今回でバタフライナイフさんの出番は終了です。
後、今回金次君達の出番が。
(あれ?怪我をしたのは彼の方だったのか。ちょっと、誤算だったな)
周りが、不安そうに窓の外を見つめるバスの中に一人携帯を片手にそう呟く男が一人――不知火である。
彼と、その他の生徒達が見る先には、救急車に運ばれる運転手と遠山金次の姿があった。
(やっぱり…………本能には、逆らえないみたいだね。遠山君)
弄っていた携帯を閉じてもう一度彼は、窓の外を見つめる。
ザーーと、バケツでもひっくり返した様な激しい雨の中もうサイレンの音も聞こえなくなるほど遠くへと離れた救急車をひたすら見つめるピンクのツインテールが特徴的な神崎・H・アリアの姿だった。
「お嬢様ね……………頭の隅では覚えてるのかな?」
★ ☆ ★
また、時間は少し遡り
フランスとスイスの文化が混ざったような独特の街シャモニー。
もう日も沈み日付も変わる頃。
その町のとあるホテルその3階には、4人の人影があった。
だが、その光景は普通では無かった。
最早ホテルと呼べる様な状態では無かったのだ。
飾ってあった鹿の頭の剥製は綺麗に真っ二つにされ、壁や床は大穴が開き今にもこのホテルだった建物は崩れそうだ。
そう言う状態にしたので有ろう人達の中には、右目に逆卍の眼帯をし良くハロウィン等でお馴染みの魔女を思わせる格好をした少女。
その少女の足は血を流し傷口を押さえる手を赤く濡らしている。
が、片手にルガーP08を構え目の前の3人の女性を睨み付ける。
そしてその少女を囲むように3人の首から小さな十字架を下げた女性達が剣を構え今すぐにでも少女に襲い掛かる勢いであった。
「ハァ………ハァ……」
「貴女の使い魔も逃げてしまいましたね。此処までです。忌々しい魔女」
「貴女を生かして良い理由はどの聖書にも書いて有りません」
「貴女は、人に害をなす害虫です」
「「「死になさい!厄水の魔女!!!!」」」
全員が、剣を振り上げてその少女を斬ろうとしたとき
「エドガーは、逃げたんじゃ無い………呼びに行ったのさ」
少女がそう言うと同時にガシャーーーーーン!と窓ガラスが割れてガラスの破片が幾つも剣を持った女性達に降り注ぐが少女の方へと飛んでくる破片は全て不自然なカーブを描いて避けて行く。
「相変わらず差別が大好きなんだな、シスター共」
「カァーーーー!」
「………獄卒。貴様が何故此処にいる?此処は人払いをしたはずだ」
シスターと呼ばれた女性の一人が肩にカラスを乗せた茶色いスーツを着た男に剣を向けるが男は、其を無視して
ドッと鈍い音が部屋に響く。
「ガッ……………!」
女性が気が付いた時には既に向けた剣は折られ自分の頭に不思議な痛みと重みを感じながらその命を落とした。
「お前らカツェに何をした?」
ポタポタと血を滴らせるのは、男が握っていた、ゴルフクラブのドライバー位は有るだろうか。
玉ねぎの様な球形の回りに刺の付いた所謂星形ヘッドと呼ばれる物が付いたモーニングスター
其を軽々と女性の頭に叩き付けたのだ。
其を遅くも理解した残りの二人が
「魔の者よ去りなさい!」
「害虫の味方をするならばこの場で処刑です!」
ツーハンドソードと呼ばれる両手剣をその男目掛けて何度も降るが
「こんな瑠璃臭い空気の日にカツェを襲うとは。所詮メーヤの使い走りか」
男はその全てを避けてその際にチラリと片方のシスターの方を目で追うと
もう片方のシスターを素早く地面に叩き付けて頭を潰してその勢いを使ってもう片方のシスターの剣を弾き飛ばしそのまま、片手でシスターの首を掴み壁にヒビを作るほどに強く叩きつけ動きを封じる。
シスターは、その男の手を離そうと必死にその腕を付かむが首を絞める力が強くなるだけあった。
「ガハッ………」
首を絞めつけられて苦痛の表情をするシスターを一度見て
「カツェを斬ったお前に聞くが………この二人を覚えているか?」
感情の無いロボットの様に淡々とした声で男が胸の内ポケットからだした写真には、何処かの動物園だろう。
像の親子をバックに家族と思われる3人。
一人は、黒く艶のある長い腰まではある髪と何処か輪とした顔で十人は見れば十人は間違いなく美人と言うだろうその人の手を握るのはまだ2歳か3歳位だろう小さな少女は先程から男がカツェと言っていた少女とそっくりでその少女のもう一つの手を握るのは、今正にその写真を見せている《獄卒》と呼ばれた男だった。
その写真を見てシスターは首を左右に降る。
「そうか。覚えている価値も無いと…………では、言い方を変えよう。《灼熱の魔女》」
その言葉を聞きシスターの目が大きく開き驚愕に染まる。
「灼熱の魔女………………」
「そうだ。お前らが殺した魔女…………俺の妻と娘だ。直ぐにメーヤもそっちに送ってやる。十字架の無い墓で眠れ」
ゴキリと鈍い音がして、男が離すとシスターはそのまま力なく崩れ落ちた。
「カズユキ……」
カツェがそう言うと男は先程とは違って目に涙を浮かべながら
「カツェ!すまない!」
「うわっ!ってバカ!抱き付くんじゃねぇよ離せ!」
「こうしないと、傷は、治らん。我慢してくれ」
ポカポカといった音がしてしそうな感じでイキナリ抱きついてきたカズユキと呼ばれた男を顔を林檎の様に真っ赤に染めてグーパンチで殴る。
先程とは全く違う本当に同一人物なのかと思うくらい子供みたいに泣きじゃくる彼の姿と怒りなのか何なのか必死に押し返す魔女ッ子と言う良く分からない場面が広がっていた。
だが、旗から見れば20代後半の大人が、少女に抱きつくと言う即通報レベルの光景だとだけは言える。
「てか、血が出てるんだから離れろって………あれ?」
「もう、直したぞ」
「え?」
カツェが、恐る恐る斬られて血を流していた右足を見ると、最初からそんな傷は無かったと思わせる程に綺麗に無くなっていた。
「旧鼠の薬が効いたみたいだな」
「アイツのかよ。どさくさ紛れに何塗ってるんだ………って伏せろ!」
バァン!と彼の頭上をカツェの放った銃弾が飛び
「マ…………ア゛………ジョ……」
何と一番最初に倒した筈のシスターで右半分の顔を潰されて普通なら生きていない筈の状態で折れた剣を握りしめゾンビの様に起き上がり襲って来たのだ。
だが、その最後の悪足掻きもカツェが放った銃弾が左脳を撃ち抜きそのままよろめき床に開いた大きな穴から下へと落ちていった。
「火事場の馬鹿力って、奴っすかね此は?それとも首を切り落とされても数秒間は、生きてるって言う類いの奴?」
「旧鼠か」
「ゴメンね。イチャ付いてるところお邪魔しちゃったかな?………でも珍しいね。幾らこんな日だからってカツェちゃんが追い詰められるなんてね」
「此処がバレるとは思って無かったんだよ。其にまさか床ぶち抜いて来るなんて予想外過ぎてな。おかげでこの様だよ。んで、ソイツが眠り姫って奴か本当に寝てやがるな」
「30時間以上寝てるっすね」
窓から新たに入って来た白衣を着た男は、その背中おぶられた銀髪の少女を壁にもたれかかせる。
「んで、この子起こすには、どうするんだよ?」
カズユキが旧鼠に聞くと旧鼠は白衣のポケットから緋色に光る刀身を持ったバタフライナイフを取り出して
「まぁ、見ててよ。尾根坊さんの起きる瞬間をさ」
その刀身を少女の口元に持っていくとその刀身は勝手に薄く光だした。
「ん………」
その光に反応してか、少女が目を開き海様に青く深い印象を与える目を開き同時に口も開き
「はい、お食べ」
「は?お前へ何言って」
カズユキがそう言うと同時に少女はナイフを受け取りその刀身を
パキン
まるで板チョコでも食べるような軽さでその刀身を折り口の中で咀嚼して飲み込んだ。
「「ええええええええええええ!!」」
「ハハハハハ!!起きた成功だよ!!やっぱりこの子だ間違いない!ヒャハハハハハハーーーーハハハハハ!!」
カズユキとカツェが驚きの余り叫び、旧鼠は天にも届くような笑い声を上げる。
そんな中で一人少女は、腹一杯になったとでも言うように又しても
幸せそうな寝息を規則正しく立てながら寝てしまった。
★ ☆ ★
「で、何か言うことは?」
「ものすごい反省してます。破門とかだけは、勘弁してください。お願いします」
現在俺はこの負傷した武偵等が送られる。武偵病院のベットの上で盛大に菊代に土下座をしていた。
いやまぁ、命令ガン無視した俺が悪いんだし。土下座するのは当たり前何だが、かれこれ土下座してもう30分以上は、このままな訳で目茶苦茶背中とか腰とか足とか痺れた通り越してもう感覚無くなりました。
しかも個室だから助け来ない。
来ても菊代から溢れる殺気で救護科の生徒さんがた皆帰っちゃうの。
正に絶対絶命状態。
俺に出来る事ってひたすら謝り続ける事ですはい。
「はぁ、まぁ、目当ての物は手に入ったんだからもう良いわ。許す。………客も来たみたいだしね」
「客?」
「ほら、入んな」
「お邪魔するよ。二人共」
「ウゲ……」
「ウゲとは、なんだ。ウゲとは失礼だなトウヤマは」
ガラリと扉を開けて入って来たのは、武偵高の女子制服を着た艶のある黒髪にクリクリとした可愛らしい目をした
「日本に来てたのか、エル」
「てか、あんた良く此処入れたわね」
「東京の武偵服を注文しておいて助かったよ。おかげで怪しまれることなく入れた」
「其は、良かったな」
「もっと喜んだらどうだい?せっかく見舞いに来てあげたのに」
ぷくりと両方のほっぺたをフグの様に膨らませて可愛らしく拗ねるこいつは電話の相手であった現ワトソン家当主エル・ワトソンだ。
ハッキリ言って厄介事しか持って来ない。
両手で数え切れない程にこいつの持ってきた話に乗って酷い目に会っている。
「いつ日本に来たんだ」
「10時間位前かな。今日の昼頃ホテルから出てきたらキクヨから電話が合ってね。トウヤマが病院に運ばれたどうしようどうしようと涙声で」
「エ~~~ル~~~。あんたいい度胸してるじゃない」
「あ、いや別にそんなつもりじゃ」
あのエルが押されてる。
てか、菊代のお怒りモード久し振りに見たよ。
もう、ツインテールが重力に逆らってるし、後ろに般若見えるし。
その辺にして上げてエル青ざめてるから。
若干震えてるし。
「でも、菊代有難うな。心配してくれて」
「別に、あんたが死んだら誰が組守るんだ。其にあんたが死ぬと後追いしそうになる危なかっしい子もいるんだよ」
菊代は、くるくると自分の前髪を弄りながら顔を赤らめ恥ずかしそうに顔を背ける。
少し、その横顔を眺めていると
「ウゥン…………そろそろ本題に入ろうかと思うんだけど」
エルのわざとらしい咳払いによって俺と菊代は、我に帰りその恥ずかしさを隠す為にエルの話に言葉を返す。
「本題?」
「また、厄介事かよ」
「またとは何だ。今回は君の好きな旨味のある話を持ってきたと言うのに」
エルは、フフンと無い胸を自慢げに張り世間で言うドヤ顔をして此方を見てくる。
「そんなに自信があるなら聞こうかしら」
菊代が、シリアスな声で、エルの方を見る
エルは、口元をニヤリと吊り上げて
「
メーヤさんが好きな皆様ご免なさい!
本当にご免なさい!
画面の向こうで土下座します!