問題児達と錬金術師×2が来るそうですよ?   作:射水 終夜

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7月7日、七夕ですね
英語で言うと、スターフェスティバル
皆さんはどんな願いを短冊に込めましたか?
私は、投稿ペースを上げたいです
つまり、執筆のスピードを上げたい
来年は年間行事ものの短編も書きたいですし

それでは、本編をどうぞ!





第13話 偽装の錬金術師

吸血鬼の古城・黄道の玉座

 

レティシアが目を覚ますと、石造りの独特な匂いが鼻腔を刺激した。

その匂いは何処となく懐かしい気がする。どうやら知っている場所らしい。

明かりのない部屋は薄暗く、頭上を見ると天井には煌びやかな水晶が敷き詰められていた。

「黄道の玉座·······。やはり此処に―――」

「お、レティシアちゃん。起きた?」

ハッと周囲を見回す。

そこにはコーキに耀、そしてジャックとガロロ、あと何処かで会ったことがある気がする白髪の少年がいた。

カズマはいない、それに少し(ホントはかなり)がっかりしてしまうレティシア。

やはりそんな都合の良いことなど起きないと、思った。

「コーキ、耀、ジャック·····。それに、ガロロか」

「おう、懐かしいなレティシア。二十年ぶりぐらいか?」

「そうだな。それくらいになるかもしれない」

「あらら?ガロロさんとレティシアちゃんって知り合いだったの?」

「おうよ。小僧で言う“旧ノーネーム”とは同じ連盟だったからな。知り合いっていうより、戦友だ」

「へぇ~、やっぱり前はすごかったんだねぇ」

としみじみと言うコーキ。

「そ、それはそうとガロロ。お前は此処で何を········?」

「そりゃ、アンタのゲームをクリアしに来たに決まってるだろ?なぁ、耀嬢ちゃん」

「うん。解けたのは第三勝利条件だけだけど」

耀はそう言いながら石室の壁を念入りに調べている。

暫くすると、何か窪みを押すような音が聞こえた。

「あった·······!コーキ、方角は?」

「そっちは処女宮だね。そこを基準に十二等分すると····」

ガコンと何かが填まる音がした。

レティシアは自分の元居城にそんな仕掛けがあったのかと驚いた。

「それは私たちの神殿に安置されていたものじゃないか。一体何を····?」

「········?レティシアはゲームの内容を知ってるんじゃないの?」

「実はこのゲームだが、他人に任せて作らせたものでな。本来の“主催者権限(ホストマスター)”のゲーム内容とは大幅にかけ離れているんだ」

「へぇ~、他の人に作ってもらうことって出来るんだ。じゃあやっぱり、この仕掛けはゲームと無関係か」

コーキはまた一つ欠片を填める。

「ねぇ、レティシア。この空飛ぶお城って、元々――じゃなくて······えっと「ある一定の軌道をある一定の期間で何度も周回する城」そう、それだったんじゃないかな?」

途中コーキによる助けが出された耀の質問レティシアは驚いた。

「あ、ああ。よく分かったな。我々吸血鬼は世界の系統樹が乱れないように監視する種族だったからな」

「そう。なら監視衛星だったんだね。········うん、そこは分からなかったな」

「あは!僕は知ってたけどね!」

「···········コーキ。今良いところなんだから水差さないで」

「ええ~?でも、僕これでも最近雑学にしかならないからって適当に覚えていた神話とか童話とかを勉強してるんだよ?特にそれらに登場する種族とかが箱庭ではどんな感じかってのを中心に。耀ちゃんもご飯のことばかり考えてないで少しは勉強でもしたら、僕に水を差されずにカッコ良くキメれるよ☆」

この言葉に耀はかなりムカッときたが、事実であるのでコーキを睨むことしか出来なかった。

「ゴホン。私が今填めているのは二つ目の解答の“砕かれた星空”、天球儀の欠片だよ」

「これはタイトルを太陽同期軌道と変換させて第三勝利条件の“獣の帯”を見れば、それが“黄金十二宮”を指していることが分かるよね?それに“砕かれた星空”のワードも会わせると天体分割法のことも指していることが分かる。では、どうやって十二宮を捧げる?勝利条件は“捧げる”ってあるから捧げられる物ってことだよね?そう考えたら天球儀って答えになったわけ」

「な、なんと·····!素晴らしい!見事だ!見直したぞ二人とも!!」

「ありがとう。でも、このゲーム解けたのはガロロさんやジャック、他のみんなが協力してくれたから。それに·····」

耀はここで言葉を切ると、それをコーキが引き継ぐ。

「実際、天球儀っていうのにいたったのはそこの白いののお陰なんだよね。嫌なことに」

その時のコーキの不機嫌そうな顔に、珍しいことだなとレティシアは思いながら白い彼を見た。

やはりその顔は何処かで会ったことがあったことがあるような気がした。

「よォ、吸血姫。こんな感じで話すのは初めてだな」

「その言い方····。やはり君とは何処かで会っているのか?」

「さァな?会っていると言えば会っているが会ってねェと言えば会ってねェ」

随分と曖昧な答えだ。でも、彼のような特徴的な人物に会っていればそうそう忘れられないと思う。

真っ白な肌と髪。瞳は左右で色の違うオッドアイは、右が翡翠色で左が赤。

その左の瞳にはギリシャ数字が刻まれており、針が時を刻んでいる。

「まだ分かンねェのか?オマエは大好きな錬金術師の顔を忘れちまうのか、ああ゛?」

「!!???」

「何処かで会った気がする?当然だァ。この顔はオマエが毎日見てる錬金術師(カズマ)のだからな」

レティシアは意味が分からなかったが確かによくよく見てみると、色は違えど髪型や体つきなどが一緒だ。

(どういうことだ!?この少年は、コーキと同じ変身系のギフト所持者か?いや、それなら―――)

と白カズマの言葉の真意を探るため頭を巡らしながらも、レティシアの心の中では消えかけていた焔が燃え上がりそうになっていた。

「あーあーあー!君は何でそう混乱を招くことをするかなぁ?ちょっと、こっち来い」

「ンだよ、事実を言っただけだろォが」

「良いから、来いってんだよ!」

コーキは白カズマのフードを掴むとズルズルと引きずっていく。

「ちょっと待ってく「悪いけど、嫌だ」」

「レティシアちゃんがすごく気になるのは当然だね。本当なら今すぐ説明したいけど、状況が状況だけにね。今説明することは出来ないの。でも、このギフトゲームが終わったら全話すから。それまで待っててね!」

そう何時もの笑顔で言うと、コーキは白カズマを引きずって玉座から出ていった。

レティシアは止めることが出来なかった。彼の笑顔の裏に影を感じたから。

(でも、このギフトゲームが終わってからでは遅いんだ····)

 

◇◇◇

 

「君はやっかいごとを二つも同時に起こす気なの?」

コーキは玉座を出て回廊をしばらく歩くと、そう言いながら振り返った。

「そんなつもりはねェよ。でも、時間がねェのも確かなことだ」

「それは、引っ込む気になったってこと?なら、許すけど」

「そうじゃねェ。吸血姫の時間の話だ」

「ん?それどういう意味?というか、何でレティシアちゃんには話そうとしたの?」

「死者に花を、だ。よく契約書類(ギアスロール)を思い出してみろ。あんなペナルティをつけてンのにノーリスクなわけねェだろ」

「確かにギフトゲームも多少等価交換な部分はあるけど·····まさか!?」

「あくまで推測だ。それで、オマエはどォするんだ?」

「どうするも何もゲームをクリアしないと大勢の人が死ぬし、クリアしてもレティシアちゃんが死ぬ?」

コーキはそう自分で言って笑った。

「ぷっ、ぷははは!ナニそのラノベやゲームみたいな選択?大を取るか小を取るか。仲間のために多くの人を見殺しにするかしないか·····」

「諦めンのか?」

「状況から見るにこのままゲームをクリアするのが最小限の被害で最大の人々を“アンダーウッド”を守れる。きっとレティシアちゃんはこのことを知っているだろうし、ゲームクリアしてもらいたいから話さなかったと思う。本人がその結末を望んでいる上に多くの人を救えるからこれは正しい選択だと思うし、仕方のないことだとも思える。結局、レティシアちゃんを殺してみんなを救う。それが最善策だよ」

コーキは己の無力さを噛みしめるようにうつむいていると、

「―――GYEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEYAAAAAaaaaaaaa!!」

と古城に巨龍の雄叫びが響き、雷雲の稲光が差し込んだ。

「ああ、再開されたんだ。もう諦めるしかない―――いや、それじゃダメだ」

「僕は医者だ。そして錬金術師だ」

「本当の医者は、患者の命を諦めたりは絶対にしない。最後まで最善を尽くして患者を助けようとする」

「本当の錬金術師、研究者は自分の納得のいく方法が見つかるまで思考を停滞などさせない」

「はっ、バットエンドなんてゴメンだね。0じゃなければ、歩み続ける。それが錬金術師だ」

その瞳には焔がついていた―――ように見えただけだった。

「―――という風に熱く求める方が好きかな、君としては?」

まるでさっきまで熱く語っていたのが嘘のように何時もの意地の悪い笑顔でそう聞く。

「チッ、そういうのを言っちまうところがオマエの面白くねェところだ」

「いやいや~、正直君の力なんて借りたくないんだけど、さっきの言葉だって完全に嘘じゃないんだよ。だから、可能性を少しでも上げるためにも、レティシアちゃんのためにも仕方ないじゃん」

それに、と続ける。

「君の主義だったか信条だったかをこれまでの行動を見るに·····。君、意外とこのゲームクリアする気満々でしょ?」

「ああ゛?ンなこたァねェ。オレはただ暇潰しに参加しているだけだ。勘違いすンじゃねェぞ、殺すぞ」

「ハイハイ。ともかく、僕は第四勝利条件を満たしにいくよ」

コーキは知っていたのだ。最強種を召喚するのに多くは器と星の主権が必要ということを。

巨龍の核がレティシアであることも。しかし、圧倒的に彼には力が足りなかった。

レティシアを巨龍から引きずり出す力も、それに至るための力も。

そもそも最強種にただの人間が戦いを挑むことが自殺行為だ。

でも、嫌なことだが、心の底から嫌なことだが、最高に嫌なことに白カズマがいる。

それが切り札だ。彼は、笑顔のためなら何でも使う男だ。

「で、君はどうするんだい?」

挑発するように笑いかける。

「クソが!そういうのを言うのが面白くねェつってンだろォが」

そんな白カズマの不機嫌そうな顔を見て楽しんでいる時だった。

『―――そこまでだ、小娘ッ!!!』

「――した·······!――日部―!下が――い!」

そのあとに雄叫びやあきらかな戦闘音がコーキたちの方にまで響いてくる。

「げっ、ここで黒幕からの邪魔が来たか。まぁ当然と言えば当然だね」

「ゴタゴタ言ってねェでテメェは助けに行けよ」

「いや、君もでしょ!」

「ハッ、オマエの目は節穴かァ?」

コーキはムカッときたがよく見ると、髪の色が徐々に変わっていっている。

それに合わせて白カズマの動きも鈍くなっていた。

にやけそうになるのを我慢しようとするが勝手に口角が上がってしまう。

ニヤニヤ。ニヤニヤ。

「ざまぁみろ(笑)カズマの勝ちだ!大人しく君はここに居るんだね♪」

「言っておくが、錬金術師が消えンのが回避されるだけでオレはいなくならねェからな」

「そんなことどーでもいいよ。カズマが生き残ったそれだけで十分!」

コーキは白カズマを置いて耀たちのいる玉座の間に走った。

 

 

「耀ちゃん!ジャック!ガロロさん!」

「コーキ殿!無事でしたか!?」

コーキの来た通路とは違う通路を行こうとしていたジャックがいた。

「僕は大丈夫。それより状況は?」

「春日部嬢が黒いグリフォンと戦っています。私たちはその間に勝利条件を完全に満たすため十三番目の星座を探しに行きます」

貴方はどうしますか?、ジャックは言外に問う。

「それが何だか分かってる?」

「ええ、大体の目星はついてます」

「OK!なら、そっちは任せた!」

「ヤホホホ、任されました。ご武運を」

そう言いコーキはジャックは別れた。

玉座に入るなり周りを見渡して状況を理解する。

一瞬だけレティシアと目を合わせ、すぐに出来て真新しい大きな壁の穴に向かってノンストップで駆けていく。

「この穴城下町まで続いているのかな····?というか、敵がグリフォンってやっぱこっちの方がいいよね」

ギフトカードから愛用のショットガンを出し、いつでも使えるようにリロードする。

「見えた!って、耀ちゃんが防戦一方になってるし!?しかも向こうの方が飛行能力が上だ····」

耀は城の周りを飛び、黒いグリフォンからの攻撃を避けるだけで背一杯といった様子だ。

コーキはトリガーにかけていた指を引く。

チッ、チッ、チッと音を立て飛ぶ火花は途中で灼熱の爆炎となり、生き物のようにうねり黒いグリフォンに―――

 

「グー爺の邪魔をしないでください。マユズミさん」

 

そんな声と共に黒い影のような斬撃が飛来し、炎を両断した。

コーキは瞬時に体の向きを変え、斬撃の飛んできた方を警戒する。

コツ、コツと足音が響き渡る。

月明かりの影から姿を表したのは、身体よりも大きな漆黒の鎌を持った銀髪碧眼の少女。

彼女、北山 (あきら)は微笑みながらこう言った。

「初めまして、お会い出来て光栄です。偽装の錬金術師、コーキ・C・マユズミ」

 




今回、あとがきは私の都合でお休みさせていただきます。
スミマセン。
その代わり次回予告的なのをさせてもらいますと、

コーキ:僕とカズマの過去が明らかになるよ!

白:違いますよ、マユズミさん。逆です逆

白:伏線が回収されるどころか増えますので、注意深く見ることをオススメします

コーキ:あとがきは、白ちゃんのプロフィールについてだよ☆

それでは、

「「「次回もお楽しみに!」」」

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