そして、白夜叉が燃えます。回ります。吹っ飛びます。
それでは、本編をどうぞ!
“サウザンドアイズ”支店
毎度のごとく毎度のように女性店員に門前払い受けていた一同は白夜叉の
「おお、スマンスマン。小僧たちが来ると伝えておらんかった。ちょいと重要な案件がある故、急ぎで通してやってくれ」
という言葉でようやく入店が許された。
女性店員本人は心底嫌そうな顔をしていたが。
何時ものように中庭から座敷に向かっていたが、障子の向こうから聞こえるあられもない女性の声に足を止めた。
「や、やめてください白夜叉様!!!!黒ウサギは“箱庭の貴族”の沽券に掛けて、あれ以上きわどい衣装は着ないと言ったではありませんか······!!」
「く、黒ウサギの言う通りです!この白雪も神格のはしくれとして········こ、このような恥ずかしい格好をして人前に出る訳には·······!!!」
黒ウサギと白雪なる者の悲痛な声が響き、一同は何事かと顔を見合わせる。
障子に映る白夜叉の影絵は、ノリノリで二人に襲いかかる。
それを見てハーミットはレティシアの腕のなかで溜め息を吐き、コーキは懐からカメラを取り出し電源を入れる。
「ふふふ、うぶな奴らよ。おんしらは何も分かっておらん。清く正しく美しく、尊いが故に、穢し堕とし辱しめたいと人は強く望むものよ。おんしらのように高嶺の花など特にそうなのだ!!このままではいずれ、その発育した豊満でエロイ身体にエロイ事を仕込みたいというエロイ欲求が爆発したエロイ暴徒がおんしらを姦策に嵌めてエロエロにしようと動きだすに違いない!そうッ!!まるで今の私の様にッ!!!」
「「黙れこの駄神ッ!!!!」」
刹那、竜巻う水流と轟雷が障子を突き破った。
ついでに白夜叉も吹っ飛んできた。小柄な身体で勢いよくトリプルアクセルを決めながら飛んでくる彼女にハーミットはランタンをかざした。
「燃えちゃえッ!」
そんな可愛らしい声とは裏腹にランタンから蒼い炎が溢れ出し、生き物の様に白夜叉へと襲いかかった。
「熱ちちちッ!」
火だるま化した白夜叉はそのまま吹っ飛び続け何時かの様に十六夜に、
「てい」
「ゴバァッ!!!」
と蹴られクルクルと回転しながら庭の池に落ちていった。
「人に火を点けるなんてハーミット君って、かわいい顔してなかなか凄いことやるわね······」
「うんうん」
「大丈夫だよ、
「つーか、何をやったらそんなに黒ウサギを―――」
怒らせるんだ―――と十六夜の言葉は続かなかった。
水煙の向こうに見える黒ウサギたちの姿に、言葉を無くしていたのだ。
「·······黒ウサギどうした?その格好」
ひゃ、と水煙の向こうで情けない声がする。
「ぁ、やだ、なんで十六夜さんが此所に········!!?」
「いや、それは俺の台詞だと思うが······ふむ」
バッと水煙を腕で払う。
途端に、黒ウサギと白雪姫は自分の身体を抱きしめるようにへたり込んだ。
水煙が晴れて見通しが良くなった事で、後ろのハーミット達まで黒ウサギと白雪姫の姿が良く見えるようになった。
「······着物?」
「えっと、ミニスカの着物?」
「いいや、ワンサイズ小さいミニスカの着物にガーターソックスだな」
「ふむふむ。僕のデータバンクによれば、この衣装は花柳斎人形“雪月花”の次女、“月の乙女”夜々の着物をモデルにしたっぽいね」
「うむ、流石はコーキ!その通りだ!この前酒飲み友達である硝子に三姉妹の写真を見せられてのぉ。どの子も可愛かったが夜々を見てビビッときたんじゃ!」
黒ウサギたちが着せられていたのは、身体のラインがはっきりと分かるよう小さめに着付けられた着物を、又下でバッサリと切り取った奇形の着物だった。加えて肩から胸までを大胆に開き、肌の露出を多くしている。極めつけは、花柄レースのガーターソックスという、もはや意味の分からない衣装である。
と、ここでコーキはレティシアの隣、つまり最後尾にいたコーキの存在に彼女気づいた。
「な、·······何でお前が――いや、貴方がここにいる······コーキ!!?」
先程の黒ウサギよりも情けない声を出したのは白雪姫だった。
ん?とコーキは思い一番前まで移動し、先程よりも顔を赤く染め黒ウサギの影に隠れようとしている白雪姫を見る。
そして、
「誰?」
ずごっ、白雪姫とコーキを除いた全員がずっこけそうになった。
「いや~、本当にそのミニスカ着物が似合うエロイお姉さんはどちら様?正直、そんな美人さんに会っていたら忘れるわけないんだけどね」
と首を傾げるコーキ。
「····いや、分からないのも無理はない。私は、······その··あの···」
ぼそぼそと言っていて重要なところがわからない。
それの助け舟を出したのはこの中で白夜叉を除いたら白雪姫の本来の姿を知っている十六夜だった。
「なぁ、コーキ。トリトニス滝にいた蛇神を覚えているか?」
「はい?いきなり、どうしたの?藪から棒に。覚えているけど·····というか、十六夜君この美人さんのこと知ってんの?」
「まぁ、聞け。その蛇神の名前が白雪姫っていうらしいぞ」
「へー、そうなんだ。白雪姫ね·····白雪、って!!!!」
考えるように下げていた顔をばっと上げると、白雪と十六夜を交互に何度も「えっ?えっ?えっ?」と言いながら見て白雪の方で止まると、
「まさか、このお姉さんがあの十六夜君に蹴られて一発KOされていた蛇神様!!!????」
◇◇◇
「それにしても、色々と驚いたわね」
「うんうん。というか、白雪とコーキってなにかあったの?」
「いや、別になんかあったわけじゃねぇけど、俺が白雪に喧嘩を売られて蹴っ飛ばしたって話はコーキ言っていただろ」
「言っていたわね。でも、十六夜君女性を蹴るのはどうかと思うわ」
「いや、そん時は蛇の姿だったからな···。そもそも、女だったとは驚いたぜ。で、そのあといくら喧嘩売られたからってかわいそうだよ~とか言ってコーキが錬金術で治療してやったんだ」
「··········えっ、それだけ?」
「おう!それだけだ」
「白雪ってコーキ君に好意を持ってそうだったわよね?」
「多分·····」
「確実に一票だ!」
「「「・・・・・・・」」」
「「「白雪ちょろッ!!!」」」
「何か言ったか、小僧どもッ!?」
「「「いえ、なにも····」」」
ばっと障子が開け放たれ、隣の部屋で着替えていた白雪と黒ウサギが戻って来た。
「うぅ·····、やっと何時もの格好に戻れたのですよ····」
「ねぇ、黒ウサギ。さっきの着物どこに置いたの?」
ハーミットは、座っているレティシアの膝の上から飛び降りながら聞く。
「それでしたら、そこに····。というか、ハーミットさんはそのハレンチな着物モドキをどうするのですか?」
「ん、燃やすんだよ」
「でしたら、どうぞどうぞ」
と言いながら黒ウサギは綺麗畳まれた着物二着をハーミットに渡そうとする。
「ちょっと、待てーい!制作者であるこの私の許可を得ずに勝手に処分しようとするでない!」
「お黙りください、白夜叉様!こんなものない方が世の中のためでございます!」
「黒ウサギの言う通りです!こんな淫らな衣装を着させられたことなど、恥でしかない。その事実ごと燃やせ、猫!」
「ええ?僕はすごく似合ってたと思うし、好きだよ」
「やっぱり、私のは燃やすな猫」
「君も物好きだね。というか、白夜叉この衣装何のために作ったの?ああ、いやまたエロイのが見たかったからとかしかないよね」
そう言いながら、ボッ と着物が炎に包まれ灰と化し風に舞った。
「いや、別にそういうわけではない。今の服は本来黒ウサギに着せる衣装ではなく、この外門に造る新しい施設で使う予定の正装じゃよ」
白夜叉は焦げ臭い頭を振りながら真面目に答えた。
「し、施設の正装!?あのエッチな着物モドキがでございますか!?一体どんなお馬鹿な施設を作るつもりなんですか!?」
「もう一回燃える?」
「落ち着け。施設そのものは至って真っ当な代物だ」
「まぁ、簡単に説明するとじゃな。まず、これは“階層支配者”の活動じゃ。次に魔王らしい魔王もいないし優秀な
「ああ、そういえばこの前の干魃の時に色んなコミュニティが困ってたもんね」
「そうだ。そして、街中にある水路だがあれは有料だからな。使えるのは中級コミュニティだけだ」
「もう一つ言えば、定期降雨を溜めるにしてもそんな大きな土地を持っているところも少ないからね」
いつの間にかレティシアの膝の上に座らされているハーミットが付け加えた。
「うむ。そこで一つ“階層支配者”の権限で大規模な水源施設の開拓を行おうというわけだ。十六夜かコーキに頼もうと思って、結局十六夜にしたんじゃが。十六夜には白雪の元に水源となるギフトを取りに行かせたんじゃよ·····よもや隸属させてくるとは思わんかったわ。まだまだ修行が足りんのう、白雪?」
ニヤニヤと笑いながら白雪を見る白夜叉。
白地の着物に着替えた白雪は、ムスッとした顔で言った。
「お話は分かりました。しかし!なぜ、コーキではなくあの小僧を寄越したのですか!?コーキならば無条件に隸属しても良かっ―――もとい、ギフトを渡していたというのに!よりにもよってあの小僧を·····」
「そうだよ!白夜叉ちゃん!僕には、テスター仕事しかくれなかったのに!どうして、十六夜君にその仕事を任せたの!?僕だって白雪ちゃんみたいな女の子を隸属させたかったよ!!!」
「いや、単純におんしは白雪のギフトゲームとは相性悪いし無条件でギフトを渡されては意味がないのじゃ。正式にギフトゲームをしそしてギフトを手に入れる今回はそれが必要だったんじゃよ」
「えっ、何で?」
「今回私は“階層支配者”として施設は用意するが最後の一押しはその地域の者が成さねばならない。なのに、無条件で手に入れたギフトを一押しにするわけにはいかんじゃろ」
「まぁ、そういうことなら致し方ありませんな」
「よく分からないけど、“仕事”に話は納得した」
とりあえず、ここで一旦コーキと白雪の文句が終わったので十六夜は本題に移ることにした。
「さあ、これで契約成立。ゲームクリアだ。例の物を渡してもらおうじゃねえか」
「ふふ、分かっておる。“ノーネーム”に託すのは前代未聞だが······地域発展のために神格所持者を貸し出すのじゃ。他のコミュニティも文句は言えんさ」
そう言うと白夜叉は柏手をパンパンと打った。
すると座敷は光に包まれ、やがて一枚の羊皮紙が現れる。
羽ペンを虚空から取り出した白夜叉は文末にサインを書き込むと、ジンに渡した。
「それでは、ジン=ラッセル。これはおんしに預けるぞ」
「ぼ、僕ですか?」
「うむ。これはコミュニティのリーダーが管理するものじゃからな」
ジンは白夜叉の視線に促され、羊皮紙に目を通した。
直後、ジンは衝撃で硬直し動かなくなった。
「こ、これ·······まさか····!!?」
「どうしましたジン坊っちゃん?」
ピョンと、ジンの後ろに回り込む黒ウサギ。
すると、ジンと同様に彼女も固まった。
その羊皮紙に書かれていたことは、次のようなことだ。
『――二一〇五三八〇外門 利権証――
*階層支配者は本書類が外門の利権証である事を保証します。
*外門利権証の発行に伴い、外門の外装をコミュニティの広報に使用する事を許可します。
*外門利権証の所有コミュニティに右記の“
*外門利権証の所有コミュニティに右記の“境界門”を無償で使用する事を許可します。
*外門利権証は以後、“ ”のコミュニティが
“サウザンドアイズ”印』
このあとのジンや黒ウサギの喜びようは説明するまでもないだろう。
文面を見れば、どれほどすごいかはイメージ出来よう。
というわけで以下略とさせてもらう。
◇◇◇
黒ウサギのあまりの嬉しさによるオーバーリアクションも終わり“ノーネーム”一行が帰ろうとしている時、
「おお、忘れるところじゃった。コーキよ、少し残っといてくれ。話がある·····私からも白雪からもな」
「ん、そう?んじゃ、レティシアちゃんたち先に帰っといて~」
「分かった。それでは、また――あ、カズマ」
相変わらず抱かれていたハーミットは突然腕を抜け、飛び下りると正座をしている白雪に駆け寄った。
「何かようか、猫?」
「言わなくても良かったけど、昔話の中でも神話の中でも助けられて恋に落ちるなんて実によくある話だよ」
「ふん、·····私は別に小僧共の言葉など気にしてないぞ。これは他人に口出しされるようなものではない」
「そう。別にどうでもいいけど」
それだけを言うと、ハーミットは部屋を出ようとして再びレティシアに捕まっていた。
こうして部屋には白夜叉と白雪、そしてコーキだけとなっていた。
いや~、ついにコーキさんのヒロインの登場です!
コーキ:イエーイ!待ってました!
まぁ、ヒロインがいるからって出番が増えるわけではないんですがね······
コーキ:ええー?ヒロインいるんだから出番増やそうよ。恋愛しようよ。ついでに大人の階段登っちゃおうよ!
えっ、嫌ですよ。めんどくさい
コーキ:ヒドイ!それじゃ、設定として登場させただけじゃん。青春したい!恋愛したい!エロいことしたい!
本性を現しやがりましたね。最後の一項目をしたいだけでしょ!
コーキ:そんなことないよ。僕は恋がしてみたい。人を愛してみたい。家族を作るって幸せを感じてみたいよ。結構、本気で
あ······、そうですか。そこまで言うなら何も言いません。最後に白雪姫さんがヒロインに選ばれたことについてどう思いましたか?
コーキ:そうだね~。まさか、蛇神様が僕のヒロインだなんて驚いたね。でも、美人で巨乳で着物がすごく似合う魅力的な女の子がヒロインだなんて光栄だね。
········。なーんか、コーキさんが大真面目に話すなんて気持ち悪いですね
それはともかく、今回はここまで!
「「次回も見てください!!」」