お正月はどのように過ごされましたか?
私は、ずっと冬休みの宿題に追われる日々でした(笑)
まぁ、それはともかく。この物語もいよいよ、第三章!
さぁ、頑張っていきましょう!
第1話 ハロウィン・キャット
とある空に浮かぶ古城
そこは、人一人どころか生物一ついない。
その本来何者もいないはずの古城の中に声が響き渡った。
「おーい、エンヴィー!何処だー?エンヴィー?······マジでどこいったアイツ」
緑色のパーカーを着た少年は、そう叫びながら古城の中を歩いていく。
どうやら、人を探しているようだ。
少年は何度か「エンヴィー」なる者の名前を呼んでいると、古城の一番外側の大きな窓(ガラスなど無い)に腰掛け外を見ている長い髪にバンダナをしている少年(?)を見つけた。
「あっ、いた。やっと見つけたぞ、エンヴィー!」
「ん?······何だ。
鏡磨と呼んだ少年のほうをチラッと見るエンヴィー。
「何だはないだろ、何だは。せっかく、人が呼びに来てあげたってのにさあ」
「はははは!ごめんごめん。さっき、ラストおばはんから連絡があってさ」
「火龍誕生祭のことか?」
「うん。いや~、あの黒死病のルーキーがさ。どうやら失敗も失敗大失敗。全然使えなかったみたいで。せっかく、色々サポートしてあげたのにね、全部無駄。でも、人柱候補を見つけるのには役立ったみたい。しかも、二人」
「へぇ、それは収穫だな。でも、『人柱候補』ってことはまだ扉を開けてないんだよな?」
「そっ。まぁ、なんかクズ魔王を倒したから収穫祭にコミュニティ自体が招待されてるみたい。だから、こっちに来るらしいよ。そう言えば、鏡磨って何か用があったんじゃないの?」
「あっ!忘れてた。
「おいおい、しっかりしてくれよ。もう、その年でボケちゃってるの?今度から“ボケ鏡磨”って呼ぶよ?」
「ボケてねぇよ!つーか、さっさと行くぞ。俺が怒られる」
「別に鏡磨が怒られるのはいいけどね~。そう言えば、今日の晩御飯何?」
「ええと、確か―――」
そんな会話をしながら二つの人影は城内へと消えていった。
◇◇◇
“ノーネーム”廃墟街から本拠への道
三年前の“魔王”の力により、廃墟街と化した街の家屋をバラして整備をした飛鳥とその巨大な鉄人形のディーンは本拠へと帰っているところだった。
途中、ディーンの頭上であお向けに寝ている耀が加わっている。
さて、そんな風に二人を乗せ本拠へと向かっていたディーンは奇妙な物を見つけ立ち止まった。
例え、飛鳥や耀が自分の足で歩いていようが十六夜だろうがレティシアだろうが足を止めただろう。
まぁ、カズマなら何時もの無表情のまま踏みつけて行ったしれないが····。
ディーンが見つけた物は――――生き倒れだった。
生き倒れと言ってもうつ伏せに倒れているため本当に生きているかわからない。
「······。確か、こんなのに出会った時の対応の仕方を十六夜君が言っていたわよね?」
ディーンの主である飛鳥は生き倒れを見下ろしながら言う。
そして、飛鳥には生き倒れている者の服装に見覚えがあった。
「コーキ君、大丈夫?どうしたの?そんな所に倒れて。具合でも悪いの?」
「········」
返事が無い。ただの屍のようだ。
飛鳥は、数十秒待ったが返事がないため無視して本拠帰ろうかなと考えたところで屍が声を発した。
「あ·······ああ、すかちゃん。ヘルプ·····ミー。ディーンに乗せてくれるとありがたい」
初めは聞き取りにくかったがだんだん通常の喋りに戻った。
でも、彼にして声に元気が無かった。
「?。ディーン、コーキ君を乗せてあげなさい」
「DeN」
ディーンは飛鳥の言う通り、コーキのフードを摘まんで自分の肩(飛鳥の隣)にコーキを乗せた。
「ああ、······ありがと」
やっぱり、元気がない。
「コーキ君、本当にどうしたの?いつもより、テンションがあきらかに低いわよ」
「実はね·····僕、出禁くらっったんだあああああぁぁぁ!!!!!」
コーキは泣きながら言っているが飛鳥はそんなことよりも“出禁”について考えていた。
出禁は、基本的に店などで起こることだがコーキがそれくらいで生き倒れになるわけがない。
じゃあ、何なのか。飛鳥には心当たりがない。
「あの、泣いてるところ悪いのだけど、出禁って何が出禁になったの?」
「·······ギフトゲーム」
「へ?」
「僕は、ギフトゲームが出禁になったの!これじゃ、アンダーウッドどころか今後の生活が危ないんだよぉ!」シクシク
というコーキの訴えは置いといて彼が言った『アンダーウッド』のところを説明しよう。
火龍誕生祭が終わり一ヶ月が終わった頃、ノーネームのメンバーは現在の農園区の状態や今後の活動方針を決める話し合いが行われた。
農園区の状態の説明、今後どういう風になるかの話はわりとスムーズに済んだがリーダーであるジンが予想していた通り一つ問題が起きた。
それは、“ノーネーム”に送られてきた招待状の内の一つ、南側の“
これ自体は問題どころか“ノーネーム”としては破格のVIP待遇だった。宿泊費なども全部“
さて、問題だったのはこの収穫祭は前夜祭を合わせると約一ヶ月ほどあり、長期間主力がいないことを避けるため、その全てに参加出来るのは
なら、当然その二人をどうやって決めるかという話になり十六夜の案で『前夜祭までに、最も多く戦果を上げた者が勝者二名』ということになった。
つまり、Let's 貢献!
「仕方なく、白夜叉ちゃんのところでアルバイト的なのしようかなって思っていったけど、結局自分の戦力強化にしかならなかったんだ(涙目)」
「え、でもアルバイト出来たのよね?なら、何か貰えたのでしょう」
「さっきも言ったけど、自分の戦力強化にしかならなかったんだよ」
と言いながら自分の左耳をコンコンとつつく。
そこには、白と蛍光黄色のヘッドフォンが着いていた。
それを見て、飛鳥は疑問に思った。
通常ヘッドフォンは、左右に小型スピーカーがあり、それをアームで繋いでいる。
が、それは左耳にしかなかったし音楽機器に繋ぐためのコードも無いもなかった。
「それが、バイト代?というかそれ不良品じゃないの?」
「はっはっは!確かに見た目は変わった片耳ヘッドフォンだけど、実はこれ――」
一瞬で泣き顔からいつもの顔に戻ったコーキが説明を始めようとした時だった。
「うわああああああ!来ないで!来ないで!来ないでー!!!!」
そんな叫び声がして、いつの間にか廃墟街を抜け農園区を移動していた二人と一体は声のした本拠の方を見る。
すると、こちらに向かって走ってくる人影――もとい、人影一つと猫影が一つあった。
先ほどの声の主は魔女の帽子に黒いマントを身につけ、黒い鉄棒の先に蒼白い炎が灯ったランタンを括りつけた物を持っていて、まるでハロウィンの世界からやって来たみたいな格好をした体長50cmほどの猫人獣だった。
そして、その猫を追いかけているのは
「待ってくれ!ちょっとでいいんだ!ちょっとで!」
超金髪美少女メイド吸血鬼のレティシアだった。
いきなりのことに状況が理解できず、呆けてしまう飛鳥とコーキ。
その間に猫は足を止めていたディーンの脚にガシッと掴まりと、よじよじと俊敏な動きで登り始めた。
あっという間に体、頭を登りその上であお向け寝ていた耀の鉄板の上まで逃げる猫。
そこでやっと、飛鳥が声をかけた。
「あの、ハーミット君?一体どうしたの?というか、何故貴方がここにいるの?」
「そんな細かいことは、いいから助けてよ!さっきから来ないでって言ってるのにレティシアが追いかけてくるんだ!」
と、言っている間に翼を持つレティシアはそれを展開しハーミットの目の前に現れる。
「さぁ、もう逃げ場はないぞ。諦めて大人しくしてくれ」
「嫌だ!絶対に嫌だ!」
「あの~、レティシアちゃんはその猫君に何をしようしているの?何かすごく嫌がってるみたいだけど····」
「別に大したことじゃない。ちょっと、モフモフさせて欲しいだけだ!」
「ん、まぁ確かに手触り良さそうだし、カワイイもんね····。その気持ち分かるよ」
「私も·····少しモフモフしたいわ」
「久遠まで!?」
「別にいいじゃない、それくらい。触ったからって減るものではないわ」
「そもそも、何で嫌なの?」
「え、いや·······だって――」
ハーミットはチラチラとレティシアの方を見ながら、
「だって、一回捕まったら二度と逃げれないってボクの本能が言っているから·····」
この答えにコーキは首を傾げ、飛鳥は「なるほどね」と呟き、レティシアは
「私は、そんな酷い奴じゃない!優しくする、だからモフモフさせてくれぇ!!」
と、瞳をうるうるさせながら言う。
「うっ·····!」
あきらかに、罪悪感を感じたような声をハーミットは漏らした。
「ハーミット君····」
「可哀想だし、少しだけ····」
そこにさらに飛鳥とコーキの追い打ちがくる。
「うううっ······」
と、唸り
「分かったよ。もうレティシアの好きにしていいよ·····」
脱力したように耀の鉄板の上に座り込んだ。
「本当か!?なら、遠慮なく抱き締めるぞ!」
レティシアは、パァと顔を輝かせハーミットに抱き締める。
「ああ、ふかふかだ~!気持ちぃ~。かわいい~。最高だぁ」
「ちょ、レティシア····苦しいよぉ」
そしてこの後、ハーミットは本拠に着くまでレティシアに撫でられたり、頬擦りされたりしていたそうだ。
◇◇◇
本拠に帰り、昼食を食べた後
大広間には、収穫祭に誰が何日いるのかを決めるため十六夜、飛鳥、コーキ、耀、そして審査役のジンとレティシアが集まっていた。
「あの~、皆さん。カズマさんが居ないのですが何方か知りませんか?あと、レティシアが抱いているネコはどちら様ですか?格好からして“ウィル・オ・ウィスプ”の方ですよね?」
「そうだよ~。ボクの名前はハーミット。春日部耀がギフトゲームに勝利したことにより発注されたモノを届けに来たんだよ~」
ガシャガシャとランタンを持った手を振るハーミット。
彼は本拠に着くてから、昼食を食べる時もレティシアに抱かれたままだった。
「あと、ジン君。カズマ君なら、もうここにいるから始めていいわよ」
「えっ?どこにですか?」
「いや、そこにいるじゃねえか、御チビ」
と十六夜の指の先にいるのはハーミットだ。
「えっ?いや、彼は·····。“ウィル・オ・ウィスプ”のハーミットさんで」
「悪いけど、ジン君の理解速度には合わせられないわ」
「簡潔に言うとその猫君は、“ノーネーム”所属のカズマ・N・エノモトであり、“ウィル・オ・ウィスプ”所属のハーミットなんだよ!」
「厳密に言えば、“ウィル・オ・ウィスプ”所属じゃ無いんだけどね」
「当たり前だ。いくら、ジャックでも私のカズマを渡すわけにはいかんからな」
「ボクは、いつからレティシアのモノになったんだろうね····」
「·········早く始めよう」
というわけで閑話休題。
「えー、改めて審査を始めたいと思います。まず、大きな戦果からです」
一拍おいて、
「まず、飛鳥さんですが、牧畜を飼育するための土地の整備と、山羊十頭を手に入れたそうです。飼育小屋と土地の準備が整い次第“ノーネーム”に連れてくる予定です」
「ふふ。子供達も『山羊が来る!』『チーズが作れる』と喜んでいたぞ。派手ではないがコミュニティとしては大きな進展だと思うぞ」
フフン、と後ろ髪を掻きあげる飛鳥。
余裕が感じられる。
レティシアはハーミットを両手で抱えているため、代わりにハーミットが報告書をペラリと捲る。
「次にカズマだが、······流石というか、なんというか」
「ですね。カズマさんは、“ノーネーム”敷地内に温泉の源泉の発見。そしてこの本拠へのパイプ接続、新しい浴槽や浴場等の入浴設備の増築を全て一人でしてくれました」
「はははは!また、本拠を改造したんだねwww」
「カズマ君の行動力には驚かせられるわね」
「温泉に入り放題····」
「また、自費で作ったのか?お前、毎回どうやって金稼いでいるんだよ?」
ハーミットは報告書から顔を上げると、十六夜の質問に半分答えた。
「今回はほとんど、お金は使ってないよ。金属パーツはほとんど土から錬成したし。お金使ったのは木材だけかな···。あと、ジン。ボクは辞退したはずなんだけど、なんで参加させられてるわけ?」
「いえ、十六夜さんたちが参加させろって言ったので「そう、別にいいけど」」
ジンの言葉を遮るハーミット。
「あの、怒ってます?」
「別に。ボクのことはいいから続けよう」
「あ、はい。次にコーキさんですが、残念なことに十六夜さんと同じ“出禁”をくらったそうで、戦果はありません」
「十六夜君はいいよね~。なんか白夜叉ちゃんからなかなか良いギフトゲーム紹介してもってさ」
「お前もお前で白夜叉がなんかギフトゲームじゃなくても仕事くれただろ?」
「新しく売り出そうか考えているギフトのテスターの仕事だったら全然戦果にはならなかったよ!」
はっはー、とやけぎみに笑うコーキ。
「ええ、次は耀さんの戦果です」
「春日部耀の戦果は、ボクたち“ウィル・オ・ウィスプ”主催のギフトゲームの賞品。この、ジャックが作った炎を蓄積できる巨大キャンドルホルダーだよ。おめでとう!」
ハーミットは、腰に着けていたポーチの中からギフトカードを取り出し、キャンドルホルダーを実体化させる。
「これを地下工房の儀式場に置けば、本拠と別館にある“ウィル・オ・ウィスプ”製の備品に炎を同調させることが出来る」
「これを機に、竈・燭台・ランプといった生活必需品を“ウィル・オ・ウィスプ”に発注したいと思います。·····あの、ハーミットさんいいですか?」
「うん、いいよ。むしろ、ジャックも喜ぶと思うよ!本拠と別館の全部ならそれなりにお金になるしね」
「あれ?“ウィル・オ・ウィスプ”って貧乏なの?けっこう、ガラス細工とか有名なのに」
「別にそういうわけじゃないけど、子供たちが多いのに稼ぐ人が少ないからね····。お世辞にも裕福とは言えないよ」
「なるほどな。てか、知らない間にそこまで設備プランが進んでいたとはな。やるじゃねえか、春日部」
「うん。今回は本当に頑張った」
何時になく得意気な微笑みを浮かべる耀。
今回の収穫祭の参加日数を決めるこのゲームには、並々ならぬやる気を出していた。
彼女にしては、これ以上の戦果は挙げられないだろうという、自信に満ちた微笑みだった。
「いや、意外だったぜ。金銭を賭けた小規模ゲームが多い七桁で、中々大きい戦果を挙げたみたいじゃねえか」
とニヤリと笑いながら言う十六夜。
「嫌みか!それは嫌みなのか!何の戦果も挙げられなかった僕への嫌みなのか!というか、十六夜君の戦果は何なのさ!?余裕ぶっこいてるみたいだけど、耀ちゃんたちを越えられるの!?」
そんなコーキの言葉を聞き、十六夜は不敵な笑みを浮かべ立ち上がる。
「当然だろ。そんじゃ、今から戦果を取りに行くとしようかね」
「取りに行くってどこに?」
「“サウザンドアイズ”にさ。主要メンバーには聞いて欲しい話があるからな」
十六夜のその含みのあるその言葉に首を傾げた一同であった。
さぁ、今回カズマさんの新形態が出てきましたね
ハーミット:そうだよ~!新形態と言うより、新型なんだけどね
そうでしたね。“猫族”のギフトの人獣型の獣よりですもんね
ハーミット:うん。人獣型人よりの場合は、猫耳猫尻尾の生えた姿だよね
ところで、ハーミットさんってカズマさんと同一人物なのに口調も性格も違いますね
ハーミット:それについては、今後本編でも同じことかなり思われると思うな
でしょうね。人型と、違って感情も表情も豊かですもね
ハーミット:その理由は、“猫族”のギフトが原因なんだけど·····それは、いつか本編として語られるかもしれないから今は言わないよ
そうですね。ある程度落ち着いたら、短編集でもしたいですね
それでは、今日はここら辺で
「「次回も見てください!」」