今日、雅美が死んだと聞いた。俺は耳を疑った。しかし、確かに医者は電話越しにそう言って来きた。俺は今急いで病院へ向かっている。俺にとってあいつは唯一の仲間だ。大切な大切な人だ。嘘であってくれっ……!雅美っ…!
何時間経っただろうか。医者からの言葉嘘では無かった。
1ヶ月程前から体調が悪くて入院していた雅美だが、俺にとっては居てくれるだけで心の支えになっていた。もしかしたら治るかもしれない。治ったらまた一緒に音楽やって、うどんの食べ歩きに出かけて……。
楽しかった日々を思い出すだけで涙が止まらなくなる。
「……ただいま……」
「ひぃっ!お、おかえりなさいませ!」
母親はいつも他人行儀なのだが、今日は特に他人行儀だ。雅美の一件があって俺に関わったら何をされるのかわからないとでも思ってるのだろう。
「……あのさ」
「は、はいぃ!」
「はぁ…」
そもそもなぜ俺がこんな対応をされているのかといえば、俺自身の力に問題がある。力が強すぎるのだ。
5歳くらいの頃だろうか。俺は雷に打たれた。それを境にして俺の力は異常なほどに強くなった。
大型トラックを持ち上げるなんて朝飯前。地面を殴れば地面に亀裂が入り、ジャンプをすれば50m以上飛び上がり、アメリカ軍が噂を聞きつけて戦車と戦わせたときには圧勝してしまった。
俺はこんな力なんて要らない。この力のせいで孤立してしまった。
別に俺は周りに危害を加えるつもりはない。それどころか必死に練習して力を抑えられるようになった。
それなのに周りは俺と接触しようとせずに、俺を公然の秘密として扱ってきた。
「……母さん」
「ひぃっ!な、なんでしょうか!?」
「俺、またちょっと出掛けてくるよ」
「い、いいいい、いってらっしゃいませ!」
そんなにビクビクしないでよ……。親子なのに……。
雅美との思い出の空き地にやってきた。ここは俺にとってたった一つと言っても過言ではない安らぎの場所だ。もっとも、隣に雅美がいればの話だが。
「そっか……もう……お前はいないんだな………」
また涙が溢れてくる。
「なんでだよっ……なんで死んじまったんだよっ……!」
1時間ほどして今日は家に帰った。
雅美の死から丁度1ヶ月たった今日、俺は再び公園に来ていた。
「ここで色んな話をしたよな……好きな音楽だとか……美味かったうどんだとか……昨日のテレビの話だとか……他愛もないどうでもいい話とか……」
1ヶ月ぽっちじゃ唯一の仲間の死という傷は癒えない。
「おい!神!聞こえているか!俺はお前を恨む!出てこい!」
俺はこんな運命を突きつけた神を恨んでいた。その恨みが頂点に達してこんなことを空に向かって叫んだ。
すると、空が突如雷雲に包まれた。
「こい!こんな世界もううんざりだ!俺を殺してみろ!」
ピシャーーーっ!!
「ぐあああああぁぁぁぁぁ!!!!」
その瞬間、俺は雷に打たれて短い生涯を終えた。