岩沢雅美の幼馴染   作:南春樹

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第二話「配属」

「ま、雅美なのか!?」

 

「本当に太一か!?」

 

「日向、この二人ってどういう関係なんだ?」

 

「俺に聞くなよ!」

 

 

音無、そりゃあ日向に聞いても分からないと思うぞ。

 

 

「ちょっと二人共落ち着いて。こっちも状況がわからないわ」

 

「あ、ごめん……」

 

「……そうだな、まずは落ち着くか……」

 

 

ゆり、ナイス助言。

 

 

「とりあえず二人共ソファーに座りなさい。そんでもってお茶でも飲んで頭を整理しなさい」

 

「ああ、ありがとう……」

 

「サンキュ、ゆり」

 

 

俺と雅美は向かい合わせに座り、しばらくしたら金髪のツインテールの無表情な女の子がお茶を運んできた。

 

 

「ゆりっぺさん、お茶を持ってきました」

 

「あら、ありがとう」

 

「あの…そちらは?」

 

「ああ、この人は遊佐さん。この戦線のオペレーターよ」

 

「よろしくお願いします」

 

 

ペコリ、と頭を下げられ俺も思わずつられて会釈する。

 

 

「さ、落ち着いた?」

 

「まあ…さっきよりは」

 

「落ち着いたよ」

 

「それじゃあ改めて二人の関係について教えてもらえるかしら?」

 

 

 

その後、俺は生前について語った。この力のこと、雅美との関係、周りからの扱われ方、死因等々だ。途中から我慢できなくなったのか雅美も話に入ってきた。

 

 

 

30分くらい経っただろうか。俺と雅美の話は終わった。

 

 

「つまりあなたたちは幼馴染で岩沢さんが先に死んでそれを追うように篠宮くんも死んだと」

 

「まあ大体そんなところかな」

 

「それにしても雷に左右された人生だったのね……」

 

「そりゃあ神を恨むわな」

 

 

そんな言葉とともにゆりと日向が同情の眼差しを送ってきた。

 

 

「なんで周りの奴らは太一を避けたんだろうな。こんなに良いやつなのに」

 

「ははっ……仕方ないよ……だってこんな力があれば誰だって怖がるさ……」

 

「そんなことない!太一に怖いところなんてあるもんか!」

 

 

俺はびっくりした。雅美があんな大声を出すなんて思ってもいなかったからだ。

 

 

「雅美……」

 

「太一は一度も誰かに暴力を振るったことなんてないんだっ……!それなのに……それなのに……!」

 

 

雅美は悔しそうに拳を握り締めている。

 

 

「岩沢さん、大丈夫よ。ここのみんなは誰も篠宮くんを怖がってなんかないわ」

 

「ったりめーだろ。仲間を怖がるやつがあるもんかっつーの」

 

 

少々臭いセリフで藤巻も加勢してくれる。

 

 

「そうだよ!篠宮くんは悪い人には見えないよ!」

 

「うむ、話を聞く限り悪人ではないな」

 

「あさはかなり」

 

「みんな……」

 

 

俺は少し泣きそうになった。なぜなら生前どんなに望んでも手に入らなかったものがここにあるのからだ。

 

 

「ね?大丈夫でしょ?岩沢さん」

 

「……ごめん……少し熱くなった……」

 

「いいわよ、あたしだって岩沢さんの立場ならそうなるもの」

 

「ありがとう……」

 

 

あ、もう駄目だ。泣くわ。

 

 

「ど、どうしたの?」

 

「いや……仲間ってこんなに良いものなんだなって……」

 

「太一、もう大丈夫だ。お前は一人なんかじゃない」

 

 

そう言って雅美が俺を優しく抱きしめた。思わず目頭が熱くなる。

 

 

「うっく……ひっく……ゲホっ…!ゲホっ…!」

 

「よしよし、辛かったな」

 

 

普通は立場が逆だがそんなことは気にしていられない。嬉しさと安堵が俺の心を満たしている。

 

 

 

 

10分後、俺はようやく泣き止んだ。

 

 

「もう大丈夫か?」

 

「ごめん……ありがとう、雅美」

 

「はーい、これにて暗い雰囲気はおしまい!ここからは明るく行くわよー!」

 

 

ゆりが場を明るくしようと頑張る。それに同調するように周りも掛け声をあげた。俺はまた泣きそうになってしまったが、ここで泣いてはゆりの頑張りが無駄になってしまうと思いなんとか我慢した。

 

 

「さあて、篠宮くんはどこに配属させようかしら」

 

「配属?」

 

「戦線には色々な役割をしている人がいるの。例えばオペレーターの遊佐さん、第一線で天使と戦う日向くんたち、武器などを製造するギルドメンバー、陽動部隊の岩沢さんたち、他にも様々な役割があるわ」

 

「へぇ〜……」

 

 

驚いた。そんなに沢山メンバーがいるのか。

 

 

「わたし的には第一線で戦って欲しいのだけど……」

 

「まあ確かに篠宮がいたら心強いな」

 

「基本的に篠宮くんの意見を尊重するわよ」

 

「お、俺の意見……」

 

 

どうしようかと悩んでいる時、ちらりと雅美の方を見たら陽動部隊に入って欲しそうな目線を送ってきた。

 

 

「陽動部隊で」

 

「……そう。楽器はできるの?」

 

「太一はこう見えてもめちゃくちゃ歌が上手いんだぞ」

 

「あー、ボーカルね」

 

「確かに男のボーカルはいなかったけど、それじゃあGirlsDeadMonsterじゃなくなるんじゃないか?」

 

「ガールズデッドモンスター?」

 

 

音無の発言にわからない単語が出てくる。

 

 

「ああ、私が組んでるバンド」

 

「へぇ〜、どんなバンドなんだ?」

 

「ガールズバンドだよ」

 

「いや、そりゃバンド名と話の流れからわかるよ」

 

 

もっともな発言に日向が笑う。

 

 

「曲はやっぱりオリジナルか?メンバーは何人?ライブの開催頻度は?あとそれと……」

 

「ストップ!」

 

「?」

 

「ゆり、百聞は一見にしかずって訳で太一を連れて行ってもいいか?」

 

「こちらとしては残念だけど……まぁいいわ」

 

「よし、そうと決まれば行くぞ」

 

「えっ?行くってどこへ?」

 

「練習している教室だよ」

 

 

雅美が俺の手を引っ張る。

 

 

「それじゃあまたライブの日程が決まったら教えてくれよな」

 

「ええ、分かってるわ」

 

 

ゆりと雅美が笑顔で言葉を交わす。

 

 

「篠宮もこっちが良いと思ったらいつでも帰ってこいよー!」

 

 

日向が手を振りながら見送ってくれる。

 

 

「ああ、分かったよー!」

 

 

俺も手を振りながら応える。

 

 

「それじゃあ行くか」

 

 

ああ、本当に戦線の人たちは仲間と呼んで良いんだな……。

そんなことを思いながら雅美と共に本部を後にして練習教室へと向かった。


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