問題児達と錬金術師×2が来るそうですよ?   作:射水 終夜

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第10話 吸血姫様が来るそうですよ?

“ノーネーム”談話室

 

耀の見舞いの後、十六夜・カズマ・黒ウサギ・コーキはソファーで寛いでいた。

「春日部の傷、2~3日で治あれば治るって?流石は箱庭ってことか」

「YES♪ただ出血が酷かったので、増血を施しました」

「いや、ほんと箱庭って凄いよ!増血っていってもあんな量をカバー出来るなんて聞いたことない!!」

「そういや、お前その歳で医者の知識あるんだったな」

「まぁね!これでも医療免許を取れるぐらい凄いんだよ☆」

「最小の医者」ボソッ

カズマが本を読みながら呟いた。

「シャアア!」

とコーキは、意味のわからない威嚇をしている。

「おい、黒ウサギ。例のゲームはどうなった?」

二人のやり取りを苦笑しながら見ていた十六夜が質問した。

一応、この談話室で仲間が景品に出されるゲームについて話していた。

初めは、十六夜が参加する話だったがいつの間にかカズマとコーキも一緒に参加することになっていた。

いわゆる、道連れである。

その事を二人が知ったのはついさっきだ。

黒ウサギは、十六夜+道連れが参加してくれると喜んでいたが申請から帰ると一転して泣きそうな顔になっていた。

「ゲームが延期?」

「はい·····申請に行った先で知りました。このまま中止の線もあるそうです」

黒ウサギは、ウサ耳を萎れせ落ち込んでいる。

「どうやら巨額の買い手が付いてしまったそうで」

コーキは座ってるカズマの頭に顎を乗せ、つまらなそうに呟いた。

「うわー、ないわー。ホストとしてのプライドとかないのかな」

「チッ、同感だ。出した景品を取り下げるなんて、所詮は売買組織ってことかよ」

「別におかしいことじゃない。確か“サウザンド・アイズ”の仕組みは、半分が白夜叉みたいな直轄幹部。

もう半分が傘下のコミュニティの幹部だ。大方、今回のゲームは後者の方が主催なんだろう」

カズマは相変わらず、淡々と推測を言う。

「YES、カズマさんの言う通り今回の主催は傘下側の幹部“ペルセウス”です」

「えっ、“ペルセウス”ってあの有名な?」

「はいな。その“ペルセウス”です」

「マジかよ。ペルセウスのゴーゴン退治って言ったらかなり有名な話だぞ、オイ。ペルセウスってのは、そんな腐った奴なのか?」

「ああ、違う。今の“ペルセウス”のリーダーは二代目らしい」

「先ほどから気になっていたのですが、カズマさんは何故そんなに詳しいのですか?」

「本に書いてある」

カズマは読んでいた本を黒ウサギに見せながら言った。

「今の“ペルセウス”が腐ってることは、分かったが景品だった仲間ってどんな奴だ?」

「まさか、金髪でロングヘアーで頭にリボンを着けてる美少女?」

「YES♪スーパープラチナブロンドの超美人さんです!特に湯浴みの時に濡れた髪が星の光でキラキラしてキレイって、何故コーキさんはレティシア様のお姿を知ってるんですか?」

「いや、だっているもん」

コーキは相変わらず本を読んでいるカズマの隣を指差す。

そこには美麗な金髪を特注のリボンで結び、紅いレザージャケットに拘束具を彷彿させるロングスカートを着た少女が優雅に紅茶を飲んでいた。

「やぁ、黒ウサギ。久しぶりだな」

「あ、どうもお久しぶりです。って、レ、レティシア様!?いつからいらしたのですか!!??」

「うむ、先ほどからだ。あと、様はよせ。今の私は他人に所有させる身分だ」

「コーキさんもカズマさんもレティシア様がいらしゃっていたなら教えてくださいよ!」

「ええ~、鈍い黒ウサギちゃんがいけないと思うよ。こんなに堂々といたのにねぇ?」

「まぁ、確かにな。あそこまで気づかないとは、鈍いにもほどがあるぞ黒ウサギ」

「鈍ウサギ」

「レティシア様まで····。いくらなんでも酷いです~」

ウサギ耳を萎れせる黒ウサギ。

十六夜の存在に気がついたレティシアは、彼の奇妙な視線に小首を傾げる。

「どうした?私の顔に何か付いているか?」

「いや、前評判通りの美人·····いや美少女だと思ってな。お前らもそう思うだろ?」

「だね~。目の保養するなら今だね十六夜君!」

「おっ、分かってんじゃねえか!」

十六夜達の回答は真剣だったが、レティシアは心底楽しそうな哄笑で返す。

「ふふ、なるほど。君が十六夜か。白夜叉の言う通り面白い男だな。しかし、観賞なら黒ウサギも負けてないと思うぞ」

「あれは愛玩動物なんだから、観賞するより弄ってナンボだろ」

「「ふむ。否定はしない」」

「否定してください!」

黒ウサギは口を尖らせて怒る。

「レティシア様と比べたら世の女性のほとんどが観賞価値すらない女性でございます。黒ウサギだけが見劣るわけありません」

「いや、全く負けちゃいねえぜ?違う方向で美人なのは否定しねえよ。好みで言えば黒ウサギの方が断然タイプだからな」

「·······。そ、そうですか」

不意打ちの言葉に思わず頬とウサ耳が紅くなる黒ウサギ。

「·······黒ウサギ。まさか私は無粋な事をしたか?逢引きの最中だたったとか」

「実は、そうなんだよ。今、黒ウサギちゃんは十六夜君に夢中で今もイチャイチャしてる途中だったんだよwwww」

「しかも、今黒ウサギの腹に俺たちの子供が·····」

「いません!勝手に捏造しないでください!!このお馬鹿様ぁぁぁぁあああ!!!!!」

スパパーンっとウサ耳をさっきより紅くしながら叩く黒ウサギ。

「フフフ、そうか。結婚式には呼んでくれよ」

「レティシア様まで乗らないでください!」

ここで、紅茶を一口飲むとコーキが話題を変えた。

ちなみに紅茶は、カズマが全員入れている。

「ねえ、白夜叉ちゃんから僕のこと聞いてない?」

「君は·····確か高性能な変身系ギフトを持っていると聞いている」

「おっ、やっぱりそこだね~。僕、一発芸やりまーす!『いぃぃぃやほぉぉぉぉぉ!胸をを揉ませろ黒ウサギィィィィ!!!!』」

コーキは、一瞬で白夜叉になるとソファーの向かいに座っていた黒ウサギに胸目掛けてダイブした。

が、カズマが読んでいた本を投げ打ち落とされた。

「ゴフゥ!カズマ何故邪魔をするのじゃ!?」

「黙れ変態」

カズマは絶対零度の瞳で白夜叉(コーキ)を見下ろしながら言った。

「これは驚いた。一瞬本当に白夜叉が来たのか思ったぞ」

レティシアは拍手をしながら感想を述べた。

「アハハハ、カズマさんありがとございます」

本を取るために立ったカズマにさっきのお礼を言った。

カズマは、本を回収すると同じ場所に座り本を開いた。

そこで、さっきからレティシアに見られていることにカズマは気づいた。

「何だ?」

「別に。君は、コーキのように白夜叉からの評価を聞かないんだな」

「別にどうでもいい」

「君は少しドライ過ぎないか?」

「いつもの事だから気にするなレティシア」

「そーだよ。カズマが無愛想なのはもはや常識」

「お二人とも少し酷いですよ」

「でも、僕のように仲良くなれば素直に感情を見せてくれる時があるんだよ」

「なんだソレ。ギャルゲーのヒロインか?いや、この場合は乙女ゲーか」

「俺は男だ!」

「えっ!?」

「何故驚く?」

「いや、白夜叉からはスカートをはかせたい女子ランキング第1位と聞いていたから····」

「ちょっと、ボコシテクル」

「待て待て!止めろ!!おいコーキお前も押さえろ!」

「あわわわ、カズマさんの怒りがヤバいです」

「ふむ。目のクマを消したらいい感じな女子になるだろう」

「レティシアちゃんも紅茶飲みながらカズマ女子化計画立てないで!!?」

コーキ&十六夜の説得によりカズマの怒りは消火させた。

 

 

 

「で、一体何のようでわざわざレティシアちゃんはここに来たの?」

コーキはカズマに紅茶のお代わりを貰いながら言う。

人に所有されているはずのレティシアがここにいるということは、それなりのリスクを負っているはずだ。

「大したことではない。新生コミュニティがどの程度力を持っているかを見に来たんだ」

「ほう、結果は?」

「生憎ガルドでは当て馬にもならなかったよ。ゲームに参加した彼女らはまだまだ青い果実で判断に困る。····こうして足を運んだが。私はお前たちに何と言葉をかければいいか」

レティシアは、苦笑をしながらそう答えた。

その時、青い果実でのところでカズマがピクッと反応したがそれだけだった。

「違うね。アンタは言葉を掛けたくてここに来たんじゃない」

「ジン君達がちゃんと自分の力だけでやっていけるか心配だったから来たんじゃないの?」

「·····ああ。そうかもしれないな」

レティシアは首肯する。

しかし、目的は色んな意味で中途半端に進行している。

自嘲が拭えないレティシアに、コーキは明るく提案する。

「さてさて、不安なレティシアちゃんに僕達から提案があるよ☆。その不安を払えるイイ方法が」

「何?」

「簡単な話。僕たちとギフトゲームをしよう元・魔王様」

そう言い窓をバンッと開け放った。

そして、

「まっ、メインは十六夜君に頼むけどね~」

黒ウサギはずっこけた。

「コーキさんじゃないですか!」

「いやー、ゴメンね。よく考えたら僕、絶対勝てない」キッパリ

「いや、そんなはっきり言われましても····」

「ふふ·····なるほど。それは思いつかなかった。実に分かりやすい。下手な策を弄さず、初めからそうしていればよかった」

「ゲームのルールはどうする?」

「どうせ力試しだ。手間をかける必要もない。双方が共に一撃ずつ撃ち合い、そして受け合う」

「最後に立っていた者の勝ち。いいね、シンプルイズベストってか?」

二人は笑みを交わす。

十六夜もノリノリだ。

十六夜とレティシアが窓から中庭に飛び出すと、二人の位置は天と地に別れていた。

「へえ?箱庭の吸血鬼は翼が生えるのか?」

「ああ。翼で飛んでいる訳ではないがな」

そこから十数m離れたところにカズマ達はいた。

「ねえ、カズマ。どっちが勝つと思う?」

「さあ?でも、十六夜が勝たないと意味がない」

「だね。もし、十六夜君が負けたら次カズマだから」

「イヤだ。お前が殺れコーキ」

「ええー。十六夜君の次に強そうなのカズマか耀ちゃんでしょ」

「火力ならお前が上だ」

「まあ、純粋な()()ならね」

ははっとコーキが笑うのとレティシアがギフトカードを取り出すのは同時だった。

金と紅と黒のコントラストで彩られたギフトカードを見た黒ウサギは蒼白になって叫んだ。

「レ、レティシア様!?そのギフトカードは」

「下がれ黒ウサギ。力試しとはいえ、決闘である事に変わり無い」

ギフトカードが輝き、長柄の武具が現れる。

「互いにランスを一打投擲する。受け手は止められねば敗北。悪いが先手は譲ってもらうぞ」

「好きにしな」

投擲用に作られたランスを掲げると、全身をしならせた反動で打ち出した。

「ハァア!!!」

怒号と共に放たれた槍は瞬く間に摩擦で熱を帯び、一直線に十六夜に落下していく。

十六夜は、流星の如く舞落ちる槍を

「ハッ!しゃらくせえ!!!!」

()()()()()

「「は········!??」」

「あ、これヤバい·····」

加速(アクセラレイト)

素っ頓狂な声を上げたのは黒ウサギとレティシア。

後ろ二つはコーキとカズマだ。

殴られたランスはひしゃげ、まるで散弾銃のように無数の凶器となってレティシアに第三宇宙速度で返された。

(こ·····これほどか·····!)

着弾する間際、血みどろになって落ちる覚悟をした。

が、加速していたカズマがレティシアを抱き抱え第三宇宙速度で飛んでくる鉄塊の雨の範囲外に連れ出した。

「レティシア!」

黒ウサギは、カズマの元に駆けつけるとレティシアのギフトカードを掠め取った。

「く、黒ウサギ!何を!」

「ギフトネーム・“純潔の吸血姫(ロード・オブ・ヴァンパイア)”······やっぱり、ギフトネームが変わってる。鬼種は残っているものの、神格が残っていない」

「っ········!」

さっと目を背けるレティシア。

歩み寄った十六夜は肩をすくませた。

「なんだよ。もしかして元・魔王様のギフトって、吸血鬼のギフトしか残ってねえのか?」

「·····はい。武具は多少残してありますが、自身に宿る恩恵(ギフト)は······」

十六夜は隠す素振りもせず盛大に舌打ちをした。

コーキも場の空気を読み声のトーンを下げ質問する。

「能力や種族みたいなギフトって人に所有されるとその人に奪われるの?」

「いいえ········魔王がコミュニティから奪ったのは人材であってギフトではありません。武具などの顕現しているギフトと違い、云わば魂の一部。隷属させた相手から合意なしにギフトを奪う事は出来ません」

「じゃあ、レティシアちゃんは自分から·····」

三人の視線を受けて苦虫を噛み潰したような顔で目を逸らすレティシア。

「私は····」

言葉にしようとして呑み込む仕草を幾度か繰り返す。

しかし打ち明けるには至らず、口を閉ざしたまま俯いてしまった。

コーキは場の空気をリセットしようと提案する。

「まっ、とりあえず屋敷に戻ってから美味しい茶菓子でも食べながら話そう、ねっ」

「······そう、ですね」

レティシアと黒ウサギは沈鬱そうに頷き、十六夜はめんどくさそうに屋敷に戻った。

 

 

 

 

さて、読者の皆さんも忘れているかも知れないがカズマはレティシアを抱き抱えたままずっと空気となっていた。

(·······いつ、下ろせば良いんだ?)

カズマは、とりあえず意気消沈しているレティシアを抱き抱えたまま屋敷に向かった。




第1回KJC会議

コーキ
「これより第1回K(カズマ)J(女装)C(クラブ)会議を始めます」

作者
「メンバーは私と」

十六夜
「十六夜様だぜ!」

白夜叉
「会長は私だッ!!!」

コーキ
「さて、紹介も終わったしさっそく会議スタート!」

球磨川 空(YD)

大浴場に入ってる隙に、服を入れ替えれば良いのではないのかい?  もしくは、...脅すか…

白夜叉
「ふむ。服を入れ替えて着ざるおえない状況を作るのだな」

作者
「できそうですか?」

十六夜
「服を入れ替えるぐらい朝飯前だ」

コーキ
「できるけど、終わったあと殺される」

白夜叉
「時には犠牲が必要なのだ」

コーキ
「そんな風に見捨てないでッッ!!」

作者
「ところで錬金術で服って作れますか?」

コーキ
「作れるけど、元となる布がないと」

作者
「例えばですよ、たとえば。入れ替えた服を錬金術で作り変えたりできませんか?」

十六夜・白夜叉・コーキ
「「「あっ!!!」」」

コーキ
「しまった!これでは服を入れ替えても意味がない!」

十六夜
「くそっ、なんでアイツは錬金術師なんだよ!」

白夜叉
「決まったな。服を入れ替える作戦は無意味と判断する」

作者
「会長、脅しの方はどうします?」

白夜叉
「それについては、次回の会議まで各自考えるように。
これで第1回KJC会議を終了する」

十六夜・コーキ・作者
「「「ありがとうございました」」」


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