岩沢雅美の幼馴染   作:南春樹

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第三話「初めまして、GirlsDeadMonster」

「へぇ〜、じゃああれは校長室だったんだ?」

 

「そ、初期メンバーで校長室をジャックしたんだとさ」

 

「初期メンバーって?」

 

「ああ、ゆりと日向と大山と野田と椎名と私とひさ子とチャーだよ」

 

 

一人ずつ顔を思い浮かべてみるが、ひさ子とチャーっていう人たちだけは思い浮かばない。

 

 

「まあ、さっきのところにはひさ子とチャーはいなかったけど」

 

「先に言ってよ!もう忘れちゃったかと思ってあせったじゃん!」

 

「ははっ!悪い悪い!」

 

 

ケラケラ笑いながら謝られても……。

 

 

「それで、ひさ子とチャーっていうのは誰なの?」

 

「ひさ子っていうのはガルデモのメンバーの一人で、チャーっていうのはギルドの長だよ」

 

「じゃあひさ子さんにはこれから会えるんだ」

 

「そうだな」

 

「どんな人なの?」

 

「う〜ん、なんて言うか……」

 

「なんて言うか?」

 

「……会ってみればわかるよ」

 

 

なんじゃそりゃ。まあ会えば一発でわかるんだろうけどさ……。

 

 

 

 

それから5分後、俺たちは練習教室の前に着いた。

 

 

「よーし、入るぞー」

 

「ちょっ、ちょっと待って……」

 

「なんだよ、もう開けたよ」

 

 

ちょっとぉ!まだ心の準備出来てないよぉ!

 

 

「岩沢おかえり…っとそいつは誰だ?」

 

「こいつは今日入った新人の篠宮太一だ」

 

「ど、どうも……」

 

「こいつがゆりっぺの言ってた新人か。どうして連れてきた?」

 

「ガルデモのニューメンバーとして迎えるためだ」

 

「なっ!?ガルデモに男!?」

 

「なになに〜?」

 

「どうしたんですか?」

 

 

後ろから金髪の女の子と紫髪の女の子が駆け寄ってくる。……どうでもいいけど、このバンド顔面偏差値高いな……。

 

 

「どうした?岩沢。熱でもあるんじゃないか?」

 

「私は至って健康だぞ」

 

「じゃあなんでそんなぶっ飛んだことしようとするんだよ」

 

「えーっと……ロックだから?」

 

「ロックじゃねぇよ!」

 

 

首を傾げながらロックを主張する雅美にポニーテールの女の子が鋭いツッコミを入れた。どうでもいいけど今の雅美は中々に可愛かった。

 

 

「あ、あの!」

 

「どうした関根?いま岩沢を説得してるところなんだが……」

 

「その人、誰ですか?」

 

 

金髪の女の子が俺を指差して質問をしてくる。

 

 

「こいつは篠宮太一。今日入った新人で私の幼馴染だよ」

 

「えーっ!?岩沢先輩の幼馴染!?」

 

「えっ?こいつ、お前の幼馴染なのか?」

 

「そうだけど……言ってなかったか?」

 

「言ってねぇよ!初耳だよ!」

 

「そっかあ!岩沢先輩の幼馴染なんですね!私、関根しおりって言いまーす!よろしくお願いしまーす!」

 

「あっ……えっと、篠宮太一です」

 

 

関根しおりから自己紹介をされて俺も自己紹介をする。

 

 

「篠宮先輩ですね?パートはどこやってるんですか?」

 

「ぼ、ボーカルだけど……」

 

「ボーカルですか!いいですねぇ〜!」

 

 

なんかやたら元気な子だなぁ……。

 

 

「それじゃあ早速歌ってもらいましょう!」

 

「うえぇ!?」

 

「せ、関根!お前はまた勝手に……っ!」

 

「まあまあ、良いじゃないですか!ガルデモに入るかどうかは実力を見てからにしましょうよ!」

 

 

関根のお陰で半ば強引に教室で歌を披露することになってしまった。チラッと関根の方を見るとウインクを飛ばしてきた。まさかこうなるのが狙いで話に入ってきたのか……?

 

 

「太一、大丈夫か?歌えるか?」

 

「俺は大丈夫だよ。雅美は?」

 

「私もいつでもいける」

 

「そっか、じゃあ行くぞっ!Crow Song!」

 

 

俺が曲名をコールした瞬間、雅美のギターが掻き鳴らされる。Crow Songは生前雅美と一緒に作った曲だ。この感じ、久しぶり。

俺が歌い始めるとポニーテールの女の子が目をぱちくりさせながらこちらを見てきた。関根の方を見るとノリノリで手拍子をしてくれている。紫髪の女の子も同様に手拍子を送ってくれた。

 

最後まで歌い終わると、ポニーテールの女の子が胸倉を掴んできた。

 

 

「おい!岩沢!こいつは誰だ!」

 

「だからさっきも言った通り篠宮太一だって」

 

「そうじゃねぇよ!こいつ、昔はプロかなんかだったのか!?」

 

「ちょ…ちょっと……苦しい……」

 

「あっ…悪い……」

 

 

ふぅ〜……やっと開放された。本当は苦しくなんかないけど、胸倉を掴まれたままだと話し辛いから嘘をついて離すように誘導したのだ。

 

 

「私感動しちゃった〜!」

 

「わ、私もです!」

 

「そ、そう?ありがとう」

 

「この実力ならガルデモに入っても問題ないんじゃないですか?ひさ子先輩」

 

「確かに実力的には問題ないけどさ……」

 

「問題ないけどなんだよ?」

 

 

雅美が不満そうに問いかける。

 

 

「ちょっと生きてた頃の話を聞いてもいいか?ここまでの実力でスカウトされていないなんて絶対おかしい」

 

「せ、生前について?」

 

「あ、いや、別に無理にとは言わねえよ。話せる限りでいい」

 

「……いいよ。全部話す」

 

 

俺は生前について全部話すことを決意した。雅美が不安そうな視線を向けてくる中、俺は全てを包み隠さず話した。雅美との関係、日常生活、死んだ原因。もちろん力のことも、そしてその力によって受けた周りからの仕打ちも……。

 

 

「……そうか……そりゃあ…災難だったな……」

 

「まあね…」

 

「公然の秘密、か……そりゃあスカウトもされないわけだ」

 

「みんなもそれだけで避けるなんて酷いですね!」

 

「ひさ子、結局太一はガルデモに入ってもいいのか?」

 

「ここまで聞いといて今更断る訳にはいかないだろ」

 

「ってことは…!」

 

「ああ、よろしくな、篠宮太一」

 

「よっしゃああぁぁ!」

 

 

なんで雅美がそこまで喜ぶんだ?まあ俺も嬉しいけどさ。

 

 

「よろしく、ひさ子さん」

 

「ひさ子でいいよ」

 

「じゃ、じゃあひさ子」

 

「おう」

 

「は〜い!篠宮先輩!よろしくお願いしま〜す!」

 

「えっと……君は?」

 

「ああ!すみません!自己紹介がまだでしたね……。私、入江みゆきって言います!」

 

「よろしく、入江」

 

 

とりあえず全員との挨拶が終わり、俺はこのバンドに入れてもらえることが決定した。そしてこの後、俺の歓迎会と称しパーティを開くそうだ。

 

 

 

………女子寮で………。


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