岩沢雅美の幼馴染   作:南春樹

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第一話「入隊、挨拶、そして再会」

……ここはどこだ?

 

……確か雷にに打たれて……

 

……俺は…死んだのか…?

 

 

「ようこそ死後の世界へ。突然だけど入隊してくれないかしら?」

 

 

この女の子は誰だ?赤い髪の毛でカチューシャをしていて、それに顔はかなり整ってる。

それよりもいま死んだ世界って……。

 

 

「なによ。ぼーっと人の顔を見て」

 

「あっ、いや、ごめん」

 

「別に謝れって言ってるんじゃないわよ」

 

 

またごめん、っていいそうになって言葉を飲み込む。

何か言葉を返さなきゃ……。

 

 

「えっと……ここはどこ?」

 

「ここは死後の世界よ。たった今言ったばかりじゃない」

 

「ご、ごめん……」

 

「だから謝らなくていいわよ」

 

 

また謝ってしまった。

 

 

「えっと……ここは……死後の世界ってことでいいんだよね?」

 

「随分と飲み込みが早いのねぇ」

 

 

女の子が驚嘆する。

 

 

「ま、まあ……」

 

「飲み込みが早くて助かるわ。とりあえずあなた、入隊しなさい」

 

「に、入隊って……?」

 

「…っと、そうね。いきなりそんなこと言われても困るわよね」

 

 

そりゃあそうだ。

 

 

「そうねぇ……まずはどこから話そうかしら……」

 

 

女の子が顎に手を当てながら考える。

 

 

 

 

〜30分後〜

 

「……という訳なの」

 

「なるほど……」

 

大体わかった。ここは死後の世界。この世界には神がいて、理不尽な人生を歩ませたことに対する復讐をしたい。でも、それにはまず神の手下である天使をどうにかしなければならない。大まかこんなところだ。

 

でも今はそれよりももっと重要な問題があるわけで……。

 

 

「あ、あのさ!」

 

「ん?なに?」

 

「名前……なんて言うの?」

 

「おっと、そうだったわね。自己紹介がまだだったわ。私の名前は仲村ゆり。あなたは?」

 

「お、俺は篠宮太一」

 

「篠宮くんね?自己紹介も済んだことだし、入隊してくれないかしら?」

 

 

どうしても入隊させたいようだ。

 

 

「入隊したらどうなるの?」

 

「少なくとも悪いようにはしないわよ。それに入隊しなかったらNPC以外の人たち以外から孤立するわよ」

 

 

「孤立」という言葉が俺をビクッとさせる。さっきNPCについても説明を貰ったが、話を聞く限り不気味なもののようだ。ならまだ本物の人間のほうが断然良い。

 

 

「わかった。入るよ」

 

「ほんと!?やったわー!」

 

 

ゆりがぴょんぴょん跳ねながら喜んでいる。

 

 

「それじゃあ今から戦線の本部に行くわよ!」

 

「えっ?ちょ…今から?」

 

「善は急げよ!」

 

 

俺の手をグイッと引っ張る。

 

 

「そんなに急かさなくて行くよ!」

 

 

 

 

〜校長室前〜

 

「神も仏も天使もなし」

 

 

なんだいまの?

 

 

「みんなー!新人を連れてきたわよ!」

 

「おおー!また新人か!」

 

 

青髪の男の子がこちらに視線を向けてくる。

 

 

「けっ!使えるやつなのかよ?」

 

「まあまあ藤巻くん、そう言わずに仲良くしようよ」

 

「確かに体格は良いとは言えんな」

 

「そりゃあ松下五段に比べたらそうだろ」

 

「あさはかなり」

 

「What's your name?」

 

 

賑やかなところだなぁ……

 

 

「はーい、みんな注目!ってあれ?岩沢さんは?」

 

 

ん?岩沢さん?

 

 

「そういやまだ来てねーな」

 

「岩沢さんが遅れるなんて珍しいね」

 

「……ま、そのうち来るわね。話を進めるわ」

 

 

ちょっと待って、今岩沢って……。まさかな……。

あいつはもういないんだ。同姓に決まってる。

 

 

「いま連れてきたのが篠宮太一くん!新しい戦線のメンバーよ!」

 

「……」

 

「し、篠宮くん?」

 

「…え?あ、ああ」

 

 

雅美のことを思い出していてしまった……。

 

 

「お前、ゆりっぺの話を聞かないとは良い度胸してるな」

 

 

ハルバードを持った男が敵意をむき出しにしてくる。

 

 

「いっぺん……死ねえええぇぇぇ!!」

 

「えっ?う、うわっ!」

 

 

とっさにハルバードを掴んで男ごと投げ飛ばして、ついでに壁に穴を開けてしまった。

 

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

 

しまった……。こんなの見られたらまた孤立だ……。

 

 

「す…すげー!」

 

「なになに!?なに!?いまの!?」

 

「…え?」

 

「篠宮くん!あなたなにをしたの!?」

 

「えっと……ハルバードを掴んで……投げました……」

 

「篠宮くん」

 

「は…はい……」

 

「是非仲間になって頂戴!」

 

「えっ?」

 

 

返ってきたのは予想外の肯定的な発言。

 

 

「うわ〜!あんなの初めてみたよ〜!」

 

「……少なくとも使えるやつだな……」

 

「どうやって鍛えたらああなるんだ……?やはり山籠りを強化しなくてはいけないのか……!」

 

「え…えっと……」

 

 

予想外の発言に戸惑う俺。

 

 

「篠宮くん、あなた一体何者?」

 

「ただの人間ですけど……」

 

「ただの人間があんなことできるわけないじゃない!」

 

「……」

 

 

どうしよう……なんて説明しよう……

 

 

「おいおい、ゆり、過去を模索しないんじゃないのか」

 

 

オレンジ髪の男が助け舟を出してくれた。

 

 

「……そうだったわね。リーダーのあたしがそれを守れないなんてね……ごめんなさい」

 

「悪かったなぁ新人。うちのリーダーが迷惑かけて」

 

「い、いや、大丈夫だよ。えっと……名前は?」

 

「俺か?俺は日向って言うんだ」

 

「大丈夫だよ。日向くん」

 

「そうか?ならいいんだけど」

 

「っていうかここにいる人たちの名前わからないんだけど……みんな教えてくれないかな?」

 

「そうだったな、自己紹介がまだだったな。俺は音無。ついこの間入ったばっかりだ」

 

 

オレンジ髪は音無っていうのか。

 

 

「ちょっと!あたしの仕事取らないでよ!」

 

「はははっ、悪い悪い」

 

 

どうやらメンバー紹介はゆりの仕事らしい。

 

 

「それじゃあ改めて紹介していくわね。そこにいる背の低い男の子が大山くん。特徴が無いのが特徴よ」

 

「へへへ、よろしく」

 

 

愛嬌のある笑顔を向けてくる。

 

 

「その隣の木刀を持った目つきの悪いのが藤巻くん」

 

「さっきは悪かったな。使えるのかなんて言って」

 

 

言葉遣いは悪いが根は良いやつみたいだ。

 

 

「その隣の体格が良いのが松下くん。柔道五段だからみんなは敬意を込めて松下五段と呼んでるわ」

 

「よろしくな」

 

 

頼りになりそうな人物だ。

 

 

「んで、さっきから部屋の隅っこにいるくの一みたいな格好をしているのが椎名さん」

 

「あさはかなり」

 

 

……よくわからなそうな人だ。

 

 

「Come on! Let's dance!」

 

「なっなに!?」

 

「彼はTKよ。本名もなにも分からない謎の男よ」

 

 

……もっとよくわからなそうな人だ。

 

 

「ああ、あとさっき投げ飛ばしたのは野田くん。別に覚えなくていいわよ」

 

 

あっ、そういうポジションの人か。

 

 

「あとは陽動班の……」

 

「遅れてごめん!」

 

 

えっ…………?

 

 

「おっ、丁度来たわね。彼女は……」

 

「えっ……?」

 

「えっ……?」

 

 

思わず声にも出てしまう。相手も同じだろう。

 

 

「あら、二人共知り合いだったの?」

 

 

知り合いも何も……

 

 

「………ま、雅美?」

 

「た、太一?」

 

 

「「…………」」

 

「「ええええぇぇぇぇぇ!!??」」

 

 

生前会いたくて会いたくて仕方なかった相手だったのだ。


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