問題児達と錬金術師×2が来るそうですよ?   作:射水 終夜

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さぁ、これで第二章本編が終わります

「次回は番外編だよ!」

コーキさん、そういうことは後書きで言ってください

「まぁまぁ、そういわずに。それでじゃ、本編をどうぞ!」

勝手に進めないでください!!!



第10話 黒幕の奥の更なる黒幕

境界壁・舞台区画

 

月から戻ったカズマは赤い煉瓦建物の上に座っていた。

「で、結局俺の腕はどうなんだ、()()()()()()?」

その隣では、コーキがカズマの右腕の包帯を解いていた。

「そうだねぇ、右腕は加速に耐えられなかったみたいだね。完全に肩外れてるよ。そして予想通り、包帯が血でべとべと」

「つまり?」

「つまり、本陣営に戻ったら肩はめて固定しないといけないってわけ。そして、右腕の使用を禁じます」

「それは困る。右利きだからな」

「はっはっは!なら、左で投げれば出血も脱臼しても困らなかったのにねwwww。ほい、巻き終わり!」

包帯の巻き直しが終わると、カズマはそのまま後ろに倒れる。

「はぁ······疲れた。寝る」

「ちょちょちょ、こんなところで寝ないでよ!肩だってまだはめてないのに······ってカズマさん?起きてます?」

ちょいちょいとコーキはつついてみたが反応がなく、規則正しい寝息が聞こえる。

「はぁ、まったくぅ·····。この幼なじみは····。もし、ここにいるのが僕じゃなくレティシアちゃんだったら速攻既成事実作りされるとか考えのいのかな~」

いくらレティシアでもそんなことはまだしない、とツッコミを入れてくれる人はいなかった。

はぁともう一度ため息吐いた時にはコーキの姿は黒ウサギに変わっていた。

そしてそのまま寝ているカズマをお姫様抱っこすると、ぴょんぴょんと屋根から屋根を飛び本陣営に帰っていった。

これまでの一部始終を見られていたということに気づかずに。

 

◇◇◇

 

ゲーム終了より48時間後

外では祝勝会を兼ねた誕生祭が行われていた。

サンドラの魔王に初勝利を収めたことや、“ノーネーム”の功績が取り上げられ大いに盛り上がっていた。

さて、そんな表の世界と違ったこちらは舞台裏。

マンドラは身近な衛兵(少佐も含む)にも暇を与えて宴を楽しむよう促し、宮殿の執務室で一人“サウザンドアイズ”の黒い封蝋が押された手紙を読んでいた。

「··········、」

他に人は無く、扉も閉めきっている。

手紙の内容に一通り目を通すと、執務机に手紙を置き、独り嘆く。

「『全てが万事上手く進行し、魔王を撃退されましたこと、お祝い申し上げます。新生“サラマンドラ”が北のフロアマスターとしてご活躍されることを心より期待しております。追伸/星海王からお預かりした神珍鉄は、例の撒き餌達に贈らせていただきました』、か。········流石は“サウザンドアイズ”。何もかもお見通しか。悪い事は出来んな」

「大体予想通りだね~」

ガタンッ!とマンドラは立ち上がる。

周囲には誰もいない。だがその時ヒュウと風が吹いた。

バッと窓の方を見ると、先程まで閉まっていた窓に人影が二つあった。

一つは窓に座っている右腕を固定されているカズマ。もう一つはその背中に寄りかかるようにして外を見ているコーキ。

「さっきの『悪い事』ってあれでしょ。“サラマンドラ”が魔王をこの祭りに招いたことじゃない?」

「·········なっ、」

「いや、子供かあんた?あいつらの侵入方法を考えれば、一三〇枚ものステンドグラスの出展なんて主催者(ホスト)側が意図的に見落としてない限りないだろ?」

「もし、これが意図的じゃないって言うなら、“サラマンドラ”は脳みそスカスカのクズの集まりってわけだね」

アハハ と笑いながらコーキは祝勝会で盛り上がる街を見下ろす。

マンドラは冷や汗を流しながら、帯刀している剣を握る。

目の前には手負いの人間に完全にこちらを警戒してない人間·····と思っていると、

「ああ、止めといた方がいいよ。このことに気づいてるのが僕たちだけと()()()()

その言葉にビクッ とマンドラは身の危険を感じた。

「当然、十六夜も気付いているし、他の有力なコミュニティも気付いているはずだ」

「だよね~。新人魔王VS新人階級支配者(フロアマスター)?ずいぶんとご都合主義な話だよ。そして、新人で信用が薄かったサンドラちゃんは、見事魔王を退けてみんなを守り、階級支配者として認められました。めでたし、めでたしって感じ?良かったね!これで“サラマンドラ”の未来は安泰だよ!」

「·······っ·····」

歯噛みをするマンドラ。

コーキはそれを見て、はぁ~ と盛大に溜め息を吐いた。

「ほんっと、イライラするね。ここまでお膳立てしてるんだからさっさと話したらどうだい?そもそも、今回の死者が“サラマンドラ”以外だったらどうするつもりだったの?さらに言えば、今回のゲームは完全にそちらの手に余るものだったよね?僕たちが居なかったらとっくに魔王に滅ぼされてたんじゃない“サラマンドラ”って」

「·········」

「はっ、まだ黙るの?本当に····」

「―――かるまい」

「ん?」

「箱庭の外から来た貴様らに分かるまい······!」

マンドラは怒りからなのかは不明だが震えながらこちらを睨んでいた。

「コミュニティの旗を!名を!名誉を守るという意味がッ!!!有力な跡目に裏切られ、長が病に床に伏せ·····!失墜寸前のコミュニティを支えるために命を賭すなどッ!!箱庭の外の、ましてや人間なんぞにわかるはずがない!!!」

所詮、箱庭の外の部外者。

その言葉はコーキは何も言えなかった。

いくら理論武装しようともこれは変わらない事実であるのだから。

が、

「くだらねぇ」

「何だとッ!?」

「正直言ってあんたが言ってることは本当にくだらねぇよ。というか、“サラマンドラ”は俺たちにそれを言う資格はない」

「どういうことだ!?」

「だって、“サラマンドラ”って“元・ノーネーム”を見捨てたんだろ?」

「ッ!!!」

「それがなに俺達に名だ、旗だってほざいてるんだ?ホントくだらねぇ」

カズマは表面上こんなことを言っているが“サラマンドラ”が“元・ノーネーム”を見捨てたことを怒っているわけではない。そこについては、心底どうでもいい。

“サラマンドラ”が自分のコミュニティを守るために見捨てたことくらい分かってる。

でも、自分が見捨てた結果“ノーネーム”になったコミュニティに所属しているカズマ達に『名が、旗が』と言うのは間違っているだろう。

「ならどうすれば····!どうすれば良かったと言うのだッ!?」

マンドラは堪らず、叫んでいた。

「いや、そこは『どうすれば良かった』じゃなく『どうすればいい』だ?何を勘違いしているか知らないが、今更何を何と言おうと過去は変わらないし、そもそも俺達はその時居なかったんだからな」

「そうそう。僕も“サラマンドラ”の真意が聞きたかっただけだし。そして、目の前にいるのが錬金術師ってことは僕たちがどうして欲しいかは言わなくてもいいよね?」

激情に震えていたマンドラは瞳を閉じ、剣を鞘に納めると、

「······フッ、『等価交換』か」

と言って笑った。

「―――御旗に誓おう。その時こそ、“サラマンドラ”は秩序の守護者として駆けつけると」

そう言った時には、二人は裏舞台から居なくなっていた。

 

◇◇◇

 

境界壁・舞台区画“火龍誕生祭”運営本陣営付近

どんちゃんどんちゃんと街が魔王との戦いの勝利に酔ってる中をカズマとコーキは、歩いていた。

「結局、俺がいた意味ってあったのか?」

「え~、あったでしょ!カズマだってそこそこ言ってたじゃん」

「俺は、事実を言っただけだが····」

「いや、でもさ。いくら事実でもあれはちょっと同情するよ。まっ、どーでもいいけどね。さて、何か食べる?あ、でも右手使えないなら厳しいかな?」

「問題ない。こうすればいい」

「って、いつ買ったの!?」

いつも間にかカズマの右手には揚げたてのフライドポテトが持たれていて、それを動かせる左手でモグモグ食べていた。

「いいな!僕にm「カズマッ!」」

とコーキの声を上書きするほどの声がした。

その方向を見ると、レティシアを先頭に“ノーネーム”のメンバー+少佐がこっちにやって来る。

「あら、コーキ君。どこに行っていたの?せっかくだから楽しみましょう!」

「飛鳥さんの言う通りです!楽しまないと損でございますよ♪ウキャー!」

「お前は少し落ち着け、黒ウサギ」

「カズマ!カズマ!その手じゃ食べにくいだろ。私が食べさせてやる!·······これもメイドの仕事だからな///」

「い、いや大丈夫だ。一人で食べれる·····!」

「遠慮することはないぞ!ほら、あーん」

「いや、本当に大丈·····」

「カズマ・N・エノモト。人の好意は素直に受け取るものだぞ」

「あんたもかよ、少佐!」

と一瞬の内にバカ騒ぎ始まった。

 

それを境界壁の上から見ていた黒いドレスのような服を着た女はため息を吐いた。

「はぁ、いくらルーキーとはいえたった殺せたのが5人。しかも48と66を使ってこれなのは予想外だったわ」

その隣では丸々と太った男が幼子のように指をくわえ、羨ましそうに街を見ている。

「それもこれもあの“ノーネーム”のせいね。東側で名無しが“ペルセウス”を倒した噂は聞いていたけどもここまで強いなんて······」

そうぼやいていると、

「ラスト、お腹すいた~。食べに行っていい?」

と太った男が言ってきた。

ラストと呼ばれた女は一度街を見たあと、

「いいわよ、グラトニー。でも、人は食べちゃダメよ」

「分かったー!」

グラトニーは、ピョン と境界壁から飛び、重力に引かれて街へと下りて行った。

ラストはそれを見送ると、視線をカズマ達へと戻し、

「でも、まぁ 人柱候補が二人も見つかったことだけは収穫ね。お父様に報告しなければ···」

と呟いた。





いや~、ついに人造人間が出てきましたね

コーキ:これからが本番って感じだね

カズマ:第三章でも出るのか?

ええ、登場する予定ですし戦闘する予定ですよ

コーキ:フッフッフ、丸焼きにしてあげるよ。原作のマスタング大佐がしてたみたいにさ

あ、コーキさんは戦いませんよ

コーキ:えっ、そうなの?それは、残念だな~

第三章ではもっと残念なことがあるからご心配なく

コーキ:心配しかないよッ!?

まぁ、ともかく次回からは私の独り言なのでよろしくお願いします

カズマ:寂しい奴だ

失礼な!私、カズマさんよりも友達いますから!!!

コーキ:エア友達?

違います!!
もう、いいから終わりますよ!

コーキ:ほーい!

カズマ:それでは、

「「「次回も見てください!!!」」」

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