問題児達と錬金術師×2が来るそうですよ?   作:射水 終夜

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みなさん、チェスってしますか?
私はチェスもしますし、将棋もします
これらの共通点は、勝利宣言みたいなものがあることです
チェスなら、『チェックメイト』
将棋なら『王手』
さぁ、もうこのギフトゲームも終演です(^.^)
それでは、本編をどうぞ!


第9話 チェックメイト

「·········う·····お·····あ···ぁ······!」

 

「弟よッ!」

グシャリ、スライサーのうなじ部分にあった弟の血印が握り潰された音。

そして、鎧を素手で貫き血印を握り潰したのは重症であるカズマ。

「そォだよな、そォだよな!一つの身体に魂が一つとは限らねェもんな!!」

「貴様!何故その傷で動ける!?」

「ああ゛?ンなもん、オレが不死だからに決まってンだろうが」

「なっ·····!」

48は今の言葉に驚きながらも、カズマの様子がおかしいことに気付いた。

目は見開かれ、瞳孔も開いて目はまるでアイレンズのようだ。

そして口元は裂けたように狂気的な笑みを浮かべ、まるで壊れた人形のような表情をしている。

どう見てもまともな状態ではないのは一目瞭然だった。

「貴様は小僧じゃないな!」

そう叫びながら自分を貫ぬいているカズマ(?)の腕を斬り落とそうしたが、

「何だと!?」

48は自分の鎧の身体がガシャーン!!と崩れ落ちるのを上から見ていた。

ここで自分(頭部)が上に撥ね飛ばされているのに気付いたのだ。

「ハッ、小僧はバケモノを··········」

この後が続かなかったのは、宙を舞っていた48の頭部は血印の場所を中心にバキンッ!と真っ二つに斬られたからである。

「バケモノ?ンなもんじゃねェ、オレはカミサマだ!」

カミサマはガンガラガーンと落ちた48の残骸に目もくれず、そう言い放った。

そして刀を鞘に納めながら、

「こんなところで死んでんじゃねェよ、錬金術師。後、少しでお前の役目も終わるんだからなァ」

と呟いた。

 

◇◇◇

 

「――ズマ、起きて!カズマ起きてっば!!!」

コーキの叫び声でカズマは目を覚ました。

「オッハー、カズマ。寝ている間に勝手に手当てさせてもらったけど、問題ないよね?」

「ん·······ああ、問題ない。·····ところで、空っぽの傭兵は?」

「それなら、そこに残骸があるよ。って、カズマが破壊したんじゃないの?」

「いや、······覚えていない」

「ま、当然だね。こんだけ血を流せば普通死ぬってレベルの血を流してるから記憶がなくても当たり前~。でも、生きてるどころか普通に動けるカズマは規格外だね。本当に人間か疑うレベルの。ま、生理食塩水を流したけどね」

「俺はどれくらい倒れてた?」

「さぁ?僕が見つけた時にはぶっ倒れていたからね。そっから、止血して包帯巻いて、生理食塩水作って即席の点滴で流したから大体、1~2時間ぐらいかな」

「なるほど。状況は?」

カズマは立ち上がりながら言う。

「十六夜君と戦っていたウェーザーは消滅。レティシアちゃんが戦っていたラッテンは飛鳥ちゃんがゲームを放棄させた」

「久遠っていたのか」

「うん。僕もよく分からないけど、紅いロボットと連れて戻って来たよ。·····ええと、あとシュトロムは全部少佐が秒殺しちゃった☆」

「流石は“豪腕の錬金術師”」

「で、残ってんのはあとあのちびっこ魔王様だけだよ。現在、僕たちとレティシアちゃんを除いた“ノーネーム”メンバー+サンドラちゃんと交戦中。他の仲間殺られたから時間稼ぎを止めて、本気で殺しに来てるって状況」

「了解。月は?」

「あと、数分。アレはちゃんと持ってる?」

「ああ」

カズマはそう答えながらポケットから紙片を取り出し見せる。

コーキは頷くと、

「さて、このゲームを終わらせにいきますか」

そう言い、カズマとコーキは死の風と紅い巨人、そして炎に雷鳴轟く最後の戦場へと駆けた。

 

◇◇◇

 

「ヤハハ、おせぇぞお前ら!何ダラダラしてた!?」

戦闘に加わっての一言目は十六夜の笑いながらのそんな言葉だった。

「いや~、ゴメンね!カズマの治療に少し時間がかかったんだよ」

コーキはショットガンのトリガーを引き、死の風を全て焼き尽くす。

「治療って、カズマさん!その腕大丈夫なのでございますか!?もし、無理なのでしたら飛鳥さんと変わって貰っても構いませんよ!」

「問題ない」

「ああ、言っとくけどそれやったらまた傷口開くよ」

「なら、尚更飛鳥さんと交代してください!」

「問題ない」

「カズマ君が何をしないといけないのかはわからないけれど、遠慮することはないのよ?」

「問題ない」

カズマの返答を聞いて三人は、

(((さっきから問題ないってしか返ってこない(わ)(のですよ)····)))

とちょっと心配になった。

「ふん、今さら二人増えたところで何?殺しに行く手間が省けるだけよ」

「そう言いなよ、斑ロリ。コイツらは、もしもの時の“()()()()()”直々のお前を倒すための()()に必要なんだよ」

「あら、秘策って何かしら?どうせ意味ないだろうけど、そこまで強調するんだもの。少しはマシなのよね」

「ああ、期待していいぜ!」

「そう」

ペストは無造作に腕を振る。それにより、せっかくコーキが焼き尽くした死の風が前よりも激しく強く吹き荒れ始めた。

十六夜はそれを殴って霧散させ、コーキは再びトリガー引きながら叫んだ。

「ちょ、黒ウサギちゃん!早くしないと!」

「そうだぞ、黒ウサギ!さっさとしねぇと他の連中がどんどん死ぬぞ!」

と十六夜も怒鳴る。

黒ウサギは何時もと違う強い意志の宿った瞳で集結した主力を一瞥し微笑むと、

 

「ご安心を!今から魔王と此処にいる主力――纏めて、月までご案内します♪」

 

なっ、という驚きの声は刹那に消えた。

いくら黒ウサギから話を聞いていたと言えど、実際になってみると驚きを隠せない。

黒ウサギの持つ白黒のギフトカードの輝きと共に周囲の光は暗転して星が巡り、温度は下がり大気が凍りつくほどの過酷な環境に変わる。

激しい力の奔流が収まり、瞳を開けると――天には、箱庭が逆さまになって浮いていた。

その光景にコーキは、

「すごい·······!」

と感嘆の声を漏らす。

「·······」

カズマは何時もの無表情だったが、石碑の様な白い彫像群が散乱する神殿だったものをジッと見ていた。

「なっ、あれは·······“月界神殿(チャンドラ・マハール)”!軍神(インドラ)ではなく、月神(チャンドラ)の神格を持つギフト······!」

ペストはカズマと同じものを見て蒼白になって叫んでいた。

「YES!このギフトこそ、我々“月の兎”が招かれた神殿!帝釈天様と月神様より譲り受けた、“月界神殿”でございます!」

「け、けど·······!ルールではゲーム盤から出ることは禁じられているはず、」

「ちゃんとゲーム盤の枠内にいますよ?ただ、高度が物凄く高いだけでございます」

「っ······!?」

つまり、現在月はハーメルンの街の頭上にあるということだ。

「これで参加者側の人間の心配はなくなりました!サンドラ様と十六夜さん、コーキさんはしばし魔王を押さえつけてください!黒ウサギもすぐ参戦します!飛鳥さんとカズマさんは此方へ!」

言うや否や、三人はペストに向かって突撃する。

ペストは焦りながらも、死の風を放出させて迎え撃つ。

「構わないわ。全てのステンドグラスが発見される前に終わらせる······!」

「ハッ、やれるもんならやってみな!」

衝撃波を全身に食らいながら十六夜は突進し、蹴りを入れようとするが避けられる。

サンドラは十六夜が切り裂いた死の風の隙間から轟炎が縫う。

それはペストに着弾すると爆発的に燃え上がる。

これはサンドラだけの火力ではない。

サンドラはコーキの方を見ると、コーキはにっと笑い返す。

そんなやり取りが行われている間にペストの傷は瞬時に癒える。

「ありゃりゃ。二人分の火力でもダメか····」

「当たり前だわ。私を打倒するというのなら、星を砕くに値する一撃を用意なさい――!」

「ハッ、ならこの俺がお前を倒せるぜ斑ロリ!」

そう叫びながら十六夜はペストに拳を叩き込む。

ペストはそれを双掌で高めた衝撃の渦で迎え撃つ。

両者の圧倒的な力がぶつかり合い、月面に新たなクレーターを作り出した。

 

そんな十六夜達が奮闘する中、飛鳥は質問をする。

「で、結局私はどうすればいいのかしら?」

「その前に。カズマさん、アレはお持ちですね?」

「ああ」

カズマはそう答えながら“叙事詩・マハーバーラタの紙片”を取り出した。

「この紙片からはインドラに縁がある武具を召喚することが出来ます。しかし、この槍は強力な半面、ギフトゲーム中に一度しか使えません」

飛鳥の表情に緊張が走る。

「これを·····カズマ君が使うのよね?」

「YES!飛鳥さんにはそのカズマさんと槍の力を十分に発揮させてもらいます!そして黒ウサギが隙を作るので、その槍を直撃させてください!それでこのギフトゲームは勝利です!」

黒ウサギがカズマの持っていた紙片触れると、雷鳴と共に槍に変わった。

カズマの手に今まで使った武具とは違うズシリとした投擲用の槍が現れた。

これこそが帝釈天の神格が宿る槍。

カズマはその神槍をダンベルのように何度か持ち上げたり下げたりし、クルクルと回し逆手に持ち変え構えた。

「準備完了。いつでも殺れる」

「最後にお聞きすますが、腕の方は本当に大丈夫でございますか?」

「問題ない」

黒ウサギはカズマのその返答に苦笑した。

「では、飛鳥さん。あとは頼みましたよ!」

「ええ、任されたわ」

頷き返すともう一枚の紙片をギフトカードから取り出し、死の渦に飛び込もうとする。

その手には金剛杵も何もない。

その無謀な突撃にサンドラは焦って声を上げた。

「だ、駄目だ黒ウサギ!何を考えて·········!?」

「貴女さえ倒せば······!」

ペストは苛立たしげに死の風を舞い上がらせ襲いかかる。

「太陽に復讐を、でございますか?ならばこそ、この輝きを乗り越えてごらんなさい!」

黒ウサギは“マハーバーラタの紙片”掲げ、太陽の光にも似た黄金の輝きを持つ鎧を纏う。

強襲した死の風は太陽の光に焼かれ、一瞬で霧散して消えた。

「そ、そんな······!?」

悲痛な声が上がる。ペスト自身、自分の弱点が太陽だと分かっていた。

軍神(インドラ)月神(チャンドラ)太陽神(スーリャー)··········!護天十二天を三天までも操るなんて、この化け物―――!!!」

ペストは大きく後退し、最低限の守りを固める。

全身から太陽の輝きを放つ黒ウサギは、背後で控えてる飛鳥に叫ぶ。

「今です飛鳥さん!」

黒ウサギの声に応じ、右手を翳して名を下す。

「放ちなさい、カズマ君!」

加速(アクセラレイト)

コマンドを口にした瞬間、槍はカズマの右腕から()()()()()()で打ち出された。

黒ウサギに気を取られていたペストに避ける間などなく被弾し、月面を空高く打ち上げられて貫かれた。

「こ、この·······程度で······!」

迸る千の雷に焼かれながらも、ペストはまだ抗う。

しかし、インドラの槍の放つ天雷は直撃した後も衰えず、むしろ輝く様に力を解放していく。

天雷は千から万へ、万から億へ急速に力が増し、衰えることなく敵を焼き尽くすまで光を放ち続ける。

「そんな······私は、まだ·······!」

「――チェックメイト、お前の負けだ“黒死斑魔王(ブラック・パーチャー)”」

「そして、さようなら」

飛鳥が別れの言葉を告げると、一際激しい雷光が月面に撒き散らされ魔王と共に爆せた。

 

 




どうも、皆さん!
ついに第二章も残り僅かとなりました

コーキ:早いね~

カズマ:話数をみたら第一章のほうが多いからな

あれは、まぁ······今よりもめちゃくちゃ下手くそで無駄に長いところとか歪な箇所が多かったもんですね

コーキ:まぁ、作者も少しは成長しているということだね!

はい!まさにこの作品は私の成長記録です
今後もどうぞ、よろしくお願いします
そして、最後に補足説明が必要か分かりませんが最後の飛鳥さんの役割はインドラの槍とカズマさんの強化でした
通常、第四宇宙速度なんて出せません
無理に出すと、体の強化が間に合わずぶっ壊れます
それでは、今回はここら辺で

「「「次回も見てください!」」」

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