問題児達と錬金術師×2が来るそうですよ?   作:射水 終夜

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タイトルの人誰?というかカズマどこいった?と思った読者の皆さん
安心してください。ちゃんとカズマを中心とした騒動の幕開けですよ
それでは、不幸な彼の物語の始まりです!


クロナ=クロニクル争奪戦 発端

“クロナ=クロニクル争奪戦”開催日より二日前、“六本傷”カフェテラス

 

太陽の光が容赦なく降り注ぐここ“アンダーウッド”は暑すぎるぐらいの快晴だった。

のどかな自然に大きな湖。その湖では、近々行われる“ヒッポカンプの騎手”のために練習している者や単純に涼みに来ている者たちでそれなりに賑わっていた。

その近くにあるこのカフェテラスはそれなりに立地がいいのだろう、混雑しない程度に程よく客が入って和やかな雰囲気だ。

ある一ヶ所のテーブルを除いては。

「ふむ、なるほど。君たち、いや君の言い分は理解したよレティシア君」

レーネは表面上は冷静そうだが、明らかに絶対零度の怒気が漏れていた。

怪我で巻いている包帯のせいでいつもの三割増しで迫力がある。

「しかし、その上で言わせてもらおう。―――私は断じて認めないッ!」

「何でですかお姉様!?どこが気に入らないと言うのですか!?」

「落ち着けレティシア」

「でも、」

「いいから座れ。姉さんもちゃんと理由くらい話してくれるから。なっ?」

レティシアはとりあず椅子に座り直して、氷の溶けて少し水っぽいコーヒーを飲んで頭を冷やす。

「それで何で認めてくれないのですか?」

「簡潔に一言で言えば、レティシア君。君がカズマに相応しくないからだ」

「それはまた···、何故そう言えるのですか?私とお姉様は、まだ会うのは二度目でしょう?」

「すまないが、この前のギフトゲームの時に君について調べさせてもらった」

「いえ····それは仕方のないことです」

「そう言ってくれると助かる。それとは別だが、元とは言え魔王だった者に私の弟を渡すわけにはいかないな」

「ちょっと待て姉さん!あれは――」

「分かっている。私が言っているのはそれではなく。そのもっと前の話だ」

「それだってレティシアには理由があるからそんなことをしたはずだ」

「相変わらず優しいな、お前は」

レーネは懐かしむように微笑む。

「優しくない。ただ一緒のコミュニティである程度生活していればそれくらい分かる。レティシアは悪い奴じゃない。それに魔王だったからとかそんなこと言うの姉さんらしくもないよ」

「ああ、私も不本意だ。過去にその人が何をしたかで、その人物を決めつけるのは偏見だ。しかし、箱庭には父さんも母さんもいない。となると必然的に順番から言っても身内である私が立場上お前の親みたいなものなんだよ。ここまで言えば分かるだろ?私はお前が心配で心配でしかたない」

「話逸れるけど、そう言うならこの手枷外せよバカ姉!!!」

「え、だってそれ外したらお前逃げるだろ?」

「とぉぜんだろ!人押さえ付けて拘束する奴から逃げない奴なんているか!!」

怒鳴るカズマだがレーネはキョトンとした顔で見ているだけで外してくれない。

ちなみに手枷は、両手を合わせて錬金術が使えないようにされている。

「私にはここにいない父さんと母さんの代わりにお前が立派な大人になるのを見届ける義務がある」

「あ、話し続けるんだ」

「それにらしくないのは、お前もだよカズマ」

「はぁ?」

「少し考えれば分かる。気持ちが分からないカズマに恋愛感情やそれ以外の感情を教える?それはもちろん必要なことであり、感謝すべきことだ。しかし、それをお前に恋愛感情を持っている彼女がやることはもはや洗脳と同意義だと思わないか?」

「本来自然と発生するその感情を学習していく内にその指導者を·····。って、流石にそんなわけないよ。なっ、レティシア?」

「······」サッ

「何で目を逸らす?」

「い、いやー別に。そんなことこれっぽちしか考えてないから安心してくれ」

「·····これっぽちしか?」

「少しぐらい、ほんのちょっこだけ。そんな考えがあったような無かったような····」

「(じいいいいいいい)」

「いや、だから」

「(じいいいいいいいいいい)」

「う、うぅ。そんなじっと私を見ないでくれ····」

「(じいいいいいいいいいいいいいい)」

「·····ごめんなさい。ありました」

そう認めたレティシアは嘘を見破られた小さな子供のようだ。

カズマは自分で問い詰めたものの頭が痛かった。

「やはりな。カズマ、これが彼女の本性だ。私が認めない理由は分かってもらえただろうか?」

この言葉にレティシアは当然としてカズマもぐうの音も出ない。

レーネは余裕そうに紅茶を飲んでこっちの敗北宣言を待っている。

「というか姉さん。そもそも姉さんが認める人っているの?」

「ん?もちろんいるぞ」

これにはカズマもちょっと驚いた。

実はカズマが元の世界で女の子に告白された件数が0な理由はレーネにあった。

レーネはカズマを狙って近寄る女を秘密りにかつ本人が傷つかないように排除していたからだ。

「一体誰ですかッ!?」

「フフ。ウィラだ」

「ウィラって、あのウィラ!?」

「ああ、そうだ。私のコミュニティ“ウィル・オ・ウィスプ”のリーダー、ウィラ=ザ=イグニファトゥスだ。そうだ!今すぐ“ノーネーム”を抜けてこっちに来いカズマ」

「はぁああ!!!??ふざけんなよバカ姉!確かに“ノーネーム”に固執する理由は特に無いけど!」

「オイ」

すかさずレティシアのツッコミが入るが無視。

「そもそも、そんなことウィラの意志も無いのに勝手にアンタが決めて良いことじゃないだろ!」

「つまりウィラにその気があれば問題ない、ということだろ?」

「いや、いやいや!無い、無いだろ!あれはそういうのじゃなくて、ただ····」

「確かにウィラは童顔な上に、無邪気な子供のような一面も持っている。だから、ただ懐いていると思われても仕方がない。でも、あれは彼女なりの好意の表れだったということだよ」

これは結構な衝撃的事実だった。

カズマが“ウィス・オ・ウィスプ”に滞在していた頃、ウィラは何かとくっついて来ていた。

それをカズマは、猫好きあるいは他の子供たちと同じく懐いているだけだと思っていた。

というか、何で好意を持たれたのか全く心当たりが無い。

だから、さっきからレティシアの無言の圧力は理不尽だと思った。

そんなことを悶々と考えている間も話は進んでいく。

「さてと、私の主張はこのようなものだが理解してもらえるだろうか?」

「理解はしましたが、承諾しかねます」

「君ならそう言うと思ったよ」

そう言いながらレーネは席を立つ。

「結局はこうなるのですね」

レティシアも席を立つ。

空気はピリピリと殺気を纏っていく。

「私も大変不本意だよ」

瞬間、周りの客には消えたように見えた。

そして、次の瞬間にはドゴォ!という大気を揺るがす音と共に湖の上に現れたのだった。

 

◇◇◇

 

ドゴッ!メキッ!グシャ!ドォン!

そんな破壊音が鳴り響く中カズマのところに一人の店員がやって来た。

「どうも~、黒猫の常連さん!」

言わずもがな。ニヤニヤしながらやってきたのは、“六本傷”のカフェでお馴染み猫店員ことキャロロだ。

「それにしても常連さんも中々隅におけませんね~www」

「はぁ。面白がってないでこれ外してくれよ」

「ところで、お姉さんとレティシアシアさんどちらが本命ですか?」

「そんなことどうでもいいから外してくれ」

「片や金髪美少女吸血鬼、もう片や黒髪美人のお姉さん。その二人が一人の男を奪い合う!これぞ修羅場!まさに修羅場!これって修羅場ってやつですよね常連さん?ですよね?ですよね?私、リアルで見るのって初めてなんですよー!というか、こんな面白い見せ物台無しなんて出来ませんよ!」

「········」

「あの常連さん?」

「········」

「あ、あのー。急にハイライトの消えた眼で見られると怖いのですが····」

「―――ない」

「はい?」

「耳とその尻尾どっちがいらない?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!すぐにノコギリ持って来ますから少々お待ちくださいぃ~!!!」

脱兎の如く店内に入っていくキャロロ。

とりあえずはこれで大丈夫だろう。

そう思い今なお激戦が行われている湖の方を見る。

影の翼で空を飛ぶレティシアにレーネは爆発的な跳躍力で応戦していた。

一見空を飛べるレティシアが優勢に見えるが先ほどから槍を数本ばかり鉄屑にされている。

今は“龍の遺影”を使って攻めているが、それでもレーネにかすり傷を負わす程度しか効かない。

(あんな包帯ぐるぐる巻いといて動いて良いの?というか、動きにくくないのだろうか?)

と疑問に思い、

(まぁ、姉さんなら大丈夫だろうし何でもアリだもんな)

自答していると、

「双方、そこまでじゃッ!」

とどこかで聞き覚えのある声が聞こえた。

見ると、レーネとレティシアの間に邪魔をするように白夜叉大人型(おとながた)が立っていた。

「邪魔をするな白夜叉!お前は関係ないだろう!」

レティシアが抗議の声を上げ、

「ほう·····彼女がかの白夜王か」

レーネはレティシアの影の上に立ちながら値踏みをするような目で見る。

「確かにお主の言う通りじゃ。····しかし、こうも公衆の面前で争われては止めぬわけにはいかんじゃろ?」

これにはレティシアは何も言い返せなかった。

しかし、ここで止めなければ姉特権でカズマを“ウィル・オ・ウィスプ”に引き抜かれてしまう。

どうしたらいいんだ····。そんな心中を察してか白夜叉は次にこう言った。

「大方の事情はそこのカズマの状況を見れば分かる。その上で言わせてもらおう。なぜ直接争う?ここは何処だ?修羅神仏が住まう箱庭であろう?ならば、どうやって決めるかは明白じゃろ」

「つまり、白夜叉殿はギフトゲームで決めろと言うたいのだな?」

「そうじゃ。それにギフトゲームで決めるならお主らも文句無かろう?」

「無論だ」

「レティシアはどうじゃ?このギフトゲームの舞台なら私が手配するぞ」

白夜叉のこの言葉は、簡単に言えば大々的にギフトゲームを開催して観客の前で白黒はっきり付けるのはどうだ?ということだ。

もちろん、これはレティシアにとっても悪い話ではない。勝てるかは分からないどころか相性は良くないが。

それを差し引いてもこのゲームをする意味は十分にある。

「もちろん、私もやるに決まっているだろう白夜叉」

白夜叉はそのやる気に満ちた目を見て大きく頷くと、

「ここに“カズマ・N・エノモト(クロナ=クロニクル)争奪戦”の開催を宣言する!!!!!」

瞬間、光輝く“契約書類(ギアスロール)”が“()()()()()()()()()()()()()()()

「「「············は?」」」

こうしてでカズマの所有権を巡る争いが行われることとなったのだ。

 

『ギフトゲーム名 “クロナ=クロニクル争奪戦”

 

・参加条件

     ・受付を済ませた先着四百名とする。

 

・ルール

     ・始めに百名ずつ四ブロックに分かれ予選バトルロワイヤルを行う。

     ・なおブロックはクジで決めるものとする。

     ・各ブロック原則勝者一名が決勝トーナメントに進むこととする。

・勝利条件

     ・最後まで勝ち残れ。

 

・敗北条件

     ・リングアウトまたは戦闘行動の続行不能。

     ・上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、ギフトゲームを開催します。

                           “サウザンドアイズ”印』 

 

これは余談だが、実は白夜叉もカズマを北側に連れて行かれると困るのであった。

 




どうも、皆さん!
いかがでしたか、レーネさんとレティシアさんの女の戦いは?
まだまだ始まったばかりですが、白夜叉さんが見事騒動を拡大してくれたようですね
次回は、カズマさんの名前がクロナ=クロニクルな理由も分かると思います
それにしても、これ去年からやろうと思ってた企画だったんですよ
いやー、ついに出来ましたよ。良かった良かった
これまで色々挫折した企画ありましたからね

それはともかくとして、
現在、活動報告にて“もしもの錬金術師”というものをやっています
簡単に言いますと、リクエスト募集ですね
今回のリクエストで見事採用された案は、次章で書かせてもらいます
なお、今回のリクエスト募集は幅が広いです
意味が分からない?
ならば、活動報告の方を見てください
そして、出来るだけ多くの案を私に提供してくれたら嬉しいです
正直、いつも少ないので(T_T)
それでは、どうぞよろしくお願いします
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=126380&uid=68074

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