────夢を見ている
一人の王がいた。
銀と青の甲冑に身を包み黄金の剣を携え、数々の戦場を駆け抜けた。
王は最強の騎士たちを背後に従え、常に取りうる最適の策を用いた。
その結果彼の王は常勝であり、多くの敵を打ち破り、多くの領土を納め、多くの民を守った。
王は常に正しかった。
人々は王に完璧であることを求め、
王もまた完璧であることを望んだ。
────すごい
その光景を見て、素直に感嘆と憧憬の意を抱いた。
多くの人々を守り、正しい道へと導いた、その人こそが理想の王なのだ。
俺の目標である『正義の味方』も、きっと、この王のような存在なのだろう。
────だけど
その輝かしいはずの情景にも、ひとつだけ、納得のいかない部分がある。
確かに、彼の者は多くの人を救い、たくさんの人が笑っているのに、
────どうして、それをもたらしたはずの王だけが、笑っていないのだろう。
◇
「──────っ」
覚醒する。
ひたすら落ち行く暗闇の中で、いつの間にか意識を失っていたらしい。まだ耄碌とする頭を振り、現状を把握しようと集中力を高めた。
目を開いた時から気付いていたことだったが、網膜は未だ一筋の光すら受け入れていなかった。真暗闇の空間で、身体の芯が浮く気色の悪い感覚だけが、相変わらず自身が落下し続けていることを伝えている。
このままどうなってしまうのだろうか。
思えば、今日は脳がパンクしそうなほど馬鹿げている事ばかり起こった。
夜の校庭では化物のような男二人による壮烈な戦いを見て、そしてその片割れに理由もわからないままに心臓を穿たれ、だがしかし、その貫かれたはずの心臓さえも誰かによって治療された。
そのあと家に帰って一息吐けたと思ったら、自分を殺そうとした男が再び現われ、それをなんとか退けようとして無我夢中に足掻いていたら、今度は土蔵にあった謎の魔法陣を起動させた。
「そして今に至る、か」
思い返し、ふぅ、と溜息。
非常識的な事ばかり起こったのに、今が一番理解し難いとはどういうことなんだろう。
とりあえず、確実に今日は厄日であること。それだけが今の俺でも解ることだった。
────さて
さしあたっての脅威は感じない。
しかし、このまま地面に墜落すればただじゃ済まないのは想像がつくし、そしてなにより、今も落下進行形で気持ちが悪い。
「思い当たるとしたら、やっぱりあの魔法陣……か」
この状態を招いた原因として一番怪しいものを思い出す。
でも長らくあの土蔵は使ってきたけれど、あんなモノを書いた覚えは俺にはない。
というか、書けない。
つまり、あれは切嗣が残したものってことだろう。
衛宮切嗣。俺の亡き義父であり、魔術の師匠。
師匠って言っても切嗣は魔術を教えるのに積極的ではなかったし、俺にも才能がなかったから、てんでたいしたものを教えてもらった記憶はないけれど。
それでも、俺なんかよりずっと魔術を使えた
「……でも困ったな。こんな時使える魔術なんて知らないぞ」
使える魔術も成功率は極めて低いのに、更にその種類自体も、解析、強化、あとは役に立たない投影くらいで──
そこで、思い出す。
そういえば、あの魔法陣が光る前に自分が詠唱していた事を。
あの時は目の前に死が迫っていたから特に気にしなかったけれど、確かに何かを投影しようとしたはずだ。
やるしかない、か。
今それをしたって何かが起きるかは分からない。
だけど行動しなくちゃ、何も起こすことができない。
「────
未だにあのとき何を作りだそうとしたのかは分からない。
だから頭に確たる設計図は思い浮かべず、ただ魔術回路を形成し、詠唱を唱える。
「────グッ」
ズキッと体に激痛が走った。
俺にとって魔術の行使は常に命がけだ。これも、未熟者故にだろう。
奥歯を噛み締めて、いつものように痛みに耐える。
「────」
だが、投影しようにもその本物のイメージがないのだから、何も起こりようが無い。
なんなんだ。あの時、俺が投影しようとしたのは。
思い出せ、思い出せ、思い出せ。そう念じながら、ただひたすら意識を体へと集中させる。
────そのとき、一振りの黄金の剣が見えた。
「──が、────はっ」
脳が灼き切れそうになった。
今のイメージが浮かんだのは一瞬。
それなのに、何かに興奮したかのように魔術回路に魔力が奔る。
そして酷い痛みを受けて得たものは、神秘的な剣のぼやけたイメージ。
「────な」
瞬間。
今まで真暗闇だった空間に、極大の光が溢れる。
自身の下から湧き出てくるそれは暗闇に居た目には眩しすぎて、思わず目を瞑った。
瞼の裏から尚も見える、その煌煌しさ。
黄金色のその光は、先ほどイメージした剣を喚起させた。
光とともに風がうねる。
暖かな風は優しく、俺を包み込むように吹き抜けていった。
まだ目は開けられないけれど、どこか安心したまま、俺はその光へ向かって落ちていった。
◇
「────」
目を開く。
目の前に瞬くのは、びっくりするくらいの満天の星空。
ありとあらゆる星座が見えるんじゃないかってほど綺麗なそれに、今までのことも忘れ目を奪われる。
さぁー、と緩やかな風が吹く。
どうやら体は草村に横たわっているようで、風に揺れるそれらが柔らかに肌を撫でた。
「────って、ここは?」
ふと、意識を現実に戻し、体を起こした。
その際に体の痛みがないことも確認し、いつの間に無傷で地面に降り立ったのだろうと疑問に思う。
そこは、豪邸にある庭のような場所だった。
地面には柔らかな草が生えそろい、通路沿いの花壇には様々な花が敷き詰められている。
敷地の中央には泉が湧き出ており、高低差のある石壁を用いて水を汲める仕組みになっているようだ。噴水の前には、西洋剣を構えた鎧姿の石像が雄々しく建っていた。
派手な装置や装飾はないけれど、素人目にも洗練された西洋風の庭園だ。
「……どこなんだろう。というか、なんか暗いと思ったら松明を使ってるのか」
敷地をぐるっと囲む石壁の要所要所に焚かれている灯火が、頼り無さげに揺れている。
目を開けてからやけにくっきり星が見えるなと思っていたのだが、どうやら、常日頃から見慣れている人工的な光の気配が一切感じられないのだ。
「……うーん。まぁ、松明ってことは人が住んでるってことだもんな。不法侵入したのはどうにか許してもらうとして、電話なりなんなり借りて早く藤ねえに連絡しなきゃ……大変なことになる」
ただでさえ夕飯までに帰られなかったのに、それが無断であったのだから余計に心配をかけてしまっているだろう。
冬木の虎がマジで降臨するかもしれない、と戦々恐々としながらも歩きだした、
────そのとき
「Is someone there?」
背後から、鈴のような声が届いた。
完璧に不意打ちなそれに、体がビクッと跳ね上がる。
仕方ないじゃないか。あの黒い場所から抜け出し、ほっと一息ついた途端のことだったのだ。
誰にともなしに心の中で言い訳を呟き、振り返る。
「わっ」
驚いた。
その人が明らかに日本人でなかったこともそうだけれど、それよりも、振り返った先に見た女性は、思わず声をあげてしまうくらい綺麗だったのだ。
腰まで伸ばした蒼染んだ黒の髪。
染みなんて一つもないくらいに白い肌に、真っ青な瞳。
白妙のドレスを着服し、小首を傾げてこちらを覗き込んでいるその女性は、見た目の秀麗さとは逆に、まんまるに開いた大きな目が性格の活発さを表しているようで──
「────」
「────うわっ、えっ? なんて?」
その女性の綺麗さに意識を奪われていていて、何か加えて話しかけられていたけどそれを拾い上げる余裕はなかった。しかも彼女の見た目通り、それは日本語ではなかったのではないか?
「ぱ、パァドン、プリ〜ズ?」
赤面する。たった二言。それだけなのに、自分の発音の拙さを自覚した。
くすくすと、その様子を見た目の前の彼女が更に格好を崩し、楽しげに笑う。
「Who are you?」
一語一語、ゆっくりくぎって話してくれる。
今度は分かった。
目の前の女性風に言い換えると、「あなたはだあれ?」といったところだろうか。
「ま、マイネィム、イズ、エミヤ・シロウ」
俺の拙い返答に、彼女はいっそう楽しげに笑う。
「Shirou, where are you from?」
シロウ、という呼び名に動揺した。
一息に続けられる質問にも戸惑ったけれど、whereということはどこから来たか尋ねているのだろうと推測する。
「アィム、フロム、ジャパン」
「Japan? Indeed, you look like foreigner, but where is Japan? How did you enter this castle?」
「えっ、え、ちょ、ちょっと待ってくれ! はやすぎる!」
返答を受けた彼女は、困惑したというよりも興味をそそられたというように矢継ぎに言葉を続けた。
「ソ、ソーリィ! アイ、キャント、スピーク、ィングリッシュ!!」
感情の赴くまま上体を倒してくる彼女をせき止めるように、胸前に持ってきた両手で彼女を制止する
彼女は俺の手を見て自分の行為に気付いたのか、一拍遅れに慌てて体を起こした。背筋を伸ばして佇まいを直し、こほん、と恥ずかしげに咳をして────しかし、俺の狼狽する様子を見てふと思いついたのか、興味深そうに表情を変えて質問を投げかけてくる。
「────You do not know me?」
今度はさらにゆっくりと、今度は手振りも添えて意図をなんとか伝えようとしてくれた。
「あっ、ああ。アィ、ドント、ノウ、ユゥ」
いま初めて会ったのに知ってる訳がない。
未知の現象によって未知の場所にやってきたのだ。
……だけどそんなことを聞くってことは、もしかしてすごい有名な芸能人とかかもしれない。確かに、この庭園は見たことないぐらい立派だし、そこに居る彼女もものすごいお金持ちと考えてもおかしくないだろう。テレビや映画などに疎い俺が、ただ知らないだけだという事も有り得なくはないだろう。
そんなことを考えて、恐る恐る拙い英語を再度口にする。
「わ、ワッツ、ユア、ネイム?」
……くそっ、話す度に自分の英語力の無さを思い知る。
こんなことなら、藤ねえと英会話の練習でもしておけばよかった……!
俺の質問を受けた彼女は、英語に対してかその内容に関してか、
どちらに向けてかは分からないけれど、いっそう楽しげに笑い───
「────I am Guneviere. I’m Queen」
────と、謳うように告げた。
…………ギネ、ヴィア?
う〜ん、有名な人なのだろうか。てんでわからないや……
……。
……。
「──────って、クイーン!!?!?」
「Yes」
俺の驚愕の叫びに、彼女はもう堪えきれないというように腹を抱えて笑い出す。
クイーン。女王。王女様──
「って、すいませんでした!!!────あ、違う、えっと...…アイム、ソゥソーリィ!!!!」
そこまで気付いた段階で、頭を腰よりも低く下げて全力で謝罪する。
まさか王女様とは露知らず、今までそんなこと気にせず声をあげたり、ぼけっと見つめたりしてしまったのだ。もしかしてとんでもなく無礼な事をしてしまったのではないだろうか。
日本人のイメージを壊してしまったかも、と、すうっと血の気が引いていった。
「It is quite all right! Do not worry about it」
「……だけど」
俺の突然の謝罪を受け、彼女は慌てたように両手を振った。
雰囲気的に気にしてないようだけれど、これはそういう問題ではないのではないか。
「Anyway! I do not mind!!」
「……わかった」
だけれど、彼女は俺の戸惑いに逆に怒ったような素振りをみせたので、渋々顔を上げる。
それを見て、彼女はよしとばかりに片目を閉じ、満足げに頷いた。
王女様のイメージとは似つかわしくない、その随分可愛らしい仕草に苦笑する。
「あ、そうだ」
「?」
今まではずっと彼女のペースだったので、話しかけられる前に考えていたことをすっかり忘れていた。
でも落ち着いた今、できれば藤ねえと連絡をとりたい。
「えっと、メイ、アイ、ユーズ、ユァ、フォゥン?」
言ってから気づく。
ひょっとすると、王女様に電話を借りたいなんて馬鹿なことを言ったのは日本人で俺だけではないだろうかと。
「────Phone?」
「イエス、イエス! アイ、ワントゥ、コール、マイ、シスター」
「To call your sister??」
彼女はこちらの言うことが理解できないとばかりに、疑問を重ねる。
……もしかして、また俺の英語が変なのかもしれない。
「What is pho──」
彼女が再び何かを尋ねようとした、
────その瞬間
「────You there! Stop!!」
凄まじい音量の怒鳴り声が響いた。
その不意な音にびっくりした心臓が大きく跳ね、学校で刺された胸の傷が疼く。
「────な」
驚くと同時に振り向いた。
そうして見えたのは一人の男。
180cmはあるガッシリした体。
その体は頭部以外全て鎧に包まれ、腰には体格と比すと随分小さい短剣を刺している。
右の額に大きな傷のあるその顔はすごい剣幕で────そこまで呆然と考えたところで、男が唐突に短剣を突き出した。
「クッ」
すんでのところで地面にしゃがむ。あと一瞬でも遅ければ、その刃物に俺の首は搔っ切られていたであろう。
つい先ほどまでの和やかな雰囲気ではなく、土蔵で経験したような張りつめた気配が立ち上る。
「ギネヴィアッ……!」
彼女も危ないのでは、と、顔をあげようとし──
「────ガっ」
ものすごい力で地面に叩き付けられた。
下は比較的柔らかい草地だというのにその勢いは凄まじく、胸を強く打ち付けられたことにより呼吸が一瞬止まる。そのまま意識も飛ぼうかとしていた頭を続いて掴まれ、衝撃で抉れた土に顔を押し付けられた。
「────あ」
声にならない声が漏れた。
もう、地面に倒れ伏すのは今日何回目だろうか。
強く揺さぶられた頭は朧げで、そんなとりとめのないことを考えてしまう。
「What are you doing!? Don't do that!!」
「My apologies your Majesty, but I can't follow it」
意識の遠くで、ギネヴィアと俺を押さえつけている男の声が聞こえる。
どうやら二人は知り合いのようで、彼女は怒ってくれているみたいだが、男は取り合うつもりはないらしい。
そんなやり取りをぼんやり聞いていた俺は、痛む体を無視し、なによりも、男が彼女に危害を加えるつもりはないことに安心した。
「──────」
「──────」
「──────」
「──────」
二人のやり取りは続いている。
何を話しているかは分からないが、その間に現状を把握しておかなくては。
体の節々はズキズキと痛むが、短剣は避けたこともあり特に傷が増えた訳ではない。
しかし大柄な男に押さえ込まれている身体は、ビクともしないほど完璧に動きを止められている。
「────っ」
押さえつけられていた身体が急に浮く。
男が押さえつけている力を緩め、無理矢理俺の身体を持ち上げたのだ。
その突然の行動に驚く間もなく、男は即座に俺の腕を背中で羈束した。
「やめ──」
「────Shut up, scum」
反射的に抗議の声を上げそうになるが、拘束を強められた痛みにより途絶えさせられる。
「……Move forward」
男が静かに呟く。
聞き取れなかった俺はしばらく黙って立ち尽くしていたが、背中を押されることによってその意を悟る。
「歩け」ということなのだろう。
腕を固定されたままなので歩きにくいが、どうにかこうにか庭から見える通路の方へ進み出す。
横目に見えた彼女は、どこか辛そうにこちらを見ていた。
◇
花壇の間を通り過ぎ、庭から建物の中へ通じている石の通路へ立つ。
後ろの男により身体をむりやり右向きに返られ、そのままその通路を進み出す。
奇妙なことに、こちらも庭同様に電灯ひとつ備え付けられていない。
所々にだけ備えられた松明の明かりを頼りに見ると、どうやらこの通路は相当長いらしく、庭と一緒でこの建物が相当大きいことを示していた。
「…………」
「…………」
道のりでは俺も鎧の男も一言も喋らなかった。
俺の方はこの状況に混乱しているのもそうだけど、一瞬でも無闇な行動をすれば命はないと、男の発する重苦しい圧力が言っているようだったからだ。
そのまましばらく歩き続け、長い通路の最奥へと到達する。
そこにあったのは、石建ての壁に大きく取り付けられた木製の扉。
その扉の両端には、後ろの男と似たような鎧を着た二人の男が立っている。
その男たちはそれぞれ西洋剣を抜き身に身体の前で構え、その扉を守護するかのように立ちふさがっていた。
「I have brought this foreigner to my lord」
後ろの男が扉の男たちに話しかける。
その一言を受けた二人の門番は、お互いに視線を交わすと頷き合い、ゆっくりと大きな扉を開け始めた。
扉が開くに連れて、ギギギ、と木が軋む音が鳴る。
開かれる扉の先に見えたのは、まるで何処かの宮殿のように壮麗な部屋だった。
広大な空間に、今までよりも間隔が狭く松明の火が揺れている。
その明かりに照らされるように調度品が所々設置され、部屋の荘厳さを増しているようだった。
石の床には開いた扉から一直線に真赤なカーペットが敷かれ、部屋の奥へと続いている。
「────痛っ」
じろじろと部屋の中を見ていたからか。
続いて部屋の中に入ってきた男に後頭部を掴まれ、顔を下向きにさせられる。
「……Move forward」
視線を下に固定するように押さえつけられたまま、前に押し出される。
景色は床のカーペットを流れ、少しすると急に後ろの男の動きが止まり、同時に俺の身体も停止させられた。
「Your Majesty I have brought a intruder」
「ガッ」
男が誰かに何かを語りかけると同時に、後頭部にかかる圧力が増大する。
その強い力に逆らうことはできず、呻き声をあげながら赤い敷物に膝を着いた。
頭は上下に大きく揺れ、再び意識が混濁する。
────くそっ、なんだってんだいったいぜんたい!
いつもの普通の日常がもはや懐かしく感じられるほどの非常識の連続で、心の中で言葉を吐き捨てなければやっていられなかった。
奥歯を噛み締めることで意識を保とうとする。
一緒に歯茎を食い縛ることで、鉄臭い血の匂いが口に広がった気がした。
「────」
男の言葉は相変わらず理解できない。
男たちは何故鎧を着て、刃物を当たり前のように持ち歩いているのか、
この建物はこんなに大きいのに、何故電灯の一つも使っていないのか、
自分は何故こんな場所に連れられてきて、こんなことをしているのか、
分からないことだらけで、どうにかなりそうだった──
────その頭に
「────Raise your face」
────凛、とした声が響いた。
言葉の意味なんて分からなかった。
だけど、その響きに惹き付けられるように、顔を上げる。
「──────」
────言葉に、ならなかった。
今まで無茶苦茶に混乱していた意識は、目前の存在のみに囚われた。
ただ、その人物の姿があまりにも綺麗すぎて、言葉を失った。
磨き上げられた石と厚手の木材で作られた玉座に凛然と座した、
銀と青の鎧を身に纏い、床際までの大きな蒼のローブを羽織うその存在。
長い金の髪は後頭部で結い止められ、
翡翠のようなその瞳は無感情に俺を見据えていた。
「──────」
背後の男が話す言葉は、既に音声としても届かない。
ただひたすら、対面に座す人のことを考える。
────黄金の剣
あの暗闇の空間より、頭に残っていたイメージを思い出す。
同時に、いつか夢でみた王の存在も思い浮かべた。
そして、あの理想の王が持っていた、黄金の剣。
今、目前の人物は剣を持っていない。
それでも、何故か確信できることがある。
────そうだ。あの剣は、この人物にきっとよく映える。
「─────────, King Arthur」
──ひたすら美しい存在に意識を奪われながらも
どこか遠くで、その名が響いた。
ラテン語やらケルト系言語やらを諦めて、英語に妥協。英語もそんなに続きません。
(現在激しく英語から別の言語に変えようか迷っています。。今後の展開が。。)
ギネヴィアさん警戒心なさすぎですね。