨乳美人を選らばなければいけないと言うのか···!!そんな、そんなの選べるわけねぇ。確かに俺はボインが好きだっ。でも、その大将がそこまで評価する金髪美女ってのも捨てがたい···!でも、俺は、俺は―――」
ハボックはカッと目を見開くとこう叫んだ。
「―――ボインが大好きなんだああぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」
そう叫んだ彼はどこかスッキリしたようにキリッとした顔をしていた。叫んだこと自体はただのセクハラだが。
「さぁ、大将!その白雪ちゃんっていう蛇神様をぜひ紹介してくれっ!」
そうキラキラと少年のような輝いた顔で言う。
それに対してコーキは笑顔でもちろん、
「お断るっ☆」
と返事した。
瞬間、今度こそハボックは思考がフリーズした。
「···な、何でだ大将!?今の話の流れ的にそこは紹介してくれるとこだろ?」
「別に誰も紹介してあげるなんて言ってないし。それに白雪ちゃんは僕のもんだからねっ!誰にも譲ってあげる気は全くないのさ」
「な、なら金髪美女の方は···?」
「そっちはウチのカズマ一筋で他に靡くわけないよ」
要するに初めからこの会話に意味はなかったのだ。これはコーキの策。
おいしそうなエサを吊るして期待に胸が膨らんだ瞬間それを奪う。典型的な上げて落とす作戦。
「この腐れ外道がああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!」
ハボック涙の絶叫。しかし、返ってくるのは嘲笑う声だけだった。
「ごめん。ごめん。意地悪が過ぎたよ。謝るから許して!ほら、子供のイタズラと思って許してよ、ハボックさん」
「うるせぇ···、お前は俺の心を弄んだ。その罪は···子供だからって軽減されないんだよぉ」
完全にハボックは拗ねていた。いい大人が子供にからかわれて拗ねていた。なんと大人気ないことだろうか。
「ナレーションうっせーぞッ!!!寄って集って大人イジメテそんなに楽しいのかよっ!?子供だからって許されるわけないんだよ!というか、大人の方が色々傷つきやすかったりするんだよ!覚えとけっ!!」
そう怒鳴ると、ぎじぎじと灰皿に先端が潰れて折れ曲がるほどタバコを擦りつけた。
「で、大将は何も買うものもなく冷やかしにきたんのかい。だったら、さっさと帰ってくれ」
「あー、そういえば当初の目的忘れてた···。えっと、この前オーダーしたマグネシウムの粉末。まだ在庫ある?」
「マグネシウムってこの前二瓶買って行ったよな?それ全部使ったのか!?」
「うん、実験に使ってたら足りなくなっちゃた」
「何の実験だか知らないがすげぇ消費量だな。そんなの買うの大将しかいないから、在庫はないぞ」
「取り寄せにどれくらいかかる?」
「四日かな?代金は先にもらうぜ」
「銀貨で払うから、お釣りちょうだい」
ハボックは左手で銀貨を受け取ると、右手でコーキの手にタッチした。
「なにそれ」
「お釣りは無しってことだ、大将。釣りは俺の心の治療費ってことで」
「はぁ、このボッタクリ!」
「はっはっは。大人をからかうからだよ」
と悪どく笑う。ハボックはさっきの恨みをちょっと意地悪して晴らそうという魂胆だった。
が、
「まぁ、いいよ。釣りはチップとして上げるよ」
という予想外の反応に戸惑った。
「お、おい本当にいいのか大将?」
「ん、別にいいよ。お金に困ってるわけじゃないし。ハボックさんには実際
その含みのある言い方でハボックはコーキの言いたいことを理解した。
簡単に言うと、これからも常連としてもっと贔屓してくれよってことだ。
(随分世渡りが上手いじゃないか、大将)
ハボックはニヤリと笑った。
「わかった。こいつはありがたく受け取っとくぜ」
「そんじゃ、四日後あたりに取りに来るよ」
「おう、またな!」
コーキは手で挨拶を返してハボック雑貨店を後にしたのだった。
はい、というわけで白雪さんとのちょっとしたイチャコラやあのハガレン原作でも登場したハボック雑貨店なども登場した今回いかがでしたか?
コーキ:一つ、補強するならあのハボックさんは軍人にならずに普通に家業を継いだ世界線のジャン・ハボックであり、原作のハボックさんとは別人だよ
ハボック:まさか俺が軍人になってる世界があるなんてな。頭悪いのによく学校行ったな、俺
コーキ:実際学力は良くないけど、その分行動力でカバーしてそれなりに優秀だったらしいよ
ハボック:流石、昔から体力には自信あったもんな
ちなみに下っ端と一緒に働く姿は立派で、部下からの信頼は厚かったそうです
ハボック:何か照れるなぁ
コーキ:こっちじゃ、ただの雑貨店の店長だけどねw
ハボック:おい!
さて、今回はここまで。
また次回お会いしましょう!
「「「また、見てくださいね!」」」