金次に転生しました。   作:クリティカル

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今回は、ちょっと繋ぎの話となります。
後、最後の人格の登場ですかね。
でも順番的には二番目かな。


38 消えたもう一つの記憶

近いうちに死ぬ。

そう聞かされた人達は、普通どんな反応を見せるだろうか?

まっさかーと、本気にせず笑い飛ばす奴、受け入れずに泣きわめく奴等様々な反応するだろう。

だが、俺はそのどれにも当てはまらないらしい。

今正に壁一枚隔ててその話を聞いてしまったと言うのに、俺は、長年疑問に思っていた一つが解決したことに安堵していた。

納得とも言うかも知れない。

実際俺が、二人の会話を聞いた時真っ先に浮かんだのが『あぁ、やっぱりか』と言う他人事にも聞こえる呑気な物だった。

恐怖が無い。

一度死を体験したからかも知れないが、兎に角俺の心は冷静だった。

其と同時に、ちょっとした怒りもあった。

今の予言を聞く限り、其は、俺があのクソ兄貴に負けると言うことだ。

其が前提とされてしまっている。

其が納得いかない。

確かに、人には必ず死がやって来る。

寿命を迎え死ぬ方が珍しいくらい様々な死に方をする。

俺に来たのも早いか、遅いか、其れだけだ。

だが、死に方に納得がいかない。

二度回避するのは無理?

馬鹿馬鹿しい。

白雪、悪いがその予言は、外させて貰うぜ。

どのみち俺は、後5年は死ねないんだよ。

約束を破る気も無いしな。

今回も抗ってやる。

 

と、一人何処にもぶつけようの無いイライラを抱えている暇も無いだろう。

あんな風に泣く白雪と何か考え事をしているのか、腕を組み片方の手を顎にやりブツブツと小声で何かを言っている菊代。

何かが危ない。

そう警告させるには充分だ。

其にこうなった二人を俺は昔見たことがあるのだ。

だから、こうなった二人が次に出る行動も大体予想が付く。

 

こりゃ二人には悪いが、少しあの予定を早めるか。

万が一だが、俺が、後数ヵ月で非常に不愉快な話だが、あの世へレッツラゴーしてしまうかも知れないしな。

 

そう思い、直ぐに行動に出ようとした時だった。

 

「―――ん?ネクラ?」

 

もそりと、先程白雪の部屋を覗き気を失ったアリアがうにうにと両目を擦って起き上がって来た。

 

「あんたこんな時間に何処に行くつもりなのよ?」

 

『ど、何処でも良いだろう?』

 

「ふーん?」

 

ジロジロと、まるで夜道の不審者でも見るかのように寝起きにしては、確りと目を開き俺を上から下まで鑑定士の様に眺めて来る。

 

「わかったわ!あんたさては―――ムグッ!」

 

『大声を出すな!聞こえちまうだろ!』

 

パシッ!と手のひらでアリアの口を押さる。

アリアは、少し苦しそうにムグムグムグーと唸る。

此、端から見たら中学生か小学生に変な事をしようとしている変質者にしか見えん。

窓に写る姿がそうだもの。

取り合えず、早く外に

 

『……誰か起きてるの?』

 

まずい!

ヒタヒタと此方へ菊代が歩いてくるのが分かる。

俺は、アリアの耳に顔を寄せて小声でヒソリと

 

『アリア少し乱暴に行くから衝撃に備えろよ?』

 

ムグッ!?と先程まで手足をばたつかせ暴れてアリアが、ピタッと大人しくなる。

何か、耳元が赤いが、少し強く押さえすぎたか?

 

スッと、少し扉が開きかけたのを合図に右手でアリアを猫掴みにし

 

『良い子なら寝てくれよ!』

 

ブン!とベットの二段目に投げる。

スポッと、バスケットボールが網に入るようにしてベットに収まる。

 

おー投げてみるもんだな。

 

そう感心する暇も無く俺は素早くベットへと潜り寝たふりをする。

まるで、修学旅行の生徒の気分だ。

行ったことねぇけど。

 

「遠山……それともアリア?どっちか起きてるの?」

 

薄く目を開くと、菊代の背中が有りアリアの寝ているベットの方を見ながら

 

「寝言かしら?」

 

と、呟いている。

良かった、声がしたのはアリアだけで。

そう安堵したのもつかの間。

クルリと体が回転し此方を向く。

反射的に瞼を閉じると、ヒタヒタと僅かに足音が聞こえて軈て止まる。

 

「『金次』」

 

「―――――――ッ!」

 

ズシッと、突然体が重くなった様に感じる。

指がピクリとも動かない。

まるで大きな金属の板で上から押さえ付けられているようだ。

 

此は、いわゆる『待て』の状態。

菊代から次の言葉が来るのを体が待機していやがる。

 

今は、不味い起きてるのがバレたらさっきまで話を盗み聞きしてたのがバレちまう。

息を殺し、ギュと目をつむり出来るだけ寝ているように見せていると

 

――フワッ

 

……え?

 

突然、頭の上に妙に暖かい物が乗る。

そのまま、クシャクシャと頭に乗せられた物が往復する。

撫でられている?

 

「大丈夫……大丈夫だからね」

 

頭から、手が離れて、暫くすると少しだけ布団が捲れる感触がする。

そのまま、ギュと俺の手を菊代が握り

 

「あんたは、絶対にアタシが守るから」

 

まるで自分に言い聞かせるように呟く。

こう言うふうに、頭を撫でられたのはいったい何年前だっただろうか。

安らぎと同時に有るのは、その手から伝わる『不安』と『恐怖』……こう誰かにそう心配されるのは、苦手なんだ。

そして、こんなに取り乱した菊代と白雪を見たくはない。

今はどんなに事が有っても死ぬわけにはいかないのだ。

菊代と白雪の願いの為にも少なくとも、後5年。後5年は必用なんだ。

 

何とかして、山積みにされた全の面倒事を解決しなくては、そうすればきっと―――予言は外れる。

 

「だから今は待ってて……予言が過ぎるまでアタシ達で何とかするから」

 

カチャカチャと俺の手首辺りからひんやりとした違和感が発せられる。

少しすると、ギシリと菊代が、布団へと上がったらしく、そのまま俺の腹辺りを通過していく

暫くすると、先程と同じ感触が伝わってくる。

此は……確かめる必用も無いな。

やっぱりこうなったか。

 

二人が取り乱してからの行動は大体が予想が付く。

どんなささいな事でもパターンは変わらないからな。

 

其から直ぐにパタンと、扉が閉じる音がすると

 

『ちょっと!ネクラ、さっきのはどういうつもりよ!』

 

梯子を使い降りてきたアリアが此方へと歩いて来る。

明らかに怒ってらっしゃる。

 

『へっ、文句言うわりには寝たふりしてくれていたみたいだな。其処は礼を言う。ありがとよ』

 

こうして、軽口を叩ける相手がいると言うだけでも、少しは気休めになるなと自嘲気味に頬を緩める。

すると、アリアはビクッと猫の様に一瞬肩を震わせて

 

『あんたがお礼を言うなんて……明日は雨かしら?』

 

失礼な。俺だって礼くらいは言う。

其くらいのマナーは、守れるっての。

 

『生憎明日は快晴だそうだ』

 

『ふぅん……どうでも良いわ其より何であんた何時まで寝たふりを……ッ!』

 

其処で今の俺の状態を察したらしいアリアが、口を大きく開け叫ぼうとする。

其を俺は大丈夫だと伝える為に落ち着いた感じを装い先に口を開く。

 

『大声を出そうとするな。其より………ベットの下に解錠(バンプ)キーが隠してある。すまないが、取ってくれないか?』

 

ジャラと、両手首のそれぞれベットの柵に繋がれた手錠を鳴らして見せる。

罪人になった気分だ。

悪い事なんて一つもしてねぇのによ。

世間から見たらどうなのかは知ったこっちゃ無いがな。

其を見たアリアは黙ってコクリと頷くと下の方をライトで照らしながらガサゴソと探しだす。

幸いこのベットの下に貼り付けてある鍵の存在だけは俺と風魔以外は知らない。

こう言う時の為に用意してあるのだ。

普段は風魔に開けさせるのだが、残念な事にもう寝てしまったようだ。

 

『あんたも、大変なのね』

 

頭と、髪飾りの角だけが見えるアリアが下を探しながら話しかける。

 

『労いのつもりか?』

 

『そうじゃないわ。何かこう……う~ん』 

 

『なんだよ。言いたい事があるならハッキリ言えよ。お前らしくも無い』

 

話しかけて来たかと思えば今度は、一人で頭を抱えて悩みだす。

 

『う、うるさい!……やっぱり何でも無いわ。ほら此でしょ?』

 

チャリと、アリアが手に持った鍵を此方へと見せる。

 

『おー其だよ。さ、早く此方に』

 

渡せと手の平を開いたり閉じたりして促すが

 

『ダメね』

 

『あ?』

 

ヒョイと、鍵を持った手がアリアの頭上にまで上がる。

 

『あんた、今日私の事、お、お、女らしく無いって笑ったでしょ!?』

 

突然アリアが切り出した話題に、少し思い出すのに苦労するが、あぁ、なるほど確かに合ったな。

あの占いの時か。

 

『あぁ、どっちかと言うと獅子だからな』

 

『ふ~ん』

 

早く鍵を渡せ此方は急いでいるんだと、少しムッとして、嫌みのつもりでそう言うとアリアは、獲物が罠に引っ掛かったのを見つけた猟師の様に不適にニヤリと笑う。

すんげぇ嫌な予感がする。

 

『キンジ(●●●)お手』

 

『グッ』

 

ジジッと小さな耳なりと脳に直接針が刺さったかのような痛みに一瞬襲われる。

その痛みが、収まり堪えるために強く閉じた瞼を開けると

 

うそ……だろ?

其処には、手錠をした俺の手が確かにアリアの手の平の上に乗っていた。

指を曲げて、犬が飼い主にお手をするように。

 

『ふふん♪あたしが獅子ならあんたは犬ね』

 

してやったりと、上機嫌に言うアリアの言葉は殆ど耳に入って来ない。

菊代や、白雪、エル、風魔に並んでアリアが俺に―――言う事を聞かせるとは。

下の名前でこんなことを。

だが、現状この頭痛に並んでアリアにまた一つ謎が追加されたと言うことか。

これもまた、緋に関する事なのか?

どのみち、今の俺が出来ることは

 

『降参だ。俺が、悪かった。だからこの手錠をどうか外して下さいお願いします。アリア様』

 

非常に、ひっじょうに納得のいかない事なのだが、こう言う行動に出るしか無いだろう。

今から監禁生活と言うのは困るのだ。

 

『もの凄く棒読みな感じがするけど良いわ……あたしが勝ったんだし』

 

『此れに勝ち負けが有ったのか?』

 

そう言いつつ、ガチャリと外して貰い自由になった手を使い起き上がり、ベットから出る。

そして、バルコニーの方をチラリと見ると、右隣がうっすらとまだ光っていた。

あの二人が寝るのはもう少し後かも知れん。

 

『あんたは、最初から命令を使えば良かったのに』

 

ボソっとアリアが後ろから一人事の様に言う。

確かにそうだろうな。

 

『あほ抜かせ。そんなことでいちいち命令したりなんてしねぇよ。どうしてもダメだったら、関節外して抜け出すし』

 

『じゃあ最初からそうしなさいよ!』

 

『何故わざわざ痛い思いをしなきゃならん。理解できないし、したくもない』

 

此は本音だ。

本当に痛い。

あんなのもう二度とやるもんか。

一年の頃にやってそう誓ったね。

 

まぁ、良いや此で外に出られる。

予定よりかなり早いが、ご挨拶と言うことなら問題ないだろう。

そう思い、バルコニーへと足を進めようとすると

 

『ちょっと、待ちなさい。何処行く気なの?』

 

ガシッと俺の服の袖を付かんで最初と同じ質問をしてきた。

 

『なんだよ。さっき分かったとか言ってたろ?其はどうなんだよ?』

 

『良いわよ。どうにも違ったみたいだし』

 

ふいっとソッポを向き明らかにふてくされてしまう。

まぁ、どのみち伝える内容は同じだ。

 

『朝には戻る……此れからの事に関わる事だ』

 

『じゃあ、あたしも』

 

付いていくと言い出しそうになるアリアの言葉を手で制す。

だが、此だけでは納得しないだろう。

 

『アリア……お前には此処に()()し白雪と菊代を見張ることだ。出来るな?』

 

『な、そんなことで騙されな――』

 

『報酬は、お前の行きつけの店のももまんピラミッドをお前が腹一杯になるまで食べさせてやる事だ』

 

『な――』

 

ボフンと、火山の様に一気に赤くなり頭から恥ずかしさでか、湯気が出たような幻覚が見えた。

 

『何であんたが知ってるのよ!』

 

『(風魔が)調べたからだ。―――其でどうする乗るか?』

 

あっけらかんと俺が、言うと、アリアはももまんと小さく呟き軈て顔を上げて

 

『あんたがなに企んでるか知らないけど、約束は守ってくれるんでしょ?』

 

『約束を破った事はねぇよ』

 

ガシッと、合意を示すために、お互いに握手をする。

 

其から、なるべく音を出さない様にしてバルコニーに行きそのまま影になる左隣の出窓のある方向にベルトのワイヤーを引っ掻けて、下へと降りる。

其じゃ行きますかね。

俺の5年を、アリアと同様に5年を、上手くすれば、この学校を卒業するまでに、片付ける事の出来るかもしれない鍵

 

―――神崎かなえ。

アリアのお母様の所に

 

 

 

 

下の駐車場まで降りそのまま、駆け足で菊代の車へと向かい解錠キーで開ける。

借りてくぜ、朝までな。

 

バタンと閉じてシートベルトを締める。

隣からもパタンと音がして扉が閉まる

 

 

「……おい」

 

「はい」

 

音も無く自然な動作でスッと当たり前の様に乗ってきたのは、あの喫茶店以来の

 

「何故いる?そして何故乗る?………降りろ蕾姫(レキ)まだ約束の時期では無い筈だ」

 

ウルスの璃巫女―――レキだった。

 

レキは、ふるふると左右に首を降り、否定の意を示す。

 

「今日は、本物のキンジさんに会いに来ました」

 

そして、感情の籠っていないようなそれでいて透き通る声で静かに告げる。

 

「なんだよ。俺のドッペルゲンガーにでも会ったのか?」

 

「そうではありません――キンジさん」

 

首だけが、ゆっくりと此方を向いてガラス細工の様な瞳で俺の事を真っ直ぐに見つめてくる。

その目がまるで

 

(――狩人――)

 

――チュ

 

「――ッ!?」

 

つっ――と、背伸びをし、俺の首に腕を回してそのまま顔を近づけて、恋人にするようにキスをしてきた。

 

(……は?)

 

自分の唇にシリコンの様に滑らかな僅かにミントの様な香りのするキス。

其も本の一瞬の花火の様にあっという間だった。

考える暇も無かったが、一つだけ分かるのは

 

(血流は穏やかだな)

 

HSSにはなっていない。

つまりレキの操り人形にはならないと、言うことだ。

その事に少しホッと胸を撫で下ろす。

 

(知らずにやったか………言う事を聞かせるのが目的では無いのか)

 

「何のつもりだ?」

 

少しの警戒心と殺意を乗せて言う。

だが、レキはその事に気づかない様子で淡々と

 

「貴方が本物なら貴方はウルスになれる」

 

ウルスになれるその、言葉を聞かされた瞬間に全てを理解した。

それと同時にレキの細い首に

 

「最初からそれが狙いか」

 

スッとハンティングナイフを突き付ける。

 

「あたしを殺したいですか?」

 

「あぁ―――お前は危険すぎる。此処で退場願いたい」

 

「そうですか」

 

(なっ―――自分からだと?)

 

スッとその細い首を自らつきだしたのだ。

斬れるもんなら斬ってみろと。

 

「貴方は、アリアさんと同じようにわたしを殺すことは出来ない」

 

「試してみるか?」

 

『―――本当に神様に“誓って”くれるの?』

 

ズバッとナイフが、首を横一線に斬る―――筈だった。

手は、少しも動いていなかった。

 

(此は……アリアの時と同じ)

 

覚えている。

忘れる訳もない。

あのバスジャックの時アリアと戦った時の初めての頭痛と耳なりと同じだ。

 

視界がボヤける。

脳が焼ける。

鼓膜が破裂しそうだ。

 

「キンジさんは、絶対わたしを殺せません」

 

『――神様に誓って●●してくれるの?』

 

「璃巫女……貴様何をした!……唇に毒でも塗ってたか?」

 

「そんなことはしません」

 

あぁ、分かってる。此は毒何かで引き起こせる現象じゃ無い。

別の物だ。

アリアとレキの共通点は

 

(色金)

 

俺のこの症状は、色金によるものなのか?

 

「大丈夫です。直ぐに納めます」

 

「何を言って」

 

スッと、レキの右手が俺の頭から耳、頬をなぞると、先程の耳なりも頭痛も消えていた。

 

「待て!」

 

ガチャと、レキが扉を開けて出ていこうとするのを、声を振り絞って止める。

レキは、言った通りにピタッと止まり

此方を振り向かずに

 

「―――風が言っています」

 

「風?――璃璃色金の事か?」

 

「風は風です。―――キンジさんは、死にません。其がウルスになることなのですから」

 

レキはその事に触れず、その事だけを伝えるとスタスタと歩いてゆっくりと夜の道路へと消えていった。

流石に追う気には、なれなかった。

 

「励ましのつもりかよ」

 

死なないと、そんな言葉がまさかレキから聞けるとはな。

意外にも程がある。

 

其に

 

「神様に誓って―――か」

 

俺は、神に祈った事もねぇのによ。

寧ろいてたまるか。

いないもんに祈ったら其は、生きる事すら他人任せにすることだもんな。

 

気持ちを切り替えるようにしてエンジンを入れ車を目的地へと走らせた。

 

 

 

 

 

神崎かなえのいる新宿警察署の裏口からお邪魔する。

予め中の構造は覚えているため直ぐに入れた。

途中の見廻りも朝までグッスリ寝てもらった。

八つ当たりも含めてしまったが。

すいませんね。

その代わり朝までグッスリ寝て日頃の疲れを癒してくださいな。

見廻りの服をお借りし神崎かなえの部屋まで向かう。

途中何人かの受刑者を扉越しに見かけたが流石にこの時間は全員寝ている。

 

「此処か」

 

キィとお借りした鍵で扉を開ける。

決して夜這いではない。

 

「待ってたわ」

 

「……夜分遅くにすいませんね」

 

部屋の中にはテーブルを挟んで正座で座った神崎かなえの姿があった。

親子揃って癖の強いこと。

自己紹介とかは、必用無さそうだ。

 

「今日は、目が冴えてどうしても眠れなかったの」

 

こんな息の詰まりそうな、部屋にいるにも関わらずその場の全てを包み込む様な柔らかい笑みを浮かべた。

 

「此処に来たって事は、聞きたい事があるって事なのでしょ?わたしの答えられる範囲なら何でも聞いてね。アリアの彼氏さん」

 

「其じゃ、御言葉に甘えさせていただきます。お母様」

 

此処にもし、アリアがいたら顔を真っ赤に染めて全力で否定しに掛かるだろう。

だが、冗談には冗談で返すのが基本だ。

 

「あぁ、そうだ。単刀直入に言おう。俺が、聞きたいのは二つだ。一つは。『あんたが本当に此処から出たいのかどうか』そしてもう一つは……俺からしたら此方が本題だ『アリアの体内にある緋騨』の事だ」

 

先程のレキとの会話により一つの仮説が出来上がった。

もしあの症状が色金に関する事なら、そのヒントは此処に――この人が持っている。

 

「まぁ……」

 

クスリと、少し可笑しそうに笑って

 

「半分正解。其処まで分かっているなら『答えに近いヒント』を挙げましょうか」

 

神崎かなえは、まるで、長い付き合いのある友人に向けるような笑顔で

 

「数百年に一度数多の歴史と記憶を抱え“緋の贄”となる“憑依者”に講して出会えたのだもの、とても楽しい夜になりそう」

 

 

とんでもないことを言ってのけた。




そう言えば、良いところで終わったあのホラーゲーム。
11月の後半に新ストーリーが来ると言うので楽しみにしております。
もうすぐらしいんですけどね。
早くやりたいです。

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